melOnの音楽四方山話

オーサーが日々聴いている色々な音楽を紹介していくブログ。本人の気力が続くまで続ける。

その他

平成も終わったので、平成30年間にリリースされた日本人アーティストの重要作品を10曲、独断と偏見で選んでみた

1989年1月から始まった平成も2019年4月で終わり。この30年間には、音楽を楽しむフォーマットがレコードからCD、音楽データへと移り変わり、DVDや動画配信、音楽ストリーミングなど、新しい視聴手段が次々と登場しました。また、CDの売り上げが下がる一方で、ライブの観客動員数は大幅に上がり、インターネットの世界で名を上げたミュージシャンが、世界的なヒットを生み出すことも珍しくなくなりました。それ以外にも、音楽そのものに目を向けると、世界各地で新しい音楽が生まれ、姿を変えながら新しい流行を生み出してきました。そんな平成という時代を象徴する楽曲を10曲、独断と偏見で選んでみました。

globe - Sweetheart(1996)

毀誉褒貶はあるが、平成の日本のポップス界を代表するクリエイターの一人は、間違いなく小室哲哉だろう。ミリオンセラーを記録した楽曲を幾つも残している彼だが、自身が率いるユニット、globeが1996年に発表した4枚のシングルでは、そんな彼の創造力とビジネスセンスが遺憾なく発揮されている。中でも、ヨーロッパで流行していたドラムン・ベースを日本のポップスに落とし込んだこの曲は、日本のポップスでは厳しいとされる重低音を強調した硬質なビートをポップスに組み込んだ匠の技が聴きどころ。前作「SA YO NA RA」に続く2週連続1位という記録は、2019年にDrakeがアメリカで達成するまで、世界唯一の記録だった。

globe decade-single history 1995-2004-
globe
エイベックス・トラックス
2005-02-16



MISIA – つつみ込むように...(Remix) feat. Muro (1998)

98年のデビュー以降、多くのヒット曲を残してきたMISIA。彼女の良さは高い歌唱力のほかに、大胆なリミックスにも紛れない声の存在感があると思う。このデビュー曲のリミックスでは、DJ WATARAIの手による音数を絞った物悲しい雰囲気のビートと、Muroの鋭さと優しさが同居した独特のラップを加えたアレンジで、シンプルゆえに難しいメロディを巧みに乗りこなす彼女の歌唱力を活かしている。リミックス・アルバムを80万枚以上売り上げた彼女が、ビート・メイカーやリミキサーの地位を高めたといっても過言ではない。

つつみ込むように・・・
MISIA
アリスタジャパン
1998-02-21



RIP SLYME -Stepper’s Delight(2001)

ポップスの世界にラップの存在を知らしめた「今夜はブギーバック」や「DA YO NE」、日本語によるハードコア・ヒップホップの可能性を示した「人間発電所」や「空からの力」など、多くのヒップホップ・クラシックが生まれた平成時代。その中でも後の音楽シーンに大きな影響を与えたのが、5人組のヒップホップ・グループ、RIP SLYMEが2000年に発表したメジャー・デビュー曲だろう。ドラムン・ベースを取り入れた、テンポが速く音数の多い複雑なビートの上で、コミカルなラップを次々と繰り出す姿は、アメリカのヒップホップにも日本のポップスにも見られない独創的なもの。日本の歌謡曲ともアメリカのヒップホップとも一定の距離を置きながら、ヒップホップの実験精神とポップスの親しみやすさを両立した音楽は、後の作品に多くの影響を与えている。余談だが、彼らの所属するヒップホップ・クルー、Funky Grammar Unitは、EAST END、RHYMESTER、KICK THE CAN CREWなど、多くの人気グループを輩出している。

GOOD TIMES(通常盤)
RIP SLYME
ワーナーミュージック・ジャパン
2010-08-04



Suite Chic – Uh Uh feat. AI (2003)

平成を通じて、常に多くの足跡を残してきたシンガーの一人が、安室奈美恵だ。単なるポップ・スターの枠に留まらず、ファッション・リーダーとして多くの女性のスタイルに影響を与え、キャリアの絶頂期に結婚、出産というブランクを経て、再び音楽業界の一線に戻ってきた彼女は、その一挙手一投足が人々の生き方に影響を与えてきた。そんな彼女が音楽で新境地に挑んだのが、2003年のSuite Chic。m-floのVerbalと音楽プロデューサーの今井了介の「日本のJanet Jacksonは誰だろう?」という会話をきっかけに生まれたこのプロジェクトは、彼女の作品でも珍しい、本格的なR&B作品。中でも、ラッパー、シンガーのAI、音楽プロデューサーのYAKKOと制作したこの曲は、アメリカ南部のヒップホップを取り入れた変則ビートと、矢継ぎ早に繰り出されるヴォーカルを組み合わせた、日本のポップスでは異色の作品。「カラオケで仲間と共有する音楽」の時代から「音源や映像、ライブで魅せる音楽」の時代へと移り変わっていった2000年代を象徴している。

WHEN POP HITS THE FAN (CCCD)
SUITE CHIC
エイベックス・トラックス
2003-02-26



Issa – Chosen Soldier(2007)

日本のポップスの特徴的なところに、ドラマやアニメとタイアップした曲が多いことがある。その中でも、仮面ライダーの熱狂的なファンであるDA PUMPのISSAが担当した映画「仮面ライダーTHE NEXT」の主題歌は、ISSAの手による作品のストーリーに沿った歌詞もさることながら、CHEMISTRYや倖田來未などを手掛けてきた日本屈指のR&Bプロデューサー、今井大介が手掛けるトラックが印象的な作品。Usherの”Year”やCiaraの”Goodies”でも取り入れていた当時の流行のサウンド、クランクを使って重厚で陰鬱な雰囲気を演出したアレンジは、楽曲のクオリティを高めつつ、映画と一体になることが求められるタイアップ曲の難しさを、高い次元でクリアしている。




TERIYAKI BOYZ – TOKYO DRIFT(2006)

2000年以降、ミュージシャンにとってファッションは新しい意味を持つようになっていった。単なる自分を飾るツールではなく、自分のイメージを増幅し、活動の場を広げる手段として、多くのミュージシャンが、これまで以上に積極的にファッションを活用するようになっていった。そんな時代に、ファッション業界での実績を活かして、音楽の世界に進出したのがA BATHING APEのデザイナーとして活躍していたNIGO。彼がm-floのVerbalなどと組んだ音楽ユニット、TERIYAKI BOYZは、ファッションを通して交流を深めたKanye WestPharrell Williamsといった海外の有名クリエイターをプロデューサーに招き、アメリカの最先端のサウンドを日本に輸入してみせた。映画「ワイルド・スピード」の主題歌として作られたこの曲も、一回聴いただけでPharrell の音とわかる軽快なビートの上で、4人が巧みなラップを繰り出した佳曲。余談だが、NIGOとVerbalは2019年にもPharrell Williamsをプロデューサー迎えた楽曲を、HONEST BOYZの名義で映画「名探偵ピカチュウ」の主題歌として提供している。




BIGBANG – HARU HARU(2008)

「日本人アーティストの重要曲なのに、なんで韓国のアイドル・グループの曲が?」そう思った人も少なくないだろう。2008年に韓国で最も売れたといわれるBIGBANGのシングル、実は作曲、アレンジ、プロデュースを北海道出身の音楽クリエイター、DAISHI DANCEが担当しているのだ。「踊れるバラードを作りたい」というリーダーのG-Dragonの希望に応えたこの曲は、ピアノの音色を使った切ない雰囲気の伴奏と四つ打ちのビート、ラップを担当するG-DragonとT.O.P.の絶妙な掛け合い、サビを歌う3人の美しい声が生み出す絶妙なバランスが心に残る良曲。メロディやアレンジの随所に、浜崎あゆみっぽさを感じるのは、G-Dragonの要望なのだろうか。彼らの作品の中でも異彩を放っているこの曲は、外国人が日本の音楽のどんなところを評価しているのかを端的に示している。楽曲の世界観を丁寧に描いたミュージック・ビデオも必見。

ALIVE
BIGBANG
YGEX
2012-03-28



Jin Akanishi – Good Times(2014)

平成の30年間を通して、常に日本の音楽業界に影響力を持ち続けてきたプロダクションの一つがジャニーズ事務所だ。同事務所はSMAP、Kinki Kids、嵐、関ジャニ∞など、個性豊かな人気グループを次々と送り出し、日本のポップス史に多くの金字塔を打ち立ててきた。そんな彼らの成功を支えてきたのが、優秀なタレントを育て、切磋琢磨させる事務所の環境にあったことを再確認できるのが、元KAT-TUNの赤西仁が退所直後に発表したこの曲。アメリカのR&Bを取り入れつつ、自分のヴォーカルやダンスのスタイル、ファンが彼に抱くイメージを作品に落とし込むプロデュース能力と、それを一緒に形にしてくれる優れた仲間を集められる人望、個人事務所という負荷の高い環境にいながら、それを微塵も感じさせない安定したパフォーマンスを観ていると、彼らの成功の秘訣が、厳しい環境で鍛えられ、自らの能力を高め続けてきた一人一人のタレントの努力にあることがよくわかる。彼の音楽は、アイドルはIDOL(=偶像)ではなく、たゆまぬ努力を続ける一人の人間なのだということを教えてくれる。

Me(+2) 通常盤
赤西仁
Go Good Records
2015-06-24



T-Groove – Move Your Body(2017)

インターネットの登場は、リスナーが音楽に接する機会を増やすだけでなく、アーティストと世界を繋ぐ機会も増やした。東京を拠点に活躍するT-Grooveこと高橋佑貴も、そんな時代を象徴するクリエイターの一人。彼はミュージシャンになる前から、マイナーなディスコ音楽を紹介するブロガーとして知る人ぞ知る存在だったが、音楽の世界で成功するきっかけになったのもインターネットだった。音楽ストリーミングサイトに投稿した楽曲が海外のミュージシャンやレコード・レーベルの目に留まり、フランスのレーベルからレコードデビューを果たした。デビュー・アルバムのタイトル・トラックであるこの曲は、Roger Troutmanの遠戚であるアメリカのシンガー、B. Thompsonを招いたダンス・ナンバーで、彼のディスコ音楽への深い造詣が遺憾なく発揮されている。日本を拠点に活動するクリエイターがアメリカのシンガーを起用した楽曲でフランスのレーベルからデビューする。インターネットの普及によって、インターネットの力で世界との距離が縮まった平成という時代を象徴する作品だろう。
Cosmic Crush -T-Groove Alternate Mixes Vol. 1
T-Groove
ビクターエンタテインメント
2019-03-06



星野源 – Pop Virus(2018)

90年代後半以降、R&Bの要素を盛り込んだポップスは数多く作られてきたが、その多くはヒップホップ色が強い、荒々しいサウンドをウリにするものだった。そんな中で、2018年に星野源がリリースしたこの作品は、D’Angeloの音楽を思い起こさせる、電子楽器と生音を組み合わせながら、人間の演奏が生み出す揺らぎや、音と音の隙間を効果的に聴かせるスタイルでリスナーの度肝を抜いた。日本を代表する人気ミュージシャンが、R&Bの中でも特に難解で実験的なサウンドに取り組みながら、老若男女問わず楽しめる音楽に落とし込む彼の才覚が光っている。大衆向けのポップスとマニア向けの音楽を両立した稀有な作品だと思う。

POP VIRUS (CD)(通常盤)(特典なし)
星野 源
ビクターエンタテインメント
2018-12-19



今回は敢えてヒット曲に拘らず、平成という時代に起きた色々な変化を象徴する音楽を取り上げてみました。ここで挙げたアーティストのほかにも、沢山のミュージシャンが新しい音楽に取り組み、世界を変えていったのが平成という時代だと思います。令和の時代ではどんな音楽が生まれ、私達を楽しませてくれるのか、これからも追いかけ続けたいと思います。

本年もよろしくお願いします。

少し遅くなりましたが、あけましておめでとうございます。
皆さんにとって、昨年はどんな年だったでしょうか。

私個人は、楽しいこともあり、つらいこともあり、環境の変化もありました。
個人的な事情で、やりたいことが十分にできなかったこともありましたが、
色々な出会いや経験を通して、少しでも前に進めたかな?と思える1年でした。

このブログでいえば、2017年には記事数が250を超え、「1000枚シングルやアルバムを紹介する」という目標の4分の1をなんとか達成できたのも、嬉しいことでした。特に、日本人アーティスト(T-Grooveの『Move Your Body』)や、日本語の作品(Sky-Hiの『Marble』)を、ほかの国のアーティストと差別することなく、取り上げることは、開設時点からの懸案だったので、その課題を乗り越えられたのは、一つの前進だと思っています。

まあ、本年も肩ひじ張ることなく、やめることもなく、マイペースに続けていきたいと思っていますので、どうか最後までお付き合いください。

本年もよろしくお願いします。

おまけ Pink Lady - Kiss In The Dark [1979 Victor]

実は、年末年始によく聞いていたのが、ピンク・レディーのアルバム。

2017年12月、防弾少年団のMic Drop(Remix)に抜かれるまで、アジア人グループによる最大のヒット曲だったのが、彼女達が79年にリリースした”Kiss In The Dark”だと知り、じっくりと聴いてみたいと思ったのがきっかけでした。

マイケル・ロイドが作詞と作曲を担当したこの曲は、当時流行していたディスコ音楽の手法がふんだんに使われた、良質なダンス・ナンバー。英語詞を取り入れたことで、海外のファンを増やしたものの、コミカルな日本語の歌詞が失われたことで、日本の市場からはあまり評価されていない曲のようです。

ただ、グルーヴ、伴奏、歌、そのすべてがハイレベルで、どこの国に出しても引けを取らない、本格的なダンス・ミュージックであることに違いはありません。特に、この曲を含む、彼女達がアメリカでリリースしたアルバム『Pink Lady In USA』では、アメリカのポピュラー・ミュージック界に深く根差した、ソウル・ミュージックのDNAをベースに、それを再解釈したスタイルで日本の音楽界を席巻したピンクレディが、彼女達の原点ともいえるディスコ音楽に取り組んだ良作であることに違いはありません。

ディスコ音楽が再び脚光を浴びている2018年、日本発のディスコ・クラシックとして再び流行してくれないかなあ。と思う素晴らしいアルバムのひとつです。レコードは結構高いですが、CDは簡単に買えるので、ぜひ手に取ってみてください。




Pink Lady in USA
ピンク・レディー
インディペンデントレーベル
2002-12-15

[まとめ]2017年によく聴いたアルバム・ベスト10を纏めてみた

2017年も、残り数日、今年発売されたアルバムも一通り出揃いました。2017年も色々な作品がリリースされ、強烈な印象や歴史に残る大記録を打ち立てていきました。また、自分自身、例年以上に色々な音楽に触れられて、とても充実した1年でした。そこで、今年、リリースされた作品の中から、頻繁に聴き返したアルバムを10枚、取り上げてみました。これも甲乙つけ難い作品なので、順位はなし、並びは順不同です。


T-Groove - Move Your Body [Diggy Down Recordz]

2017年を代表する傑作といえば、なんといっても八戸出身で、現在は東京を拠点に活動するプロデューサー、T-グルーヴこと高橋佑貴の初のフル・アルバムを差し置いて、他にないでしょう。ブライアン・トンプソンやウィンフリーなど、高い歌唱力を武器にファンを魅了するシンガー達を招き、70年代後半から80年代にかけて一世を風靡した、ディスコ音楽の煌びやか雰囲気と、現代のクラブ・ミュージックが持つスタイリッシュなサウンドを融合したスタイルが、強く心に残りました。インターネットの配信サービス経由で火が付いた、日本を拠点に活動するクリエイターが、アメリカで活躍するシンガーを起用し、フランスのレーベルからリリースした本作は、「日本人が作るソウル・ミュージック」であり、「アメリカ人が歌うヨーロッパ・スタイルのディスコ・ミュージック」でもある。活動拠点が単なる物理的な位置以上の意味を持たなくなった「個人の時代」を象徴する名盤だと思う。





Boyz II Men - Under The Streetlight [MasterWorks, Sony]

2017年には、久しぶりの来日公演を成功させる一方、ルイス・フォンシの”Despacito”が、彼らの持つ「ビルボード総合シングル・チャートの16週連続1位」の記録に並んだことで、名前を見る機会の多かったボーイズIIメン。彼らにとって、2014年の『Collide』以来となる新作は、50年代、60年代に流行したドゥー・ワップの名曲のカヴァー集。線が細くしなやかな歌声と、複雑なコーラス・ワークをウリにしている、彼らの持ち味がいかんなく発揮された良作。伴奏を生バンドで録音し、3人で活動する彼らのために、ブライアン・マックナイトやテイク6が馳せ参じている点も見逃せない。1曲目の”Why Do Fools Fall In Love”から、前作に収録された曲のリメイク”Ladies Man”まで、気を休める隙のない完璧なパフォーマンスが堪能できる。ポップスの歴史に残る名ヴォーカル・グループの実力と貫禄が感じられる充実した内容。本作の面々で日本のステージに立ってほしいけど、それは贅沢な願いなんだろうなあ。


Under the Streetlight
Masterworks
2017-10-20



Mike City - Feel Good Agenda Vol.1 [BBE]

2000年代前半に、カール・トーマスの”I Wish”やビラルの”Love It”、サンシャイン・アンダーソンの“Heard It All Before”といったヒット曲を手掛け、流れるようなメロディと温かい歌声を組み合わせた、独特のスタイルで、売れっ子プロデューサーの仲間入りを果たしたマイク・シティ。その後も、プロデューサーとして色々な作品に携わってきた彼の、実に20年ぶりとなる新作。最初から最後まで、すべての曲でハウス・ミュージックのような四つ打ちのビートを取り入れ、実力に定評のある歌手達の魅力を引き出す洗練されたメロディと組み合わせた作品は、どれも抜群の出来だ。フェイス・エヴァンスやメイサ・リーク、カール・トーマスといった、彼と縁の深い面々が集結した曲は、どれをシングル化しても納得のクオリティ。ダンス・ミュージック=EDMというイメージが強くなった時代だからこそ、新鮮に感じられる上品なトラックと、高い表現力を持ったヴォーカリストの組み合わせが生み出した、大人のためのクラブ・ミュージック。


▼CD/THE FEEL GOOD AGENDA VOL. 1 (解説付) (輸入盤国内仕様)/マイク・シティ/BBEACDJ-419 [6/21発売]
▼CD/THE FEEL GOOD AGENDA VOL. 1 (解説付) (輸入盤国内仕様)/マイク・シティ/BBEACDJ-419 [6/21発売]

Zion. T - OO [BLACK LABEL, YG ENTERTAINMENT]

このブログで定期的に取り上げてきた、韓国出身のミュージシャン達。2017年は、BTSがチェインスモーカーズとのコラボレーション曲を収めた『Love Yourself: Her』や、スティーヴ・アオキがリミックスを担当した”Mic Drop(Remix)”で、欧米の市場を席巻し、日本では、日本人メンバーを含む多国籍のガールズ・グループ、TWICEが『#Twice』などのヒット作を残すなど、今や同国の音楽は従来のK-Popという枠組みでは捉えられなくなっている。そんな同国のアーティストの作品の中でも、特に記憶に残ったのが、今年の頭にリリースされたザイオン.Tのアルバム。ビッグバンやPSYなどを輩出し、韓国のポップスを世界に知らしめたYGエンターテイメントの看板プロデューサー、テディ・パクが同社の傘下に設立した、ブラック・レーベルからリリースされた本作は、生楽器の音色を効果的に使った柔らかい伴奏をバックに、美しいメロディと繊細な歌声を聴かせる、マックスウェルやラウル・ミドンのようなソウル・ミュージック色の強い作品。過去に何度もコラボレーションしているビッグバンのG-ドラゴンがひっそりと参加しているのも心憎い。兵役を間近に控えた28歳(本稿の執筆時点)でありながら、韓国屈指の大手事務所から声がかかったのも納得のクオリティ。これから、彼がシンガーとして、ソングライターとしてどんな作品を残していくのか、期待に胸が膨らむ。


Zion.T アルバム - OO
Zion.T
YG Entertainment
2017-02-17

 

Asiahn – Love Train [Asia Bryant Music, Universal]

配信限定のリリースで、動画投稿サイトを使ったプロモーションをほとんど行っていない作品ながら、とても印象に残ったのが、2017年の初頭にリリースされた、西海岸出身のシンガー・ソングライター、エイジア・ブライアントの初のEP。Dr.ドレのコンプトンなど、多くの人気ミュージシャンの作品に参加してきた彼女の作品は、アリーヤを彷彿させる繊細なソプラノ・ヴォイスと、シンセサイザーを駆使した先鋭的なトラックを組み合わせた、懐かしさと新鮮さが同居した作品。今年はラプソディーやニッキー・ミナージュのような女性ラッパーや、尖った作風のSZAやケラーニ、シドなどの活躍が目立ったが、彼女のようにメロディをじっくりと聴かせるタイプのミュージシャンの佳作も多かった。2018年は、彼女のようなアーティストがブレイクするのだろうか?今からちょっと楽しみ。




PJ Morton - Gumbo [Morton Music]

近年はマルーン5のキーボード担当として、八面六臂の活躍を見せる、ニュー・オーリンズ出身のシンガー・ソングライター、PJモートン。世界屈指の人気ロック・バンドの一員として、多忙な日々を送っている彼が、5年ぶりにリリースした新作も素晴らしかった。マルーン5の活動で培った、多くの人の心をつかむセンスと、彼のルーツである南部のソウル・ミュージックが融合した融合したサウンドは、時代や地域性の違いこそあるが、『Talking Book』や『Songs in the Key of Life』で、人種や年齢を超えて幅広い層から支持された70年代のスティーヴィー・ワンダーを思い起こさせる。トラップやベース・ミュージックなど、常に新しいサウンドが生まれ続ける音楽の世界だが、昔から使われている歌や楽器の演奏技術を突き詰めることで、聴き手の心を揺さぶる作品が作れることを証明してくれた傑作。


Gumbo
Morton Records
2017-04-21



Lalah Hathaway - Honestly [Hathaway Entertainment]

2015年に発表した『Lalah Hathaway Live』がグラミー賞を獲得するなど、もはや「ダニー・ハザウェイの娘」という形容が不要になった感もあるレイラ・ハザウェイ。彼女の7年ぶりとなるスタジオ・アルバムは本年屈指の傑作。ジル・スコットやSiRなどの作品を手掛けているティファニー・ガッシュと一緒に制作したこのアルバムは、彼女の作品の醍醐味である、シンプルで味わい深いメロディと、シンセサイザーを多用したモダンな伴奏を巧みに組み合わせている。70年代のソウル・ミュージックを連想させる、流麗で洗練されたメロディと美しい歌声を聴かせる作品でありながら、きちんと2017年の音楽に聴こえるのは両者の経験とセンスのおかげだろう。ところで、本作のジャケットはファイナル・ファンタジーに触発されたものだと思うが、あれを提案したのは誰なのだろうか。まさか、彼女自身が日本のテレビゲームのファンなのだろうか・・・。誰か聞いてきてください。


Honestly
Lalah Hathaway
8th Floor Production
2017-11-03



Sharon Jones & The Dap-Kings ‎– Soul Of A Woman [Daptone]

2016年に、癌でこの世を去ったシャロン・ジョーンズ。病気が見つかった2013年以降、彼女は死の直前まで、治療と並行して多くの曲を録音し、ステージに立ってきた。このアルバムは、彼女の死後、残された録音を、彼女と一緒に活動してきたバンドのメンバーが完成させたアルバム。本作で聴ける、パワフルな歌声と大胆な表現からは病気による衰えは感じられない。むしろ、残された時間をフル活用して、この世に何かを残していこうとする執念すら感じられる。現代では当たり前になった、バンドの生演奏を大切にしたサウンドや、アナログ・レコードを積極的にリリースするビジネス・スタイルなどを90年代から続け、後進に多くの影響を与えてきた彼女のキャリアを総括する、密度の濃いアルバム。エイミー・ワインハウスやブルーノ・マーズなど、多くのミュージシャンとコラボレーションしてきたバンド・メンバーだが、彼女を超えるパートナーは出てこないのではないか、そんな寂しさも感じる。


SOUL OF A WOMAN [CD]
SHARON JONES & THE DAP-KINGS
DAPTONE RECORDS
2017-11-17



N.E.R.D. - No One Ever Really Dies [I am Other, Columbia]

12月中旬に発売された作品ながら、今年一番の衝撃を残したアルバム。「Hidden Figure(邦題:ドリーム)」や「Despicable Me 3(邦題:怪盗グルーのミニオン大脱走)」などのサウンドトラックで腕を振るい、カルヴィン・ハリスやサンダーキャットの作品で素晴らしいヴォーカルを聴かせてきたファレル・ウィリアムスが、相方のチャド・ヒューゴ達と結成したバンド、N.E.R.D.の名義で発表した7年ぶりのスタジオ・アルバム。アルバムに先駆けてリリースされた”Lemon”は、これまでのN.E.R.D.の楽曲とも、ファレル名義の作品とも異なる、シンセサイザーを組み合わせた変則的なビートが面白いアップ・ナンバー。それ以外の収録曲も、既存のジャンルの枠に収まらない、奇抜で前衛的なものが並んでいる。尖ったサウンドでありながら、親しみやすい印象を受けるのは、斬新なサウンドで多くのヒット曲を生み出してきたファレルとネプチューンズの持ち味が発揮されたからか?彼らの最高傑作といっても過言ではない充実の内容。2020年のトレンドを予見し、先取りしたような、彼らの嗅覚とセンスが発揮された傑作。


No One Ever Really Dies
N.E.R.D
Sony
2017-12-15



Sky-Hi - Marble [avex trax]

2017年にリリースされた日本語の作品で、特に印象に残ったのは、Sky-Hiこと日高光啓のソロ・アルバム。彼の所属するAAAが”Blood on Fire”でデビューしたころから、ユーロビートを取り込んだ尖ったサウンドと、ハイレベルな歌やダンスが格好良いグループとは思っていたけど、彼が10年以上ラップ詞を担当し、ソロ作品も残していることは見落としていた。1曲目の”Marble”から、アルバムの最後を締める”Over The Moon”まで、個性豊かな楽曲が並んでいるが、そのどれもが、アメリカのヒップホップとは一線を画す、軽妙で洒脱なサウンドと、ウィットに富んだラップを軸に組み立てられている。彼の作品の面白いところは、ジャズやポップスのエッセンスを取り込み、従来のヒップホップの手法に捉われない、誰もが楽しめるポピュラー・ミュージックに仕上げながら、要所にヒップホップの演出を盛り込むことで、ヒップホップとして聴かせているところ。アメリカの背中を追いかけつつ、独自性を模索してきた日本のヒップホップの、一つの到達点と呼んでも過言ではない傑作。





番外編
ここからは、アルバム未収録のシングル曲から、特に記憶に残った曲を三つ

G.Rina - 想像未来 feat. 鎮座DOPENESS[plusGROUND, Victor]

こちらは東京出身の女性シンガー・ソングライター、G.リナの2017年作『Live & Learn』からリカットされた、配信限定のシングル。透き通った歌声と繊細なヴォーカルは、矢野顕子や土岐麻子のようなポップ・シンガーっぽくも聴こえるが、躍動感のあるグルーヴや豊かなヴォーカルの表現は間違いなくR&Bのもの。この曲でもロマンティックなメロディと、色っぽい歌声で、アップ・テンポなのにムーディーなR&Bを聴かせている。フリースタイルのスキルでも評価が高い、鎮座ドープネスのラップも、硬派な見た目からは想像できない、ウィットに富んだもので面白い。だが、本作の目玉はなんといってもT-グルーヴによるリミックス版。ザップを思い起こさせるファンク色の強い原曲を、四つ打ちのディスコ・ミュージックに違和感なく組み替える技は、圧巻としか言いようがない。異なるジャンルで活躍する三者の持ち味が上手く噛み合った、良質なコラボレーション曲。





Gallant & Tablo & Eric Nam – Cave Me In [Mind Of Genius, Warner Bros. Records]

2016年に発表されたアルバム『Ology』がグラミー賞にノミネートし、2017年は日本のフジ・ロックにも出演した西海岸出身のシンガー・ソングライター、ガラント。彼が今年の頭に発表したのが、エピック・ハイの中心人物、タブロとアメリカと韓国、両国を股にかけた活動を行ってる、マルチ・タレントのエリック・ナムとコラボレーションした”Cave Me In ”。彼の作品にもかかわったことがある、タイ・アコードの作るトラックは、シンセサイザーの音を幾重にも被せた神秘的なもの。その上で、どこか荒涼とした雰囲気のメロディを甘い歌声で聴かせる二人と、淡々と言葉を紡ぐタブロの姿が印象に残る佳曲。余談だが、タブロは韓国系カナダ人(契約は韓国のYGエンターテイメント)で、エリック・ナムは韓国系アメリカ人(契約は韓国のCJ E&M.)で、歌詞は全編英語でMVの撮影地は香港と、国際色豊かな点も、2017年っぽくて面白い。


Cave Me In
Mind of a Genius/Warner Bros.
2017-01-26

 

BTS - Mic Drop (Steve Aoki Remix) feat. Desiigner [Big Hit Entertainment RED Music]

11月の終わりに発表された曲ながら、最も聴いた作品。10月に発売されたEP『Love Yourself: Her』からのリカット・シングルで、韓国でこそ、シングル・チャートで最高23位、売り上げ8万ユニットと振るわなかったものの、アメリカではシングル・チャートの28位に入るなど、欧米を中心に盛り上がった曲。リミックスを担当したスティーブ・アオキは、今年の8月にリリースしたアルバム『Steve Aoki Presents Kolony』で、T-ペインやグッチ・メインといった人気ラッパーを多数起用して、ヒップホップ市場を意識する姿勢を見せていたが、R&B作品はこれが初。スティーヴらしい、刺々しい音色と高揚感のあるフレーズを組み合わせたトラックと、BTSの真骨頂ともいえる、複雑なギミックを盛り込んだ激しい歌とラップがうまく嚙み合った良作。ディスコ音楽のクリエイターを起用した、ピンク・レディーの”Kiss in the Dark”から28年、21世紀初のアジア人グループによるヒット曲は、現代のダンス・ミュージックの主流である、EDMとヒップホップを取り込んだものであるという点も面白い。







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