ブラック・ミュージック千本ノック~SoulとR&Bと色々な音楽~

管理人が手に入れたR&Bのアルバム、1000枚の紹介文を書き続けるブログ その先に見えるものは天国か地獄か・・・

Funk

Vulfpeck - Mr. Finish Line [2017 Vulf Record]

ミシガン大学に併設されている音楽学校に通っていた学生達が結成、母校に併設されている音楽ホールでのパフォーマンスをきっかけに活動を開始した、アナーバー発の4人組ファンク・バンド、ヴァルフパーク。

ディープ・パープルやT.レックス、クウィーンなどを手掛けている名プロデューサー、レインホルド・マックの知己を得た彼らは、ドイツ向けの楽曲を制作。2011年に動画投稿サイトで公開した”Beastly”を皮切りに、ストリーミング・サイトや音楽配信サイト、フィジカル・リリースなど、様々な媒体を経由して作品を発表。ファンク・ブラザーズやレッキン・クルー、マッスル・ショールズ・サウンド・セクションのような、60年代から70年代にかけて、音楽シーンを彩ってきた名バンドを思い起こさせる、ダイナミックな演奏で多くのリスナーを沸かせてきた。

このアルバムは、2016年にリリースされた『The Beautiful Game』以来となる、通算3枚目のスタジオ・アルバム。制作と演奏は、これまでの作品同様ジャック・スタートンを中心としたメンバーの手によるもの。しかし、驚くべきは膨大な人数のゲスト達。デイビッドT.ウォーカーやブーツィー・コリンズのようなビッグ・ネームを中心に、チャールズ・ジョーンズやジェイムス・ギャドソンといった大ベテランや、ココOのような同世代のアーティストまで、幅広い世代の実力派ミュージシャン達が、この作品のために集結している。

アルバムの1曲目”Birds Of A Feather, We Rock Together”は、彼らの作品に何度も携わっているアントワン・スタンリー・スタントリーをフィーチャーした作品。70年代のアイズレー・ブラザーズを連想させる流麗な伴奏と、マックスウェルや初期のロビン・シックを思い起こさせる繊細なヴォーカルの組み合わせが心地よいスロー・ナンバー。音数を絞ることで、一つ一つの楽器を丁寧に聴かせるアレンジと、滑らかな演奏が気持ちよい曲だ。

続く”Baby I Don’t Know Oh Oh”は、60年代から70年代にかけて複数の録音を残し、近年はジョス・ストーンなどの作品にかかわっているシンガー・ソングライターのチャールズ・ジョーンズをヴォーカルに起用したスロー・ナンバー。各メンバーが楽器を叩くような演奏を聴かせるバック・トラックは、を他の曲とは一線を画している。泥臭いヴォーカルと、荒々しい伴奏の組み合わせはウィリアム・ベルの2016年作『This Is Where I Live』 にも似ているが、少しパワーが足りないのが気にかかる。

そして、本作の目玉といっても過言でないのが”Running Away”と”Grandma”の2曲だ。マーヴィン・ゲイの『I Want You』やビル・ウィザーズの『Still Bill』などで、気持ちいいグルーヴを聴かせてきたジェイムス・ギャドソンと、ビリー・プレストンやメリー・クレイトンの作品に携わりながら、自身の名義でも多くの作品を録音してきた、20世紀を代表するギタリスト、デイビッドT.ウォーカーを招いた楽曲。

”Running Away”は、静かにリズムを刻むジェイムスのドラムと、艶めかしい音色を響かせるデイビッドのギターが心に浸みるミディアム・バラード。マーヴィン・ゲイを連想させるジョーイ・ドシックの繊細なヴォーカルが心に残る。

また、”Birds Of A Feather, We Rock Together”でもマイクを握っている、アントワン・スタンリーをヴォーカルに招いた”Grandma”は、太い音色を使ったグラマラスな伴奏と、強靭なヴォーカルの組み合わせが心に浸みるバラード。豊かな声量を存分に聴かせながら、エロティックに聴かせるスタイルは、往年の名シンガー・ソングライター、リオン・ウェアの姿を彷彿させる。リオン・ウェアの『Musical Massage』やジョニー・ブリストルの『Bristol's Creme』などで、ロマンティックな演奏を披露してきた大先輩を招き、当時のサウンドを2017年に再現している。

彼らの音楽の面白いところは、ミシガン州の出身でありながら、所謂モータウン・サウンドに捉われず、色々なスタイルを取り込んでいるところだろう。本作でも、モータウンを支えた名シンガー、リオン・ウェアやジョニー・ブリストルの作品で演奏していた面々を起用しているもの、そのスタイルはモータウンが西海岸に移った70年代の作風を取り入れている。それ以外にも様々な地域で流行したジャズやファンクのエッセンスを曲の随所に取り込み。自分達の糧にしていることは、本作で披露された多彩な演奏スタイルからもよくわかる。そんな音楽性はもっと評価されるべきだろう。

過去の名作に慣れ親んだ若い世代が、現代人の感性でそれらの音楽を解釈した魅力的な作品。ジャズ、ソウル、ファンク、ヒップホップ、色々なジャンルの要素が詰まった本作からは、多くの人から受け入れられるポテンシャルを感じる。

Producer
Jack Startton

Track List
1. Birds Of A Feather, We Rock Together feat. Antwaun Stanley
2. Baby I Don’t Know Oh Oh feat. Charles Jones
3. Mr. Finish Line feat. Christine Hucal, Theo Katzman
4. Tee Time
5. Running Away feat. David T. Walker, James Gadson, Joey Dosik
6. Hero Town feat. Michael Bland
7. Business Casual feat. Coco O
. 8. Vulf Pack
9. Grandma feat. Antwaun Stanley, David T. Walker, James Gadson
10. Captain Hook feat. Baby Theo, Bootsy Collins, Mushy Kay







N.E.R.D. - No One Ever Really Dies [2017 I am Other, Columbia]

2014年にソロ名義でリリースした”Happy”が世界的なヒットとなり、その後も、映画「ミニオンズ」シリーズや「ドリーム」などの映画のサウンドトラックをプロデュース。それ以外にも、ダフト・パンクやカルヴィン・ハリスの作品で自慢の喉を披露している、売れっ子ミュージシャンのファレル・ウィリアムス。そして、彼と組んだプロダクション・チーム、ネプチューンズの名義で、ジェイZやノー・ダウト、宇多田ヒカルなどにヒット曲を提供してきたチャド・ヒューゴ。彼らにシェイ・ヘイリーなどのメンバーを加えたバンドが、このN.E.R.D.だ。

デビュー前から、ネプチューンズが携わった作品のレコーディングやライブなどで腕を振るってきた彼らは、2002年にアルバム『In Search Of...』を発表。乾いた音色を使った軽快なトラックが魅力のネプチューンズとは全く異なる、荒々しいギターの演奏が光る”Rock Star”などのヒット曲を残すが、 商業的には今一歩の結果に終わる。その後、2004年に『Fly or Die』をリリース。同作からシングル・カットされた”She Wants to Move”がQ-ティップやデ・ラ・ソウルなどが名を連ねる、ネイティブ・ダンの面々を起用したリミックス・ヴァージョンも含めヒット。また、2008年には『Seeing Sounds』、2010年には『Nothing』を発売している。

このアルバムは、前作から約7年ぶりとなる通算5枚目となるスタジオ・アルバム。リアーナケンドリック・ラマー、エド・シーランといった、今をときめく人気ミュージシャンが顔を揃えた、ヒット・メイカーらしい豪華な作品になっている。

アルバムの1曲目は、ファレルに加え、トリッキー・スチュアートのところで活動していた、カーク・ハレルが制作に携わった”Lemon”。ゴムボールのように跳ねるビートと、ピコピコという電子音を組み合わせたトラックは、クリプスの”Grindin'”などで一世を風靡した、2000年代初頭のネプチューンズを思い起こさせる。しかし、ドラムン・ベースを連想させるビートや、曲調を次々と切り替えてリスナーの度肝を抜く手法は、ヒップホップの枠に捉われないN.E.R.D.っぽい。変則的なビートをしっかりと乗りこなすリアーナの存在も見逃せない。

これに対し、グッチ・メインウェイルという、重くパンチの効いた声が魅力のラッパー二人が参加した”Voilà”は、乾いたギターの音色が心地よいアップ・ナンバー。ギターやベースを使って、ロックの要素を盛り込むスタイルは、デビュー作のころから変わらないN.E.R.D.らしいものだ。肩の力を抜いたラップで、軽快な伴奏に溶け込んだ2人のラップもいい味を出している。

また、フューチャーを招いた”1000”は、アーハの”Take on Me”を思い起こさせる、軽快な伴奏が格好良いアップ・ナンバー。途中で細かく刻んだ声ネタを盛り込んだり、クイーンの”We Will Rock You”を連想させるフレーズが飛び出すのも面白い。大胆な発想で強烈な印象を残しつつ、ポップスとして完成させる彼らのスキルが発揮された良曲だ。

そして、本作の隠れた目玉が、ケンドリック・ラマーをフィーチャーした”Don't Don’t Do It!”だ。カーティス・メイフィールドの”Tripping Out”を彷彿させる、しっとりした伴奏の上で切ない歌声を聴かせたと思いきや、途中からパンク・ロックに切り替わる奇想天外な曲。今をときめくケンドリック・ラマーが、唸るようなギターの演奏をバックに歌う光景は必聴。

個性的なサウンドで多くのヒット曲を生み出してきた、ネプチューンズやファレルの作品とは一味違う、ドラムン・ベースやグライム、パンク・ロックといった、色々な音楽のエッセンスを取り入れた音楽性が魅力のN.E.R.D.。久しぶりの新作でも、彼らの持ち味は変わっていない。

しかし、今回の作品では”Lemon”のように、ヒップホップのトレンドと呼応したような作品が目立っている。それは、彼ら地震がトレンドを意識したことも大きいが、ブラッドオレンジソランジュをプロデュースし、ゴリラズのアルバムに多くのラッパーが参加したように、ロックやエレクトロ・ミュージックとヒップホップやR&Bの距離が縮まり、混ざり合った曲が増えたことも大きいと思う。そんな、色々なジャンルの音楽が混ざり合った時代を先取りしつつ、流行とは一定の距離を置いた作品に落とし込んでいることが、彼らの音楽の魅力だと思う。

新しいトレンドを生み出してきた彼らの、本気が伺える佳作。これまでの作品同様、商業的に大きく成功するタイプの作品ではないが、今後のヒップホップやR&Bのトレンドを先取りした演奏が楽しめる。音楽のファッションショーといった趣のアルバムだ。

Producer
Pharrell Williams, Chad Hugo, Kuk Harrell, Mike Larson, Rhea Dummett

Track List
1. Lemon feat. Rihanna
2. Deep Down Body Thurst
3. Voilà feat. Gucci Mane and Wale
4. 1000 feat. Future
5. Don't Don’t Do It! feat. Kendrick Lamar
6. ESP
7. Lightning Fire Magic Prayer
8. Rollinem 7's feat. André 3000
9. Kites feat. Kendrick Lamar and M.I.A.
10. Secret Life Of Tigers
11. Lifting You feat. Ed Sheeran




No One Ever Really Dies
N.E.R.D
Sony
2017-12-15

Martha High - Tribute To My Soul Sisters [2017 Record Kicks]

ブーツィー・コリンズやメイシオ・パーカーなどの名手を輩出する一方、リン・コリンズやマーヴァ・ホイットニー、タミー・テレル(当時はタミー・モンゴメリー名義で在籍)など、多くの女性シンガーが所属していたジェイムズ・ブラウンのバンド。彼のバンドから巣立ち、今も一線で活躍している女性シンガーが、ワシントンDC出身のマーサ・ハイだ。

同じハイスクールに通う友人と結成したガールズ・グループ、フォー・ジュエルズがジェイムズ・ブラウンに認められ、バック・コーラスとして加入した彼女は、65年から2000年まで、実に35年もの間、彼のツアーに帯同。その一方で、72年には初の自身名義のシングル”Georgy Girl”をリリース、79年には初のソロ・アルバム『Martha High』を発売するなど、バンド活動と並行しながら着実に実績を積み上げてきた。

2000年以降は、主にソロとして活動。ヨーロッパのレーベルから作品を発表しつつ、日本を含む世界各国でライブを行ってきた。

本作は、2016年の『Singing For The Good Times』以来、約1年ぶりとなる新作。これまでにもイギリスのスピードメーターやフランスのシャオリン・テンプル・ディフェンダー、イタリア人プロデューサーのルーカ・サピオなど、ジェイムズ・ブラウンの音楽から多くの影響を受けてきたミュージシャンと組んできた彼女だが、今回のパートナーに選んだのは、日本のオーサカ=モノレール。近年はヨーロッパを含む海外でのライブも経験するなど、日本を代表するファンク・バンドとして知られている彼らと録音した本作は、ジェイムズのバンドから世に出た女性シンガー達の楽曲を取り上げた、トリビュート・アルバムになっている。

アルバムのオープニングを飾るのは、リン・コリンズが1972年に発表した”Think (about it)”のカヴァー。溌剌とした歌声が魅力のリンのヴォーカルを御年68歳(執筆時点)のマーヴァが忠実に再現している点が面白い。オーサカ・モノレールが生み出すグルーヴが、オリジナル以上にダイナミックな点も見逃せない。原曲を忠実に再現しつつ、その持ち味をオリジナル以上に強調したアレンジが魅力の佳曲だ。

これに対し、リズム&ブルース作品の”A little taste of soul”は、後にチェスからもレコードをリリースしているシュガー・パイ・デサンドが、1962年に発売したダンス・ナンバー。激しく歌う姿が印象的な原曲に比べると、グラマラスで貫禄溢れる歌唱が印象的な曲だ。唸るようなベースと軽妙なリズムも格好良い。ジェイムス・ブラウンといえば”Sex Machine”のようなファンク・ミュージックのイメージが強いが、この曲のような50年代、60年代に制作していたリズム&ブルース・ナンバーにも良曲が多い。エイミー・ワインハウスの登場以降、ヴィンテージ・ミュージックが見直されている今だからこそ聴きたい作品だ。

また、同じリズム&ブルースの作品では、ジェイムズ・ブラウンが63年に発表し、同じ年にタミー・テレル(当時はタミー・モンゴメリー名義)がカヴァーした”I cried”も見逃せない。泣き崩れるように歌うジェイムズのヒット曲を、タミーは可愛らしい声を活かした甘酸っぱい歌唱で歌いなおしたことでも有名な本作。マーサはふくよかな歌声と老練な歌唱で、両者の演奏とは一味違う、本格的なソウル・バラードに改変している。彼女の高度な表現力と、様々なアレンジに耐えうるジェイムズの作品の奥深さを感じさせる良曲だ。

そして、本作に”Sex Machine”のようなファンク作品を期待する人にお勧めしたいのが、リン・コリンズが1973年に録音した”Mama feel good”だ。ジェイムズ・ブラウンがサウンドトラックを担当した同年の映画「Black Caesar」で使われたこの曲は、乾いた音色のギターのカッティングと、重厚なドラムとベースが生み出すグルーヴが魅力のミディアム・ナンバーだ。ジェイムズ関連のファンク・ナンバーではしばし見られる、少し肩の力を抜いた演奏をじっくりと聴かせる作品だが、彼女は絶妙な匙加減で乗りこなしている。

このアルバムを聴いて強く感じるのは、マーサの高い歌唱力と、ジェイムズが残した楽曲の多彩さ、そして、彼のバンドから羽ばたいていったシンガー達の強い個性だ。ロックンロールにも通じる激しいリズム&ブルースから、リスナーの胸を揺さぶるダイナミックなバラード、腰を刺激するファンクまで、様々なスタイルの楽曲を色々なスタイルで演奏してきた名シンガー達。そんな彼女達の楽曲を、自分の音楽に染め上げるマーサの豊かな表現力と想像力が本作の醍醐味だろう。そして、彼女を支えるオーサカ・モノレールの高い演奏技術が、ジェイムズ・ブラウンが提供した曲のカヴァーという難解なお題を実現可能なものにしていると思う。

ジェイムズ・ブラウンが残した珠玉の名曲が持つ魅力を、余すことなく収めた良質なトリビュート・アルバム。マーサとオーサカ・モノレールの演奏をじっくりと楽しんでも良し、ジェイムズが手掛けた女性シンガーの作品を集めた『James Brown's Original Funky Divas』に入っているオリジナル・ヴァージョンと聴き比べても良し、一粒で二度おいしい企画盤だ。

Producer
Osaka Monaurail

Track List
1. Think (about it)
2. This is my story
3. A little taste of soul
4. Mama’s got a bag of her own
5. I cried
6. Don’t throw your love in the garbage can
7. Things got to get better
8. Put it on the line
9. Unwind yourself
10. You can make it if you try
11. Answer to mother popcorn
12. Mama feel good
13. Oh what a feeling






トリビュート・トゥ・マイ・ソウル・シスターズ
マーサ・ハイ
ディスクユニオン
2017-11-18



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