melOnの音楽四方山話

オーサーが日々聴いている色々な音楽を紹介していくブログ。本人の気力が続くまで続ける。

Alternative R&B

Kali Uchis - Isolation [2018 Virgin, Universal]

カリ・ウチスことカリー・マリーナ・ロザリアは、コロンビアのペレイラ生まれ、ヴァージニア州のアレクサンドリア育ちのマルチ・タレント。

子供のころから、アメリカとコロンビアを往き来していた彼女は、ハイスクール時代からピアノやサックスを演奏し、ミックステープやミュージック・ビデオを制作するなど、早くから才能を発揮してきた。

そんな彼女は、2014年にスヌープ・ドッグのミックステープに客演したことで注目を集めると、同年には自身名義のオリジナル曲を発表。翌年には初のEP『Por Vida』をリリースし、タイラー・ザ・クリエイターケイトラナダといった、通好みのクリエイターを起用した、尖った作風が高く評価された。

このアルバムは、彼女にとって初のフル・アルバムであり、初のフィジカル・リリース作品。ユニヴァーサル傘下のヴァージン・レコードからのリリースで、全ての曲を彼女自身が制作。プロデューサーにはサンダーキャットゴリラズ、ケヴィン・パーカーなど、様々な地域、ジャンルのクリエイターを起用。R&Bを軸に、あらゆるジャンルの音楽を飲み込んだ、個性的な音楽を披露している。

本作の収録曲で真っ先に目を引いたのは、ジ・インターネットのスティーヴ・レイシーとコラボレーションした”Just A Stranger”。透き通った音色のシンセサイザーを使ったイントロは、シドの作品を連想させるが、そこから展開されるのは粗く、泥臭い音色のヒップホップ。また、この上に乗るメロディは、スライ&ザ・ファミリー・ストーンを彷彿させる爽やかで軽快なもの。ロックやファンクの要素を盛り込みつつ、ヒップホップに落とし込むレイシーの技術が光っている。

これに対し、ロス・アンジェルスを拠点に活動するクリエイター、ソーンウェーブをプロデューサーに招き、ジョージャ・スミスをフィーチャーした”Tyrant”は、シンセ・ベースを強調した躍動感あふれるグルーヴが心に残るミディアム。ファンクにもレゲエにも似ている独特のリズムが面白い。似ているようで微妙に違う声質の二人が披露する掛け合いのおかげで、楽曲に適度にメリハリがついている点も面白い。

また、コロンビア出身のレゲトン・シンガー、レイコンと組んだ”Nuestro Planeta”は、ルード・ボーイズが制作に参加したレゲトン・ナンバー。レゲトンといえば、中音域や低音域を強調したビートを使うことが多いが、この曲では華やかな高音に重きを置いた、ソカっぽいサウンドを取り入れている。二人の軽妙な掛け合いを盛り込んだヴォーカルを含め、ダディ・ヤンキー、ルイス・フォンシなどの作品とは一線を画した作りが魅力だ。

そして、『Por Vida』にも参加したバッドバッドノットグッドがプロデュースを担当、ゲスト・ミュージシャンとして、これまでにも彼女とコラボレーションしたことがある、タイラー・ザ・クリエイターとブーツィー・コリンズが参加した”After The Storm”は、本作では珍しい、甘いメロディのバラード。アイズレー・ブラザーズの”Between The Seats”を思い起こさせるしっとりとした演奏をバックに、可愛らしい歌声を聴かせている。絶妙なタイミングで入る、ブーツィー・コリンズのMCやタイラー・ザ・クリエイターのラップがロマンティックな雰囲気の楽曲を引き締めている。

この作品の面白いところは、ロックやファンク、レゲエの要素をふんだんに盛り込みながら、きちんとR&Bに落とし込んでいるところだ。ミニー・リパートンやシリータ・ライトの流れを組む繊細な歌声は、ビヨンセやリアーナのようなディーヴァとは対極なものだ。また、バック・トラックも所謂R&Bのものとは大きく異なるものだ。しかし、色々な音楽のエッセンスを取り入れつつ、要所要所をR&Bの手法で固めることで、きちんとR&Bに落とし込んでいる。この絶妙なアレンジ技術が、独創的な作風に繋がっているのだろう。

個性豊かなクリエイターを起用しつつ、彼らのセンスをきちんとコントロールすることで、斬新だが秋の来ない、完成度の高いアルバムに落とし込んだ稀有な作品。音楽以外の分野でも才能を発揮する彼女の鋭い感性が遺憾なく発揮された良作だ。

Producer
Kali Uchis, Thundercat, BadBadNotGood, Gorillaz, Rude Boyz, Sounwave etc

Track List
1. Body Language Intro
2. Miami feat. BIA
3. Just A Stranger feat. Steve Lacy
4. Flight 22
5. Teeth In My Neck
6. Tyrant feat. Jorja Smith
7. Dead To Me
8. Nuestro Planeta feat.Reykon
9. In My Dreams
10. Gotta Get Up Interlude
11. Tomorrow
12. Coming Home Interlude
13. After The Storm feat. Tyler, the Creator & Bootsy Collins
14. Feel Like A Fool
15. Killer





Isolation
Kali Uchis
Virgin Int'L
2018-04-13

Me'Shell NdegéOcello - Ventriloquism [2018 Naive]

1993年にマーヴェリックから初のスタジオ・アルバム『Plantation Lullabies』を発表、エリカ・バドゥやディアンジェロに先駆けて、ヒップホップとソウル・ミュージックを融合した独創的な音楽を披露し、世間の度肝を抜いた、ミシェル・ンデゲオチェロこと、ミシェル・リン・ジョンソン。

軍隊に務める父親が駐留していたドイツのベルリンで生まれ、ワシントンD.C.で育った彼女は、音楽学校を卒業後、地元のゴー・ゴー・バンドなどに在籍。92年にマドンナが設立したマーヴェリックと契約すると、得意のジャズ・ベースとヒップホップやソウル・ミュージックの要素を盛り込んだ音楽性で、直ぐに頭角を現す。

その後は、初のナンバー・ワン・ヒットとなるビル・ウィザーズのカヴァー”Who Is He (And What Is He to You)?”などをリリースする一方で、マドンナやチャカ・カーンといった大物ミュージシャンの作品にも参加。同業者から高い評価を受けるミュージシャンとして、知られる存在になった。

本作は、2014年の『Comet, Come To Me』以来、約4年ぶりとなる通算12枚目のスタジオ・アルバム。2011年の『Weather』以降、彼女の作品を配給しているフランスのインディペンデント・レーベル、ナイーヴからのリリースで、収録曲は彼女が慣れ親しんできた80年代から90年代のR&Bのカヴァー。本作の売り上げはアメリカ自由人権協会に寄付されることがアナウンスされるなど、これまでの作品とは一味違う、強いメッセージ性を持ったアルバムになっている。

本作の収録曲で、真っ先に目を引いたのは、プリンスが86年に発表したアルバム『Parade』に収められている”Sometimes It Snows In April”のカヴァー。奇抜なファッションと先鋭的なサウンドが魅力のプリンスの作品では珍しい、ギターを使った弾き語りの楽曲を、彼女はバンドをバックに歌っている。鋭く繊細なハイ・テナーを、シンプルなギターの演奏で引き立てたプリンス版に対し、ミシェル版では、バンド編成によるどっしりとした伴奏と、派手ではないが強烈な存在感のあるアルト・ヴォイスで淡々歌い上げている。

また、本作で取り上げた曲の中では最も新しい”Waterfalls”は、TLCが95年にリリースしたポップス史に残る大ヒット作『Crazy Sexy Cool』からのシングル曲。オーガナイズド・ノイズがプロデュースした、泥臭いヒップホップのビートと、「夢の滝を追いかけないで、近くにあるものを大切にして」というガールズ・グループっぽくないメッセージを含む歌詞で、ポップスの歴史にその名を刻んだ大ヒット曲を、ギターとドラムを軸にしたシンプルなバンドと一緒にカヴァーしている。武骨なメロディと強いメッセージ性が魅力の作品だからか、バンドをバックに歌うアレンジがよく似合っている。ギターを強調した演奏や、強烈なメッセージを含む歌詞は、ボブ・ディランのような往年のフォーク・シンガーにも通じるものがある。

それ以外の曲では、ニュー・エディションのラルフ・トレスヴァントが90年に発表した”Sensitivity”の大胆なアレンジに驚かされる。ニュー・ジャック・スウィングを取り入れたポップなトラックと、甘酸っぱい歌声を活かした切ないメロディが心地よいミディアム・ナンバーを、管楽器などを使って軽妙なニュー・オーリンズ・ジャズに組み替えた演奏は、都会的な雰囲気の原曲とは全く違う魅力を放ってる。

そして、ニューヨーク出身の4人組ヴォーカル・グループ、フォースMDsが85年に発売、翌年には映画「Krush Groove」のサウンドトラックにも収録された”Tender Love”は、カントリーの要素を取り込んだパフォーマンス。ジャム&ルイスがペンを執り、アッシャーアリシア・キーズ、バックストリート・ボーイズなどが歌っているスタイリッシュなバラードを、原曲とは正反対の路線にアレンジすることで、新鮮に聴かせる発想が光っている。

このアルバムで彼女が取り組んでいるのは、近年、再び注目を集めている80年代、90年代のR&Bに独自の解釈を加え、新しい音楽として生まれ変わらせたものだ。ブルーノ・マーズの『24K Magic』など、80年代、90年代のR&Bに触発された作品は多くのミュージシャンが発表しているが、80年代から音楽を仕事にし、90年代以降は自身の録音作品を継続的に発表している彼女は、当時の音楽を取り入れるだけでなく、咀嚼し、自分の音楽に還元することで作品の隠れた魅力を掘り起こしている。

本作の発売前に彼女自身が言及した、ブルーノ・マーズなどとは異なるアプローチで、往年のR&Bの魅力を引き出した面白いアルバム。演奏者の感性と技術によって、同じ楽曲でも色々な表情を見せることを教えてくれる好事例だ。

Producer
Jebin Bruni, Me'Shell Ndegéocello

Track List ([]内は原曲を歌ったアーティスト)
1. I Wonder If I Take You Home [Lisa Lisa & The Cult Jam feat. Full Force]
2. Nite And Day [Al B. Sure!]
3. Sometimes It Snows In April [Prince]
4. Waterfalls [TLC]
5. Atomic Dog 2017 [George Clinton]
6. Sensitivity [Ralph Tresvant]
7. Funny How Time Flies (When You’re Having Fun)[Janet Jackson]
8. Tender Love [Force MDs]
9. Don’t Disturb This Groove [The System]
10. Private Dancer [Tina Turner]
11. Smooth Operator [Sade]





VENTRILOQUISM
MESHELL NDEGEOCELLO
NAIVE
2018-03-16

Thundercat - Drank [2018 Brainfeeder]

サンダーキャットことステファン・ブルーナは、カリフォルニア州ロス・アンジェルス出身のベーシスト兼プロデューサー。

15歳のころからプロ・ミュージシャンとして活動し、エリカ・バドゥやフライング・ロータスの作品でも演奏。2011年に、自身名義では初となるスタジオ・アルバム『The Golden Age of Apocalypse』を発表すると、電子音楽にジャズやヒップホップの手法を盛り込み、最小限度の音数で、楽器の響きと音の隙間を効果的に聴かせた独特の作風で、多くの音楽ファンを唸らせた。

その後も、自身名義の作品を発表しながら、多くの人気ミュージシャンのアルバムに参加。ケンドリック・ラマーの『To Pimp a Butterfly』や『Damn』、NERD『No One Ever Really Dies』、カマシ・ワシントンの『Harmony Of Difference』など、先鋭的な音楽性で人気の作品に携わってきた。

本作は、2017年に発売した3枚目のスタジオ・アルバム『Drunk』のリミックス盤。90年代半ばにアメリカ南部の都市ヒューストンから広まった「チョップド&スクリュード」という手法を用いて、既存の曲に新しい表情を吹き込んできたオージー・ロン・シーと、彼が率いるチョップスターズのDJキャンドルスティックがリミックスを担当。多くの人に親しまれたアルバムに、ヒップホップの技術で新しい表情を吹き込んでいる。

本作の特徴を端的に示したのは、2曲目の”Drink Dat”。オリジナルが『Drunk』の17曲目に収録されているこの曲は、サンダーキャットの甘い声と、爽やかなラップを繰り出すウィズ・カリファのパフォーマンスが魅力のミディアム・ナンバー。チョップド&スクリュードの手法で加工されたサウンドは、何日も煮込まれたシチューのようにドロドロで、聴いているこちらもとろけそうなもの。音の足し引きは最小限に抑え、再生速度とエフェクトに工夫を凝らすだけで、全く違う曲に聴かせるテクニックは流石だと思う。

これに対し、大きくテンポを変えているにもかかわらず、聴き手に違和感を抱かせないアレンジを披露しているのが7曲目の”Tokyo”だ、『Drunk』ではベースの速弾きが格好良かったこの曲だが、テンポを落として弱めのエフェクトをかけたことで、ミディアム・テンポのスタイリッシュなR&Bに仕立てなおしている。この曲自体がオリジナル作品に聴こえるのは、原曲の高い完成度と、リミキサーの優れた技術おかげだろうか。

また、ファレルを起用した”The Turn Down”は、お馴染みのネプチューンズ・サウンドを使った軽快なトラックを、サイケデリックなスロー・ナンバーに落とし込んだ異色の作品。ドラムやシンセサイザーの音色では、ファレルのテイストを残しているが、遅いテンポのドロドロとしたトラックに改変している面白い曲だ。

そして、ケンドリック・ラマーをフィーチャーした”Walk On By”は、リズム・マシーンを使ったモダンなトラックと、サンダーキャットの繊細なヴォーカルが魅力のR&B作品だったが、この曲ではテンポを落として、じっくりと歌い込んだソウル・バラードのように聴かせている、繊細で滑らかなヴォーカルを丁寧に聴かせるアレンジは、ロナルド・アイズレーがバラーディアとして一時代を築いた、80年代のアイズレー・ブラザーズを思い起こさせる。

今回のアルバムは、既存の作品のテンポや響きに手を加えたもの。リミックス作品としては比較的シンプルなアレンジを施したものになっているが、原曲のイメージを残しながら、全く違う曲に聴こえるのは、「チョップド&スクリュード」との高い相性を見抜いた両者の嗅覚と、原曲の持つソウル・ミュージックやヒップホップ、ジャズのテイストと、電子音楽の醍醐味である、楽器の響きと音の隙間を活かしたアレンジによるものが大きいと思う。

オリジナル曲に対する鋭い視座と、それを具体的な作品に昇華する技術が揃ったことで生まれた良質なリミックス作品。リミックスやカヴァーといった、既存の作品を利用する音楽を扱うミュージシャンが、どのようにして原曲と向き合っていくか、考える一助になりそうな良盤だ。

Producer

Flying Lotus, Sounwave, Thundercat

Remixer
DJ Candlestick, OG Ron "C"

Track List
1. Rabbot Hoe (Chopnotslop Remix)
2. Drink Dat (Chopnotslop Remix) feat. Wiz Khalifa
3. Lava Lamp (Chopnotslop Remix)
4. Weakstyle (Chopnotslop Remix)
5. Show You The Way (Chopnotslop Remix) feat. Kenny Loggins, Michael McDonald
6. Where I'm Going (Chopnotslop Remix)
7. Tokyo (Chopnotslop Remix)
8. Uh Uh (Chopnotslop Remix)
9. Inferno (Chopnotslop Remix)
10. Them Changes (Chopnotslop Remix) 11. I Am Crazy (Chopnotslop Remix)
12. 3AM (Chopnotslop Remix)
13. Jethro (Chopnotslop Remix)
14. The Turn Down (Chopnotslop Remix) feat. Pharrell
15. Walk On By (Chopnotslop Remix) feat. Kendrick Lamar
16. Day & Night (Chopnotslop Remix)
17. A Fan’s Mail (Tron Song Suite II) (Chopnotslop Remix)
18. Jameel’s Space Ride (Chopnotslop Remix)
19. Captain Stupido (Chopnotslop Remix)
20. Friend Zone (Chopnotslop Remix)
21. Bus In These Streets (Chopnotslop Remix)
22. DUI (Chopnotslop Remix)
23. Blackkk (Chopnotslop Remix)
24. Drunk (Chopnotslop Remix)




Drank
Thundercat
Brainfeeder
2018-03-16

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