ブラック・ミュージック千本ノック~SoulとR&Bと色々な音楽~

管理人が手に入れたR&Bのアルバム、1000枚の紹介文を書き続けるブログ その先に見えるものは天国か地獄か・・・

女性シンガー・ラッパー

Mavis Staples - Mavis Staples: I'll Take You There: An All-Star Concert Celebration [2017 Caroline International]

メイヴィス・ステイプルズはイリノイ州シカゴ出身のシンガー・ソングライター。1950年に家族と結成したゴスペル・グループ(後のステイプル・シンガーズ)の一員として音楽活動を開始し、53年にシングル『These Are They / Faith And Grace』でレコード・デビュー。その後は”I’ll Take You There”や”Respect Yourself”、”Let's Do It Again”などの後世に語り継がれる名曲と、多くのアルバムを残し、2000年にはロックの殿堂入りも果たしている。

また、彼女自身は69年に初のソロ・アルバム『Mavis Staples』を発表。以後、2016年までに14枚のアルバムと30枚以上のシングルを発表。近年はベン・ハーパーやボン・イヴェールのジャズテン・ヴァーノンを起用したアルバムを発表したり、アーケード・ファイアやゴリラズの作品に客演したりするなど、70歳を超えた今も一線で活躍している。(余談だが、ゴリラズのツアーには映像で参加している)

このアルバムは、彼女の生誕75歳を祝って行われたコンサートを収めたライブ盤。多くの後輩ミュージシャン(といっても、現役のミュージシャンで、彼女より先にデビューした人は殆どいないが)が集結し、ステイプル・シンガーズやソロ名義で発表した名曲を披露している。

本作のトップ・バッターを飾るのは、ケンタッキー州出身のベテラン女性シンガー・ソングライターのジョーン・オズボーン。69年の初ソロ作『Mavis Staples』に収められている”You're Driving Me”に取り組んでいる。フレッド・ブリッジ作の泥臭いソウル・ミュージックを忠実に再現する歌唱力は圧巻の一言だ。

その後は、ケブ・モーやオーティス・クレイら、ベテラン・シンガー達が彼女のキャリアを祝福する名演奏を披露し、本日の主役、メイヴィスへと繋いで行く。

彼女のステージは、ステイプル・シンガーズの名義で71年に発表した”Respect Yourself”でスタート。ニューオーリンズを代表するR&Bバンド、ネヴィル・ブラザーズの一員であるアーロン・ネヴィルと披露したデュエットは、長いキャリアと豊富な実績が反映された、パワフルな歌唱と豊かな表現力が存分に発揮された名演だ。30年以上前にリリースされた曲を、現在の自分達に合わせてアレンジし直す技術が見どころだ。

これに対し、本作の収録曲では最も新しい、2013年のアルバム『We'll Never Turn Back』が初出の”Turn Me Around”は、御年67歳のベテラン・ブルース・シンガー、ボニー・レイットとのコラボレーション。ボニーが鳴らす荒々しいギターの音色をバックに、力強いヴォーカルを披露するメイヴィスの姿が印象的な名演だ。遥か昔に還暦を迎えたとは思えない二人の、パワフルなパフォーマンスを堪能してほしい。

そして、本作の最後を飾るのは、ザ・バンドが68年のアルバム『Music from Big Pink』で発表し、ステイプル・シンガーズが同年のアルバム『Soul Folk In Action』で取り上げた”The Weight”だ。原曲がザ・バンドの作品だけあって、ブルースやロックのミュージシャンが多数参加している本作のバンド・メンバーとは相性が良い。近年はロック畑のミュージシャンと共演することの多いこともあり、ステイプル・シンガーズ時代にはないロックの繊細な表現への適応力を見せている。

今回のステージでは、ブルースやソウル、ロックなど、色々な分野で活躍するベテランが集まり、老練した技で彼女のキャリアを総括、祝福している。だが、一番輝いているのは、豪華なゲストを前に、圧倒的な歌唱力を見せている主役のメイヴィスだと思う。何十年も前に発表した楽曲を、現在の声質や技術に合わせて巧みにアレンジし、現在の彼女の音楽に仕立て上げる技術は稀有なものだと思う。

豊富な実績を誇る名手たちによる、名シンガーへの最高の祝福。本作を堪能した後は、参加ミュージシャンや彼女のオリジナル・アルバムにも耳を傾けてほしい。ポピュラー音楽の奥深い世界を堪能できると思う。

Producer
Keith Wortman

Track List
Disc 1
1. Joan Osborne - You're Driving Me
2. Keb' Mo' - Heavy Makes You Happy
3. Otis Clay - I Ain't Raisin' No Sand
4. Buddy Miller - Woke Up This Morning
5. Patty Griffin - Waiting For My Child To Come Home
6. Emmylou Harris - Far Celestial Shore
7. Michael McDonald - Freedom Highway
8. Glen Hansard - People Get Ready
9. Mavis & Aaron Neville - Respect Yourself
10. Widespread Panic - Hope In A Hopeless World
11. Ryan Bingham - If You're Ready (Come Go With Me)
12. Grace Potter - Grandma's Hands
13. Eric Church - Eyes On The Prize
Disc 2
1. Taj Mahal - Wade In The Water
2. Gregg Allman - Have A Little Faith
3. Mavis & Bonnie Raitt - Turn Me Around
4. Gregg Allman, Taj Mahal, Aaron Neville, Bonnie Raitt, & Mavis Staples - Will The Circle Be Unbroken
5. Mavis, Win Butler & Régine Chassagne - Slippery People
6. Mavis & Jeff Tweedy - You Are Not Alone
7. Mavis Staples - I'll Take You There
8. Mavis & everybody: Encore: The Weight




Mavis Staples I'll Take You There: All-star Concert Celebration
オムニバス(コンピレーション)
Caroline
2017-06-01

Sevyn Streeter - Girl Disrupted [2017 Atlantic Records]

2001年にガールズ・グループTG4の一員としてデビューしたものの解散。その後、リッチ・ハリソンが手掛けるリッチ・ガールズの一員として再デビュー。アトランティックにシングルを残したものの再び解散。そして今回、ソロに転向し、3度目のデビューを果たしたフロリダ州ハインズ・シティ出身のシンガー・ソングライター、セブン・ストリーターズこと、アンバー・デニス・ストリーターズ。彼女にとって、初のフル・アルバムとなるのが本作だ。

ソロ転向後は、ディディ(=ショーン・コムズ)の”I Know”や”Help Me”、クリス・ブラウンの”Party Hard”や、ザ・ゲームの”Quicks Groove”など、人気ミュージシャンの作品にヴォーカルやソングライティングで参加してきた彼女。本作では、そこで培った経験を活かし、トレンドを的確に捉えた、キャッチーで親しみやすいR&B作品を聴かせてくれる。

アルバムの曲目を見て、最初に目を惹いたのはザ・ドリームがゲストで参加した”Present Situation”だ。2016年に『The Life of Pablo』で音楽界を騒がせたカニエ・ウエストとマイク・ディーンがプロデュースを担当。ドリームがソングライティングで参加している。トラックは電子音を組み合わせた抽象的なもので、『The Life of Pablo』の手法を拡張、発展させた作品だ。リアーナの”Umbrella”など、音数を絞り、歌をじっくりと聴かせるメロディが得意な、ザ・ドリームの持ち味が発揮された曲もいい味を出している。

また、個人的には最もびっくりしたのが、ヤング・バーグがプロデュースしたフェイス・エヴァンスのカヴァー”Soon As I Get Home”だ。95年にリリースされたバラードを、コンピューターを駆使したアップ・テンポのダンス・ナンバーにリメイクしている。トラックにサンプリングを多用したバラードを、打ち込みを音楽によるダンス・ナンバーへと生まれ変わらせる二人の若く、柔軟な発想(といっても、本作発表時点で31歳だが)に驚かされる。一歩間違えれば、ティーンエイジャー向けのアイドル・ソングになってしまいそうなアレンジを、きちんとR&Bとして聴かせている点も見逃せない。

そして、オーガスト・アルシナをフィーチャー、ジャスティン・ビーバーやエド・シーランの作品にも携わっているベニー・ブランコがプロデュースで参加した”Been A Minute”は、ベイビーフェイスやR.ケリーを連想させるシンプルなバック・トラックと流麗なメロディが心地よいスロー・ナンバー。アッシャーを連想させる甘くしなやかな歌声を響かせるオーガスト・アルシナが存在感を発揮している。彼女のキュートな歌声を活かした、キュートでポップな名バラードだ。

それ以外の曲で、面白いのがタイ・ダラ・サインとキャム・ウォレスをフィーチャーした ”Fallen”だ。ニュー・エディションの"If It Isn't Love"をサンプリングしたこの曲は、太いシンセサイザーの音色を活かしたトラックが心地よいスロー・ナンバー。ロマンティックなメロディとキュートなヴォーカルの組み合わせは、ニヴェアやマイアを連想させる。可愛らしさの中にも、大人の色気を感じさせる佳曲だ。脇を固めるキャム・ウォレスとタイ・ダラ・サインのパフォーマンスもいい味を出している。

彼女のスタイルは、メアリーJ.ブライジやビヨンセのような本格的なディーヴァというより、大衆性を保ちながら、じっくりと歌を聴かせるモニカやブランディに近いものだと思う。シンセサイザーを多用したトラックや、歌うように言葉を紡ぐラッパーを起用する手法は、R&Bのトレンドを意識したものだし、その上で、可愛らしい軽妙な歌声を聴かせるやり方も、彼女の声質やキャラクターにマッチしている。この絶妙なバランスが彼女の強みだと思う。

近年少なくなった、大衆性と歌唱力を兼ね備えた女性シンガーによる佳作。リアーナやビヨンセとは異なるアプローチで、魅力的なR&Bを聴かせてくれる希少な作品だと思う。

Producer
Kanye West, Mike Dean, Hit-Boy, Benny Blanco etc

Track List
1. Livin
2. Present Situation feat. The-Dream
3. My Love For You
4. Anything U Want feat. Wiz Khalifa, Jeremih & Ty Dolla $ign
5. Ol Skool feat. Jeremih & DeJ Loaf
6. Soon As I Get Home
7. Before I Do
8. Been A Minute feat. August Alsina
9. Translation
10. Peace Sign feat. Dave East
11. Fallen feat. Ty Dolla $ign & Cam Wallace
12. How Many
13. Everything In Me






Denai Moore - We Used To Bloom [2017 Because Music]

2013年に4曲入りのEP『Saudade』でレコード・デビュー。翌年にはイギリス出身の音楽プロデューサー、Sbtrktのアルバム『Wonder Where We Land』に収録された”The Light”に客演したことで注目を集め、2016年にはアメリカのソウル・ミュージシャン、クリスチャン・アンドリュー・ベリシャージによるユニットJMSNのアルバム『It Is.』に収められている”Fantasize”に客演したことも話題になった、ジャマイカ生まれロンドン育ちのシンガー・ソングライター、デナイ・ムーア。

2014年に初のフル・アルバム『Elsewhere』をリリースしている彼女にとって、3年ぶり2枚目のアルバムが本作。前作同様、収録曲のほぼ全てで彼女がペンを執った意欲作になっている。

本作に先駆けて公開された”Trickle”は、ドラムの音圧を抑え、シンセサイザーを中心に据えた伴奏の上で、訥々と歌い上げる姿が印象的なミディアム・ナンバー。使っている音色こそ違うが、シャーデーやインディア・アリーにも通じる、さわやかなメロディが光る佳曲だ。

これに対し、”Leave It Up To You”は、電子音を強調したトラックと、繊細なヴォーカルのコンビネーションが魅力的なミディアム・ナンバー。電子音楽とソウル・ミュージックを融合させた作品といえば、サンファケイトラナダを思い出すが、彼らの楽曲と比べると音数は少なくシンプルで、ヴォーカルを丁寧に聴かせている。電子音楽のエッセンスを巧みに取り込んで、先鋭的なサウンドとシンプルだが味わい深いメロディを両立した、面白いソウル・ミュージックだ。

そして、”Does It Get Easier?”はシンセサイザーを駆使した幻想的なサウンドと、彼女の透き通った歌声の組み合わせが心地よいミディアム・ナンバー。シンセサイザーを駆使して、涼しげな雰囲気のR&Bにまとめ上げたこの曲は、シザシドの作品にも少し似ている。R&Bやヒップホップが好きな人は、この曲から聴いてほしい。アメリカのR&Bを意識しつつ、彼女の持ち味を活かした楽曲に落とし込んでいる。

そして、本作の収録曲では唯一、フィーチャリング・アーティストを起用した”All The Way”はロンドン生まれのシンガー・ソングライター、クワブスを起用したスロー・ナンバー。シンセサイザーを多用した重厚で荘厳なサウンドの上で、細くしなやかな歌声を響かせるデナイと、ジェラルド・レバートを彷彿させる、太く柔らかいヴォーカルを披露するクワブスのコンビネーションが光っている。クワブスのグラマラスなヴォーカルが、デナイの繊細な声の魅力を引き出しつつ、楽曲にソウルフルな雰囲気を与えている。

彼女の音楽の面白いところは、ソウル・ミュージックやR&Bをベースにしつつ、ロックや電子音楽の手法を取り入れ、聴きやすさと斬新さを両立している点だと思う。その手法はR&Bやヒップホップを軸に、色々な音楽を取り込んで、独自の音楽を構築するインターネットに通じるものがある。

R&Bの可能性を切り開いた、新鮮さと普遍性を両立したアルバム。マックスウェルアリシア・キーズのように、幅広い年代の人々から長気に渡って親しまれそうな、味わい深い音楽だ。

Track List
1. Let It Happen
2. Desolately Devoted
3. Trickle
4. Twilight
5. Do They Care?
6. Leave It Up To You
7. Bring You Shame
8. Does It Get Easier?
9. Poor Person
10. All The Way feat. Kwabs





We Used to Bloom
Denai Moore
Because Music / Sire
2017-06-23

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