melOnの音楽四方山話

オーサーが日々聴いている色々な音楽を紹介していくブログ。本人の気力が続くまで続ける。

R&B

Traci Braxton - On Earth [2018 Soul World Entertainment]

トニ・ブラクストンの妹であり、彼女も在籍していた姉妹グループ、ブラクストンズの一員でもある、トレイシー・ブラクストン。

メリーランド州出身の彼女は、牧師の父とオペラ歌手から宣教師に転じた母を持ち、幼いころから姉妹と一緒に教会で歌うなど、恵まれた環境で腕を磨いてきた。

1989年にアリスタと契約した彼女達は、1990年に初のシングル“Good Life”をリリース。R&Bチャートに入るなど、一定の成果を収めたが、91年にトニがベイビーフェイスのプロデュースでデビューするためグループを脱退。トレイシー達は4人組としてグループを再開するが、95年にトレイシーもグループを離脱してしまう(そのため、96年のアルバム『So Many Ways』には参加していない)。

そんな彼女が表舞台に戻ってきたのは、2011年に制作されたリアリティ・ショウ。その後は、2014年に初のソロ・アルバム『Crash & Burn』を録音し、翌年には、トニも参加した5人体制のブラクストンズによるクリスマス・アルバム『Braxton Family Christmas』を発売。表舞台での経験が乏しいことが信じられない、豊かな表現力を発揮してきた。

本作は彼女にとって2枚目のソロ・アルバム。前作にも携わっていたデイブ・リンゼイが、全ての曲のプロデュースを担当。彼女自身も曲作りに参加し、ゲストにはトニ達ブラクストン姉妹も参加するなど、 前作も見劣りしない、豪華なものになっている。

本作の1曲目である”On Earth”は、四つ打ちのビートを採用したタイトル・トラック。セオ・パリッシュやムーディーマンの曲にも似ている、陰鬱で洗練されたビートの上で、滑らかに歌うトレイシーの姿が光るダンス・ナンバーだ。音数が少ないトラックと、起伏を抑えたメロディを乗りこなしつつ、きちんと表情をつける歌唱が聴きどころ。

続く”Lifeline”は、バス・ドラムを軸にしたシンプルなR&Bのトラックと、低い音域を強調した艶めかしいヴォーカルの組み合わせが魅力のスロー・ナンバー。重厚で色っぽい歌声を活かすスタイルは、トニ・ブラクストンの90年代の作品にも似ている。

しかし、本作の目玉は何と言っても”Broken Things”だろう。この曲は、ブラクストンズとして一緒に活動したトニ、トワンダ、トリーナの3人が参加したバラード(テイマーのみ不参加)。曲調の関係もあって、5人で録音した“Good Life”に比べると落ち着いた雰囲気だが、声質や歌い方の微妙な違いを効果的に使って、各人の個性と4人の一体感を表現している。4人でこの完成度ということは、5人が揃ったらどんな曲に仕上がっていたのだろうか。

また、本作では唯一ラッパーが客演した”To The Side”は、チキチキというハットの音を効果的に使った現代的なビートと、トレイシーの持つ大人の色気を引き出した、艶やかなメロディが魅力のスロー・ナンバー。クリス・ブラウントレイ・ソングスのアルバムに入っていそうなワイルドで大人っぽい雰囲気の曲でも、彼女が歌うと違って聴こえる。

彼女の作品は、他のブラクストン姉妹の作品同様、ブラクストンズやトニの作風を踏襲した、美しいメロディで歌声の魅力を丁寧に伝えるものだ。しかし、彼女の場合は他の姉妹の作品と違うのは、四つ打ちのビートや落ち着いた雰囲気のメロディの曲が目立つことだ。5人姉妹の中ではソロ作品を出していないトワンダを除くと、最もデビューが遅かったこともあり、他の姉妹と差別化を図るために工夫を凝らしたのだろう。そのことが、結果的に彼女の独自性を打ち出している。

ソウル・ミュージックの歴史上、最も成功した姉妹であるブラクストンズ。その中では一番最後に表舞台に登場した彼女だが、実力は他の4人に見劣りしないことを再認識させられる良作。90年代のトニ・ブラクストンのような、歌をじっくり聴かせるタイプのR&Bが好きな人には見逃せないアーティストだ。

Producer
Dave Lindsey

Track List
1. On Earth
2. Lifeline
3. Boy Bye
4. Broken Things feat. Toni Braxton, Towanda Braxton, Trina Braxton
5. Out The Box
6. To The Side feat. Ridge Long
7. White Noise
8. I Wont Cry




On Earth [Explicit]
Soul World Entertainment, LLC.
2018-08-24

H.E.R. - I Used to Know Her: The Prelude – EP [2018 RCA]

H.E.R.ことガブリエル・ウィルソンは、カリフォルニア州ヴァレーホ出身のシンガー・ソングライター。

出身地や本名、1997年生まれの21歳(本稿執筆時点)であること以外、自身に関する情報を殆ど公表していない彼女。あえて自身の素性を隠すことで、リスナーの関心を自身の音楽に向けさせてきた。

2016年から17年にかけて、2枚のEP『H.E.R. Vol. 1』『H.E.R. Vol. 2』を発表。2017年10月には、2作の収録曲を一枚に纏めた初のスタジオ・アルバム『H.E.R.』をリリース。配信限定の新人の作品ながら、エリカ・バドゥやシドを思い起こさせる、神秘的でモーダルな彼女の歌声と、ロバート・グラスパーやアンドレ・ハリスが制作に携わった楽曲で注目を集めてきた。

本作は、『H.E.R.』から約9か月の間隔で発売された彼女にとって3枚目のEP。制作は過去の作品にも関わっているスワッガー・シリアスらに加え、ドレイクなどのアルバムに参加しているウィリス・レーンや、タイ・ダラ・サインなどの楽曲を作っているD’マイルなどが担当。これまでの録音とは一味違う、新しいスタイルの楽曲に挑戦している。

アルバムの1曲目は、DJスクラッチをフィーチャーした”Lost Souls ”。ローリン・ヒルの名曲”Lost Ones”からインスピレーションを受けたというこの曲は、同曲のフレーズをサンプリングし、ローリンnのように歌とラップを織り交ぜたパフォーマンスを披露したミディアム・ナンバー。”Lost Ones”自体が、シスター・ナンシーが82年に発表したシスター・ナンシーの”Bam Bam”をサンプリングした泥臭いビートの楽曲ということもあり、この曲もDJプレミアやピート・ロックが作りそうな、 90年代のサンプリングを効果的に使ったヒップホップに落とし込まれている。

続く”Against Me”はウィリス・レーンが制作を主導したスロー・ナンバー。シンセサイザーを使った幻想的なサウンドの上で、丁寧に歌い込む彼女の姿が光っている。ドラムの音圧を抑え、低音の伴奏で重厚さを醸し出したトラックは、ドレイクの作品に少し似ている。前作までの彼女の作風を踏襲しつつ、切り口を変えた曲作りが魅力だ。

インターリュードを挟んだ後の”Could've Been”は、デビュー前から何度も共演してきたブライソン・ティラーとのデュエット曲のデュエット曲。エリック・ベリンガートレイ・ソングスの作品も手掛けているD’マイルズが作るトラックは、重いドラムの音を軸にしたしっとりとした雰囲気のもの。他の曲では、尖ったビートを取り入れることが多い両者が、ここでは滑らかな歌声で丁寧な歌を聴かせているのが新鮮だ。

そして、これに続く”Feel a Way”はリアーナアッシャーミゲルなどの楽曲に関わっているフリッパが手掛けた作品。ドレイクの”God’s Plan”を思い起こさせる、リズミカルなシンセサイザーの伴奏が印象的な曲だ。軽快な伴奏を含むトラックを、切ない雰囲気のメロディが魅力のミディアムに取り入れて、楽曲に軽妙な雰囲気を与える演出が面白い。

本作の最後を締めるのは、カリ・ウチスなどの作品を手掛けてきたジェフリー・ギトルマンがプロデュースした”As I Am”。ギターやフィンガー・スナップを用いた、フォーク・ソングっぽい演奏の上で、みずみずしい歌声を響かせるゆったりとした楽曲。透き通った歌声とR&Bのビート、ギターなどのアコースティックな伴奏を組み合わせたスタイルは、インディア・アリーにも少し似ているが、この曲では彼女の持つは少し陰鬱な雰囲気で独自性を打ち出している。

今回のEPは、ごく少数のクリエイターと制作してきたこれまでの作品から一転、色々なR&Bシンガーの曲に関わってきたプロデューサー達を起用し、流行のサウンドを積極的に取り入れたものになっている。しかし、多くのヒット・メイカーを起用しながら、流行の音をそのまま使うのではなく、自分の音楽性に合わせて咀嚼している。この一作品ごとに少しずつスタイルを変えて、リスナーを飽きさせず、次回作への期待を抱かせる手法が、彼女の音楽が注目される一因だと思う。

自身の音楽で勝負してきたH.E.R.の、第二章の幕開けを飾る作品といっても過言ではない、新しいスタイルに挑戦した良作。独創的な作風で周囲を驚かせてきた彼女が、次のステップに踏み出した新境地だ。

Producer
BassmanFoster, Cardiak, Dernst "D'Mile" Emile II, Flippa, Jeff Gitelman, Jeffrey Gitelman, Swagg R'Celious & Wallis Lane

Track List
1. Lost Souls feat. DJ Scratch
2. Against Me
3. Be On My (Interlude)
4. Could've Been feat. Bryson Tiller
5. Feel a Way
6. As I Am






赤西仁 – A la carte [2018 Go Good, Universal]

ジャクソン5のリード・シンガーからキャリアをスタートし、キング・オブ・ポップとして音楽史にその名を刻んだマイケル・ジャクソンを筆頭に、メヌードを経て中南米を代表するシンガーに上り詰めたリッキー・マーティンや、イン・シンクのリード・ヴォーカルから、大統領の前でパフォーマンスを披露する、アメリカ屈指のソウル・シンガーになったジャスティン・ティンバーレイクなど、世界各地で大きな足跡を残している、ボーイズ・グループ出身のアーティスト達。彼らのようにボーイズ・グループで経験を積み、ソロ・アーティストとして大きく飛躍した日本人の一人が、元KAT-TUNの赤西仁だ。

2001年にグループの一員として活動を開始すると、レコード・デビューの前でありながら、東京ドームでのライブを成功させるなど、規格外の活躍を見せる。その後、2006年にシングル”Real Face”でメジャー・デビュー。B'zの松本孝弘の手によるハードなロックのサウンドにダンス・ミュージックの要素を組み合わせた楽曲と、やんちゃな雰囲気の中にも大人の色気を感じさせるパフォーマンスが注目を集め、アメリカの音楽情報サイト、ローリング・ストーンが2013年に発表した「男性ヴォーカル・グループの名曲50選」に、日本のグループでは唯一選出された。また、シングル自体も100万枚を超える売り上げを記録するなど、華々しいデビューを飾った(余談だが、同作は2018年7月末現在、日本国内で100万枚以上の売り上げを記録した、最後のデビュー・シングルである)。

その後も、歌手や俳優として一線で活躍を続けるが、海外志向が強い彼は2010年にグループを脱退し、ソロに転向。翌年には念願のアメリカ・ツアーを決行し、海外向けのアルバムをリリースするなど、自身の夢に向かって歩み始める。また、2014年以降は個人事務所を設立。楽曲の配信を開始し、中国公演を成功させるなど、目標に向けて着実に結果を残してきた。

このアルバムは、彼にとって初のリアレンジ・アルバム。これまでにリリースした作品をアレンジし直した楽曲に、新曲を加えている。過去の作品同様、彼自身がプロデュースを担当。その一方で、共同制作者にDJスウィングを迎え、アルバムの発売に先駆けて収録曲をライブで披露するなど、2018年の彼のスタイルを強調した作品になっている。

本作の1曲目は、唯一の新曲である”Feelin'”。制作にDr.スウィングが参加したこの曲は、ジェイソン・デルーロやジャスティン・ビーバーの音楽を思い起こさせる、鮮やかな音色の上物と、跳ねるようなハウスのビートが格好良いアップ・ナンバー。流れるようなメロディを歌う、赤西のセクシーな歌声が聴きどころ。

続く”Go Higher”は、2013年のアルバム『#JustJin』の限定版に収録されている曲のリメイク。太い低音が印象的なR&B色の強い原曲を、鋭い高音の伴奏を強調したEDMの要素を含むヒップホップにリメイク。スマートでありながら、芯の強いヴォーカルと激しいダンスが魅力の彼にふさわしい、華やかでスタイリッシュなダンス・ナンバーに仕上がっている。

これに対し、2015年のアルバム『Me』の収録曲をリメイクした”Dayum”は、四つ打ちのビートにギターやハンド・クラップを乗せた賑やかなダンス・ナンバーの原曲を、重いドラムとピアノの音色の伴奏を組み合わせたトラックでスタイリッシュなR&Bに再構築した作品。複数のビートを組み合わせて、楽曲に起伏をつけるアレンジは、歌とダンスで勝負するライブを意識したものか。30代前半で20年近いキャリアを誇る彼の艶めかしい歌声にも注目してほしい。

そして、本作に先駆けてリリースされた”Baila”は2014年のEP『Mi Amor』の楽曲のリメイク。曲名の「Baila」を連呼するイントロでリスナーの期待を掻き立てる演出が心憎い。原曲ではホーンの音色などを盛り込んでいたが、今回のリアレンジ版では、ビートを強調したシンプルなアレンジに仕上げている。

このアルバムを聴いていて強く感じたことは、彼のアーティストとしての高い表現力だ。声量よりも繊細で色っぽい表現をウリにするヴォーカルと、複雑で激しいダンスを武器にする彼。このアルバムでは、そんな彼の持ち味が活きる、洗練されたメロディと、尖った音のトラック、複数のビートを組み合わせたアレンジの曲が並んでいる。

また、アルバムに先駆けて公開された、収録曲のライブ・パフォーマンス映像を観ると、アジア系シンガーの魅力であるスマートなヴィジュアルに、KAT-TUN時代のやんちゃ坊主のような雰囲気と、30代を迎えて際立つようになった大人の色気が合わさった、現在の彼の魅力を引き出すアレンジに仕上げていることに気づかされる。この、自身の魅力を理解しつつ、それに合った音や舞台を用意できる技術と人間関係が、彼の音楽を特別なものにしていると思う。

新しい音を取り入れつつ、あくまでも「赤西仁」であり続ける彼の現在の姿を象徴した一枚。音とビジュアルの両方で自分の魅力を引き出し、観客を魅了する姿は、マイケル・ジャクソンやリッキー・マーティンと並べても見劣りしない。現代のアジアを代表するポップ・スターだと思う。

Producer
Jin Akanishi

Track List
1. Feelin'
2. Go Higher (Rearranged)
3. Ain't Enough (Rearranged)
4. Slow (Rearranged)
5. Dayum (Rearranged)
6. Baila (Rearranged)
7. Mami Loca (Rearranged)
8. One Last Time (Rearranged)
9. Heart Beat (Rearranged)
10. Opaque (Rearranged)
11. Can't Get Enough (Rearranged)
12. Summer Loving (Rearranged)
13. Hey What's Up? (Rearranged)
14. Mi Amor (Rearranged)





A la carte(初回限定盤)(DVD付)
赤西仁
ユニバーサル ミュージック
2018-08-01

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