ジャ・ルールやアシャンティを輩出したマーダー・インク(後にザ・インクと改称)初の男性シンガーとして、2004年にアルバム『Southside』で華々しくデビューしたアトランタ出身のシンガー・ソングライター、ロイド。その後は、ザ・インクが活動を休止するなど、必ずしも順風満帆とは言えない環境の中で、2作目の『Street Love』がゴールドディスクを獲得し、3作目の『Lesson In Love』が全米R&Bアルバム・チャートを制覇するなど、着実に実績を積み上げてきた。

そんな彼の3年ぶりとなる新作は、ロス・アンジェルスに拠点を置くエンパイア・レコードから発売された、5曲入りのミニ・アルバム。若き日のマイケル・ジャクソンにも似た若々しい(子供のような?)ハイ・テナーと、柳のようにしなやかな歌唱は今回も健在で、その声を活かしたロマンティックでセクシーな楽曲を聴かせてくれる。

プロデューサー等のクレジットは不明だが、音楽性はこれまでの作品を踏襲したもの。アルバムに先駆けて発表されたタイトル曲”Tru”では、ギターのような音色を使った悲し気なイントロから、ドラム主体のシンプルなトラックに移り、その上で泣き崩れるようなヴォーカルが繰り出されるミディアム・バラード。彼のデビュー曲”Southside”を彷彿させる、ドラマティックな楽曲だ。一方、ラッパーの2チェインズをゲストに迎えた同曲のリミックス・ヴァージョンでは、メロディをR.ケリー風のエロティックなものにアレンジするとともに、デジタル・パーカッションの音色と語り掛けるようなラップをアクセントに加えて、よりキャッチーなものに纏め上げている。

また、リック・ロスが参加した”Heavenly Body”では、エムトゥーメイを連想させるリズム・マシーンとシンセサイザーの伴奏で、甘美な雰囲気と軽妙さを演出したビートをバックに、甘い歌声を張り上げるスウィートなミディアム・ナンバー。絶妙なタイミングで楽曲を引き締めるリック・ロスのラップも素晴らしい。そして、リル・ウェインを招いたスロー・ナンバー”Holding”は、アッシャーの”Confessions”を思い出させるチキチキ・ビートの上で、力強く歌声を張り上げるバラード。彼の若々しい歌声と、リル・ウェインのコミカルなラップのおかげで、ダイナミックな楽曲でありながら、どこか親しみやすさを感じるのは面白い。どちらの曲も、数多くのラッパー、シンガーと競演してきた両者らしい、バランス感覚の良さが光る名演だ。

だが、今作で特筆すべきは唯一のアップ・ナンバー”Excited”だ。ブリブリと唸るベースの音色が、スレイヴやギャップ・バンドなどのファンク・バンドを思い起こさせるダンス・ナンバー。シンセサイザー主体の乾いたサウンドが、ロイドの流れるようなヴォーカルとマッチした、クールな雰囲気が印象的だ。

本作の収録曲を聴く限り、レーベルを移籍しても、彼の音楽は安定しているように思える。年齢に比べて若く聴こえる甘く爽やかな声をベースにした、繊細なヴォーカルの魅力を引き出すため、デジタル機材を中心にした、シンプルなトラックを選び、癖のある声がウリのラッパーを起用して楽曲に起伏をつけるスタイルは、本作でも変わらない。鋭意制作中というニュー・アルバム『Out My Window』への期待を膨らませてくれる、充実した内容だ。

Track List
1. Tru
2. Heavenly Body feat. Rick Ross
3.Holding feat. Lil Wayne
4. Excited
5. Tru (Remix) feat. 2 Chainz





Tru - EP [Explicit]
Young Goldie Music / EMPIRE
2016-12-09