ブラック・ミュージック千本ノック~SoulとR&Bと色々な音楽~

管理人が手に入れたR&Bのアルバム、1000枚の紹介文を書き続けるブログ その先に見えるものは天国か地獄か・・・

Alternative R&B

Syd - Always Never Home [2017 The Internet, Columbia]

フランク・オーシャンタイラー・ザ・クリエイターなどを擁するオッド・フューチャーの一員として活動し、同クルーのメンバーでもあるマット・マーシャンと結成したバンド、ジ・インターネットでグラミー賞にもノミネートしているロス・アンジェルス出身のシンガー・ソングライター、シドことシド・バレット。

2017年には、ソロ名義では初のフル・アルバムとなる『Fin』コロンビアからリリース。全ての曲で彼女自身がペンを執る一方、ジ・インターネットの中でも特に先進的な作風で注目を集めているスティーヴ・レイシーや、ヒットメイカーのアンソニー・キルホッファーやヒット・ボーイなど、バラエティ豊かなクリエイターを起用。新しい音楽に敏感なファンや批評家から高く評価された。

その後も、シカゴ出身のラッパー、ヴィック・メンサや韓国のR&Bシンガー、ディーンの作品に客演するなど、様々なミュージシャンとコラボレーションを重ねてきた彼女。本作は、そんな彼女にとって前作から7ヶ月ぶりの新作となる3曲入りのEPだ。

このEPでも、過去の作品同様、彼女自身が全ての曲の制作に関わっている。しかし、共作者の顔ぶれは大きく変わっており、アムステルダム在住のクリエイター、フル・クレイトやジ・インターネットの元メンバーで、サンダーキャットの兄弟としても知られているジャミール・ブルーナなどが参加、新しいサウンドを積極的に取り入れている。

本作の1曲目は、ニッキーミナージュの”Anaconda”や モニカの”Call My Name”などを手掛けているブルックリン出身のプロデューサー、アノニマスを起用した”Moving Mountains”。アノニマスが手掛けてきた、モニカやシアラの作品のような、キラキラとしたシンセサイザーの音色を使ったトラックと、シドの語り掛けるような歌唱のコンビネーションが魅力のミディアム・ナンバーだ。流行のサウンドを使ったトラックは彼女の作品ではそれほど多くなかったので、逆に新鮮に感じられる。

続く、”Bad Dream / No Looking Back”は、ジョデシーの”What About Us”をサンプリングしたミディアム・ナンバー(余談だが、同曲はザップの”Computer Love”をサンプリングしているため、この曲のソングライターにはロジャー・トラウトマン達の名前も入っている)。ゾなどの作品に携わっているグウェン・バンとケンドリック・ラマードレイクを手掛けているリッチ・リエラの二人がプロデュースしたこの曲は、これまでの彼女の楽曲以上に抽象的なメロディが印象的。彼女が透き通った声で囁きかけるように歌う摩訶不思議なメロディと、随所に小技を仕込んだ陰鬱なトラックが光る佳曲だ。

そして、本作の最後を飾る”On the Road”は、フル・クレイトとジャミール・ブルーナが制作にかかわっている曲。テルミンのようなフワフワとした音色のシンセサイザーを使った浮遊感のあるトラックに乗って、地声を多用した重々しいヴォーカルを聴かせるダークな雰囲気のミディアム・ナンバー。曲の途中でビートを変えることで楽曲に起伏を付けつつ、曲の雰囲気に一貫性を持たせるヴォーカルとアレンジのテクニックは流石としか言いようがない。

この作品では、今まで組んだことのないプロデューサー(といってもジャミールはジ・インターネットの同僚だが)を迎えて、自身のスタイルをベースにしつつ、新しい曲調に挑戦している。シアラやモニカのようなシンセサイザーを多用した現代的なR&Bのサウンドに、ケンドリック・ラマーやドレイクが採用するような電子楽器を駆使したヒップホップ色の強いトラック、ケイトラナダやサンダーキャットのようなエレクトロ・ミュージック色の強いビートなど、色々な音を積極的に取り入れながら、しっかりと自分の色に染め上げる技術は、強烈な個性でのし上がった彼女にしかできないものだと思う。

ビヨンセやメアリーJ.ブライジとは違うアプローチで、自身の個性を確立した彼女の持ち味を発揮しつつ、新しい一面をしっかりとみせてくれた魅力的なEP。これは次回作も期待できそうだ。

Producer
Anonxmous, Gwen Bunn, Ricci Riera, Full Crate, Jameel "Kintaro" Bruner

Track List
1. Moving Mountains
2. Bad Dream / No Looking Back
3. On the Road






Tawiah - Recreate [2017 Lina Limo]

2000年代の中頃から、コリーヌ・ベリー・レイやギルモッツなどのバック・コーラスで経験を積み、マーク・ロンソンのツアーにバンド・メンバーとして帯同するなどして実力をアピールしてきた、サウス・ロンドン出身のシンガー・ソングライター、タビアンこと、ビバーリー・タビアン。

演劇や舞踏を扱うブリット・スクールでパフォーミング・アートを学んだ彼女は、学校を卒業したあと、ジョディ・ミリナーとの共作で初の録音作品となるEP『In Jodi's Bedroom』を発表。ソウル・ミュージックに電子音楽やヒップホップを癒合した作品が評価され、ジャイルズ・ピーターソンが主催する音楽賞で新人賞を獲得している。

その後も、自身名義の作品をリリースしながら、エリック・ロウやブラッド・オレンジ、ポール・オークンフォードやティエストなどの作品に客演。BBCのドキュメンタリー番組にも取り上げられるなど、ジャンルの枠にとらわれない活躍で、着実に知名度を上げていった。

このアルバムは、自身名義の作品としては2011年のシングル『Sweet Me』以来、約6年ぶりとなる新曲。彼女の作品では初めて、インディー・レーベルが配給を担当している。また、プロデューサーにはロックバンド、ヘジラのメンバーで、エイミー・ワインハウスやマシュー・ハーバートなどの作品にも携わっているサム・ベスタを起用。彼女自身も積極的にペンを執り、密度の濃い音楽を聴かせている。

イントロの後に収められた本作の実質的な1曲目”Queens”は、コンピュータを多用した抽象的なサウンドと抑揚を抑えた淡白な歌唱が印象的なミディアム・ナンバー。ピアノやギターの演奏を混ぜ込んで、アコースティックな音楽のように聴かせつつ、人間の演奏ではあまり用いない変則的なビートで楽曲に斬新な印象を与えている。

続く”Don't Hold Your Breath”は、ヘジラのアレックス・リーヴやパーソナル・ライフのネイザン・アレンなどを招き、バンド演奏によるバック・トラックを採用したミディアム・ナンバー。ドラム・ロールを多用した重々しいビートをバックに、繊細な声質を活かした慎重な歌唱を聴かせている。生演奏を取り入れつつ、電子音楽のようなシンプルで先鋭的な音楽に聴かせるスキルは圧巻のものだ。

また、これに続く”Falling Short”は、本作の収録曲で唯一、楽曲制作の全てを彼女一人で行ったもの。 電子音を組み合わせたトラックは、デビュー作の収録曲を彷彿させる。テンポや調を随所で変える奇抜なバック・トラックを器用に乗りこなしつつ、ビートにはヒップホップの、上物にはエレクトロ・ミュージックの、ヴォーカルにはソウル・ミュージックのエッセンスを取り入れ、独特の作品に落とし込んでいる。

そして、本作の最後を飾る”Move With Me”は、彼女の作品では珍しい、シンプルなアレンジでメロディをじっくりと聴かせるタイプの曲。シャーデー・アデューを思い起こさせる透き通った歌声を、流麗なメロディに乗せて丁寧に届ける姿が光る曲だ。

今回の作品では、実質4曲というEPの形態を取りながら、彼女の先鋭的な音楽センスや、ヒップホップやエレクトロ・ミュージックといった、様々な音楽への深い造形、そして、しなやかな歌声を活かした繊細な表現が高いレベルで融合している。その作風は、サンファホセ・ジェイムスといったジャズや電子音楽とソウル・ミュージックを組み合わせたスタイルで、黒人音楽に新しい解釈を加えたアーティストの系譜を継いだものだといっても過言ではない。その中でも、彼女の場合、ヒップホップやソウル・ミュージックではあまり用いない奇抜なアレンジも積極的に取り入れつつ、メロディをしっかりと聴かせている点が大きな特徴だと思う。

色々なスタイルのミュージシャンが混在し、融合し、互いに刺激を与えあいながら新しいスタイルを生み続けているイギリスのブラック・ミュージック界隈を象徴する斬新な作品。R&Bやヒップホップに野蛮とか古臭いというイメージを持っている人にこそ聴いてほしい。

Producer
Sam Beste, Tawiah

Track List
1. Recreate Intro
2. Queens
3. Don't Hold Your Breath
4. Falling Short
5. Move With Me




Recreate
Tawiah
Imports
2017-08-18

Daniel Caesar - Freudian [2017 Golden Child]

ドレイクパーティーネクストドアといったOVOサウンド発のアーティストのほか、ジャスティン・ビーバーのようなポップスターや、ケイトラナダのような通好みのクリエイターまで、多種多彩なアーティストを輩出し、ポップスの世界においてアメリカ、イギリスに匹敵する影響力を持っているカナダ。彼らの後を追うように、同国から世界に羽ばたこうとしているのが、シンガー・ソングライターのダニエル・シーザーことアシュトン・シモンズだ。

トロント出身の彼は、2014年にデビュー作となるEP『Praise Break』を発表すると、彼の生い立ちや恋愛経験が反映されたリアルな作風が評価され、アメリカの音楽誌、ローリングストーンが選ぶ同年のベストR&Bアルバム・トップ20に選ばれる。また、2016年に発表したシングル”Get You”は、大手ストリーミングサイトで2000万回以上再生される大ヒット。フィジカル・リリースの経験がないアーティストの作品としては異例の成功を収める。

このアルバムは、代表曲”Get You”を収めた彼にとって初のフル・アルバム。自身が設立したゴールデン・チャイルドから発売した配信限定の作品ながら、ドレイクなどの作品に携わってきたジョーダン・エヴァンスやマシュー・バーネットをプロデューサーに迎えつつ、全ての曲を彼自身が制作。H.E.R.やジ・インターネットのシドといった、通好みの女性R&Bシンガーや、カリ・ウチスのようなポップス畑の名手をゲスト・ヴォーカルに起用し、演奏はバッドバッドノットグッドが担当した、本格的なR&Bアルバムに仕上げている。

アルバムのオープニングを飾る彼の代表曲”Get You”は、コロンビア生まれの女性シンガー、カリ・ウチスをゲストに招いたスロー・ナンバー。マックスウェルディアンジェロを思い起こさせる音数の少ない伴奏をバックに、ベイビーフェイスやジョーを思い起こさせるしっとりとしたメロディを聴かせている。また、カリのキュートなヴォーカルが、ダニエルの繊細な歌声を引き立てている点も面白い。伴奏を担当するバッドバッドノットグッドの緻密で正確無比な演奏にも耳を傾けてほしい。

続く”Best Part”はRCAから発表した作品も話題のH.E.R.をフィーチャーしたスロー・ナンバー。きめ細かなギターの伴奏で幕を開けるこの曲は、シンセサイザーを使ったような太く重いトラックが印象的。線は細いが強くしなやかな歌声のH.E.R.が艶めかしいヴォーカルを披露しているので、思う存分堪能してほしい。

一方、インターネットのシドが参加した”Take Me Away”は、本作の収録曲では唯一、彼自身がセルフ・プロデュースした作品。90年代のヒップホップを連想させる、古いレコードから抜き出したような太く、温かい音色のビートをバックに甘い歌声を響かせている。シドのクールで透き通ったヴォーカルと、ダニエルの肉感的なパフォーマンスの組み合わせが楽曲に起伏を与えている。アリーヤとR.ケリーのコラボレーションを彷彿させる佳作だ。

そして、彼と同じカナダ出身のシンガー・ソングライター、シャーロット・デイ・ウィルソンを招いた”Transform”は、このアルバムでは珍しい、ロックの要素を取り入れた作品。力強いビートやシンセサイザーの伴奏など、ロックのバラードの要素を盛り込んだ伴奏をバックに、感情表現を控えめにした神秘的な歌唱を披露している。他のゲストとは一味違う、シャーロットのスマートなヴォーカルも楽曲に個性を与えている。

彼の音楽は、マックスウェルやラウル・ミドンのような、アコースティック楽器を多用した柔らかい音色の伴奏と繊細な歌唱、それに流麗なメロディを組み合わせたものだ。その作風は先人のものを踏襲しつつ、彼の人生や私生活を反映したリリックなどを盛り込むことで、ボブ・ディランのような往年のフォーク・シンガーが持つ生々しさも内包している。

メジャー・レーベルと契約していないにも関わらず、彼の音楽の完成度は極めて高い。ディアンジェロやマックスウェルのようなソウル寄りの音楽が好きな人はもちろん、ベイビーフェイスやジョーのような美しいメロディの作品が好きな人、ニルヴァーナやボブ・ディランのような、生々しい言葉を放つロックやフォーク・ソングが好きな人にもぜひ聴いてほしい魅力的な作品だ。

Producer
Daniel Caesar, Jordan Evans, Jordon Manswell, Matthew Burnett

Track List
1. Get You feat. Kali Uchis
2. Best Part feat. H.E.R.
3. Hold Me Down
4. Neu Roses (Transgressor's Song)
5. Loose
6. We Find Love
7. Blessed
8. Take Me Away feat. Syd
9. Transform feat. Charlotte Day Wilson
10. Freudian




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