ブラック・ミュージック千本ノック~SoulとR&Bと色々な音楽~

管理人が手に入れたR&Bのアルバム、1000枚の紹介文を書き続けるブログ その先に見えるものは天国か地獄か・・・

女性シンガー

Leela James - Did It for Love [2017 Shesangz, BMG]

2000年代の初め頃に、プロのミュージシャンとしてのキャリアをスタート。ブラック・アイド・ピーズやメイシー・グレイのライブでオープニング・アクトを務めるなどして経験を積んだ後、2005年にサム・クックの同名曲のカヴァーを含むアルバム『A Change Is Gonna Come』でメジャー・デビュー。60年代のソウル・シンガーを彷彿させる力強いヴォーカルと、ヒップホップの手法を取り込んだバック・トラックを組み合わせた楽曲で、老若男女幅広い世代から注目を集めた、カリフォルニア州ロス・アンジェルス出身のシンガー・ソングライター、リーラ・ジェイムス。

その後も、スタックスやシャナチーといったR&B、ソウル・ミュージックの名門レーベルから、2016年までに通算5枚のアルバムと多くのシングルを発表。その中でも、ジェイムズ・ブラウンやローリング・ストーンズの名曲を歌った2009年の『Let's Do It Again』や、エッタ・ジェイムスの楽曲をカヴァーした2012年の『Loving You More...』などは、原曲を知らない若い世代に、往年の名曲の魅力を知らしめるきっかけになった。

このアルバムは、2014年の『Fall for You』以来、約3年ぶりとなる通算6枚目のフル・アルバム。配給元は前作と同じBMGで、プロデューサーには、BJ ザ・シカゴ・キッドの『In My Mind』など、多くのヒット作を手掛けている、レックス・ライドアウトを中心に多くの実力者が参加。今回も過去の作品同様、グラマラスな歌声と、重厚な伴奏が合わさったダイナミックなソウル・ミュージックを楽しませてくれる。

アルバムの1曲目”Hard For Me”は、シャーリー・マードックなどとも仕事をしているキーボード奏者、イーヴァン・ブリックが制作を担当したスロー・ナンバー。色々な音色のキーボードを組み合わせてた、オーケストラっぽい豪華な伴奏をバックに、艶っぽい歌声を響かせるスロー・ナンバー。エッタ・ジェイムスやアレサ・フランクリンにも見劣りしない迫力と、バーバラ・メイゾンやグラディス・ナイトにも通じるセクシーな歌唱が心地よい佳曲だ。

続く”Don’t Mean A Thang”は、”Hard For Me”にも携わっているカルヴィン・フレイザー(デトロイトのギタリストとは同名の別人と思われる)が手掛けるアップ・ナンバー。ドラムを軸に据えたスタイリッシュなビートに乗せて、妖艶な歌唱を聴かせている。落ち着いた雰囲気の伴奏と流麗なメロディ、ふくよかで色っぽい歌声の組み合わせはクリセット・ミッチェルの人気曲”Like a Dream”を連想させる。

そして、本作の目玉が、シングル化された”Don't Want You Back”だ。彼女とレックスが主導したロマンティックなバラードは、カニエ・ウエストのプロデュース作品を思い起こさせる、ソウル・ミュージックっぽい音色を加工してコラージュしたようなトラックに乗せ、派手ではないが味わい深いメロディをじっくりと歌い上げた作品。オーケストラの使い方が、ディオンヌ・ワーウィックやローラ・リーの作品にもちょっと似ている。

また、味わい深さでいえば、エリック・ベネイの最新作『Eric Benét』にも関わっている、ジャイラス・モジーがソングライターに名を連ねるミディアム・バラード”I Remember”も捨てがたい。ドラムとベースを強調した落ち着いた雰囲気のトラックに乗せ、色っぽいファルセットを聴かせる妖艶な雰囲気の楽曲。ストリングスやギターの演奏を随所に挟み込んで、楽曲にメリハリをつけつつ、ロマンティックな雰囲気を強調している点も注目してほしい。

最後に取り上げたいのは、本作では珍しいアップ・ナンバー”Good To Love You”だ。R.ケリーの”Step In The Name of Love”を彷彿させるスタイリッシュなビートを取り入れたこの曲は、90年代に一世を風靡した男性ヴォーカル・グループ、ブラックストリートのリード・シンガー、デイヴ・ホリスターと組んだ曲。豊かな歌声をウリにした音楽スタイルや、レーベルの先輩後輩(デイヴ・ホリスターの2016年作『The MANuscript 』はシャナチー配給)など、音楽的には近しい二人だけあって、相性は抜群。豊かな声量を誇る二人が、自慢の喉を軽々と操り、ダイナミックな歌を聴かせるパフォーマンスは贅沢としか形容できない。

全曲を通して聴いた印象は、デビュー当時からの武器であったヴォーカルが、経験を積んで表現の幅と安定感が増したということ。元々、奇抜なトラックやキャッチーなメロディで勝負するタイプのシンガーではなかったが、新作を発表するごとに、ファルセットを効果的に使った色っぽい楽曲がら、地声を響かせるパワフルな作品まで、一筋縄ではいかない高い難易度の曲を着実に乗りこなし、自分の色に染め上げてきた。本作は、その総決算と呼んでも過言ではない作品で、高い表現力が求められる楽曲を着実に歌い込みつつ、力強さと大人の女性の色気が同居した、彼女らしさに溢れる音楽に仕立て上げてくれた。

アレサ・フランクリンやチャカ・カーンの系譜に立つ、恵まれた歌声と高い技術を持ちつつ、彼女独特の大人の色気を感じさせるパフォーマンスで、先人と差別化したも両立した、本格的なヴォーカル作品。往年のソウル・ミュージックが好きな人はもちろん、ビヨンセやリアーナを通してブラック・ミュージックを知った人にも是非聴いてほしい。「歌」や「声」奥深さと面白みを思う存分堪能できると思う。

Producer
Leela James, Rex Rideout, Evan Brice, Butta-N-Bizkit, Calvin Frazier, Jairus Mozee

Track List
1. Hard For Me
2. Don’t Mean A Thang
3. Don’t Want You Back
4. Real Talk – Relationships (Interlude)
5. I Remember
6. Good To Love You feat. Dave Hollister
7. There 4 U
8. This Day Is For You
9. Take Me
10. All Over Again
11. Our Love
12. Did It For Love





Did It for Love
Leela James
Bmg Rights Managemen
2017-03-31

 

MAAD - Le Funk [2017 The VAMP]

ニューヨークを拠点に、シンガー・ソングライターやDJ、モデルなど、幅広い活動を展開するMAAD。数年前から、サウンドクラウドや配信サイトで自身のオリジナル曲を公開するなど、精力的に活動してきた彼女が、2017年3月に配信限定で初のEP『Le Funk』をリリースした。

彼女と一緒に多くの曲を制作してきた、クリエイターのヴァンプが全ての収録曲に参加。アリーヤやブランディにも通じる透き通った歌声と、R&Bやハウス・ミュージックのエッセンスを取り入れたトラックによる、モダンなR&Bナンバーを揃えている。

アルバムの1曲目を飾るのは2016年にシングル化された”Black Ice”。マスターピースやハイ・ファッションあたりのディスコ・グループを彷彿させる、ズンズンと響く太いベースの音色に乗せて、爽やかな歌声を響かせるミディアム・ナンバー。繊細なヴォーカルや起承転結が明確なメロディは、アリーヤなどの90年代に活躍したR&Bシンガーっぽくも聴こえる。

これに対し、シンセサイザーを駆使したディスコ・ミュージック、ディスコ・ブギーの手法を取り込んだのが”Satisfied”。ギターの演奏やストリングスっぽい音色のシンセサイザー等を取り入れた、洗練された音色が生み出す、躍動感たっぷりのビートが光るダンス・ナンバー。ヴォーカルの汗が飛んできそうな、エネルギッシュな歌唱も聴きどころ。

そして、2015年に発表された彼女のデビュー曲”Sweet & Low”は、プラッシュあたりの音楽を思い起こさせるダイナミックなシンセサイザーの伴奏と、スタイリッシュなビート、艶やかなヴォーカルが合わさった、ロマンティックなディスコ・チューン。ハウス・ミュージックを連想させるフィルターを使ったイントロやアクセントのように使われるギターのカッティングもいい味を出している。

一方、2016年にリリースされた”90s Love”は、ブランディやアリーヤあたりの90年代のR&B作品を連想させるシンプルなビートと、透き通った歌声を活かした美しいメロディが魅力のミディアム・バラード。使っている音色自体は、他の曲と同じだが、作曲やアレンジの技術で全く異なるタイプの曲に仕立て上げている。同じ機材でも、使い方ひとつで色々な楽曲を生み出せる楽曲制作の面白さを再確認させられる、本作の隠れた目玉ともいえる楽曲だ。シドの『Fyn』が好きだった人は、ぜひ耳を傾けてほしい。

それ以外の、本作が初収録となる新曲の中でも、特に注目を集めているのがアルバムの最後を締める”Touch Me”だ。2017年のグラミー賞にデビュー・アルバム『Eldrado』がノミネートしたことも話題になったシンガー・ソングライター、ロー・ジェイムスをフィーチャーしたこの曲は、本作の収録曲では珍しい、ハンド・クラップや太い音色のベース、ギターなどを組み合わせた、ロー・ジェイムスの作風に近い、今時のR&Bっぽい楽曲。決して派手な曲ではないが、セクシーな歌声で、恋人のように語り合う2人の姿など、聴きどころが盛り沢山の面白い曲だ。

アルバム全体を通して感じたことだが、このアルバムは、DJ、モデル、シンガー・ソングライターという異なる3つの分野で積み上げた経験が発揮された、「魅せる」ダンス・ミュージック作品だと思う。役者やモデルなどミュージシャン以外の仕事と2足(3足以上)の草鞋を履いているアーティストといえば、『8 Ounces』を発表したジャスティン・スカイ『Good Look For You EP』が好評のゲヴィン・トゥレックなど、有名無名関係なく多数いるが、彼女達同様、MAADの場合も、活動の幅を広げることで、「他人の目に映る自分のイメージを意識する感性」や「ダンス・ミュージックとして繰り返し聴かれる音楽を生み出すセンス」、「自分の持ち味を相手にきちんと伝える技術」など、ミュージシャンには欠かせない色々なスキルを習得したように見える。

アルバムの方向性は、タキシードの『Tuxed 2』ナイト・ファンクの『Nite-Funk EP』に近い、70年代後半から80年代初頭のソウル・ミュージックのスタイルを踏襲したものだと思う。だが、本作では、90年代の女性シンガーを彷彿させる彼女の繊細で透き通った歌声を念頭に作ることで、彼ら以上に当時のサウンドを大胆に取り込みつつ、オリジネーター達と差別化することに成功している。タキシードなどの作品が好きな人には是非お勧めしたい、2017年を代表するといっても過言ではない、本格的なディスコ・ミュージック・アルバム。アナログ盤で聴きたいけど、出てくれないかなー。

Producer
MAAD, VAMP

Track List
1. Black Ice
2. Satisfied
3. Sweet & Low
4. 90s Love
5. Lost Together
6. Stingy Lover
7. Touch Me feat. Ro James






 続きを読む

CeCe Winans - Let Them Fall in Love [2017 Pure Springs Gospel]

スティーヴィー・ワンダーやダイアナ・ロスを輩出したことでも知られる、モータウン・レコードなどがオフィスを構えていたミシガン州の音楽の都デトロイト生まれ。ゴスペル・グループとして大成功を収めたワイナンスや、P.ディディ率いるバッド・ボーイからR&Bシンガーとしてデビューしたマリオ・ワイナンスなど、多くのシンガーやソングライターを輩出してきた音楽一家のワイナンス・ファミリーで育ち、自身も単独名義で9枚、兄のビービー・ワイナンスことベンジャミン・ワイナンスとのデュオ名義で7枚のオリジナル・アルバム(クリスマス・アルバムを含む)を発表してきた、シンガー・ソングライターのシーシー・ワイナンスこと、プリシラ・マリー・ワイナンス。彼女にとって2010年の『Songs of Emotional Healing』以来、約8年ぶりの新作となる通算10枚目のアルバムが本作。

彼女はこれまでに、グラミー賞のゴスペル部門や、ゴスペル界のグラミー賞とも例えられるステラ・アワードなどを何度となく獲得してきた、同業界のトップ・ランナー。そんな彼女の強みは、R&Bやソウル・ミュージックのトレンドを巧みに取り入れて、常に新鮮な作品を提示し続けている点だろう。今回のアルバムでも、過去の作品の路線を踏襲した、世俗音楽の録音にも負けないポップでバラエティ豊かな音楽を聴かせてくれる。

アルバムの1曲目”He's Never Failed Me Yet”はピアノの伴奏に乗せて彼女が美しい歌声を張り上げるミディアム・ナンバー、シンプルな伴奏と主役の歌声だけで勝負したゴスペル作品というと、アレサ・フランクリンのライブ・アルバム『Amazing Grace』を思い出してしまうが、彼女にも負けず劣らずの力強く、流麗な歌声が楽しめる。中盤以降に流れるオーケストラの上品で雄大な演奏も、彼女の可愛らしい歌声を引き立てている。

続く”Run To Him”は、ディオンヌ・ワーウィックの代表曲”I Say a Little Prayer”にも通じる、ポップで爽やかなアップ・ナンバー。ハンド・クラップやパーカッションを駆使したリズム・セクションや、小川のせせらぎのように軽やかなストリングスが楽曲に軽妙さを与えている点も面白いが、ディオンヌ・ワーウィックのように繊細で可憐な歌声を聴かせるプリシラの歌唱も前曲と対照的で面白い。それ以外では、ゴスペルの醍醐味ともいえる、大人数のゴスペル・クワイアを、楽曲のアクセントに使うアレンジ技術にも注目してほしい。

一方、多くの人がイメージするゴスペル像を形にしたのが、クラーク・シスターズをフィーチャーしたシングル曲”Hey Devil!”だ。1960年代から活動する、ワイナンス一家にも負けず劣らずの名門ファミリー・グループとして知られる、彼女達とコラボレーションしたこの曲は、オルガンやパーカッションを活用した軽妙な伴奏と、力強いコール&レスポンスを含むダイナミックな歌唱が堪能できる。ゴスペルの王道といっても過言ではない楽曲。起伏の激しいトラックに合わせて色々な表情を見せるベテラン・シンガー達の、老練な姿が印象的。スピーカーの音量をマックスに上げて、彼女らが放つ音の波に飲み込まれてほしい。

これに対し、彼女自身の歌唱力に光を当てたのが、もう一つのシングル曲”Never Have To Be Alone”だ。ピアノやギターを軸にしたシンプルな演奏をバックに、語り掛けるように歌う序盤から、全てを包み込むような勢いでダイナミックな歌声を響かせるクライマックスに続く展開は、”ボディガードのテーマ”としても有名になった”I Will Always Love You”でホイットニー・ヒューストンが見せた、クールだけど力強いパフォーマンスを彷彿させる。彼女の確かな実力を感じさせる傑出したバラードだ。

今回のアルバムも、過去の作品同様、流行のサウンドやメロディを取り入れた、親しみやすい作風にまとまっている。だが、本作の面白いところは、R&Bの流行を意識しつつ、ディオンヌ・ワーウィックやアレサ・フランクリン、ホイットニー・ヒューストンといった、R&Bやソウル・ミュージックの歴史を彩った名シンガーの作風を大胆に取り込んだ点だと思う。もちろん、キキ・ワイアットやリーラ・ジェイムスが往年のソウル・クラシックをカヴァーしたアルバムを発表したように、昔の名曲を評価する動きは以前からあるが、彼女のように新作でクラシックの要素を取り込む発想は、ちょっと大胆だと思う。

いつまでも廃れない往年の名曲のエッセンスを取り入れつつ、2017年の新しい音楽として纏め上げたセンスと歌唱力は、流石としか言いようがない。ゴスペルに興味を持った人にはもちろん、R&Bやヴォーカル作品に興味を持っている人はぜひ聴いてほしい。歌の奥深さに圧倒されると思う。

Producer
Alvin Love, Tommy Sims

Track List
1. He's Never Failed Me Yet
2. Run To Him
3. Hey Devil! feat. The Clark Sisters
4. Peace From God
5. Why Me
6. Lowly
7. Never Have To Be Alone
8. Dancing In The Spirit feat. Hezekiah Walker And The Love Fellowship Choir
9. Marvelous
10. Let Them Fall In Love





Let Them Fall in Love
Cece Winans
Pure Springs Gospel
2017-02-03

 
記事検索
タグ絞り込み検索
アクセスカウンター
  • 今日:
  • 昨日:
  • 累計:

アクセスカウンター


    にほんブログ村 音楽ブログへ
    にほんブログ村
    にほんブログ村 音楽ブログ ブラックミュージックへ
    にほんブログ村

    音楽ランキングへ

    ソウル・R&Bランキングへ
    LINE読者登録QRコード
    LINE読者登録QRコード
    メッセージ

    名前
    メール
    本文
    • ライブドアブログ