2005年にシングル、”Run It”でデビューしたあと、T-ペインと組んだ”Kiss Kiss”や、タイガとのコラボレーション・作品『Fan of a Fan: The Album』など、ヒット作を立て続けに生み出し、マイケル・ジャクソンやアッシャーに続く、「歌って踊れる男性R&Bシンガー」の座を着々と固めつつある、ヴァージニア州出身のシンガー・ソングライター、クリス・ブラウン。

不幸なことに、近年は音楽活動よりもプライベートの問題にスポットが当てられることが多い彼が、2017年にリリースを予定している新しいアルバムに先駆けて、配信限定で新曲を発表した。

プロデューサーは、トレイ・ソングスやジェイソン・デルーロなどの近作を手掛けた面々。彼らの手掛ける作品や、今も根強い人気のEDMでしばし多用される、華やかなシンセサイザーのリフで幕を開けるこの曲は、その後、リル・ジョンのブレイク以降、ヒップホップのヒット曲ではしばし用いられる、コンピューターだけを使ったシンプルなビートに切り替わり、その上に彼のラップ風歌唱が乗っかるというスタイル。

この曲を聴いて真っ先に思い出したのは、次々とミリオン・ヒットが誕生した2000年代初頭のヒップホップやR&Bのことだ。多くのゲスト・ミュージシャンを次々と繰り出す豪華な音楽を、彼はこの作品で現代によみがえらせようとしていると受け取っているのは私だけだろうか。

この曲のゲストには、今を時めくグッチ・メインとアッシャーが参加しているが、二人はそれぞれ脇から煽る役と、楽曲の後半でフックを歌う程度に留め、あくまでも脇役に徹している。本来なら、もっと見せ場をもらえてもおかしくない立場の大物を、一人のゲストとして使うスタイルは、大物ミュージシャンを何人もゲストに招いて、自分の作品に彩を加えたディディやドクター・ドレ、アッシャーなどのトップ・ミュージシャンを彷彿させる。

音楽市場の縮小が叫ばれる中、あえて、2000年代初頭の贅沢で華やかな、そして高コストなR&Bを、現代の 音楽シーンに投げ込んだ彼の挑戦は非常に面白い。スキャンダルを乗り越えて、彼の音楽が話題の中心になる日もそう遠くはなさそうだ。

Producer
ISM, A1 Bentley, Prince Chrishan