ブラック・ミュージック千本ノック~SoulとR&Bと色々な音楽~

管理人が手に入れたR&Bのアルバム、1000枚の紹介文を書き続けるブログ その先に見えるものは天国か地獄か・・・

男性シンガー・ラッパー

B. Thompson - Love. Funk. Happiness. [2017 Diggy Down Recordz]

ネバダ州のラス・ヴェガス出身、現在はニューヨークを拠点に活動するシンガー・ソングライター、B.トンプソン。声をロボット風に加工する楽器、トーク・ボックスを駆使した独特のスタイルで音楽の歴史に名前を残したロジャー・トラウトマンを遠い親戚に持ち、彼自身も2013年の『Evolution』や、2014年の『For The Love』など、2枚のフル・アルバムを含む複数の作品を発表。その他にも、シャギーの”It Wasn’t Me”や、松下優也の”She's A Liar”などでペンを執り、シンガーとしてフランスのプロダクション・チーム、ドッグ・マスターや日本のT-グルーヴの作品に参加するなど、歌手として作家として、世界を股にかける活躍を見せてきた。

このアルバムは、彼自身の名義では3年ぶり3作目となるオリジナル・アルバム。過去の2作品同様、フランスのディギー・ダウンからのリリースで、同レーベルからアルバムを発売しているフランスのプロダクション・チーム、タッチ・ファンクや、初のフル・アルバム『Move Your Body』も好評な日本のT-グルーヴ、イギリスの音楽ユニット、ドゲット・ブラザーズのグレッグ・ドゲットなど、彼と縁の深いクリエイターが集結。シンセサイザーなどの電子楽器と、ギターやベースなどを巧みに使い分けた、スタイリッシュなソウル・ミュージックに取り組んでいる。

アルバムに先駆けて公開された”Anything”は、そのT-グルーヴとグレッグ・ドゲットの共作。ブリブリと唸るベースに、乾いたギター、透き通ったシンセサイザーの音色を組み合わせたトラックが格好良いアップ・ナンバー。洗練された伴奏の上で、柳のようにしなやかな歌声を操る彼の姿が聴きどころだ。妖艶な雰囲気すら感じられるディスコ・ブギーに合わせて、緩急をつけたヴォーカルと、一つ一つの音の聴こえ方にまで気を配ったトラックの組み合わせる技術にも注目してほしい。T-グルーヴのアルバムからの再録曲”Move Your Body”や”Call It Love”を聴いたときにも感じたが、両者の相性の良さは格別だ。

これに対し、タッチ・ファンクの二人が制作を担当した”Block Widow”は、ブーツィー・コリンズを彷彿させる歯切れの良いベースとギターのコンビネーションが気持ち良いミディアム・ナンバー。爽やかなメロディを艶めかしい声で歌うブライアンの姿が印象的だ。重く、硬い声質のルイ・ベーグルスのラップが、滑らかな歌声の良さを引き立てている。

また、ドイツのプロデューサー、セルジオ”DOC”バロン作のバラード”One Night Stand”も、見逃せない曲だ。ロジャー・トラウトマンの”I Want to Be Your Man”を思い起こさせる、シンセサイザーを駆使した都会的な雰囲気のトラックと、しっとりとしたヴォーカルの組み合わせが心地よい、ロマンティックな曲だ。80年代のソウル・ミュージシャンは、躍動感あふれるダンス・ミュージックだけでなく、豪奢な雰囲気のバラードでも名曲を残してきたが、彼らはその歴史をきちんと踏襲している。

そして、フランスのプロダクション・チーム、ファンカスティックが手掛けた”She Made It All The Way” は、80年代のヒップホップを思い起こさせる軽快な曲。シュガーヒルズ・ギャングの”Rapper's Delight”を連想させる、ギターのカッティングが格好良いビートをバックに、軽妙なヴォーカルを披露する姿が光るアップ・ナンバーだ。ゲストのロイド・ポップが繰り出すコミカルなラップが楽曲の楽しい雰囲気を強調している。個人的には一押しの曲だ。

今回のアルバムは、ロジャーを彷彿させるセクシーなヴォーカルと、個性豊かなミュージシャン達が生み出す化学反応が聴きどころだ。本作の面白いところは、アメリカ、イギリス、日本、フランス、ドイツと、色々な国のミュージシャンが携わっているにも関わらず、収録曲からはミュージシャンの出身国が想像できないことろだろう。しかし、それぞれの曲に参加ミュージシャンの個性はしっかりと反映されており、ブギーのような80年代のディスコ・ミュージックを土台にしつつ、バラエティ豊かな曲を聴かせているから不思議だ。

レコードの誕生から約1世紀、音楽に国境はない時代が来たことを再認識させてくれる充実した内容の作品。往年のディスコ・ミュージックが好きな人や、現代のハウス・ミュージックが好きな人にぜひ聴いて欲しい。そして、参加ミュージシャンの作品を検索してほしい。音楽の世界の広さと奥深さを教えてくれる名盤だ。

Producer
DJ Ness D, Greg Doggett, T-Groove, Hic Box, Wadz etc

Track List
1. Funk Reminder
2. Anything
3. Lovely Butterfly
4. Block Widow feat. Louie Bagels
5. What Am I Gonna Do
6. Gasoline feat. Mr. Skinny
7. One Night Stand
8. Move Your Body
9. Breakin' All The Rules feat. Hic Box
10. Nobody Does It Better
11. Sex
12. Hedt It Up Feat. Rene Rose
13. Sexy Silhouette
14. She Made It All The Way feat. Lloyd Popp
15. Break Your Plans
16. Call It Love
17. Sexy Silhouette (Tesla 55 remix)
18. Heat It Up Feat. Rene Rose (T-Groove remix)
19. Black Widow Feat. Shawn Biel, Louie Bagels & Mr. Chill G (Hip Hop version)






Stokley - Introducing Stokley [2017 Concord]

1991年に、同じミネソタ州出身の人気プロダクション・チーム、ジャム&ルイスが経営するパースペクティブ・レコードからリリースしたアルバム『Meant to Be Mint』でメジャー・デビュー。以後、ニュー・ジャック・スウィングからネオ・ソウル、ロックやジャズまで、様々なスタイルを吸収しながら、多くのファンを魅了してきたセント・ポール出身のソウル・バンド、ミント・コンディション。

メンバーの入れ替わりやレーベルの移籍を繰り返しながら、2016年までに9枚のオリジナル・アルバムと多くのシングルを発表。多くの作品が全米R&Bチャートに登場する人気バンドとなった。

ストークリー・ウィリアムスは結成から30年以上、バンドのリード・ヴォーカルを務めてきた、グループの核ともいえる人物。ヴォーカル以外にもドラムやパーカッション、キーボードなど、複数の楽器を使いこなし、演奏者やソングライター、プロデューサーとして、アッシャーやジャネット・ジャクソン、プリンスなど、多くの人気ミュージシャンの作品に携わってきた。

今回のアルバムは、そんな彼にとって初のソロ・アルバム。エスペランザ・スポルディングやタジ・マハルなど、通好みのミュージシャンの作品を数多く配給してきたコンコードからのリリースだ。全ての楽曲で彼自身が制作とプロデュースを担当し、彼以外にもフェイス・エヴァンスなどの作品を手掛けてきたカルヴィン・ハギンスや、ミュージックレディシの作品に携わってきたイヴァン・バリアスがソングライターやプロデューサーとして起用。ロバート・グラスパーやエステール、ウェイルといった人気ミュージシャンがゲストとして招かれた、豪華な作品になっている。

アルバムの1曲目は、本作に先駆けて公開された”Level”。ロス・アンジェルスを拠点に活動するプロダクション・チーム、A-チームと共作したスロー・ナンバーだ。ヒップホップの軽やかなビートと、力強い歌声を引き立てるシンプルだけど味わい深いメロディ、緩急をつけながらじっくりと歌うストークリーのヴォーカルが一体化した良質なバラードは、ラップのような歌い方を取り入れた曲が流行する中で、メロディを丁寧に聴かせるヴォーカル曲はある意味珍しい。

また、グラミー賞のR&B部門で受賞経験もあるジャズ・ピアニスト、ロバート・グラスパーが参加した”Art In Motion”は、カルヴィン・ハギンスとイヴァン・バリースがペンを執ったスロー・ナンバー。そよ風のような柔らかくて優しいメロディが心地よい作品だ。美しいメロディを引き立てるロバート・グラスパーの艶っぽいピアノの演奏と、ストークリーのセクシーなヴォーカルが曲の魅力を引き出している。

また、エステールとのデュエット曲”U & I”は、カルヴィン・ハギンスとイヴァン・バリースが制作に携わっている、しっとりとした雰囲気のミディアム・ナンバー。長い間、音楽業界の一線で活躍している両者だが、コラボレーションは今回が初めてだ。デビュー当時のメアリーJ.ブライジを思い起こさせる、古いレコードから抜き出したような温かい音色のビートをバックに、モニカを彷彿させる甘く切ない歌声を披露するエステールの存在が光る作品。エステールのみずみずしいヴォーカルと、ストークリーの包み込むような大人の色気の組み合わせも魅力的だ。

そして、本作の最後を飾るのは、ジャマイカのクラレンドン教区出身のシンガー、オミを招いた”Wheels Up”だ。ケヴィン・リトルを連想させる爽やかで軽妙なヴォーカルが魅力のオミと、ベテランらしい老練な歌唱が素敵なストークリーのコンビネーションが格好良いアップ・ナンバーだ。スティール・パンなどの音色を取り入れた、カリプソっぽい明るく楽しい雰囲気の伴奏が気持ち良い。20年以上の長い間、色々なスタイルに取り組んできたストークリーだが、中南米の音楽との相性の良さは予想外だった。

初のソロ作品となる今回のアルバムでは、ミント・コンディションを彷彿させる、一つ一つの楽器の出音にまで気を配った、丁寧な作りのスロー・ナンバーやミディアム・ナンバーを中心に、グループの作品では使いにくい音色やアレンジも取り入れた良作になっている。スティール・パンやサンプリング風の音色、ジャズなどのエッセンスを吸収することで、グループで築き上げたストークリーのイメージを残しつつ、自分のスタイルを確立しているあたりは、色々なアーティストと仕事をしてきた彼らしさが発揮されていると思う。

演奏と歌唱で多くのファンを魅了していたミント・コンディションの良さを残しつつ、グループ名義の作品とは一味違うアプローチを聴かせてくれる面白い作品。流行の音楽には抵抗があるけど、新しい音には興味のある、好奇心旺盛な大人にお勧めの、安定感と新鮮さが魅力の佳作だ。

Producer
Stokley Williams, Carvin "Ransum" Haggins, Johnnie "Smurf" Smith, Ivan "Orthodox" Barias, Sam Dew

Track List
1. Level
2. Organic
3. Think About U
4. Cross The Line
5. Art In Motion feat. Robert Glasper
6. Hold My Breath
7. Victoria
8. U & I feat. Estelle
9. Way Up feat. Wale
10. Be With U
11. Forecast
12. Victoria (reprise)
13. We/ Me
14. Now
15. Wheels Up feat. Omi






Introducing Stokley
Stokley
Concord Records
2017-06-23

Wyclef Jean - Carnival III:The Fall And Rise Of A Refugee [2017 Heads Music, Legacy]

ローリン・ヒルやプラス・ミッチェルと結成したヒップホップ・グループ、フージーズとして93年にアルバム『Blunted on Reality』でメジャー・デビュー。中南米やアフリカの音楽を取り入れた独特のスタイルで注目を集め、1996年にリリースした2作目『The Score』はアメリカ国内だけで600万枚も売れた大ヒット作となった、ハイチ共和国のクロワ・デ・ブーケ生まれ、アメリカのニューヨーク育ちのラッパー、ワイクリフ・ジョン。

また、ソロ・アーティストとして2016年までに7枚のフル・アルバムを発表し、プロデューサーとしても、サンタナの『Supernatural』やデスティニーズ・チャイルドの”No No No”を手掛けるなど、多くのヒット作を残している。

このアルバムは、今年の2月にリリースしたEP『J'ouvert』以来7か月ぶり、フル・アルバムとしては2009年の『From the Hut, To the Projects, To the Mansion』以来8年ぶりとなる新作。自身のレーベル、ヘッズ・ミュージックが制作、フージーズや彼のソロ作品を取り扱ってきたソニー系列のレガシーが配給を担当している。

本作の収録曲で、最初に目を惹くのが3曲目の”Borrowed Time”だ。フレンチ・モンタナなどの作品を手掛けているアルベルト・ヴァッカリーノが共同プロデューサーとして参加した曲。シンセサイザーを使ったシンプルなトラックの上で、ラッパーらしい硬い声で淡々と歌ったアップ・テンポの作品。音数を絞った伴奏としなやかで流れるようなメロディのおかげで、カリブ海の音楽の要素を取り入れつつも洗練された印象を与える良曲だ。

だが、一番の目玉は、その次に収められている本作からの先行シングル”Fela Kuti”だろう。アフリカの民族音楽とアメリカの黒人音楽を融合した、アフロ・ビートというスタイルで音楽の歴史に名を残したナイジェリア出身のミュージシャン、フェラ・クティの名を冠したこの曲は、ドレイクの”Ice Melts”などを作ったスーパー・マリオ(この名前も凄い)のプロデュース作。華やかな打楽器の音色が心を掻き立てるアップ・テンポのトラックが格好良い。カリブ海に浮かぶ島国ハイチ出身のワイクリフだが、同地にもカリプソのような明るくキャッチーなビートが魅力の音楽が沢山あるので、違和感はあまりない。ルーツ・ミュージックを咀嚼して現代の音楽のように聴かせる、ワイクリフの持ち味が発揮されている。

一方、この曲とは違う意味で目立っているのが、エレクトロ・ミュージックの分野で有名なプロダクション・チーム、ザ・ノックスが制作に携わり、マイアミ出身のラッパー、ランチマネー・ルイスがゲスト・ミュージシャンとして参加した”What Happened To Love”だ。四つ打ちのビートにバキバキというシンセサイザーの伴奏を組み合わせたEDMのトラックに乗せて、朴訥とした声を響かせるダンス・ナンバー。ヴォーカル曲も多いワイクリフだが、この曲ではメロディ部分のラップを担当、サビをランチマネー・ルイスが歌っている。EDMの要素を取り入れたり、サビの部分をゲストのラッパーに歌ってもらったりと、色々な工夫を凝らすことで、新しい取り組みを自分の音楽に纏め上げる彼のコーディネート技術が光っている。

もちろん、それ以外の曲には従来の作風を踏襲した曲もたくさんある。例えばテディ・ライリーを招いた”Trapicabana”では、ギターなどの楽器の音色と、コンピューターを使ったヒップホップのビートを組み合わせて、ソウル・ミュージックの温かい雰囲気と、ヒップホップやR&Bの現代的な雰囲気を一つの作品に同居させている。このようなアコースティック楽器と電子楽器を共存させたサウンドは、彼の真骨頂と言ってもいいだろう。

今回のアルバムは『J'ouvert』から間を挟まずにリリースされた作品だが、彼の音楽は過去の作品を踏襲しつつ、今までの作品以上に新しいスタイルを積極的に取り入れている。EDMやアフロ・ビートを取り入れたのは、その最たるものだが、どれだけ新しい音を取り入れても、一聴しただけで「彼の音」とわかるのは、カリブ系の音楽やソウル・ミュージックなど色々な音楽の要素が混ざり合った、彼のスタイルがベースになっているからだろう。

往年のソウル・ミュージックや中南米の音楽など、色々なジャンルの音楽を混ぜ合わせ一つにすることで、唯一無二の音楽性を確立した、彼のスタイルを2017年仕様にアップ・デートした佳作。アメリカの豊かな音楽を基本にしつつ、新曲を発表するたびに新しい音を取り込んできた、彼の個性が遺憾なく発揮されていると思う。

Producer
Wyclef Jean, Madeline Nelson, Alberto Vaccarino, Supah Mario, The Knocks etc

Track List
1. Slums feat. Jazzy Amra, H1DaHook Marx Solvila
2. Turn Me Good
3. Borrowed Time
4. Fela Kuti
5. Warrior feat. T-Baby
6. Shotta Boys feat. STIX
7. Double Dutch feat. D.L. Hughley, Eric Nimmer
8. What Happened To Love feat. Lunch Money Lewis, The Knocks
9. Carry On feat. Emeli Sandé
10. Concrete Rose feat. Hannah Eggan, Izolan
11. Trapicabana feat. Riley
12. Thank God For The Culture feat. Marx Solvila, J’Mika, Leon Lacey






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