2001年のデビュー以来、フィラデルフィア発の次世代シンガーとして、”Just Friends(Sunny)”や”Half Crazy”などのヒット曲を立て続けに送り出してきたミュージック・ソウルチャイルド。かたやシカゴ・ブルース界の重鎮シル・ジョンソンの娘として、自身の名義でも7枚のアルバムを発表してきたシリーナ・ジョンソン。シカゴとフィラデルフィア、両都市を代表する新世代シンガーのコラボレーション作品が、2013年に発売された本作だ。

両者によるレコーディング作品での競演は、意外にもこれが初めて。だが、生バンドと機械を使ったトラックの両方に強く、ミディアム、スロー・テンポを中心にじっくりと歌い込む音楽スタイルという共通点を持っている、二人の歌の相性は想像以上に良い。そんな二人の作品は、カルヴィン・リチャードソンによるボビー・ウーマックのカヴァー集や、リーラ・ジェイムズによるエッタ・ジェイムズのカヴァー集など、本格的なソウル作品も手掛けてきたニュージャージーのシャナチー・レコードということもあり、主役の歌をじっくり聴かせるアルバムになっている。

物腰柔らかなミュージックと、逞しいシリーナの歌声を結びつけた本作の基調となるスタイルは、意外にもレゲエ。ルチアーノやジュニア・リードにもリディム(レゲエのトラックのこと)を提供している、DJフレヴァーによるトラックは、80年代の終盤、ベレス・ハモンドやウェイン・ワンダーなどの作品でよく見られた、チープな音色のシンセサイザーを使ったもので、高性能なDAWソフトが普及した21世紀の音楽に聴き慣れた耳には、新鮮に映るから面白い。レゲエのゆったりとした雰囲気と、インディー・レーベルらしいチャレンジ精神に溢れる楽曲で、2人の実力派シンガーの意外な一面を引き出している。

アルバムの看板となる”Feel The Fire”は、いかにもダンス・ホール・レゲエらしい、勇ましい雄叫びから始まるミディアム・ナンバー。いつもより色っぽいシリーナのヴォーカルが聴きどころだ。一方、ミュージックとシリーナが肩の力を抜いてゆったりと歌い上げる”Slow Love”や、まったりとしたトラックの上で、シリーナの母性を感じさせる柔らかい歌唱が光る”Pieces Of You”、のんびりとした演奏をバックに、普段の2人からは想像できない、肩の力を抜いたデュエットを披露する”Bring Me Down”など、DJフレヴァーが生み出す緩やかなビートをバックに、肩の力を張らない、リラックスした雰囲気の中で伸び伸びとソウルフルな歌声を響かせている。

作品全体を通して聞くと、少し単調に聞こえる部分もあるが、それは高い水準でまとまった本作の統一感の裏返しで、退屈さとは違うものだと思う。2人の実力派シンガーの、普段とは違う一面と、高い歌唱力が楽しめる。

Producer
Flava McGregor

Track List
1. Alright
2. Feel The Fire
3. The Hunger
4. Slow Love
5. So Big
6. Never Had
7. Pieces Of You
8. Bring Me Down
9. Promise
10. Feel The Fire (Dancehall Stylee)





9ine
Musiq Soulchild & Syleena Johnson
Shanachie
2013-09-24