ブラック・ミュージック千本ノック~SoulとR&Bと色々な音楽~

管理人が手に入れたR&Bのアルバム、1000枚の紹介文を書き続けるブログ その先に見えるものは天国か地獄か・・・

Funk

WILL SESSIONS - DELUXE [2017 Sessions Sounds]

2008年にアルバム『Many Faces』でレコード・デビュー。ジェイムズ・ブラウンやファンカデリックなど、多くの先人のスタイルを吸収、混ぜ合わせた音楽性と、それを具体的な作品に落とし込む高い演奏技術で、熱心な音楽ファンを惹きつけたデトロイト発のファンク・バンド、ウィル・セッションズ。

2011年には、元スラム・ヴィレッジのエルザイが、ナズの代表作『Illmatic』をカヴァーしたアルバム『Elmatic』で、バック・トラックを担当。昔のレコードをサンプリングして作られたビートを、生演奏で忠実に再現したことで、一気に名を上げた。その後も、ヒップホップの有名曲のトラックをバンド演奏で再現した『Mix Takes』シリーズなど、複数の録音作品を発表。リリースの度に、その評価を高めていった。

この作品は、彼らにとって初のオリジナル曲によるアルバム。過去に7インチ・レコードで発売された曲の長尺版を含むもので、プリンスやジョージ・クリントンなど、多くのミュージシャンと仕事をしてきたデトロイト出身のキーボーディスト、アンプ・フィドラーや、ジェイムズ・ブラウンにそっくりな歌唱が注目を集め、ダップトーンズとのコラボレーション曲も残している、マイアミ出身のベテラン・シンガー、リッキーキャロウェイのほか、元ブラックバーズのフルート奏者アラン・バーンズや、『Elmatic』でも歌声を披露しているココ・バタフライなど、豪華な面々が終結している。

アルバムの1曲目、アンプ・フィドラーをフィーチャーした”In the Ride”は、ティム・シェラバーガーのブリブリと唸るベースと、ジェイムズ・ブラウンを支えた名手、フェルプス・キャットフィッシュ・コリンズを彷彿させる軽妙でセクシーなライアン・ジンパートのギターが光るアップ・ナンバー。絶妙なタイミングでリスナーを盛り上げるホーン・セクションや、複雑なリズムを最後まで正確にたたき続けるブライアン・アーノルドの存在も見逃せない。

続く ”Shake It Up, Shake It Down”はリッキー・キャロウェイがヴォーカルを担当した楽曲。曲の冒頭で流れる声を聴いた瞬間、ジェイムズ・ブラウンの録音をサンプリングしたのかと勘違いしたが、全てリッキーによるものらしい。奔放なようで計算されつくした歌唱など、ジェイムズ・ブラウンのスタイルにそっくりなリッキーのパフォーマンスも面白いが、ジェイムズの音楽を忠実に再現した精密だが荒々しい演奏も聴きどころ。彼が参加したもう一つの曲”Come On Home”は、ジェイムズの”Hot Pants”を意識したような、軽快なベースの演奏が光るミディアム・ナンバー。どちらの曲も、往年の名手を意識しつつ、彼らの音楽を自分達のセンスと演奏技術で再構築した魅力的な作品だ。

一方、ココ・バタフライを起用した”Run, Don't Walk Away”は、ギターやベースの粘っこい演奏と、マーサ・ハイやマーヴァ・ホイットニーを彷彿させる、グラマラスな歌声と、アグレッシブなパフォーマンスが格好良いミディアム・ナンバー。スロー・テンポでも、安定感抜群の泥臭いグルーヴを聴かせる演奏者にも注目してほしい。

だが、このアルバムの一番の聴きどころは、なんといっても彼らの高い演奏技術だろう。彼らのスキルを堪能できる単独名義の楽曲は”Off the Line”と”The Diesel”の2曲。中でも、2016年にシングル化された”The Diesel”は、『Elmatic』での演奏を思い起こさせる、ジェイムズ・ブラウン一派のスタイルを継承した、複雑だが精密なグルーヴと、リスナーの心を掻き立てる華やかなホーン・セクションが魅力の、インストゥメンタル作品。フルートやオルガンが次々と飛び出し、リスナーを飽きさせない構成も素晴らしい。

このアルバムは、『Elmatic』で彼らのことを知ったリスナーを意識しつつ、ジェイムズ・ブラウンやPファンク一派など、ファンクの歴史を築き上げてきた先達の手法を丁寧に継承した曲作りが目立つ。リッキー・キャロウェイやアンプ・フィドラーを起用したことも、当時の雰囲気を再現するのに一役買っているし、バンドと頻繁にコラボレーションしているココ・バタフライのパワフルなヴォーカルも、往年の女性ファンク・シンガーを彷彿させる。彼らの個性を取り込むことで、自分達の演奏に、往年のファンクの名手のダイナミックで奇抜な作風と、何度聴いても飽きることのない、普遍的な面白さを加えているように見える。

ドラムとベースを軸に組み立てた安定したグルーヴを核に、新旧のブラック・ミュージックのエッセンスを取り込んだバラエティ豊かな楽曲で、懐かしさと新鮮さを両立した魅力的なファンク作品。ヒップホップのサンプリング・ソースを通してファンクに興味を持った人にはぜひ聞いてほしい。ファンク・ミュージックの奥深さと、コンピュータとは一味違う、バンド演奏の面白さを体験できると思う。

Producer
Sam Beaubien

Track List
1. In the Ride feat. Amp Fiddler
2. Shake It Up, Shake It Down feat. Rickey Calloway
3. Run, Don't Walk Away feat. Coko
4. Off the Line
5. Jump Back feat. Rickey Calloway
6. Cherry Juice feat. Allan Barnes
7. Come On Home feat. Rickey Calloway
8. The Diesel






Ephemerals - Egg Tooth [2017 Jalapeno Records]

イギリス出身のギタリスト、ニコラス・ヒルマンと、フランス系アメリカ人のサックス奏者、ウォルフガング・パトリック・ヴァルブルーナが中心になって結成したファンク・バンド、エフェメラルズ。60年代、70年代のブラック・ミュージックを取り込んだサウンドと、ヴァルブルーナのエネルギッシュな歌唱が話題になり、ジャイルズ・ピーターソンやクレイグ・チャールズなどのラジオ番組でヘビー・プレイ。2016年にはフランスのDJ、クンズのシングル『I Feel So Bad』に参加。フランスを中心に、複数の国でヒットチャートに入る、彼らにとって最大のヒット曲となった。

このアルバムは、2015年の『Chasin Ghosts』以来となる、通算3枚目のオリジナル・アルバム。本作でも楽曲制作とプロデュースをヒルマンが、ヴォーカルをヴァルブルーナが担当。ファンクやソウル・ミュージックの要素をふんだんに取り入れた楽曲を披露している。

アルバムの2曲目、本作に先駆けて発売されたシングル曲”The Beginning”は、ゆったりとしたテンポのバラード。分厚いホーンセクションを軸にしたバンドをバックに、思いっきり声を張り上げるヴァルブルーナの姿が格好良い。余談だが、彼の歌い方が”Don't Look Back in Anger”を歌っていた時の、オアシスのリアム・ギャラガーに少し似ていると思うのは自分だけだろうか。

一方、これに続く”In and Out”は、陽気な音色のキーボードと、柔らかい音色のホーン・セクションに乗せて、切々と言葉を紡ぎ出すミディアム・ナンバー。ビル・ウィザーズを彷彿させる、スタイリッシュだがどこか温かい雰囲気の歌声が心に残る。良質なポップ・ソングだ。

そして、本作からのもう一つのシングル曲『Astraea』は、ストリングスを取り入れた、切ない雰囲気のアップ・ナンバー。徐々にテンポを上げていく伴奏と、何かに追い立てられるように、せかせかと言葉を吐き出すヴァルブルーナのヴォーカルが印象的な楽曲だ。

また、同曲のカップリングとしてシングル化された”And If We Could, We’d Say”はハモンド・オルガンの音色で幕を開けるミディアム・ナンバー。ヒップホップのエッセンスを取り入れた伴奏に乗せ、ギル・スコット・ヘロンの作品を引用したポエトリー・リーディングを聴かせるという通好みの楽曲。大衆向けとは言い難い素材を集めつつ、アイザック・ヘイズが”Ain’t No Sunshine”や”Never Can Say Goodbye”のカヴァーで見せた、テンポを落として低音をじっくりと聴かせる、キャッチーで粘っこいファンク・サウンドを使ってポップに纏め上げた名演だ。

そして、黒人音楽が好きな人には見逃せない曲が、スティーヴィー・ワンダーの”AnotherStar”にも似た雰囲気のアップ・ナンバー”Get Reborn”だ。オルガンのキラキラとした音色を軸に、華やかな伴奏と軽妙なヴォーカルを組み合わせた楽曲。ライブで聴いたら盛り上がりそうだ。

英国出身のファンク・バンドというと、ジャミロクワイのような世界中で人気のグループから、ストーン・ファンデーションジェイムズ・ハンター・シックスのように、好事家達を唸らせる実力派ミュージシャンまで、あらゆる趣向の人々に対応する層の厚さが特徴的だ。その中で、彼らを他のグループと差別化しているのは、古今東西の色々なソウル・ミュージックを取り込むヒルマンの制作技術と、デーモン・アルバーンやリアム・ギャラガーにも通じる、ヴァルブルーナの存在感のある歌声によるものが大きいと思う。

60年代、70年代のソウル・ミュージックに軸足を置きつつ、その子孫ともいえる90年代以降のブリティッシュ・ロックのエッセンスを混ぜ込むことで、先人や現行の同業者とは違う独自の音楽性を確立した面白い作品。ロック、もしくはブラック・ミュージックをあまり聴かない人にこそ聴いてほしい、ジャンルの壁を越えた魅力的なバンドだ。

Producer
Hillman Mondegreen

Track List
1. Repeat All +
2. The Beginning
3. In and Out
4. Go Back to Love
5. The Omnilogue
6. Coming Home
7. And If We Could, We’d Say
8. Get Reborn
9. Cloud Hidden
10. If Love Is Holding Me Back
11. Astraea
12. Repeat All





Egg Tooth
Ephemerals
Jalapeno
2017-04-21


El Michels Affair ‎– Return To The 37th Chamber [2017 Big Crown Records]

リー・フィールズやダップトーン一派の周辺で活動していたレオ・ミッシェルが、2000年代初頭に結成したファンク・バンド、エル・ミシェル・アフェア。

2003年にデビュー・シングル『Easy Access』を発表すると、太く柔らかい音色と、重心を低く抑えた粘っこい演奏が、好事家の間で注目を集めた。そして、2005年にはウータン・クランのレイクウォンとコラボレーションしたシングル『The PJ's... From Afar』をリリース。その後、2009年にウータン・クランの楽曲をカヴァーしたアルバム『Enter The 37th Chamber』を発売。ヒップホップのサンプリング・ソースを通してソウルやファンクに慣れ親しんできた若い世代に、人間が演奏するファンク・ミュージックの面白さを知らしめた。その後もアイザック・ヘイズの楽曲をインストゥルメンタルでカヴァーしたEP『Walk On By (A Tribute To Isaac Hayes)』等をリリース。ヒップホップを経由して昔のブラック・ミュージックを知った若者から、往年の名アーティストをリアルタイムで聴いてきた年配の人まで、幅広い層から高い評価を受けてきた。

今回のアルバムは『Enter The 37th Chamber』以来、約8年ぶりとなる、彼らにとって通算3枚目のフル・アルバム。『Return To The 37th Chamber』というタイトルが示す通り、前作に引き続きウータン・クランの楽曲に加え、メンバーのソロ作品を演奏した、カヴァー・アルバムになっている。

本作の1曲目、2016年にシングル盤でリリースされた”4th Chamber”はGZAの95年作『Liquid Swords』に収録された曲のリメイク。ヘヴィーなビートとズンズンと鳴り響くベース、おどろおどろしいギターやホーンの音色が印象的なオリジナル・ヴァージョンを、原曲よりもギターやキーボードの音を強調した、キャッチーなファンクに仕立て直している。音のバランスや楽器の音色以外、原曲とほとんど変わらないあたりに、彼らの演奏技術の高さと、ウータン一派のブラック・ミュージックへの愛着が感じられる。

これに続く”Iron Man”はゴーストフェイス・キラーが2000年に発表したアルバム『Supreme Clientele』に入っている”Iron's Theme”が原曲。1分半のインターミッションを3分半の楽曲に再構成するアレンジ技術も凄いが、ゴーストフェイス・キラーの楽曲の醍醐味ともいえる、人間が歌っているかのような、豊かな感情表現を忠実に再現した演奏も本作の醍醐味。個人的な願望だが、彼らの演奏をバックに、ゴーストフェイスがラップするステージを見てみたい。

それ以外の曲で気になるのは、前作にはなかったゲスト・ヴォーカルをフィーチャーした楽曲群。その中でも、2002年のアルバム『Problems』以降、ほぼ全ての作品でレオン・ミッシェルを起用するなど、彼らと縁の深いリー・フィールズが参加した、93年のアルバム『Enter the Wu-Tang (36 Chambers)』の収録曲”Tearz”のリメイクでは、原曲にサンプリングされた楽曲のフレーズを取り入れて、ヒップホップのビートとソウル・ミュージックの歌を融合させた面白い楽曲。元ネタが女性シンガーの曲であるサビの部分は、きちんと女性ヴォーカル(シャノン・ワイスという人らしい)が担当しているなど、芸が細かい点にも注目してほしい。

また、歌ものという意味では、彼らのレーベル・メイトでもあるレディ・レイが参加した”All I Need”も見逃せない。メソッドマンが94年にリリースしたグラミー受賞曲をリメイクしたこの曲は、マーヴィン・ゲイとタミー・テレルのデュエット曲“You're All I Need to Get By”のフレーズを取り入れたオリジナル・ヴァージョンを意識したのか、メアリーJブライジが担当したパートをレディ・レイが担当している。メアリーJに比べるとレイの歌声は線の細いが、元ネタで歌ってるタミー・テレルも可愛らしい声がウリのシンガーだったので、特に違和感はない。むしろ、可愛らしさを保ちつつ、演奏に負けないパワフルな歌が印象的なくらいだ。個人的には、マーヴィンのパートを男性シンガーに吹き込んでもらって、本格的なソウル・ミュージックとして作り直してほしいなと思った。

本作では、メンバーのソロ作品にまで視野を広げる一方、ヴォーカル・パートを含む曲やシングル・カットされなかった比較的地味な曲も丁寧に取り上げている。おそらく、実績を積んで色々な音楽に挑戦する機会を得られたことや、メンバー以外の様々なアーティストを作品に起用できるようになったのだと思う。

ヒップホップのカヴァーと銘打ちつつ、そのサンプリング・ソースであるソウル・ミュージックやファンクの醍醐味にまで手を伸ばした意欲作。収録曲や原曲はもちろん、その曲のサンプリング・ネタも聴きたくなる。ブラック・ミュージックの入り口には最適なアルバムだと思う。

Producer
Leon Michel

Track List
1. 4th Chamber
2. Iron Man
3. Shaolin Brew
4. Pork Chop Express
5. Snakes feat.Lee Fields
6. Drums For Sale
7. Shadow Boxing
8. Sipped Up
9. Tearz feat.Lee Fields and The Shacks
10. Verbal Intercourse 11. Wu-Tang Clan Ain’t Nuthing Ta F’ Wit
12. All I Need feat.Lady Wray
13. The End (Eat My Vocals)





リターン・トゥ・ザ 37th チェンバー
エル・ミシェルズ・アフェアー
Pヴァイン・レコード
2017-04-19

 
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