melOnの音楽四方山話

オーサーが日々聴いている色々な音楽を紹介していくブログ。本人の気力が続くまで続ける。

Funk

Martha High - Tribute To My Soul Sisters [2017 Record Kicks]

ブーツィー・コリンズやメイシオ・パーカーなどの名手を輩出する一方、リン・コリンズやマーヴァ・ホイットニー、タミー・テレル(当時はタミー・モンゴメリー名義で在籍)など、多くの女性シンガーが所属していたジェイムズ・ブラウンのバンド。彼のバンドから巣立ち、今も一線で活躍している女性シンガーが、ワシントンDC出身のマーサ・ハイだ。

同じハイスクールに通う友人と結成したガールズ・グループ、フォー・ジュエルズがジェイムズ・ブラウンに認められ、バック・コーラスとして加入した彼女は、65年から2000年まで、実に35年もの間、彼のツアーに帯同。その一方で、72年には初の自身名義のシングル”Georgy Girl”をリリース、79年には初のソロ・アルバム『Martha High』を発売するなど、バンド活動と並行しながら着実に実績を積み上げてきた。

2000年以降は、主にソロとして活動。ヨーロッパのレーベルから作品を発表しつつ、日本を含む世界各国でライブを行ってきた。

本作は、2016年の『Singing For The Good Times』以来、約1年ぶりとなる新作。これまでにもイギリスのスピードメーターやフランスのシャオリン・テンプル・ディフェンダー、イタリア人プロデューサーのルーカ・サピオなど、ジェイムズ・ブラウンの音楽から多くの影響を受けてきたミュージシャンと組んできた彼女だが、今回のパートナーに選んだのは、日本のオーサカ=モノレール。近年はヨーロッパを含む海外でのライブも経験するなど、日本を代表するファンク・バンドとして知られている彼らと録音した本作は、ジェイムズのバンドから世に出た女性シンガー達の楽曲を取り上げた、トリビュート・アルバムになっている。

アルバムのオープニングを飾るのは、リン・コリンズが1972年に発表した”Think (about it)”のカヴァー。溌剌とした歌声が魅力のリンのヴォーカルを御年68歳(執筆時点)のマーヴァが忠実に再現している点が面白い。オーサカ・モノレールが生み出すグルーヴが、オリジナル以上にダイナミックな点も見逃せない。原曲を忠実に再現しつつ、その持ち味をオリジナル以上に強調したアレンジが魅力の佳曲だ。

これに対し、リズム&ブルース作品の”A little taste of soul”は、後にチェスからもレコードをリリースしているシュガー・パイ・デサンドが、1962年に発売したダンス・ナンバー。激しく歌う姿が印象的な原曲に比べると、グラマラスで貫禄溢れる歌唱が印象的な曲だ。唸るようなベースと軽妙なリズムも格好良い。ジェイムス・ブラウンといえば”Sex Machine”のようなファンク・ミュージックのイメージが強いが、この曲のような50年代、60年代に制作していたリズム&ブルース・ナンバーにも良曲が多い。エイミー・ワインハウスの登場以降、ヴィンテージ・ミュージックが見直されている今だからこそ聴きたい作品だ。

また、同じリズム&ブルースの作品では、ジェイムズ・ブラウンが63年に発表し、同じ年にタミー・テレル(当時はタミー・モンゴメリー名義)がカヴァーした”I cried”も見逃せない。泣き崩れるように歌うジェイムズのヒット曲を、タミーは可愛らしい声を活かした甘酸っぱい歌唱で歌いなおしたことでも有名な本作。マーサはふくよかな歌声と老練な歌唱で、両者の演奏とは一味違う、本格的なソウル・バラードに改変している。彼女の高度な表現力と、様々なアレンジに耐えうるジェイムズの作品の奥深さを感じさせる良曲だ。

そして、本作に”Sex Machine”のようなファンク作品を期待する人にお勧めしたいのが、リン・コリンズが1973年に録音した”Mama feel good”だ。ジェイムズ・ブラウンがサウンドトラックを担当した同年の映画「Black Caesar」で使われたこの曲は、乾いた音色のギターのカッティングと、重厚なドラムとベースが生み出すグルーヴが魅力のミディアム・ナンバーだ。ジェイムズ関連のファンク・ナンバーではしばし見られる、少し肩の力を抜いた演奏をじっくりと聴かせる作品だが、彼女は絶妙な匙加減で乗りこなしている。

このアルバムを聴いて強く感じるのは、マーサの高い歌唱力と、ジェイムズが残した楽曲の多彩さ、そして、彼のバンドから羽ばたいていったシンガー達の強い個性だ。ロックンロールにも通じる激しいリズム&ブルースから、リスナーの胸を揺さぶるダイナミックなバラード、腰を刺激するファンクまで、様々なスタイルの楽曲を色々なスタイルで演奏してきた名シンガー達。そんな彼女達の楽曲を、自分の音楽に染め上げるマーサの豊かな表現力と想像力が本作の醍醐味だろう。そして、彼女を支えるオーサカ・モノレールの高い演奏技術が、ジェイムズ・ブラウンが提供した曲のカヴァーという難解なお題を実現可能なものにしていると思う。

ジェイムズ・ブラウンが残した珠玉の名曲が持つ魅力を、余すことなく収めた良質なトリビュート・アルバム。マーサとオーサカ・モノレールの演奏をじっくりと楽しんでも良し、ジェイムズが手掛けた女性シンガーの作品を集めた『James Brown's Original Funky Divas』に入っているオリジナル・ヴァージョンと聴き比べても良し、一粒で二度おいしい企画盤だ。

Producer
Osaka Monaurail

Track List
1. Think (about it)
2. This is my story
3. A little taste of soul
4. Mama’s got a bag of her own
5. I cried
6. Don’t throw your love in the garbage can
7. Things got to get better
8. Put it on the line
9. Unwind yourself
10. You can make it if you try
11. Answer to mother popcorn
12. Mama feel good
13. Oh what a feeling






トリビュート・トゥ・マイ・ソウル・シスターズ
マーサ・ハイ
ディスクユニオン
2017-11-18



Sheila E. - Iconic: Message 4 America [2017 Stilettoflats Music]

プリンスのバンド・メンバーとして10年近く活動し、その後は安室奈美恵やビヨンセ、リンゴ・スターなど、様々な国のトップ・ミュージシャンと一緒に仕事をしてきた、カリフォルニア州オークランド出身のシンガー・ソングライターで演奏家の、シーラEことシーラ・セシリア・エスコヴェード。

ファンタジーやコンコードに録音を残しているパーカッショニストのピート・エスコヴェードを父に、サンタナやアズテカでも演奏していたコーク・エスコヴェードを叔父に持つ彼女は、10代の頃からレコーディングやステージを経験してきた。また、近年は自身のバンド、Eファミリーを結成し、ツアーやレコーディングを行うなど、バンドのリーダーとして、自身の音楽を世に送り出してきた。

本作は、2013年の『Icon』以来となる通算8枚目のオリジナル・アルバム。「メッセージ・フォー・アメリカ」というサブタイトルの通り、社会にメッセージを投げかけた作品で、ジェイムス・ブラウンやスライ&ザ・ファミリー・ストーン、かつて一緒に演奏していたプリンスなどの楽曲を、豊富な経験を活かした大胆な解釈でカヴァーしている。

アルバムのオープニングを飾るのは、ジェイムス・ブラウンの”Gonna Have A Funky Good Time”と、アメリカ国歌の”星条旗よ永遠なれ”を混ぜ合わせた”Funky National Anthem: Message 2 America”。父ピートや兄弟のユアン、ピーター・マイケルが参加したこの曲では、多くの打楽器を使ったダイナミックなグルーヴが堪能できる。曲の途中で、マーティン・ルーサー・キングの演説と、バラク・オバマの演説を挟み込むことで、時代が変わってもアメリカが抱え続ける課題と、それぞれの時代で問題へと立ち向かってきた人々の存在を浮き彫りした演出が面白い。

これに続くのはビートルズのヒット曲をメドレーで演奏した”Come Together / Revolution”。元ビートルズのリンゴ・スターがドラムで参加したこの曲では、彼女はヴォーカルも担当。マイケル・ジャクソンやシル・ジョンソンなど、多くの黒人ミュージシャンがカヴァーしてきたビートルズの有名曲を、彼女は原曲よりテンポを落とした、ドロドロとしたアレンジで演奏している。曲の途中で”All You Need Is Love”を盛り込んでいるのが心憎い。

また、スライ&ザ・ファミリーストーンの有名曲をカヴァーした”Everyday People”は、グループの初期から在籍していたフレディ・ストーンがギターとヴォーカルで参加。敢えて肩の力を抜いて、ラフに演奏したバンドが、爽やかなサウンドと軽妙なメロディが魅力であるスライ・ストーンの音楽をうまく再現している。

そして、彼女がブレイクするきっかけを生んだプリンスの曲からは”America” と”Free”の2曲をピックアップ。シンセサイザーを駆使した近未来的な雰囲気の伴奏をベースに、切れ味の鋭い歌と演奏が格好良い作品。ヴォーカルが粘っこい歌声のシーラEに変わったこと以外、オリジナルと大きく違わないのは、彼女の原点であるプリンスのバンドの音を大切にしたからだろうか。

このアルバムでは60年代から80年代まで、様々な時代の黒人ミュージシャンの作品を取り上げつつ、社会に向けたメッセージを盛り込んでいるのだが、彼女の凄いところは年代も作風も異なるミュージシャンの楽曲を、一つの作品に収めているところだと思う。おそらく、彼女自身が様々な音楽を経験できる環境で育ち、人一倍演奏技術への拘りが強いプリンスの下で腕に磨きをかけてきたことが大きいと思う。

黒人音楽の豊かな土壌をベースに、自身のスタイルと強いメッセージを打ち出した面白いアルバム。メッセージとは他人に押し付けるものではなく、投げかけるものだということを、彼女の音楽は教えてくれているように思う。

Producer
Gilbert Davison, Sheila E.

Track List
1. Funky National Anthem: Message 2 America
2. Come Together / Revolution
3. Everyday People
4. Inner City Blues / Trouble Man
5. It Starts With Us
6. Jesus Children Of America
7. James Brown Medley (Talkin' Loud And Sayin' Nothing, Mama Don't Take No Mess, Soul Power, Get Involved, Super Bad)
8. Blackbird
9. One Nation Under A Groove / Mothership Connection
10. Pusherman
11. Respect Yourself
12. I Am Funky
13. Yes We Can
14. America / Free
15. What The World Needs Now Is Love





ICONIC MESSAGE 4 AMERICA [LP] [Analog]
SHEILA E.
STILETTO FLATS MUSIC
2017-10-06

WILL SESSIONS - DELUXE [2017 Sessions Sounds]

2008年にアルバム『Many Faces』でレコード・デビュー。ジェイムズ・ブラウンやファンカデリックなど、多くの先人のスタイルを吸収、混ぜ合わせた音楽性と、それを具体的な作品に落とし込む高い演奏技術で、熱心な音楽ファンを惹きつけたデトロイト発のファンク・バンド、ウィル・セッションズ。

2011年には、元スラム・ヴィレッジのエルザイが、ナズの代表作『Illmatic』をカヴァーしたアルバム『Elmatic』で、バック・トラックを担当。昔のレコードをサンプリングして作られたビートを、生演奏で忠実に再現したことで、一気に名を上げた。その後も、ヒップホップの有名曲のトラックをバンド演奏で再現した『Mix Takes』シリーズなど、複数の録音作品を発表。リリースの度に、その評価を高めていった。

この作品は、彼らにとって初のオリジナル曲によるアルバム。過去に7インチ・レコードで発売された曲の長尺版を含むもので、プリンスやジョージ・クリントンなど、多くのミュージシャンと仕事をしてきたデトロイト出身のキーボーディスト、アンプ・フィドラーや、ジェイムズ・ブラウンにそっくりな歌唱が注目を集め、ダップトーンズとのコラボレーション曲も残している、マイアミ出身のベテラン・シンガー、リッキーキャロウェイのほか、元ブラックバーズのフルート奏者アラン・バーンズや、『Elmatic』でも歌声を披露しているココ・バタフライなど、豪華な面々が終結している。

アルバムの1曲目、アンプ・フィドラーをフィーチャーした”In the Ride”は、ティム・シェラバーガーのブリブリと唸るベースと、ジェイムズ・ブラウンを支えた名手、フェルプス・キャットフィッシュ・コリンズを彷彿させる軽妙でセクシーなライアン・ジンパートのギターが光るアップ・ナンバー。絶妙なタイミングでリスナーを盛り上げるホーン・セクションや、複雑なリズムを最後まで正確にたたき続けるブライアン・アーノルドの存在も見逃せない。

続く ”Shake It Up, Shake It Down”はリッキー・キャロウェイがヴォーカルを担当した楽曲。曲の冒頭で流れる声を聴いた瞬間、ジェイムズ・ブラウンの録音をサンプリングしたのかと勘違いしたが、全てリッキーによるものらしい。奔放なようで計算されつくした歌唱など、ジェイムズ・ブラウンのスタイルにそっくりなリッキーのパフォーマンスも面白いが、ジェイムズの音楽を忠実に再現した精密だが荒々しい演奏も聴きどころ。彼が参加したもう一つの曲”Come On Home”は、ジェイムズの”Hot Pants”を意識したような、軽快なベースの演奏が光るミディアム・ナンバー。どちらの曲も、往年の名手を意識しつつ、彼らの音楽を自分達のセンスと演奏技術で再構築した魅力的な作品だ。

一方、ココ・バタフライを起用した”Run, Don't Walk Away”は、ギターやベースの粘っこい演奏と、マーサ・ハイやマーヴァ・ホイットニーを彷彿させる、グラマラスな歌声と、アグレッシブなパフォーマンスが格好良いミディアム・ナンバー。スロー・テンポでも、安定感抜群の泥臭いグルーヴを聴かせる演奏者にも注目してほしい。

だが、このアルバムの一番の聴きどころは、なんといっても彼らの高い演奏技術だろう。彼らのスキルを堪能できる単独名義の楽曲は”Off the Line”と”The Diesel”の2曲。中でも、2016年にシングル化された”The Diesel”は、『Elmatic』での演奏を思い起こさせる、ジェイムズ・ブラウン一派のスタイルを継承した、複雑だが精密なグルーヴと、リスナーの心を掻き立てる華やかなホーン・セクションが魅力の、インストゥメンタル作品。フルートやオルガンが次々と飛び出し、リスナーを飽きさせない構成も素晴らしい。

このアルバムは、『Elmatic』で彼らのことを知ったリスナーを意識しつつ、ジェイムズ・ブラウンやPファンク一派など、ファンクの歴史を築き上げてきた先達の手法を丁寧に継承した曲作りが目立つ。リッキー・キャロウェイやアンプ・フィドラーを起用したことも、当時の雰囲気を再現するのに一役買っているし、バンドと頻繁にコラボレーションしているココ・バタフライのパワフルなヴォーカルも、往年の女性ファンク・シンガーを彷彿させる。彼らの個性を取り込むことで、自分達の演奏に、往年のファンクの名手のダイナミックで奇抜な作風と、何度聴いても飽きることのない、普遍的な面白さを加えているように見える。

ドラムとベースを軸に組み立てた安定したグルーヴを核に、新旧のブラック・ミュージックのエッセンスを取り込んだバラエティ豊かな楽曲で、懐かしさと新鮮さを両立した魅力的なファンク作品。ヒップホップのサンプリング・ソースを通してファンクに興味を持った人にはぜひ聞いてほしい。ファンク・ミュージックの奥深さと、コンピュータとは一味違う、バンド演奏の面白さを体験できると思う。

Producer
Sam Beaubien

Track List
1. In the Ride feat. Amp Fiddler
2. Shake It Up, Shake It Down feat. Rickey Calloway
3. Run, Don't Walk Away feat. Coko
4. Off the Line
5. Jump Back feat. Rickey Calloway
6. Cherry Juice feat. Allan Barnes
7. Come On Home feat. Rickey Calloway
8. The Diesel






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