2012年に動画投稿サイトで公開された、オッド・フューチャーのインスト・カヴァーが音楽ファンの注目を集めた、トロント出身の4人組ジャズ・バンドによる5枚目のオリジナル・アルバム。

2014年にロスアンジェルスのレーベルと契約を結ぶや否や、2015年には、ウータン・クランのゴーストフェイス・キラーとのコラボレーション・アルバムを発表し、本作からはサックス奏者のリーランド・ウッディが正式に加入するなど、次々と新しい手を繰り出してくる彼ら。このアルバムでは、新メンバーが加わったことで豊かになった音色を活かし、前作以上にバラエティ豊かな音楽を聴かせている。

アルバムに先駆けて「フロッピー・ディスク」で発表されたアップ・ナンバー”Up”では、ビズ・マーキーの影響をうかがわせる軽快なブレイク・ビーツと、RZAを彷彿させるロマンティックなメロディを混ぜ合わせた、妖艶でキャッチーなグルーヴを披露。また、フューチャー・アイランドのフロントマン、サミュエル・ヘリングがマイクを握ったミディアム”Time Moves Slow”では、アイザック・ヘイズ・ムーブメントを思い起こさせる粘っこい演奏で、サミュエルの粗削りな歌声を70年代のドロドロとしたサザン・ソウルと融合して、往年のソウル・ミュージックのサウンドを、現代的で爽やかな雰囲気に作り変えている。

その一方で、ビヨークを思い出させる幻想的な歌声が魅力のシンガー、シャルロット・デイ・ウィルソンをフィーチャーしたミディアム”In Your Eyes”では、しっとりとしたメロディにストリングスやヴィブラフォンの音色を盛り込み、ジャニス・ジョップリンを連想させる、黒人音楽のエッセンスを取り込んだポップスを演出している。このように、黒人音楽から多くの影響を受けつつ、それをロックやポップスに還元する技術も持ち合わせるなど、柔軟な発想とそれを裏打ちする技術を兼ね備えている。

ジャズやヒップホップ、ファンクやソウル・ミュージックをベースにしながら、そこに囚われない視野と人脈の広さで、インストゥメンタル・バンドの可能性を押し広げた佳作。今度は誰とどんな化学反応を起こすのか、次のアクションが楽しみになる期待の成長株だ。

Track List
1. And That, Too.
2. Speaking Gently
3. Time Moves Slow (Feat. Sam Herring)
4. Confessions Pt II (Feat. Colin Stetson)
5. Lavender (Feat. Kaytranada)
6. Chompy's Paradise
7. IV
8. Hyssop of Love (Feat. Mick Jenkins)
9. Structure No. 3
10. In Your Eyes (Feat. Charlotte Day Wilson)
11. Cashmere
12. Up (Bonus Track)

Producer
BADBADNOTGOOD





IV [帯解説・ボーナストラック1曲収録 / 国内盤] (BRIL2034)
BADBADNOTGOOD
BEAT RECORDS / INNOVATIVE LEISURE
2016-07-08