ブラック・ミュージック千本ノック~SoulとR&Bと色々な音楽~

管理人が手に入れたR&Bのアルバム、1000枚の紹介文を書き続けるブログ その先に見えるものは天国か地獄か・・・

R&B

Plaza - Shadow [2017 OVO Sound, Warner]

ドレイクパーティネクストドアといった人気アーティストが所属し、世界中の音楽ファンの関心をカナダに向けさせた、トロントに拠点を置くOVOサウンド。彼らのほかにも、ロイ・ウッズやマジッド・ジョーダンなど、実力に定評のある若手を数多く擁する同レーベルが、新たに送り出したのがトロント出身のシンガー、プラザだ。

6月10日のラジオ番組で契約を発表。その二日後にデビュー作『Shadow』を発表した彼は、2016年2月に契約したdvsn以来の新人。本名や年齢など、細かい情報は不明だが、声やアーティスト写真を見る限り、かなり若い男性シンガーのようだ。

このアルバムは、彼のメジャー・デビュー作となる5曲入りのEP。2016年に自主制作で発表したEP『One』以来となる新作で、前作同様、彼の中性的で美しいテナーが堪能できるR&B作品になっている。

1曲目に収められている”Karma”は、ピアノにもオルゴールにも似ている、切ない音色を使った伴奏が印象的なミディアム・バラード。繊細なテナー・ヴォイスが楽曲の物悲しい雰囲気を強調している。甘酸っぱいヴォーカルはテヴィン・キャンベルにも似ているし、ファルセットはマックスウェルっぽくも聴こえる。また、シンセサイザーを使ってヒップホップの要素を盛り込んだトラックはレーベルの先輩、パーティネクストドアを彷彿させる。デビュー作の1曲目にふさわしい、初々しい歌唱が魅力的だ。

続く”Personal”は、ビートを強調したトラックと、中音域を多用した大人っぽいヴォーカルが素敵なミディアム・ナンバー。コンピューターを使って作った、ヒップホップのビートとシンセサイザーの伴奏を組み合わせたトラックはトレイ・ソングスなどの楽曲に、爽やかな中音域を多用したヴォーカルはソーモに少し似ている。

そして、3曲目の”Over”は”Personal”同様、ヒップホップ色の強いトラックが印象的なミディアム。シンセサイザーの音を重ねた上物は、シャーデーなどの作品を思い起こさせる神秘的なものだ。硬い声質でラップをするように歌う姿は、アンダーソン・パックに通じるものがある。

また、”Run This”はヒップホップ色の強いトラックだが、ファルセットを多用したロマンティックなヴォーカルが光るミディアム・バラード。柔らかい声で切々と歌う姿はBJザ・シカゴ・キッドやスモーキー・ロビンソンに通じるものがある。ポップで聴きやすいが、切ない雰囲気も醸し出している素敵な曲だ。

そして、アルバムの最後を飾る”Love You Again”は、重いビートと物悲しい雰囲気のメロディの組み合わせが印象的なミディアム。性別は違うが神秘的で繊細なヴォーカルはインターネットのシドにも似ている。メロディを丁寧に歌う姿が光る曲だ。

今回のEPを聴く限り、彼はドレイクやパーティネクストドアのような、歌とラップを使い分ける人ではなく、ロイ・ウッズのような歌だけで勝負していくアーティストのようだ。年齢などはわからないが、若さ溢れる爽やかな歌声と、色々な表情を見せる歌唱力は、スモーキー・ロビンソンやマイケル・ジャクソンにも通じる稀有なものを感じさせる。また、トラックは奇抜なものが少なくシンプルで、彼の歌唱力をアピールするのに一役買っている。ドレイクやパーティネクストドアを聴いた時の新鮮さと、トレイ・ソングスやエリック・ベネイのような本格的なヴォーカルを楽しめる本作は、歌とラップを使い分けるアーティストが増えた現代では、とても新しい音楽に聴こえる。

ラップと歌を使い分けるスタイルで、世界中のミュージシャンに新しい表現手法を提示したドレイクとは正反対のアプローチで、音楽の面白さを提案した佳作。次はどんな曲を聴かせてくれるのか、今から楽しみな気鋭の新人だ。

Track List
1. Karma
2. Personal
3. Over
4. Run This
5. Love You Again





a

OVO Sound/Warner Bros.
2017-06-12

PARTYNEXTDOOR - Colour 2 EP [2017 OVO Sound, Warner]

ジャマイカ系の母とトリニダード系の父の間に生まれ、10代の頃から音楽活動を行っていた、オンタリオ州ミンサガ出身のシンガー・ソングライター、パーティネクストドアことジャーロン・アンソニー・ブラストウェイト。

インターネット上に公開した自作曲やミックステープが高い評価を受け、彼と同じカナダ出身の人気ミュージシャン、ドレイクが率いるOVOと契約。同レーベルの作品を配給しているワーナーからのメジャー・デビューを果たした。

OVOと契約した後は、2016年までに2枚のフル・アルバムと2枚のEPをリリース。それ以外にも多くの曲にフィーチャリング・アーティストやソングライターとして参加してきた。なかでも、2016年に発売した2枚目のアルバム『PartyNextDoor 3』は、アメリカとイギリスのR&Bチャートを制覇(アメリカではヒップホップチャートでも1位)。同作からシングル・カットされた”Come and See Me”はグラミー賞やビルボード・ミュージック・アワードにもノミネートするなど、破竹の勢いで音楽業界の頂点へと昇り詰めていった。

今回のEPは、自身の名義では『PartyNextDoor 3』以来、約1年ぶりとなる新作。もっとも、今年に入ってからも、元ワン・ダイレクションのゼインのシングル”Still Got Time”や、ドレイクのアルバム『More Life』に収録されている”Since Way Back”に客演し、ビヨンセとジェイZをフィーチャーしたDJキャレドのシングル”Shining”にソングライターとして参加するなど、精力的に活動していた彼だけに、予想以上に短い間隔で作られた印象すらある。

プロデュースは、彼とG.ライを中心に、前作にも携わっているニーンヨや40、ドレイクの『More Life』にも起用されたウォリス・レインやマージなどが参加。OVOとゆかりの深い面々が揃った、小粒だが味わい深い作品になっている。

アルバムの1曲目に収められている”Peace of Mind”は、ジャーロンとG.ライに加え、オズが制作に参加。チキチキというビートに、幻想的なシンセサイザーの上物が加わったトラックが、不思議な雰囲気を醸し出しているミディアム・ナンバーだ。ジャーロンは歌に専念しているものの、まるでミュージカルのように歌と言葉を使い分け、ラップとは違った形で、楽曲に起伏をつけている。ディアンジェロの抽象的なソウル・ミュージックと、マックスウェルの滑らかなメロディ、ドレイクのキャッチーで斬新なヒップホップが融合した面白い曲だ。

続く”Freak In You”は、ニーンヨやトップ・フレアなどが制作に携わった曲。オルゴールのような音色など、ロマンティックな音を詰め込んだトラックと、ジョデシーの”Come And Talk To Me”など、色々なR&Bのヒット曲からフレーズを引用しながら、落ち着いたメロディでじっくりと歌を聴かせる姿が印象的。サビ以外の部分のメロディを、ラップのように崩して歌うことで、ヴォーカルの表現の幅を広げている。ドゥー・ヒルやジャギド・エッジのような、90年代に多くの足跡を残したR&Bシンガー達のスタイルを取り入れながら、しっかりと2017年の自分の音楽に落とし込んでいる佳曲だ。

そして、トップ・フレアとマージが携わっている”Low Battery”は、ドレイクの”Passionfluit”を思い起こさせる、ハウス・ミュージックのビートを使ったアップ・ナンバー。”Passionfluit”は色々な音色を使い分け、カリプソなどを連想させる陽気で華やかな作品に纏め上げていたが、こちらは引き締まった低音と、しなやかなメロディが印象的な、洗練された雰囲気の曲。シンプルなトラックで彼の歌声を引き立てる手法が格好良い。多彩なビートに対応しつつ、きっちりと自分の曲に落とし込む制作技術が光っている。

そして、アルバムの最後を飾る”Rendezvous”は、『More Life』で”Nothings Into Somethings”を担当したウィリス・レーンとの共作。この曲も”Nothings Into Somethings”同様、スローテンポの曲で、歌い手のセクシーな一面を引き出す、艶めかしいメロディが特徴的。声域の幅が広く、声も太いだけでなく、ファルセットを多用したメロディからラップまでこなせる器用さを兼ね備えた彼との相性は抜群で、要所要所で色っぽいヴォーカルを聴かせながら、ラップや地声でしっかりと曲を引き締めている。

今回のアルバムは、前作の路線を踏襲した、音数の少ないトラックと、所々にラップを挟み込んで、滑らかな歌を際立たせたメロディが印象的なものだ。そのスタイルは、直近の客演仕事やソングライターとして携わった作品とは異なるものだが、ヴォーカルとして恵まれた声と技術を持ち、ラップもこなせる彼にとっては、本作のような曲が最適だと思う。また、前作と比べると、メロディが流麗でしなやかになっている。このように、自分の持ち味を生かしつつ、それにあった曲を作る技術に磨きをかけたところが、本作の面白いところだろう。

曲作りから歌やラップまで、なんでもこなせるパーティネクストドアの、更なる成長を感じさせる作品。レーベルのボス、ドレイクと並んでカナダを代表するミュージシャンになる日も近いと感じさせる。魅力的なR&B作品だ。

Producer
PARTYNEXTDOOR, G. Ry, OZ, Neenyo, 40, Top FLR, M3rge, Wallis Lane

Track List
1. Peace of Mind
2. Freak In You
3. Low Battery
4. Rendezvous






COLOURS 2 [Explicit]
OVO Sound/Warner Bros.
2017-06-03


Ella Mai - Ready [2017 Interscope Records]

サウスウエスト・ロンドンに生まれ、12歳の時にニューヨークへ移住。高校卒業とともに再度渡英したという、異色の経歴を持つシンガー、エラ・マイ。高校卒業後は、3人組のヴォーカル・グループを結成。イギリスの人気オーディション番組「Xファクター」に挑戦するが、あえなく落選。その後は、グループを解散し、彼女はソロに転向。音楽配信サイトに自作曲を投稿するなど、地道な活動を続けていた。

そんな彼女の活動が、タイガの”Rack City”やジェレミーの”Don't Tell 'Em”などを手掛けてきた、ロス・アンジェルス出身のプロデューサー、DJマスタードの目に留まり、2016年に彼が経営する10サマーズと契約。同じ年に6曲入りのEP『10Times』を発表して、配信限定だがレコード・デビューを果たした。

今回のアルバムは、2016年に発表された2作目のEP『Change』から、僅か3か月という短い間隔でリリースされた、彼女にとって通算3枚目のEP。過去2作品同様、配信限定のリリースだが、ユニヴァーサル系列のインタースコープが配給し、プロデュースはDJマスタードが担当。ソングライターには、ブリトニー・スピアーズの作品にも携わっているタライ・ライリーや、ジル・スコットの曲も書いているジャミール・ロバーツが参加し、彼女も全ての曲でペンを執っているなど、有名アーティストのアルバムにも見劣りしない力作になっている。

アルバムのオープニングを飾る”Boo'd Up”は、80年代のベイビーフェイスの作品を思い起こさせる、煌びやかな音色のシンセサイザーを使ったトラックと、彼女の甘い歌声を活かしたロマンティックなメロディが印象的なミディアム・ナンバー。レコーディング時点で27歳だった彼女の若く溌剌とした歌声と、色っぽい歌唱が光っている。80年代、90年代っぽい音色を使いながら、現代風の爽やかなメロディを取り入れている点も面白い。

続く”Breakfast in Bed”は、リアーナやシャンテ・ムーア等の作品に携わってきた、ニック・アウディノが参加した作品。トラックに使っている音色は”Breakfast in Bed”と似ているが、伴奏の音数を絞って、ビートを強調した、ヒップホップに近い曲。DJマスタードのトラック制作技術と、ニック達の美しいメロディを生むスキルが合わさった、心地よいミディアム・ナンバーだ。

そして、”Nobody Else”は自身の声をサンプリングしたフレーズから始まるミディアム・ナンバー。地声を多用した落ち着いた雰囲気のヴォーカルが、メアリーJ.ブライジやリアーナを思い起こさせる。ゴードン・チェンバースの手による流麗なメロディも、彼女のしなやかな歌声の魅力を引き出している。

また、ロー・ジェイムズやマイリー・サイラスなどの作品にかかわってきた、サミュエル・ジーンがソングライターに名を連ねている”My Way”は、煌びやかなシンセサイザーの音色を使ったロマンティックなミディアム・ナンバー。一方、”Breakfast in Bed”でも作者に名を連ねている、ニック・アウディノがペンを執った”Makes Me Wonder”は甘酸っぱいメロディが印象的なミディアム・ナンバー。彼女の若々しい一面が堪能できる佳曲だ。

そして、本作のハイライトが、アッシャーやメアリーJブライジなどの作品にも参加してきた、ロナルド・コルソンが制作にかかわっている”Anymore”だ。ピアノの音色を効果的に使った切ない雰囲気のトラックと、激しい感情をむき出しにしたダイナミックなヴォーカルを組み合わせた、壮大なバラードだ。

今回のEPでも、過去の2作品同様、しなやかな歌声と、地声からファルセットまで、フルに使った表情豊かなヴォーカルが堪能できる。そのスタイルは、モニカやブランディのような、スマートな歌唱と、力強い歌声を売りにする女性シンガー達を連想させる。また、ソングライターにもゴードン・チェンバースのような、美しいメロディを生み出してきた作家を並べ、トラックもヴォーカルやメロディを引き立てることに気を配った、シンブルで洗練されたものになっている。この「しなやかな歌」を聴かせることに力を注いだことが、若手シンガーの作品でありながらロマンティックで落ち着いた雰囲気と、一本筋の通った軸のようなものを感じさせているのだと思う。

ビヨンセやリアーナとはスタイルが違うが、「歌の魅力」で勝負している稀有な作品。恵まれた容姿と強靭な歌声を兼ね備えた彼女。90年代のブランディやモニカ、2000年以降のジェニファー・ハドソンやクリセット・ミッシェルが好きな人はぜひ聞いて欲しい、クールなヴォーカルとビジュアルが魅力の女性シンガーだ。

Producer
DJ Mustard

Track List
1. Boo'd Up
2. Breakfast in Bed
3. Nobody Else
4. My Way
5. Makes Me Wonder
6. Anymore



Ready [Explicit]
Universal Music LLC
2017-02-26

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