ブラック・ミュージック千本ノック~SoulとR&Bと色々な音楽~

管理人が手に入れたR&Bのアルバム、1000枚の紹介文を書き続けるブログ その先に見えるものは天国か地獄か・・・

Funk

Enois Scroggins & The Touch Funk ‎– Real-E [2017 Diggy Down Recordz]

オクラホマ州マスコギーの出身、49歳の時にフランスのディスコ・ミュージック専門レーベル、ブーギー・タイムズからアルバム『One For Funk And Funk For All 』でデビューした、異色の経歴のシンガー・ソングライター、エノイス・スクロギンス。その後も、オクラホマ州のタルサに拠点を構えながら、ウィンフリーやワズ・ザ・ファンクファザーといった、アメリカやフランスで活躍する、80年代のディスコ・ミュージックや、90年代前半にアメリカの西海岸で流行したヒップホップのような、アナログ・シンセサイザーとリズム・マシーンの音色を活用したモダンな作風を得意とするミュージシャン達とコラボレーションするなど、精力的に活動。多くの録音をファンキーサイズやディギー・ダウンといったファンク・ミュージックに力を入れているフランスのレーベルから発表してきた。

本作は、2015年の『On A Roll』以来、約2年ぶりとなる通算8枚目のオリジナル・アルバム。同時に、今回のアルバムは、これまでにも複数の楽曲で制作に参加してきたフランスのプロデューサー・ユニット、ザ・タッチ・ファンクとの初のコラボレーション作品でもある。

アルバムの1曲目に収められている、本作からのリード・シングル”I Just Wanna Sing”は、ロス・アンジェルスを拠点に活動する女性シンガー、Jマリーをフィーチャーしたアップ・ナンバー。プリンスやミント・コンディションに触発され、エレクトリック・サウンドを取り入れたR&B作品を録音してきたマリーの、クールな歌声が聴きどころ。彼女の歌声に呼応するかのように、グラマラスで流麗な歌を聴かせるエノイスや、シンプルで洗練されたトラックも見逃せない。

一方、ティスミジーが参加した”You Got To Boogie”は、乾いたギターの音色や様々なリズム・マシーンの音色を組み合わせた華やかなトラックが印象的な、ディスコ・ナンバー。アナログ・シンセサイザーの柔らかい音色と鋭い音色のシンセ・ベースが、スレイヴやワンウェイなどのディスコ・バンドを思い起こさせるキャッチーなダンス・ナンバーだ。

また、2015年にシングル盤で発表された”Steppin’ Out”は、ハウス・ミュージックに近い、テンポの速いビートに乗せて、流れるような歌声を披露する、力強い演奏の中にも優雅さを感じさせるダンス・ナンバー。疾走感は魅力的だが、個人的には同作のB面に収められている”What Can I Do ”の方がお勧めだ。こちらは、ゴリゴリとしたシンセ・ベースと、他の曲よりも控えめに鳴るシンセサイザーの伴奏が特徴的な、ファンク色の強い曲。パーカッションの使い方はエムトゥーメイに、ベースの使い方はリック・ジェイムズに少し似ている、先鋭的なサウンドが特徴的だ。80年代後半のソウル・ミュージックが好きな人なら、思わずニヤリとしてしまう演出が盛り沢山な点も心憎い。

だが、本作で一番の聴きどころといえば、やはりブラック・ロスを起用したミディアム・ナンバー“Let's Fall In Love Again Tonight”だろう。勇壮なホーンで幕を開けるこの曲は、メアリー・ジェーン・ガールズの”All Night Long”を思い起こさせる、重厚で落ち着いた雰囲気とポップさを兼ね備えたグルーヴに乗せて、エノイスが年季を重ねた声でしみじみと歌い上げる、ロマンティックな楽曲。電子楽器の音色を取り入れた楽曲も、甘い歌声が魅力の歌手も決して珍しくないが、酸いも甘いも嚙み分けてきたベテラン歌手が、生楽器とシンセサイザーを組み合わせたモダンで華やかなサウンドをバックにその実力を遺憾なく発揮する姿は、やはり格別のものがある。

本作はコラボレーション・アルバムと銘打っているものの、今までのエノイスの作品と基本路線は変わっていない。アナログ・シンセサイザーやリズム・マシンを使ったモダンだけど温かみのあるトラックの上で、ボコーダーやトークボックスを織り交ぜながら、バリー・ホワイトを彷彿させるふくよかで柔らかい歌声を響かせるスタイルは、本作でも健在だ。あえて違いを強調するなら、今回のアルバムでは、ヒップホップ畑のクリエイターと共同作業をすることで、ディスコ・ミュージック寄りの楽曲が増えた点だ。

メイヤー・ホーソンもメンバーに名を連ねるタキシードや、ディム・ファンクも一因であるナイト・ファンクなど、80年代のディスコ・ミュージックから多くの刺激を受け、現代の音楽として再構成しようとする試みが各所で見られる中、2000年代から一貫してディスコ・ミュージックに取り組んできたシンガーが、経験の差を見せつけた本格的なソウル作品。彼らやブルーノ・マーズなどの音楽が好きな人は、ぜひ一度耳を傾けてほしい。

Producer
The Touch Funk

Track List
1. I Just Wanna Sing feat. J Marie (Radio Edit)
2. Coody Funk feat. Lonnie Barker Jr.
3. You Got To Boogie feat. Tysmizzy
4. This is What I Do
5. Miracle Potion feat. Hic Box, Shawn Biel
6. You Whisper Another Man's Name
7. What Can I Do (Main Version)
8. Get Down (Interlude)
9. This is For The B-Boys
10. Rewind Time feat. MNMsta
11. Let's Fall In Love Again Tonight feat. Black Los
12. Steppin' Out (Main Version)





Real-E
Diggy Down Recordz
2017-03-15

 

Stone Foundation - Street Ritual [2017 100% Records]

2011年に自分達のレーベル、ターニング・ポイントからアルバム『The Three Shades Of...Stone Foundation』 でデビュー。ビートルズやザ・フーに代表されるリズム&ブルースを取り入れたロックと、彼らに多大な影響を与えたアメリカのソウル・ミュージックの要素を融合した独特のサウンドで、多くのファンを魅了してきたイギリスのファンク・バンド、ストーン・ファンデーション。彼らにとって、2015年の『A Life Unlimited』以来となる、通算4枚目のフル・アルバム。

本作の特筆すべき点は、何と言っても豪華なゲスト・ミュージシャン達。これまでの作品でも、ノーラン・ポーターやカリーン・アンダーソンなどの著名なミュージシャンが参加していたが、今回のアルバムでは、彼らがソウル・ミュージックに触れるきっかけを作った、伝説のロック・バンド、ザ・ジャムのポール・ウェラーがプロデュースとフィーチャリング・ヴォーカルで参加。それに加え、2016年のアルバム『This Is Where I Live』がグラミー賞を獲得したことも記憶に新しい、スタックス・レコード所属の名手ウィリアム・ベルと、2015年に発売されたロックの名曲をカヴァーしたアルバム『Worthy』がヒットしたことでも話題になったベティ・ラヴェットを招聘。彼らが憧れたモッズの音楽面のルーツ、アメリカのソウル・ミュージックの現代風リメイクに挑戦している。

アルバムの1曲目は、ポール・ウェラーがヴォーカルを担当した"Back In The Game"。哀愁を帯びたギターの音色や、泥臭いビート、ちょっと野暮ったいコーラスが、60年代のスタックスの音楽を彷彿させるミディアム・ナンバー。70年代にはロックのアイコンとして喝采を浴びたポールが、オーティス・レディングが乗り移ったかのように、ダイナミックで荒々しい歌声を響かせる光景に、時間の経過と人間の成熟を感じさせる。

一方、ポールがヴォーカルを担当したもう一つの楽曲で、本作からのシングル曲でもある"Your Balloon Is Rising"は、ジーン・チャンドラーやジャッキー・ウィルソンが活躍していた60年代後半のシカゴのソウル・ミュージックを思い起こさせるロマンティックなバラード。ストリングスを使った流麗な伴奏や三連符を多用した優雅なメロディは、都会的な作風で多くのリスナーを惹きつけた、往年のシカゴ・ソウルを忠実に再現している。"Back In The Game"では、泥臭く、田舎っぽ歌唱を披露していたが、こちらの曲では、蜂蜜のように甘く、絹糸のように繊細なヴォーカルを聴かせくれる。経験を積んだことで、単なる歌唱の技術だけでなく。曲の性質に応じて表現方法を切り替える技も身につけた、ポールの優れた音楽センスが光る楽曲だ。


また、それ以外の楽曲にも、魅力的な録音がたくさんある。ウィリアム・ベルをヴォーカルに起用した
"Strange People"は、彼の最新作『This Is Where I Live』に収められていても不思議ではない、泥臭い雰囲気のミディアム・バラード。親子ほどの年齢差がある両者が、音楽によって結びつき、共通の趣味である60〜70年代の音楽に取り組む姿を見ると、音楽が先達から後進へと受け継がれる光景を見るようで、感慨にふけってしまう。

そして、本作のクライマックスとも言えるのが、ベティ・ラヴェットが参加した"Season Of Change"だ。御年70歳を超えるベティが、アレサ・フランクリンやエッタ・ジェイムズといった、アメリカの音楽史を代表する一流の女性シンガー達に負けずとも劣らない、強烈な音の塊を飛ばす力強いヴォーカルを聴かせてくれる重厚なバラードだ。バック・トラックも、彼女の歌にあわせ、往年のディーヴァの伴奏のような、生演奏を駆使した重く、荒々しい演奏にまとめあげている。

今回のアルバムは、これまでの作品以上に、往年のソウル・ミュージックを意識した作風になっている。だが、面白いのはその方向性だ。シカゴ・ソウルやサザン・ソウルを意識した楽曲が数多く並ぶ一方、モータウンなどのデトロイトの音楽や、ジェイムズ・ブラウンの登場以降、音楽の一ジャンルとして存在感を増し続けているファンクの要素は少ない。このセレクトにおける「癖」が、メンバーはポールを音楽の世界に引き込んだモッズ達の趣味趣向であり、彼らから多くの刺激を受けたバンドの音楽面のルーツであると考えると非常に興味深い。

イギリス人の解釈と、アメリカ人の演奏技術が融合したことで生まれた、21世紀を生きるリスナーに向けた本格的なソウル・ミュージック。これは、年季を積んだソウル・ファンに独り占めさせちゃダメでしょ。

Producer
Pall Weller

Track List
1. Back In The Game feat. Paul Weller
2. Open Your Heart To The World
3. Love Rediscovered
4. The Limit Of A Man
5. The Colour Of.....
6. Street Rituals
7. Strange People feat. William Bell
8. Your Balloon Is Rising feat. Paul Weller
9. Season Of Change feat. Bettye Lavette
10. Simplify The Situation





ストリート・リチュアルズ
ストーン・ファンデーション
Pヴァイン・レコード
2017-03-31

 

Jamiroquai ‎– Automaton [2017 Universal]

1992年にフロント・マンのジェイ・ケイを軸にした6人組バンドとして活動を開始。メンバーの脱退、加入を経て同年のシングル『When You Gonna Learn』でデビュー。翌93年には初のフル・アルバム『Emergency on Planet Earth』をコロンビアから発表し、全英チャートの1位を獲得するなど、華々しいデビューを飾った英国発のファンク・バンド、ジャミロクワイ。

その後、2016年までに7枚のオリジナル・アルバムと、多くのシングルを発表。中でも97年に発表された『Travelling Without Moving』は日本だけで140万枚、全世界で700万枚を売り上げるなど、ポピュラー・ミュージックの歴史に残る大ヒットになった。

本作は、2010年の『Rock Dust Light Star』以来、実に7年ぶりとなるオリジナル・アルバム。今回の作品では、「AIなどの新しい科学技術が浸透した現代の世界で、私達が見失いつつあるもの」をテーマに掲げるなど、相変わらず社会派な態度を見せる一方、収録曲では、シンセサイザーなどの電子楽器をこれまでの作品以上に積極的に取り入れた、モダンなサウンドを聴かせてくれる。

アルバムの1曲目である"Shake It On"は、リズム・マシーンなどの電子楽器と、従来から続く生バンドの演奏を融合したスタイリッシュなダンス・ナンバー。ローファイなシンセサイザーを多用しながら、ストリングスの音色や、人力で演奏されるキーボードなど、アナログの要素も取り入れた楽曲で、ヴォーカルのキャラクターこそ異なるが、ダフトパンクの"Get Lucky"にも似た雰囲気の、2017年仕様にアレンジされたディスコ音楽だ。

これに対し、本作のタイトル・トラックであり、アルバムからの先行シングルでもある"Automaton"は、電子楽器(テクノロジー)を演奏の中核に据えた、本作のコンセプトを体現したような楽曲であり、彼らのキャリアの中では異色の作品。オープニングで使われるシンセサイザーなどのリフから、リズム機材、ベースまで、伴奏の大半を電子楽器で録音し、演奏内容も機械にプログラミングしたような緻密で正確なものになっている。ジェイ・ケイの声も途中でループさせるなど、細かいところまで手が込んでいる。電子音を多用した緻密な演奏とソウルフルな歌声はウィークエンドの"Starboy"を彷彿させる。

一方、もう一つのシングル曲である"Cloud 9"は、"Shake It On"に近い、電子楽器とバンド演奏を巧みに組み合わせた洗練されたアップ・ナンバー。図太いシンセサイザーの音色や、地味だが無駄のないメロディを取り入れている点が少し違うが、97年に発表された”Canned Heat”と雰囲気が似ている、疾走感が心地よい楽曲だ。

それ以外で気になるのは、シンセ・ベースの重厚な演奏と、色々な音色のキーボードを用いた華やかな伴奏が、ジェイ・ケイのクールな歌声を引き立てる"Something About You"や、シュガーヒルズ・ギャングのような80年代のヒップホップ・ミュージシャンを思い起こさせる複雑でコミカルなベース・ラインと、一度聴いたら耳から離れないフレーズを次々と放つジェイ・ケイの存在感が光るファンク・ナンバー”Nights Out In The Jungle”、エムトゥーメイの"Juicy Fruits"を連想させる、リズム・マシンやシンセサイザーの正確な演奏と、人間にしか生み出せない絶妙な匙加減のパフォーマンスを同居させた”Dr Buzz”などの楽曲。これらの曲では、今まで以上に多くの新しい技術や機材を取り入れる一方、それを既存のバンド・サウンドで差し替えるのではなく、バンドの音楽に新しい一面を引き立てるツールとして活用しているのが面白い。

今回のアルバムの中核となるコンセプトは、おそらく「テクノロジーに支配されず、それを利用してやろうぜ!」というメッセージだと思う。だが、収録曲をじっくり聴くと、それ以上に、作品の背後にある前作から7年の間に起きた音楽業界の変化、具体的に言えば、ドレイクやウィークエンド、ダフトパンクやカニエ・ウエストなどが、新しいツールと既存の音楽スタイルを絶妙なバランスで同居させた作品でで成功を収めてきた現状に対する、彼らなりの意思表示にも聴こえる。

電子音楽の要素を取り入れた黒人音楽や、生演奏を含むディスコ・ミュージックのエッセンスを取り入れたクラブ・ミュージックなど、ジャンルの枠を超えた音楽性の楽曲が流行している2010年代。その思想を、90年代から新しい機材や前衛的なプロモーション・ビデオで先取りしてきた彼らによる、同時代への批評まで飲み込んだ傑作だ。

Producer
Jay Kay, Matt Johnson

Track List
1. Shake It On
2. Automaton
3. Cloud 9
4. Superfresh
5. Hot Property
6. Something About You
7. Summer Girl
8. Nights Out In The Jungle
9. Dr Buzz
10. We Can Do It
11. Vitamin
12. Carla
13. Nice And Spicy (Bonus Track)




オートマトン
ジャミロクワイ
ユニバーサル ミュージック
2017-03-31

 
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