ブラック・ミュージック千本ノック~SoulとR&Bと色々な音楽~

管理人が手に入れたR&Bのアルバム、1000枚の紹介文を書き続けるブログ その先に見えるものは天国か地獄か・・・

女性シンガー・ラッパー

Ledisi - Let Love Rule [2017 Verve]

2000年に自身のレーベル、ル・サンからリリースした1枚目のアルバム『Soulsinger』が、ソウルフルな歌声とロマンティックなメロディが光る佳作として評判になり、インディー・レーベル発の作品ながら、音楽ファンの間でも注目を集め、各国のレコード・ストアで目立つ位置に陳列された、ルイジアナ州ニューオーリンズ出身のシンガー・ソングライター、レディシことレディシ・アニベド・ヤング。

実は彼女、ジャズ・ミュージシャンのラリー・サンダースを父に持ち、祖父は伝説のブルース・シンガー、ジョニー・エース。それ以外にも、ミュージシャンとして活動している親戚が何人もいるという音楽家一族の出身。そんな彼女は、8歳の頃から地元のジャズ・バンドでヴォーカルを担当し、大学を卒業した後は西海岸を拠点にミュージシャンとして活動していたという。

2007年にジャズの名門レーベル、ヴァーヴと契約し彼女は、2016年までに5枚のアルバムを制作。全ての作品をアルバム・チャートの上位に送り込み、グラミー賞を含む多くの音楽賞にノミネートするなど、歌唱力をウリにした通好みのシンガーでありながら、商業的にも一定の成果を収め続ける本格派のミュージシャンとして活躍してきた。

今回のアルバムは、前作『The Truth』以来、実に3年ぶりとなる通算8枚目のオリジナル・アルバム。前作に引き続き、レックス・ライドアウトがプロデュースを担当。ほぼ全ての曲で彼女自身がペンを執り、カーク・フランクリンやDJカリルといった個性的なプロデューサーを起用し、ゲスト・ミュージシャンとしてBJザ・シカゴ・キッドジョン・レジェンドといった人気ミュージシャンが参加した力作になっている。

本作の収録曲で最初に気になったのは、彼女自身がプロデュースしたミディアム・ナンバー”Add To Me”だ。ダイナミックなベース・ラインと躍動感のあるビートの上で、軽やかなストリングスの演奏が響き渡るミディアム・ナンバー。一度聴いたら忘れない、キャッチーなフレーズを繰り返し鳴らすスタイルは、ヒップホップのビートにも似ている。力強い歌声を器用に扱う姿は、”Be Happy”や”I’m Going Down”などで、ソウル・ミュージックのフレーズを引用した複雑なトラックを巧みに乗りこなした、メアリーJ.ブライジを彷彿させる。

しかし、彼女の魅力は何といっても”歌”にスポットを当てたバラードだろう。そういう意味では、レックス・ライドアウトに加え、ストーンズ・スロウから4枚のアルバムを出しているバンド、ステップキッズのジェフ・ギテルマンが制作に参加した”Here”は、彼女のヴォーカルを思う存分堪能できる良曲だ。ストリングスとキーボードを駆使したしなやかな伴奏をバックに、美しい歌声をじっくりと聴かせているミディアム・バラード。力強い歌声が魅力の彼女だが、この曲でも流麗なメロディを丁寧に乗りこなしつつ、随所でパワフルな歌唱を披露している。

また、ゲスト・ヴォーカルを招いた作品では、2016年のアルバム『In My Mind』も記憶に新しいBJザ・シカゴ・キッドが参加した”Us 4ever”が面白い。70年代のソウル・ミュージックを思い起こさせる、温かい音色のギターが印象的な伴奏をバックに、しっとりと歌う二人の姿が印象的なスロー・ナンバーだ。ジャズの経験が豊富なレディシにヒップホップの影響が色濃いBJと、声質も音楽性も大きく異なる二人だが、この曲は両者に共通するルーツであるソウル・ミュージックの要素を強調することで、二人のスタイルを残しつつ、一つの作品に落とし込んでいる。シンセサイザーを盛り込んだモダンなトラックと、二人の泥臭いヴォーカルを組み合わせたジョン・レジェンドとのデュエット曲”Give You More”とはタイプの異なる曲を用意しつつ、きちんと自分の個性を発揮する技術は流石としか言いようがない。

そして、本作からの先行シングルである”High”は、彼女の作品に何度も参加しているダリル・キャンペルやチャールズ・ヒンショウが制作に携わっているスロー・ナンバー。同じフレーズを繰り返し演奏するホーン・セクションやキーボードが、ヒップホップのサンプリング・ソースのようにも聴こえる。曲調は”Add To Me”にも似ているが、こちらの曲ではアレサ・フランクリンを連想させるパワフルなヴォーカルを聴かせている。

彼女の初期の作品では、ジャズ・ヴォーカルのアルバムと勘違いしそうな程、繊細でテクニカルな演奏と歌唱が目立っていたが、ヴァーヴとの契約以降は、その傾向も薄れ、60年代、70年代のソウル・ミュージックや、現代のヒップホップ、R&Bを混ぜ合わせた、現代のトレンドを大人向けにアレンジしたR&B作品が増えてきている。大人向けの作品というと、往年の名アーティストを意識したものや、過剰な演出を控えたシンプルなものが多いが、彼女は新しい手法を積極的に取り入れつつ、それらをバンド・サウンドやソウル・ミュージックの歌唱法と混ぜ合わせることで、聴き手に懐かしさを感じさせつつ、新鮮な印象を与えていると思う。

ジャズとソウル・ミュージックをベースにしつつ、R&Bやヒップホップの手法も適度に取り入れることで、新鮮だけど飽きの来ない唯一無二の作品に落とし込んだ良作。ヒップホップやR&Bを聴いて育った人にこそ聴いて欲しい、大人になったヒップホップ世代のためのヴォーカル作品だ。

Track List
Ledisi Young, Rex Rideout, DJ Khalil, Timothy Bullock, Butta-N-Bizkit, Kirk Franklin etc

Track List
1. I Choose Today [Interlude] (Iyanla Vanzant)
2. Shot Down
3. Tomorrow Is A New Start [Interlude] (Soledad O’Brien)
4. Let Love Rule
5. Add To Me
6. Hello To The Pain [Interlude] (Iyanla Vanzant)
7. Hello
8. Forgiveness
9. Here
10. Us 4ever feat. BJ The Chicago Kid
11. Give You More feat. John Legend
12. High
13. Understanding / I Love You [Interlude] (Soledad O’Brien)
14. All The Way
15. If You Don't Mind





Let Love Rule
Ledisi
Verve
2017-09-22

Fergie - Double Dutchess [2017 Duthcess, BMG]

 1995年のメジャー・デビュー以降、親しみやすいメロディとヒップホップのイメージに囚われないバラエティ豊かなサウンドで、多くのファンを獲得してきたブラック・アイド・ピーズ。そんな彼らの転機となった2003年のアルバム『Elephunk』からグループに参加し、楽曲にポップで華やかな雰囲気をもたらしてきた女性シンガーが、ファーギーことステイシー・アン・ファーガソンだ。

カリフォルニア州のハシエンダハイツ出身の彼女は、10代のころから役者としてテレビ番組などに出演。その後、友人とガールズ・グループ、ワイルド・オーキッドを結成し、2枚のアルバムを残している。

ブラック・アイド・ピーズに加入した後は、その可愛らしくて個性的な歌声で存在感を発揮。また、2006年には初のソロ・アルバム『Dutchess』を発表。ブラック・アイド・ピーズの奇抜でキャッチーなサウンドと彼女のキュートなヴォーカルが合わさった作風が評価され、アメリカ国内だけで500万枚以上を売り上げる大ヒット作となった。

このアルバムは、前作から実に12年ぶりとなる2枚目のソロ作品。2015年に活動を再開したブラック・アイド・ピーズのライブには帯同せず、脱退したという噂もあった彼女だが、本作ではバンドの中心人物であるウィル・アイ・アムがプロデューサーとして参加。それ以外にも、DJアモやサーキットといったヒットメイカー達が作家陣に名を連ねている

本作の1曲目は、ザ・ゲームやマシンガン・ケリーなどの作品を手掛けているJPディド・ディス・ワンが制作に参加した”Hungry”。クリス・ブラウンの作品を彷彿させる陰鬱なトラップのビートに乗って、迫力のある歌声を聴かせてくれるミディアム・ナンバー。ラップを担当しているリック・ロスの重い低音が、楽曲の重厚な雰囲気を強調している。

これに対し、ウィル・アイ・アムがプロデュースを担当し、ニッキー・ミナージュをゲストに招いた”You Already Know”は、ヒップホップやエレクトロ・ミュージックとファンクを混ぜ合わせたキャッチーなアップ・ナンバー、多くのヒップホップ・クラシックにサンプリングされているリン・コリンズの”Think”を引用した軽快なビートに乗って、キュートな掛け合いを聴かせてくれるポップな作品だ。軽妙なラップや変幻自在のビートは、ブラック・アイド・ピーズのスタイルにそっくりだ。

また、前作に収録されている彼女の代表曲”London Bridge”を手がけたポロウ・ダ・ドンがプロデュースした”M.I.L.F. $”は、EDMやトラップの要素をふんだんに取り入れた躍動感あふれるサウンドが格好良いダンス・ナンバー。ディプロの音楽を連想させるエレクトロ・ミュージックに傾倒したトラックだが、きっちりと乗りこなしてヒップホップ作品に落とし込めているのは、変則的なビートが多いブラック・アイド・ピーズでの経験の賜物だろうか。

そして、本作の収録曲では最も早い、2014年にリリースされた”L.A.LOVE (la la)”は、ロス・アンジェルス出身のプロデューサー、DJマスタードを起用した作品。シンセサイザーを駆使してエレクトロ・ミュージックやトラップの要素を盛り込んだビートの上で、セクシーだけど荒々しいラップを繰り出すヒップホップ作品になっている。リル・ウェインやフューチャーの音楽を思い起こさせる、硬い音を多用したビートを、キャッチーなヒップホップに聴かせるセンスは流石の一言。絶妙なタイミングで入り込むYGのラップが、楽曲の重々しい雰囲気を引き立てている。

今回のアルバムでは、前作の路線を踏襲しつつ、新しい音を積極的に取り入れた2017年版の『Dutchess』を披露している。ヒップホップ・グループでありながらポップスのトレンドを取り入れてきた。ブラック・アイド・ピーズが飛躍するきっかけを作った彼女だけあって、コアなヒップホップを消化して、誰もが楽しめるポップスに落とし込める技術は群を抜いている。

ライブに俳優活動と、マルチな活躍を見せていた彼女だが、ミュージシャンとしても一線級の存在であることを再確認させてくれる良作。今の彼女がグループに戻ったらどんな化学反応を起こすのか、次の展開が楽しみになる充実の内容だ。

Producer
will.i.am, DJ Ammo, Alesso, Fergie, Cirkut, DJ Mustard etc

Track List
1. Hungry feat. Rick Ross
2. Like It Ain’t Nuttin’
3. You Already Know feat. Nicki Minaj
4. Just Like You
5. A Little Work
6. Life Goes On
7. M.I.L.F. $
8. Save It Til Morning
9. Enchanté (Carine) feat. Axl Jack
10. Tension
11. L.A.LOVE (la la) feat. YG
12. Love Is Blind
13. Love Is Pain






Double Dutchess
Fergie
Bmg
2017-09-22

Jhené Aiko - Trip [2017 ARTium, Def Jam]

2000年代初頭から、姉であるミラJ達と一緒に音楽活動を開始。姉妹で結成したガールズ・グループのほか、裏方やゲスト・ミュージシャンとしてB2Kなどの作品に携わってきた、カリフォルニア州ロス・アンジェルス出身のシンガー・ソングライター、ジェネイ・アイコことジェネイ・アイコ・エフル・キロンボ(余談だが、母方の祖先が日本人のため”アイコ”というミドルネームを使っている。また、姉のミラJにも”アキコ”というミドルネームがある)。

2011年には自主制作のアルバムながら、ドレイクやカニエ・ウエスト、ケンドリック・ラマーといった豪華なゲストが参加したミックス・テープ『Sailing Soul(s)』を発表。同作が高い評価を受け、2014年にはヒップホップの名門デフ・ジャムと契約する。また、同年にリリースした初のフル・アルバム『Souled Out』はアメリカ国内だけで15万枚を売り上げるヒットとなり、グラミー賞の3部門にノミネート。それ以外にも多くの音楽賞にノミネート、もしくは受賞するなど、一気にスターダムを駆け上がった。

その後も、2016年にはラッパーのビッグ・ショーンとコラボレーションしたアルバム『TWENTY88』を発売。その一方で、 スラックと共作した”First Fuck”や、クリス・ブラウンと共演した”Hello Ego”など、新曲を次々と発表。それ以外にも、チェインスモーカーズやガラント、カシミア・キャットやマリ・ミュージックなど、様々なスタイルのミュージシャンの録音に参加し、あらゆるジャンルに適応する引き出しの多さと高いスキルを見せつけてきた。

本作は、そんな彼女にとって自身名義では3年ぶり2枚目となるフル・アルバム。既発曲の大半は収録せず、3曲目の”While We're Young”以外は全て新曲という予想外の構成だが、その新曲も含め、多くの曲で彼女の持ち味が存分に発揮された、ハイ・レベルな作品に仕上がっている。

その、本作からの先行シングル”While We're Young”は、これまでにも彼女の曲を数多く手掛けているフィスティカフスのプロデュース作品。シンセサイザーを駆使したみずみずしい音色のトラックに乗って、ゆったりと歌う姿が印象的なミディアム・ナンバー。彼女の透き通った歌声が、シンセサイザーのひんやりとした音色と相性のよい佳曲だ。

これに対し、ビッグ・ショーンが客演した”OLLA (Only Lovers Left Alive)”は、ドナ・サマーなどの70年代終盤のディスコ音楽やニュー・オーダーのような黎明期のエレクトロ・ミュージックを思い起こさせる、リズム・マシーンやアナログ・シンセサイザーの音色が新鮮なアップ・ナンバー。ビッグ・ショーンの作品に数多く携わってきたアメイア・ジョンソンが制作に参加したこの曲は、ダフト・パンクの”Get Lucky”やマーク・ロンソンの”Uptown Funk”などで注目を集め、最近では、ブルーノ・マーズの”24K Magic”やウィークエンド”Starboy”などのヒット曲にも取り入れられている、ディスコ・ミュージックを取り入れた、モダンなトラックといなたいメロディが光っている。

一方、カシミア・キャットとフランク・デュークスが制作を担当し、ロス・アンジェルス出身のベテラン・ラッパー、クラプトを招いた”Never Call Me”は、電子音を多用しつつも従来の作風を踏襲したミディアム・テンポの作品。声質もスタイルも異なる、二人の歌唱をスムーズにつなげるアレンジが面白い。

そして、本作の最後を締めるのが、マリ・ミュージックと共作した”Trip”だ。マリ・ミュージックが用意したトラックは、彼の作品を彷彿させるゴム毬のように跳ねる音色が気持ち良いもの。その上で、アフリカの民族音楽を連想させる軽妙なメロディを歌うジェネイの存在が光っている。メロディを大きく崩して歌うマリが、楽曲をポップな雰囲気に仕上げている。

今回のアルバムでは、前作までのクールなイメージを残しつつ、それを発展、応用した楽曲が目立っている。その最たる例が”OLLA (Only Lovers Left Alive)”や”Trip”のような曲で、これまでの作品では見られなかった、ディスコ音楽やアフリカの音楽の要素をメロディやトラックにふんだんに取り入れている。これだけ色々なスタイルを取り上げながら、自分の音楽に違和感なく混ぜ込めるのは、若いころから音楽業界の一線で活躍していた、彼女の豊富な経験と鋭いセンスによるところが大きいと思う。

アリーヤを彷彿させる冷たく透き通った歌声を持ちながら、彼女やそのフォロワーとは一線を画した独特の音楽を聴かせている。現代的な音楽を作りながら、90年代からR&Bに慣れ親しんできた人には懐かしい、そうでない人には新鮮に聴こえる魅力的なアーティストだ。

Producer
Jhené Aiko, Ketrina "Taz" Askew, Fisticuffs, Amaire Johnson, Frank Dukes, Dot da Genius etc

Track List
1. LSD
2. Jukai
3. While We're Young
4. Moments feat. Big Sean
5. OLLA (Only Lovers Left Alive) feat. TWENTY88
6. When We Love
7. Sativa feat. Swae Lee
8. New Balance
9. Newer Balance (Freestyle)
10. You Are Here
11. Never Call Me feat. Kurupt
12. Nobody
13. Overstimulated
14. Bad Trip (Interlude)
15. Oblivion (Creation) feat. Dr. Chill
16. Psilocybin (Love In Full Effect) feat. Dr. Chill
17. Mystic Journey (Freestyle)
18. Picture Perfect (Freestyle)
19. Sing To Me feat. Namiko Love
20. Frequency
21. Ascension feat. Brandy
22. Trip feat. Mali Music

a

記事検索
タグ絞り込み検索
アクセスカウンター
  • 今日:
  • 昨日:
  • 累計:

アクセスカウンター


    にほんブログ村 音楽ブログへ
    にほんブログ村
    にほんブログ村 音楽ブログ ブラックミュージックへ
    にほんブログ村

    音楽ランキングへ

    ソウル・R&Bランキングへ
    LINE読者登録QRコード
    LINE読者登録QRコード
    メッセージ

    名前
    メール
    本文
    • ライブドアブログ