ブラック・ミュージック千本ノック~SoulとR&Bと色々な音楽~

管理人が手に入れたR&Bのアルバム、1000枚の紹介文を書き続けるブログ その先に見えるものは天国か地獄か・・・

演奏形態別

Two Jazz Project & T-Groove - COSMOS 78 [2017 LAD Publishing & Records]

探偵小説などを書いている、マルセイユ出身の小説家でデザイナーのエリック・ハッサンと、ベースやギターの演奏家であるクリスチャン・カフィエロによる音楽ユニット、トゥー・ジャズ・プロジェクト。そして、八戸出身、東京在住の音楽プロデューサー、ユウキ・タカハシによる音楽プロジェクト、T-グルーヴ。両者によるコラボレーション作品。

結成から10年を超え、『Hot Stuff』や『Experiences』といった、ジャズや電子音楽、ソウル・ミュージックなどを融合した、独創的なスタイルの傑作を残してきたトゥー・ジャズ・プロジェクトと、日本在住の若いクリエイターでありながら、UKソウル・チャートの2位を獲得したトム・グライドの“Party People”や、サン・ソウル・オーケストラの”Can't Deny It”のアレンジやリミックスに携わり、自身の名義でもソーシー・レディをフィーチャーした”Spring Fever”などのヒット曲を残しているT-グルーヴ。

これまでにも、いくつかの作品を一緒に録音してきた彼らのEPは、「ファンタスティック・レトロ・フューチャリスト・ファンク・オデッセイ」をテーマにしたコンセプト・アルバム。制作にはトゥー・ジャズ・プロジェクトの楽曲でも素敵なパフォーマンスを披露してきた、女性シンガーのマリー・メニーとサックス奏者のディダーラ・ラ・レジー、T-グルーヴの作品で躍動感溢れるベースを聴かせてくれたタカオ・ナカシマも参加。隙の無い強力な布陣でクールなダンス・ミュージックを作り上げている。

本作に先駆けて発表された”Night Flight”は、オクラホマ州出身のシンガー、エノイス・スクロギンスをフィーチャーした曲。フランスのディスコ音楽レーベル、ブーギー・タイムスからデビューするなど、ヨーロッパでの知名度が高い彼は、これまでにも2016年のシングル『Soho Sunset 』、2017年のシングル『Funky Show Time』などで共演している旧知の間柄。自身の作品ではグラマラスでファンキーな歌唱が魅力のエノイスだが、この曲ではバリー・ホワイトを彷彿させる優雅な歌声を聴かせてくれる。マリーの透き通った歌声と絶妙なタイミングで入り込むディダーラのサックスも格好良い。

これに続く”Space Machine”は、マリーがメイン・ヴォーカルを担当。ハウス・ミュージックのような四つ打ちのビートや、シンセサイザーを多用した伴奏は、ドナ・サマーの”I Feel Love”のような、黎明期のテクノ・ミュージックを彷彿させる楽曲。ディム・ファンクやダフト・パンクなど、70年代や80年代のディスコ音楽を咀嚼した作品を発表しているミュージシャンは少なくないが、ハイ・エナジーの要素を取り入れた曲は珍しい。

また”Passion”は、ピアノっぽい音色のキーボードを活かしたトラックが、ロリータ・ハロウェイのようなハウス・ミュージック寄りのディスコ音楽を連想させる佳曲。涼しげな声でメロディを歌いながら、曲間では急に色っぽい声を出すマリーの意外な一面が面白い。

そして、本作唯一のインストゥルメンタル作品”Cosmos 78”はニュー・オーダーの”Blue Monday”を思い起こさせるロー・ファイな電子音が格好良いテクノ色の強い曲。電子音とファンク寄りの太いベースを一つの音楽に組み合わせる技術が光っている。

アルバムの最後を飾るのは、マリーがヴォーカルを担当した”You Are My Universe”。温かい音色のキーボードやサックスを効果的に使ったサウンドは、ディミトリ・フロム・パリのような、きらびやかでおしゃれな雰囲気のハウス・ミュージックの影響も垣間見える。マリーの豊かな声量と表現力も見逃せない。

彼らの音楽の醍醐味は、機械を使った精密なビートと、ギターやキーボード、パーカッションといった人間が演奏する楽器を組み合わせながら、それを一つの音楽に落とし込むセンスだと思う。それが可能なのは、各人の技術の高さと感性の鋭さによる部分が大きいが、その中でも、ギターやベースを担当する、クリスチャン・カフィエロやタカオ・ナカシマによるダイナミックかつ緻密な演奏が、機械を使ったビートと人の手による生演奏を一体化するのに大きく貢献していると思う。また、各人の演奏を一つの作品に纏め上げる、録音、編集技術の妙も大きいだろう。

ダフトパンクやマークロンソンなど、70年代、80年代のディスコ音楽を意識した作品を発表するアーティストがひしめき合うなか、楽器の演奏と機械のビートを組み合わせた、モダンでファンキーな作風で、彼らとは一味違う「21世紀のディスコ音楽」を提示してくれた傑作。ディスコ音楽やクラブ・ミュージックが好きな人なら、思わずニヤリとしてしまう演出が盛り沢山の面白いアルバムだ。一つでも気になる曲があったら、ほかの作品も手に取ってほしい。そのクオリティの高さに驚くと思う。

Producer
Yuki T-Groove Takahashi & Two Jazz Project

Track List
1. Night Flight feat. Enois Scroggins & Marie Meney & Didier La Regie
2. Space Machine feat. Marie Meney & Didier La Regie
3. Passion feat. Marie Meney & Didier La Regie
4. Cosmos 78
5. You Are My Universe feat. Marie Meney & Didier La Regie




COSMOS 78
LAD Publishing & Records
2017-05-12

Deni Hines - Soul Sessions [2016 Bitchin' Productions]

70年代から80年代にかけて多くのヒット曲を残したシンガー、マルシア・ハインズを母に持ち、自身も早くからバック・コーラスやR&Bグループ、ロックメロンズなどの活動で頭角を現してきた、シドニー出身のシンガー・ソングライター、デニ・ハインズことデニ・シャロン・ハインズ。

90年代に入ると、オーストラリアのインディペンデント・レーベル、マッシュルーム・レコードと契約。同レーベルから96年に発表したソロ・デビュー曲”Imagination”と、同曲を収めたフル・アルバムが各国でヒットした。特に、アルバムはイアン・グリーンやマーティン・ウェアといった英国の有名プロデューサーを起用し、ロンドンで録音されたこともあり、UKソウルの傑作と評されることもあった。

その後は、2015年までに2枚の編集盤を含む5枚のアルバムを発売。2006年には母マルシアとのデュエット曲”Stomp”を発表して話題を読んだ。また、2008年以降はツアーと並行してテレビ番組などの仕事も担当。母同様、様々な分野で活躍していた。

そして、彼女にとって10年ぶりの新作となるこのアルバム。2006年にリリースしたジェイムス・モリソンとのコラボレーション作『The Other Woman』以来となる新作は、新旧のソウル・クラシックと、彼女が過去に発表した曲。そして新曲を含んだもの。オーストラリア国内のスタジオで、同国のミュージシャン達と録音した本作は、人間にしか出せない繊細な表現と、彼女のダイナミックな歌唱が光る本格的なソウル作品になっている。

アルバムのオープニングを飾るのは、テキサス州フォート・ワース出身のサックス奏者、キング・カーティスの67年のヒット曲”Memphis Soul Stew”と、ルーファス&チャカ・カーンが74年に発表した大ヒット曲”You Got The Love”のメドレー。ワイルドで泥臭いサウンドが魅力の前者で、往年のソウル・ミュージックを懐かしむ人達の心を惹きつけながら、洗練されたサウンドとパワフルなヴォーカルで彼女達の世界へと一気に引き込む構成に圧倒される。彼女の歌は、10年の時を経て、さらに進化したようだ。

そして、これに続く”What About Love”は、アルバムに先駆けて発表された彼女の新曲。力強いドラムの演奏から始まる曲は、スライ&ザ・ファミリー・ストーンの”Everyday People”を彷彿させる、軽快な演奏が心地よいアップ・ナンバー。ポップなメロディを力強い歌唱で本格的なソウル・ミュージックに生まれ変わらせるデニのヴォーカルも魅力的。

また、2017年にシングル化されたもう一つの新曲”I Got Your Back”は、彼女がロックメロンズ時代にカヴァーしたビル・ウィザーズや、彼と同じ時代に活躍したジャクソン5などを思い起こさせる、ポップで柔らかい音色の伴奏と、ふくよかで滑らかな歌声が心地よいミディアム・ナンバー。しなやかなメロディのR&Bや、パワフルな歌声を響かせるバラードが多かった彼女なので、この曲で見せるチャーミングな歌声はちょっと意外に感じる。

だが、本作の主役はなんと言ってもカヴァー曲。アレサ・フランクリンの”Rock Steady”や、その妹アーマ・フランクリンの”Piece of My Heart”といった、女性歌手が歌うソウル・クラシックから、ホイットニー・ヒューストンの”Exhale”や、ジル・スコットの”A Long Walk”のような、比較的最近のシンガーの曲、そして、マイケル・ジャクソンの”P.Y.T. (Pretty Young Thing)”やスティーヴィー・ワンダーの”Jesus Children of America”といった男性シンガーの曲まで、幅広く取り上げている。いずれの曲も、器用な歌唱と力強い歌声、彼女を支えるバンド・メンバーのテクニックが光っているが、この中でも特に強烈な印象を残したのが、マイケル・ジャクソン”P.Y.T. (Pretty Young Thing)”のカヴァー。2002年にモニカが”All Eyes On Me”でサンプリングで再び脚光を浴びた、ポップで軽快なダンス・ナンバーだが、彼女は原曲の雰囲気を損ねることなく。グラマラスな歌声でパワフルに歌い上げている。

今回のアルバムでは、ソウル・クラシックス、90年代以降のR&B、ポップス寄りの曲、そして自身の曲をバランスよく選んで、曲調にバラエティを持たせつつ、名うての演奏者達による伴奏で、楽曲に安定感と豊かな表情を与えている。そして、最大の強みは彼女のヴォーカル。デビュー当時から芯の強く、しなやかな歌声が魅力的だったが、ジャズに取り組むなど、キャリアを重ねる中で、その表現の幅は大きく広がり、ディープなソウル・ナンバーや軽快なディスコ音楽まで、あらゆる音楽を自分の色に染め上げられる技を獲得している。

年齢を重ねるごとに、新しい一面を見せ続ける、ベテラン・ディーヴァの本領が発揮された佳作。原曲を知る人にも知らない人にも楽しめる、新しいタイプのカヴァー・アルバムだ。

Producer
Insider Trading & Eddie Said

Track List
1. Memphis Soul Stew / You Got The Love
2. Rock Steady
3. What About Love [Album Version]
4. P.Y.T. (Pretty Young Thing)
5. I Got Your Back
6. Been So Long
7. Exhale
8. A Long Walk
9. Runnin'
10. Piece of My Heart
11. Jesus Children of America
12. If





ザ・ソウル・セッションズ
デニ・ハインズ
Pヴァイン・レコード
2016-11-16


Snoop Dogg - Never Left [2017 Doggystyle, Empire]

92年に、元NWAのドクター・ドレがプロデュースしたシングル『Deep Cover』でデビュー。同年にはドレのソロ・デビュー・アルバム『The Chronic』からの先行シングル『Nuthin' but a "G" Thang』にフィーチャーされ、ゆったりとした雰囲気で飄々と言葉を繋ぐラップと、独特の存在感が注目を集めた、カリフォルニア州ロングビーチ出身のラッパー、スヌープ・ドッグことカルバン・ブローダス。

翌93年には、自身の名義では初のアルバム『Doggystyle』を発表すると、P-ファンクなどから影響を受けた、シンセサイザーの音色を多用したスタイル、G-ファンクが大ヒット。ドレや2パックの作品ともに、ヒップホップ界に一大ブームを巻き起こした。その後は、複数のレーベルに移籍しながら、14枚のソロ・アルバムと7枚のユニット名義、コラボレーション作品をリリース。バトルキャットやディム・ファンクのような西海岸出身のミュージシャンだけでなく、ウォーリン・キャンベルのようなヒップホップ以外のジャンルを得意とするプロデューサー、ファレル・ウィリアムスやデヴィッド・ゲッタのような独創的なスタイルで業界を牽引するトレンド・セッターなど、様々なアーティストとコラボレーションしてきた。

今回のアルバムは、前作からわずか10か月という短い間隔で発表された、通算15枚目のソロ・アルバム。前作に引き続き、彼が設立したドギースタイル・レコードからのリリースだが、本作はエンパイアからの配給になっている。

本作を聴いて最初に驚かされるのは、ウータン・クランが93年に発表した有名曲”C.R.E.A.M.”をサンプリングしたタイトル・トラック”Neva Left”だ。チャルマーズの”As Long as I've Got You”のフレーズを引用したトラックは、ドレイクやザ・ゲームなど、多くのミュージシャンに使用され、2006年にはファンク・バンドのエル・ミッチェル・アフェアにカヴァーされている。このビートを、彼はいつもと同じ調子で軽々と乗りこなしている。『DoggyStyle』と同じ年に発表された、東海岸のヒップホップを代表する名曲を、自分の色に染め上げる姿からは、どんなトラックを前にしてもぶれない彼の確かな個性を伺わせる。

また、2016年のアルバム『Coolaid』では最後を締める”Revolution”に起用され、同年にリリースしたEP『Color Blind: Love』も注目を集めたシンガー、オクトーバー・ロンドンが参加した”Go On”も見逃せない曲だ。古いリズム・マシンっぽい音色を使った、ゴム毬のように跳ねるビートの上で、しなやかなファルセットを響かせるオクトーバー・ロンドンの姿が、”Sexual Healing”を歌うマーヴィン・ゲイを彷彿させる。楽曲の大部分をオクトーバー・ロンドンが歌っており、スヌープは脇役に徹しているが、期待の若手を引き立てつつ、しっかりと自分の存在をアピールするスヌープのラップに、ベテランの余裕と後進に向ける温かい目を感じる。

一方、本作で異彩を放っているのがカナダ出身の4人組ジャズ・バンド、バッドバッドノットグッドと、同国育ちのクリエイター、ケイトラナダのコラボレーション曲”Lavender(Nightfall Remix)”だ。といっても、実はこの曲、バッドバッドノットグッドが2016年にリリースしたアルバム『IV』に入っている同名曲を再構成して、スヌープのラップを乗せたもの。スマートで洗練された4人の演奏と、スヌープ・ドッグの飄々としたラップの相性が素晴らしい。なんとなくだが、バッドバッドノットグッドの出す音色と、G-ファンクのローファイで線の細いサウンドが、似ているように感じるのは自分だけだろうか。

そして、個人的には最も意外だった曲が、チャーリー・ウィルソンとティーナ・マリーをフィーチャーした”Vapors”のリミックス・ヴァージョンだ。96年のアルバム『Tha Doggfather』からシングル・カットされたこの曲は、DJバトルキャットの手によって、スクラッチなどの様々な音色が加えられ、複雑な作りのトラックが魅力の曲に仕上がっている。彼の滑らかなラップを活かしつつ、音数の少ないシンプルなビートの原曲とは真逆のトラックを提示したバトルキャットのテクニックが光っている。

今回のアルバムでも、近年の作品同様、様々なスタイルのトラックを揃えながら、どんなビートを前にしても調子を崩すことなく、何時もと同じラップで自分の色に染め上げている。どれだけ一つのスタイルにこだわっても、マンネリ化しないのは、ラッパーにとって難易度が高い、斬新なビートにも果敢に挑んでいるからだろう。

最早、彼のトレード・マークといっても過言ではない、独特のラップ・スタイルを使って、新しいトラックを自分の音楽に染め上げた作風が光る、ベテランらしい安定感と貫禄のある作品。90年代のスヌープを知る人には、新しい音楽に触れるきっかけとして、当時の彼を知らない人には、90年代のヒップホップを知る術として、最適な1枚だと思う。

Producer Dr. Evo, DJ Mustard, DJ Official, Dr. Dre, Musik MajorX, League Of Starz, Rick Rock, Snoop Dogg etc

Track List
1. Neva Left
2. Moment I Feared feat. Rick Rock
3. Bacc In da Dayz feat. Big Tray Deee
4. Promise You This
5. Trash Bags feat. K Camp
6. Swivel feat. Stresmatic
7. Go On feat. October London
8. Big Mouth
9. Toss It feat. Too Short and Nef the Pharaoh
10. 420 (Blaze Up) feat. Devin the Dude, Wiz Khalifa and DJ Battlecat
11. Lavender (Nightfall Remix) feat. BadBadNotGood and Kaytranada
12. Let Us Begin feat. KRS-One
13. Mount Kushmore feat. Redman, Method Man and B-Real
14. Vapors (DJ Battlecat Remix) feat. Charlie Wilson and Teena Marie
15. Still Here
16. Love Around the World feat. Big Bub





Neva Left [Explicit]
Doggystyle Records / EMPIRE
2017-05-19

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