60年代以降のソウル・ミュージック界を支えてきたベテランが次々と鬼籍に入る中、アレサ・フランクリンやシル・ジョンソンと並んで一線で活躍し続けるシンガーの一人に、メイヴィス・ステイプルズがいる。家族と結成したゴスペル・グループ、ステイプル・シンガーズの一員として、ヴィージェイやスタックスといった名門レーベルから多くの傑作を発表し、70年代には”I’ll Take You There”や”Let’s Do It Again”などを残してきた、シカゴが送り出した名シンガーの一人だ。

ステイプル・シンガーズ解散後は、ソロ活動を本格的に始動。ボブ・ディランとのデュエット曲や、ライ・クーダがプロデュースしたアルバムを発表するなど、ジャンルの枠を超えた活躍を見せてきた。

2013年の『One True Vine』以来となるこのアルバムでは、オルタナティブ・ロック・バンド、シー&ヒムのメンバー、M.ワードがプロデュースを担当。彼の他にも、ベン・ハーパーやボン・イヴェールのジャズティン・ヴァーノン、ニック・ケイヴといったオルタナティブ・ロックのミュージシャンや、アロー・ブラックなどの若いソウル・ミュージシャンが集まり、当時の音楽を踏まえつつ、現代の音楽のエッセンスを注ぎ込んだ、2016年仕様のソウル・ミュ-ジックを作ってくれた。

ベンジャミン・ブッカーのペンによる”Take Us Back”では、60年代にタイムスリップしたのではないかと思うほど、泥臭くて粘っこいサウンドを提供。それをバックに、彼女は地声を中心にした重厚で貫禄のある歌声を響かせている。また、アロー・ブラック作の”Tommorow”では、オーティス・レディングの”(Sittin’ On) Doc Of The Bay”を彷彿させる、一音一音つま弾くように鳴らされるギターをアクセントに、目の前の人に語り掛けるように歌うミディアム・ナンバー。また、70年代に数枚のシングル盤を残した通好みのソウル・シンガー、ダニー・ジェラルドが参加した”Dedicated”では、シンプルな編成のバンドによるゆったりとした演奏をバックに、耳元で囁くような優しい歌い方で、リスナーの心を夢の世界に運んでくれる。

デビューから50年以上の時を経て、御年70を超えたメイヴィスの歌は、緩やかとはいえ加齢の影響が隠せなくなっている。だが、力任せに歌うことが難しくなった分、膨大な数のレコーディングやステージで培った力加減の妙や表現の幅が、彼女の表現に幅をもたらすと同時に、親子ほどの年の差があるミュージシャンとのコラボレーションからも、往年のソウル・ミュージックのエッセンスを見つけ出し、自分の作品に取り込んでしまう柔軟さをもたらしたように見える。

60年代、70年代のソウル・ミュージック・シーンを体験しているミュージシャンが少なくなっているが、当時の音楽のDNAは、後の世代に着実に伝えられている。そして、なんらかのきっかけがあれば、往年のソウル・ミュージックは形を変えて蘇ってくれる。そんな希望を感じた。

Producer
M.Ward

Track List
1. Take Us Back
2. Love And Trust
3. If It’s A Light
4. Action
5. High Note
6. Don’t Cry
7. Tomorrow
8. Dedicated
9. History Now
10. One Love
11. Jesus Lay Down Beside Me
12. MLK Song




Livin' On A High Note
Mavis Staples
Anti
2016-02-19