92年、ニュージャック・スウィングのビートの上で、T-ボズとチリの個性的なヴォーカルとレフト・アイやんちゃなラップが飛び出す”Ain't 2 Proud 2 Beg”でデビューするや否や、若者の心を一気に掴み、続くセカンド・アルバムでは、オーガナイズド・ノイズが生み出す温かい音色のビートと、ドロドロとしたヴォーカルに乗せ、歌詞に強烈な人生訓を込めた”Waterfalls”で大ヒットを記録。三作目に収録された”No Scrubs”では新進気鋭のプロデューサー、ケヴィン”シェイクスピア”ブリッグスを起用し、変則ビートとキャッチーなメロディを融合させた楽曲を、あえて感情を押し殺して平坦に歌い上げることで、黒人音楽業界を席巻していた変則ビートの可能性を切り開いた三人組ガールズ・グループ、TLC。2003年にラッパーのレフトアイを失ってから、活動が停滞していた彼女らが2014年以来となる新曲を発表した。

2016年10月に突然、音楽配信サイト限定で発表された2曲のシングル『Joyride』と『Hater』には、正直なところ戸惑った。プロデューサー等のクレジットは一切なく、発売元も日本限定のベスト・アルバムを出したことが1回あっただけのワーナー・ミュージックということで、レーベルを移籍しての再出発か、それとも単発的な契約か、もしかしたら、ただの未発表曲なのか、情報が少ないがゆえに色々と勘ぐってしまった。

しかし、実際にこれらの曲を耳にすると、そんなことはどうでもいいと思えてしまう。”Joyride”はエフェクターの使い方こそ珍しいが、ギターやハンド・クラップなどのフレーズをループさせて、ホーン・セクションをアクセントに使った、90年代中期のショーン・コムズやトラック・マスターズを連想させるキャッチーなトラックが印象的なミディアム・ナンバー。T-ボズの粘っこいアルトと、チリのハスキーなコーラスが、レイド・バックした雰囲気のメロディの上で絡み合うスタイルは、トラックに使われている音色こそ違うが『CrazySexyCool』に収録されていても不思議ではない。また、もう一つの新曲”Hater”は電子音をアクセントに使った変則ビートの上に、明るいメロディとラップが乗ったミディアム・バラード。ダラス・オースティンやジャーメイン・デュプリの影響を感じるサウンドは、『FanMail』の没曲と言われたら信じてしまいそうな、チキチキビートを効果的に使ったバラードだ。

今回の2曲は、90年代に彼女らの曲に親しんだ人々にとっては懐かしく思える、良くも悪くも全盛期のTLCの影を引きずった曲だと思う。今後も過去の実績を引きずって生きるのか、それとも、今回の作品からさらに進化した新しいTLCを見せるのか、現時点ではわからないが、期待して待ちたいと思う。

Producer
Non Credit