サム・クックに引き上げられて音楽業界に入り、ジャニス・ジョップリンやアレサ・フランクリンとも仕事をしてきたアメリカ音楽界の生き証人、ボビー・ウーマック。50年以上のキャリアを誇る彼にとって、21世紀最初のオリジナル作品であり、生前最後のスタジオ録音となった2012年のアルバムは、ブラーやゴリラズの中心人物であるデーモン・アルバーンとの競作。

両者の競演は、ゴリラズの3作目『Plastic Beach』に収められている”Stylo”でも行われているが、アルバム1枚分の共同作業となると今回が初めて。ブリティッシュ・ロックの枠に留まらず、ヒップホップやエレクトロなどを積極的に取り入れてきたデーモンと、流行のサウンドを取り入れつつも、ヴォーカル&ギターという昔ながらのスタイルにこだわってきたボビーが、どのような化学反応を起こすのか、とても気になるところだ。

で、肝心の中身だが、アルバムのオープニングを飾る”The Bravest Man In The Universe”では、地鳴りのような重低音が鳴り響くベース・ミュージックをトラックに採用している。前衛的な作風のロック・バンドではしばし用いられる演奏スタイルだが、ソウル・シンガーの楽曲で使われるのは非常に珍しい。この曲では、ボビーの空気を切り裂くような激しいバリトン・ヴォイスと、地響きのような重低音を正面からぶつけ、楽曲に緊迫感と荘厳な雰囲気を与えているのは面白い。

また、それ以外の曲に目を向けると、レディオ・ヘッドやフライング・ロータスを彷彿させる、「間」を効果的に使った伴奏と、若干20代(当時)のシンガー・ソングライター、ラナ・デル・レイの神秘的なヴォーカルをフィーチャーした”Dayglo Reflection”や、各楽器に強烈なエフェクトをかけて、ダブやサイケデリック・ロックとは異なるアプローチで、幻想的なサウンドを構築した”Whatever Happened To The Times”。洗練されたシンセサイザーの音色と、精密なビートからなるハウス・トラックの上で、熱いシャウトを張り上げみせる”Love Is Gonna Lift You Up”など、電子楽器を単なる生楽器の代替品に留めず、新しいサウンドやアレンジを生み出すツールとして積極的に活用した曲が目立つ。

だが、それと同時に、加齢による衰えこそ見えるものの、前衛的なトラックを目の前にしても動じることなく、若いころ変わらないパワフルなヴォーカルを愚直に響かせるボビーの存在が、楽曲にある種の懐かしさと普遍性を与えていると思う。

彼らの音楽を聴くと、どんなに時代が変わっても、歌手に求められるものは変わらないことを再認識させられる。ボビーのような「歌」で相手の心に何かを残してくれる歌手が、これからも増えてほしいと願うばかりだ。

Producer
Damon Albarn, Richard Russell

Track List
1. The Bravest Man In The Universe
2. Please Forgive My Heart
3. Deep River
4. Dayglo Reflection feat. Lana Del Rey
5. Whatever Happened To The Times
6. Stupid
7. If There Wasn't Something There
8. Love Is Gonna Lift You Up
9. Nothin' Can Save Ya feat. Fatoumata Diawara
10. Jubilee (Don't Let Nobody Turn You Around)





Bravest Man in the Universe
Bobby Womack
Xl Recordings
2012-06-12