ブラック・ミュージック千本ノック~SoulとR&Bと色々な音楽~

管理人が手に入れたR&Bのアルバム、1000枚の紹介文を書き続けるブログ その先に見えるものは天国か地獄か・・・

男性シンガー・ラッパー

Wizkid - Sounds from the Other Side [2017 Starboy, RCA, Sony]

子供のころからフェラ・クティやボブ・マーレーなどの音楽に慣れ親しみ、11歳の頃になるとレコーディング活動を開始。同時に、リル・プリンズの名義で多くのステージを経験してきた、ナイジェリアのラゴス出身のシンガー・ソングライター、ウィズキッドことアヨデジ・イブラヒム・バロガン。

2010年に初のフル・アルバム『Superstar』をリリースすると、アフロ・ビートとヒップホップやR&Bを融合した作風が評判を呼び、ナイジェリアの音楽賞でアルバム・オブ・ザ・イヤーを獲得。ナイジェリアを代表するアーティストの一人に上り詰めた。また、2014年には2枚目のアルバム『Ayo』を発表。フェミ・クティのようなナイジェリア出身のアーティストに加え、エイコンやウェイルのようなアメリカのミュージシャンも起用した本作も成功を収め、アフリカ地域を代表する人気ミュージシャンと称されるようになった。

3年ぶりの新作となる今回のアルバムは、RCAソニー(ただし、RCAはソニー系列)が配給を担当した世界デビュー作。サーズやスペルズといった、ナイジェリア出身のプロデューサーを起用しつつ、ドレイククリス・ブラウン、メジャー・レイザーなど、アメリカで人気のヒップホップ、R&Bアーティストを何人も招いた豪華な作品になっている。

ドレイクをフィーチャーした”Come Closer”は、サーズがプロデュースを担当。色々な音色を取り入れた色鮮やかなビートは、ドレイクの”Passionfruits”にも似ているが、こちらの方がビートは重い。声質が似ているだけでなく、歌うように言葉を繋ぐラップが特徴の両者のパフォーマンスは、一聴しただけでは判別できないくらいそっくりだ。そんな二人が、微妙な声質の違いを活かしてなめらかなマイク・リレーを行う姿は必見だ。

これに対し、メジャー・レイザーがプロデュースとパフォーマンスで参加した”Naughty Ride”は、アフロ・ビートとエレクトロ・ミュージックを融合した不思議なトラックが印象的なアップ・ナンバー。軽妙でリズミカルなビートに、アクセントとして電子音を加えたビートは新鮮だ。斬新なトラックの上で、流麗なメロディを響かせるヴォーカルも意外性があって面白い。

しかし、本作の斬新さを強く感じるのは、なんといってもクリス・ブラウンを招いた”African Bad Gyal”だろう。プロデュースはサーズだが、アフロビートにギターやサイレンの音を組み合わせたトラックは、ダンス・ホール・レゲエやトラップのようにも聴こえる。そんなビートをバックに、太い声で軽やかに言葉を繋ぐウィズキッドと、しなやかで色っぽい歌声を披露するクリス・ブラウンが個性豊かなパフォーマンスを披露する面白い曲だ。

そして、本作の最後を締めるのがトレイ・ソングスが客演した”Gbese”は、デルBが制作を担当した作品。低音を絞ったビートは、カリプソのようにも聴こえる新鮮なもの。その上で、滑らかな声質を活かした丁寧な歌唱がウリのトレイ・ソングスと、軽やかなラップを披露するウィズキッドのコンビネーションも見逃せない。

彼の音楽の面白いところは、アフロ・ビートをベースにしながら、アメリカのヒップホップやR&Bのトレンドを的確に押さえている点だろう。ヒップホップやR&Bがアフロ・アメリカン由来の音楽とはいえ、アフリカのポップスとは異なる点が数多くある。彼の音楽はその差異と正面から向き合い、アメリカの音楽をアフロ・ビートに多様性をもたらすパーツとして使いこなしている点が特徴的だと思う。

世界中の音楽市場に影響を与えてきたアメリカのブラック・ミュージックを丁寧に咀嚼し、母国のポピュラー音楽と組み合わせて、自身の音楽に落とし込んだ魅力的なアルバム。世界には魅力的なミュージシャンが沢山いることを再認識させてくれる良作だと思う。

Producer
Sarz, Del B, Major Razer, DJ Mastard etc

Track List
1. Sweet Love
2. Come Closer feat. Drake
3. Naughty Ride feat. Major Lazer
4. African Bad Gyal feat. Chris Brown
5. Daddy Yo feat. Efya
6. One for Me feat. Ty Dolla Sign
7. Picture Perfect
8. Nobody
9. Sexy
10. All for Love feat. Bucie
11. Dirty Wine feat. Ty Dolla Sign
12. Gbese feat. Trey Songz






blackbear - Digital Drug Lord [2017 bearTrap TrafficEntertainment]

フロリダ州デイトン・ビーチ生まれ、カリフォルニア州ロス・アンジェルス育ちのシンガー・ソングライター兼プロデューサー、ブラックベアーことマシュー・タイラー・マスト。

ガレージ・ロックのバンドから音楽に入った彼は、コンパウンド・エンターテイメントから誘いを受け、18歳の時にアトランタへ移住。ニーヨのようなソングライターとして活躍することを期待され、プロ・ミュージシャンとしての活動を開始する。

そんな彼が頭角を現したのは2012年。カナダ出身のシンガー・ソングライター、ジャスティン・ビーバーの”Boyfriend”にソングライターとして参加したときだ。同曲は、アメリカ国内だけでトリプル・プラチナム(300万ダウンロード)という大ヒットになり、彼も一躍ヒット・メイカーの仲間入りを果たす。

その後も、G-イージーやフーディー・アレンなど、様々なジャンルの人気ミュージシャンの作品に携わる一方、2012年にソロ名義では初作品となるミックス・テープ『Sex, The Mixtape』をリリース。同じ年に初のEP『Foreplay』を発表すると、以後、毎年1作のペースで作品を発売。自主制作による配信限定の作品ながら、新しい音に敏感な音楽ファンの間で高い評価を受けた。

また、2015年には自身のレーベル、ベアートラップから初のフル・アルバム『Deadroses』を発表すると、同年には2作目『Help』をリリース。どちらの作品も、若いヒット・メイカーらしい斬新でキャッチーな音楽を聴かせてくれた。

そして、このアルバムは前作から約2年ぶりとなる、通算3枚目のオリジナル・アルバム。本作の発売1か月前に、シンガー・ソングライターのマイク・ポンサーとコラボレーション・アルバム『Mansionz』を発表し、同時期にはリンキン・パークのアルバム『One More Time』の”Sorry for Now”を手掛けるなど、多忙な日々を送る中で発表された新作だけに、我々の度肝を抜いた。

今回も過去の2作品同様、本作も自身のレーベル、ベアートラップからのリリース。しかし、デジタル版の配信をインタースコープが、CDやアナログ盤の配給をトラフィック・エンターテイメントが担当するなど、実質的なデビュー作となっている。また、外部のソング・ライターを積極的に招聘し、収録曲にバラエティを持たせた作品になっている。

アルバムの2曲目に収められている”moodz”はアトランタ出身のラッパー24アワーズこと、ロイス・リジーをフィーチャーしたミディアム・ナンバー。パーティネクストドアの作品に何度も参加しているショーン・シートンをソングライターに起用したこの曲は、ゆったりとしたテンポのトラックの上で、なめらかで甘酸っぱい歌声を駆使して、ラップのような歌を聴かせる、パーティーネクストドアっぽい作品。24アワーズのパートでは、ドレイクを彷彿させる荒っぽい声で歌うようなラップを披露している点も面白い。R.ケリーに始まり、ドレイクやパーティーネクストドアによって音楽業界の中心に躍り出た「歌うようなラップ」をうまく取り入れた佳作だ。

この路線を踏襲したのが本作からシングル・カットされた”do remi”だ。後にグッチ・メインを招いた新ヴァージョンも制作されたこの曲は、ニーヨの”Incredible”やフィフス・ハーモニーの”Big Bad Wolf”のようなR&B作品のほか、リンキン・パークの”Sorry for Now”やワン・オク・ロックの”Bedroom Warfare”のようなロック・ミュージシャンの録音まで、幅広く手掛けてきたアンドリュー・ゴールドスタインとの共作だ。こちらの曲はファルセットを多用し、メロディを強調したヴォーカル曲寄りの作品だ。R.ケリーやマーカス・ヒューストンを思い起こさせる、ヒップホップの要素をうまく取り入れたスロー・バラードになっている。

また、メンフィス出身のラッパー、ジューシーJとコラボレーションした”juicy sweatsuits”は、ジャスティン・ビーバーの”Boyfriend”を思い起こさせるしなやかなメロディのアップ・ナンバー。”Boyfriend”ではジャスティンが歌とラップを使い分けていたが、この曲では歌をマシューがラップをジューシーJが担当している。マシューが歌うなめらかで聴きやすいメロディを聴くと、彼のソングライティング技術が確かなものだと再認識させられる。本作の隠れた目玉と言っても過言ではない良曲だ。

そして、本作では珍しい正統派バラードが”if i could i would feel nothing”だ。語り掛けるように歌うマシューのヴォーカルは、トレイ・ングスやマーカス・ヒューストンのようなR&Bシンガーよりも、エド・シーランやジャスティン・ビーバーのようなポップ・シンガーに近いもの。シンプルなメロディを丁寧に歌う姿が印象的だ。

彼の音楽の面白いところは、R&Bやヒップホップをベースにしながら、高度でマニアックな技術に頼ることなく、色々な趣味趣向の人に受け入れられる、キャッチーで親しみやすい作品に仕立て上げているところだろう。おそらく、彼のキャリアがガレージ・ロックという、R&Bやヒップホップとは客層が大きく異なるジャンルから始まったことが大きいのだと思う。

ロックやエレクトロ・ミュージックと並行して、R&Bやヒップホップに慣れ親しんできた世代の人間らしい、柔軟な発想と鋭い感性が光る佳作。R&Bが人種の壁を越えて、アメリカ社会に定着したことを感じさせる面白い作品だ。

Track List
1. hell is where i dreamt of u and woke up alone
2. moodz feat. 24hrs
3. i miss the old u
4. do remi
5. wish u the best
6. juicy sweatsuits feat. Juicy J
7. double
8. if i could i would feel nothing
9. chateau
10. make daddy proud






Dizzee Rascal - Raskit [2017 Dirtee Stank Recordings, Island Records]

やんちゃな生活を送っていたハイスクール時代に音楽に目覚め、2000年代初頭にはドラムン・ベースのDJとして活動。2003年にXLレコードからアルバム『Boy in da Corner』でレコード・デビューを果たすと、グライム・シーンを代表するミュージシャンとして頭角を現した、ロンドンのカンバーウェル出身のMCでプロデューサー、ディジー・ラスカルことディラン・ミルズ。彼にとって、2013年の『The Fifth』以来、約4年ぶり6枚目となるオリジナル・アルバム。

本国での人気に比べ、日本での知名度が今ひとつな彼だが、ジャスティン・ティンバーレイクやN.E.R.D.と一緒にアメリカ・ツアーを行い、2012年のロンドン・オリンピックの開会式では、代表曲の”Bonkers”を大観衆の前で披露するなど、イギリスを代表するミュージシャンとして、音楽シーンを牽引してきた。

今回のアルバムでは、カルドやサルヴァといったアメリカ出身のクリエイターや、ジ・アーケイドやヘヴィー・トラッカーズなどのイギリス出身のプロデューサーを起用。彼のウリであるグライムを核にしつつ、トラップやクランクといった、彼らに影響を与えてきたアメリカのヒップホップを取り入れた作品になっている。

本作の2曲目に収められている”Wot U Gonna Do?”は、ロス・アンジェルス出身のDJ、ヴァレンティノ・カーンがプロデュース。リル・ジョンやミーゴスなどの作品で耳にするような、シンセサイザーを駆使したトラップ・ビートに乗って、畳み掛けるように言葉を繰り出すアグレッシブな作品だ。 数多くの変則ビートを乗りこなしてきた彼らしく、この曲でも、最初から最後までエネルギッシュなラップを聴かせてくれる。同じようなビートを使っても、MCの解釈で全く違う音楽に聴こえる点が面白い。

また、本作に先駆けてリリースされたシングル曲“Space”は、ロス・アンジェルス出身のクリエイター、サルヴァとの共作。この曲では、2ステップやグライムを彷彿させる小刻みに鳴らされるドラムを取り入れつつ、ウェイルやミーゴスのアルバムに入っていそうな、ミディアム・テンポの作品に落とし込んでいる。この曲では、畳み掛けるようなラップを披露し、グライムの疾走感を残しつつ、アメリカのヒップホップのようにも聴かせている点に注目してほしい。

一方、テル・アビブ出身のダン・ファーバーを起用した”Ghost”は、中東の音楽っぽい笛の音色を取り入れたリフと、グライムのビートを融合させたサウンドが印象的な曲だ。彼の持ち味である、エネルギッシュなラップと先鋭的トラックの融合が心地よい。過去の作品を踏襲しつつ、それを進歩させた佳曲だ。

また、スローテンポの楽曲では、ロンドン発のプロダクション・チーム、ジ・アーケイドが制作に参加、ゲスト・ヴォーカルにニコを起用した”The Way I Am”が存在感を発揮している。柔らかい音色のシンセサイザーを多用したロマンティックな伴奏と、ドラムの音が乱れ飛ぶ荒々しいビートの組み合わせが光るトラックと、野太いディジー・ラスカルのラップ。テヴィン・キャンベルを彷彿させるニコの甘酸っぱい歌声が一体化した魅力的な作品だ。サビをシンガーが担当していることもあり、本作の収録曲の中では最もアメリカのヒップホップに近い雰囲気を醸し出している。

10年以上に渡って、クラブ・シーンとヒット・チャートの両方で奮闘し、結果を残してきた彼だけあって、今回のアルバムも非常にクオリティが高い。しかし、本作は過去の録音に比べて、アメリカのヒップホップやR&Bに近しいように思える。恐らく、ファレル・ウィリアムスの”Happy”のような2000年代の黒人音楽よりもアップテンポな作品や、カルヴィン・ハリスなどのエレクトロ・ミュージック畑のクリエイターが黒人シンガーを起用するようになったことで、楽曲のテンポやトラックについて、聴き手側も柔軟な考えができるようになったからだろう。

時代を先取りし過ぎた名手の感性が、正しかったことを裏付ける佳作。10年以上前からヒップホップとエレクトロ・ミュージックの融合してきた彼の音楽を、心ゆくまで堪能してほしい。

Producer
Dizzee Rascal, Cardo, Darkness, Deputy, Dan Farber etc

Track List
1. Focus
2. Wot U Gonna Do?
3. Space
4. I Ain't Even Gonna Lie
5. The Other Side
6. Make It Last
7. Ghost
8. Business Man
9. Bop N' Keep It Dippin'
10. She Knows What She Wants
11. Dummy
12. Everything Must Go
13. Slow Your Roll
14. Sick A Dis
15. The Way I Am
16. Man Of The Hour




Raskit
Dizzee Rascal
Imports
2017-07-28

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