melOnの音楽四方山話

オーサーが日々聴いている色々な音楽を紹介していくブログ。本人の気力が続くまで続ける。

男性グループ

W-inds. - 100 [2018 FLIGHT MASTER, PONY CANYON]

安室奈美恵やSPEED、三浦大知が在籍していたFOLDERなど、多くのダンス・ヴォーカル・アクトを輩出してきたライジング・プロダクション。同社の所属タレントの中でも、特に異彩を放っているのが、千葉涼平、橘慶太、緒方龍一の3人組、ウィンズだ。

2001年に”Forever Memories”でメジャー・デビューを果たした彼らは、本格的なダンスとヴォーカル、R&Bやヒップホップを取り入れつつ、それに囚われないポップな楽曲で一躍ブレイク。『w-inds.〜1st message〜』や『ageha』などのアルバムがオリコン・チャートの1位を獲得する一方、2000年代半ば以降は、東アジアを中心に海外でも活躍。台湾では4枚のアルバムを現地のヒット・チャートの1位に送り込み、日本出身のアーティストの最多記録を打ち立てるなど、日本を代表するダンス・ヴォーカル・グループとして認められてきた。

このアルバムは、彼らにとって1年ぶり、13枚目のスタジオ作品。発売時点の3人の年齢の合計(千葉:34歳,橘:33歳,緒方:33歳)からタイトルを取ったこのアルバムは、彼らにとって初の完全セルフ・プロデュース作品。本職のクリエイターに師事し、本格的な制作スペースを整備してきた橘を中心に、音楽に強い思い入れを持つ3人の熱意が感じられる力作になっている。

本作の1曲目、”Bring back the summer”は、乾いた音色のギターとシンセサイザーを組み合わせたトラック、ファルセットを多用したヴォーカルが、ファレル・ウィリアムスの音楽を彷彿させるミディアム。ファレルに比べると声量のある橘慶太のヴォーカルと、シンプルで洗練されたビートが印象的。バック・トラックの微妙な響きの違いにも気を配る、彼の良さが発揮された佳作だ。

続く”Dirty Talk”は2018年3月にリリースされた本作からの先行シングル。テディ・ライリーやベイビーフェイスが採用し、90年代初頭に一世を風靡したR&Bのスタイル、ニュー・ジャック・スウィングを取り入れたアップ・ナンバーだ。甘く爽やかな歌声を引き立てる甘酸っぱいメロディと、テディ・ライリーが90年代半ばに結成したヴォーカル・グループ、ブラックストリートの1作目を連想させる、ヒップホップのアレンジを盛り込んだニュー・ジャック・スウィングのトラックが面白い。音楽に対する造詣の深さと鋭い感性、高い表現力が生み出した魅力的な曲だ。

また、本作のリリースと同時にミュージック・ビデオが公開された”Temporary”は、華やかで高揚感のあるサウンドが魅力の電子音楽、EDMの要素を盛り込んだミディアム・バラード。甘い歌声とロマンティックなメロディ聴かせるメロディ部分から、派手なシンセサイザーの伴奏に続く手法は、アッシャーの”Love In This Club”や、ジャスティン・ビーバーを招いたジャックUの”Where Are U Now”に通じるものがある。欧米のエレクトリック・ミュージックと日本のポップスのバラードをうまく混ぜ合わせた、彼らのバランス感覚が光る作品。

そして、本作の収録曲では一番最初にリリースされた”Time Has Gone”は、限界まで音数を絞ったシンプルなアレンジと、繊細なファルセットが魅力のミディアム・ナンバー。90年代後半のイギリスのR&Bを思い起こさせる、洗練されたトラックと味わい深いメロディが魅力的な作品だが、低音の響きやヴォーカルの聴かせ方は今時のアメリカのR&Bっぽい。日本人の琴線に訴えるメロディと欧米のサウンドを融合した良曲だ。

彼らの音楽の凄いところは、日本のポップスの魅力と、アメリカやヨーロッパのヒップホップの心地よいところを、一つの音楽に同居させているところだ。それは、プロダクションの技術を基礎から身に着けた橘慶太の制作能力と、10年以上、歌とダンスに心血を注いできた3人の高いパフォーマンス・スキルがあるから可能だったと思う。

アメリカやヨーロッパの音楽とは一味違う、「日本のR&B」の個性を確立した貴重な作品。1枚のアルバムをじっくり聴き込んでも、各国の個性豊かなアーティストの作品と聴き比べても面白い、細部にまで気を配った曲作りが面白い良盤だ。

Producer
W-inds. Keita Tachibana etc

Track List
1. Bring back the summer
2. Dirty Talk
3. Temporary
4. I missed you
5. Celebration
6. We Gotta Go
7. Time Has Gone
8. Stay Gold
9. The love
10. All my love is here for you
11. Drive All Night
12. Sugar





100(初回限定盤)(Blu-ray Disc付)
w-inds.
ポニーキャニオン
2018-07-04

Epik High & End Of The World(SEKAI NO OWARI) - Sleeping Beauty [2018 YG Entertainment, avex]

2001年に、韓国系カナダ人のTabloと韓国出身のMithra Jin、DJ Tukutzによって結成。サンプリングを多用した本格的なヒップホップから、ロックや韓国の歌謡曲まで、あらゆるサウンドを飲み込んだ音楽性と、様々なメッセージを含蓄とウィットに富んだ表現で綴るラップの技術が高く評価され、お茶の間からクラブ・シーンまで、幅広く支持を集めてきた韓国のヒップホップ・グループ、Epik High。

2000年代中頃(現在の編成になったのは2008年)に幼馴染の4人によって結成。詞、メロディ、演奏、ヴィジュアルなど、自分達の音楽に関するあらゆる要素を用いて独特の世界を表現するスタイルで、海外にも多くのファンがいる、日本を代表する人気ロック・バンド、SEKAI NO OWARI。

以前から、ラジオ番組やSNSで親交があることを示唆していた両者が、2018年6月末に突如発表したのがこの曲だ。

SEKAI NO OWARIの”眠り姫”(英題は”Sleeping Beauty”)とは同名異曲であるこの作品。制作には双方のメンバーに加え、Mariah CareyやZeddなど、Eminemなどの楽曲に携わってきたアメリカのプロデューサー、Rock Mafiaが参加。ジャンルの枠を飛び越えた作風が魅力の両者の持ち味が遺憾なく発揮された良曲になっている。

エレキ・ギターの伴奏(これはNAKAJINのものだろうか?)と、Tabloの囁くようなラップで幕を開けるこの曲は、FUKASEの歌、Tabloのラップ、再び FUKASEの歌、Mithra Jinのラップ、 再び FUKASEの歌という風に、両者がマイクを繋ぐという滑らかな構成の作品。Mithra のパートでは、途中でメロディを歌ったり、Tabloが合いの手を挟んだりするなど、切ない雰囲気を醸し出しながら、随所に遊び心を盛り込んでいる。また、英語詞の曲自体は何曲かリリースしているものの、Tablo以外のメンバーにとって、母国語ではない英語を使って、自分達の世界観を綴った歌詞(ただし、これは日本語曲のオンエアが難しい韓国と、韓国語のポップスをオン・エアすることに抵抗のある日本の音楽事情も影響している)も見逃せない。

また、本作のバックトラックでは、両者の尖った作風を土台にしつつも、双方の個性がきちんと一つの演奏に落とし込まれている。ロックとクラブ音楽を融合する技術には定評のあるSEKAI NO OWARIと、ロックやフォーク・ソングですらヒップホップの一部にしてしまうEpik Highの個性があわさったこの曲では、Epik Highらしい、サンプリングを用いたビートと、ヒップホップのリズムをフォーク・ソングのアレンジに溶け込ませるSEKAI NO OWARIの演奏いう、両者の作品でも、他のミュージシャンの作品でもあまり見ない手法を披露している。

今回の曲は、両者が得意とするバラードをベースにしているが、SEKAI NO OWARIの作品には珍しいヒップホップのリズムを用い、Epik Highの作品では異色の本格的なヴォーカルとの共演という新しいスタイルに取り組むなど、両者の単独名義の作品とは一線を画している。また、今回の作品は「ロック・バンドとヒップホップ・グループのコラボレーション」という、多くのミュージシャンが取り組んできたものだが、両者の持つ、繊細な感性と尖ったセンスのおかげで、他の作品とは一味違う、独創的な作品に仕上がっている。

ヒップホップとロック、異なる音楽ジャンルを土台にしているものの、鋭い眼差しと豊かな感受性で色々な音楽を取り込んできた両者の魅力が4分間に凝縮された珠玉の1曲。Linkin Parkとコラボレーションも話題になったJay-Zや、新作を出す度に、Snoop DoggやMos Defといったヒップホップ・アクトとのコラボレーションしてきたGorillazなど、アメリカやヨーロッパでは盛んな「ロックとヒップホップの融合」に新しい視点から切り込んだ、面白い作品だ。

Producer
Epik High, End Of The World, Rock Mafia

Track List
1. Sleeping Beauty






CHEMISTRY – Heaven Only Knows/13ヶ月 - EP [2018 Sony]

2001年に、100万枚以上を売り上げたシングル”Pieces of Dream”で華々しいデビューを飾った、日本発の二人組男性ヴォーカル・グループ、ケミストリー。

モーニング娘。などを輩出した、テレビ番組「ASAYAN」の「男子ヴォーカリストオーディション」(余談だが、同企画の最終選考には、後にEXILEで活躍するATSUSHIやNESMITHの名前もあった)を勝ち上がった、東京都出身の川畑要と、広島県出身の堂珍嘉邦の二人からなるこのグループ。彼らは、各人の実力の高さと、デュオになったときに発揮される化学反応から、プロデューサーの松尾潔によってケミストリー(=化学反応)と名付けられた。

同年には初のスタジオ・アルバム『The Way We Are』を発売。300万枚を売り上げ、男性ヴォーカル・グループのデビュー・アルバムの最多セールスを記録し、年末の紅白歌合戦にも出場。翌年には日韓共催の2002年FIFAワールド・カップの公式テーマ・ソング”Let's Get Together Now”をリリース。名実ともに、日本を代表するヴォーカル・グループとして知られるようになった。

その後も、様々なプロデューサーを起用しながら、多くの楽曲を発表。日本のポピュラー・ミュージックを好む堂珍と、欧米のヒップホップやR&Bに傾倒する川畑の個性が絶妙なさじ加減で混ざりあった、日本人好みの美しいメロディとヴォーカルが魅力的な作品を残してきた。

本作は、2017のシングル”Windy/ユメノツヅキ”以来となる、彼らの36枚目のシングル。前作に引き続き、彼らの可能性を見出し、一流のアーティストに育て上げた、松尾潔がプロデュースと作詞を行っている。

1曲目の”Heaven Only Knows”は、”Let's get together now”などを制作した川口大輔が作曲を担当。ドラムを軸としたシンプルなトラックと、しなやかなメロディが心に残るアップ・ナンバーだ。流麗なメロディに豊かな表情を吹き込む二人のヴォーカルが聴きどころ。ヴォーカルを引き立てる洗礼されたトラックとスタイリッシュなメロディは、彼らのデビュー曲”Pieces of Dream”にも通じるものがある。

続く”13ヶ月”は、オーディションの最終選考の課題曲”最後の夜”のアレンジや、彼らの人気曲”You Go Your Way”の作曲を手掛けた豊島吉宏が作曲に参加したバラード。良曲の路線を引き継ぐ、しっとりとしたメロディが印象的な作品。

そして、本作の隠れた目玉が70年代、80年代のディスコ音楽を現代のクラブ・ミュージックと融合した作風で注目を集めている、八戸出身のクリエイター、T-Grooveがリミックスを担当した”Heaven Only Knows”だ。跳ねるようなベースの演奏や軽快にリズムを刻むギター、軽やかなパーカッションの音色が心地よいダンス・ナンバーだ。シンセサイザーを効果的に使った尖ったアレンジの多いT-Grooveの仕事では珍しい、生演奏の柔らかい音色を活かしたトラックは、山下達郎の”Sparkle”のような、ロックやソウル・ミュージック、歌謡曲の要素が程よく入り混じった、親しみやすさとお洒落な作品になっている。日本のレコード会社が制作したディスコ音楽のコンピレーション・アルバムを監修するなど、ディスコ音楽を中心に、色々な音楽に造詣が深いT−Grooveの持ち味が遺憾無く発揮された名リミックスだ。

本作から強く感じるのは、メロディや歌声を大切にするメンバーとプロデューサーの松尾潔氏の音楽への思い入れだ。音楽ライターからキャリアをスタートし、「美メロ」という言葉を生み出して、美しいメロディと、楽曲の魅力を引き出すシンガー達にスポットを当ててきた松尾氏らしい、美しいメロディと楽曲の世界観を引き立てるリリック。それを歌うシンガーの豊かな表現力が合わさった楽曲は、彼が90年代から紹介してきたルーサー・ヴァンドロスやR.ケリーのような、メロディが魅力のアメリカのR&Bを彷彿させる。また、そこに日本のポピュラー音楽が原点の堂珍と、アメリカのヒップホップを愛聴してきた川畑の解釈が加わることで、アメリカの歌手とは一味違う、彼ら独自の音楽になっている。この絶妙なバランスが、彼らの音楽の面白いところだろう。


三者の個性と、細部にまで心を配った曲作り、大胆かつ丁寧なヴォーカルが光る良作。80年代や90年代の黒人音楽が好きな人には懐かしい、現代の斬新なサウンドのR&Bに慣れ親しんだ人には新鮮に聴こえると思う。

Producer
松尾潔

Track List
1. Heaven Only Knows
2. 13ヶ月
3. Heaven Only Knows (T-Groove Remix)
4. Heaven Only Knows -Instrumental-
5. 13ヶ月 -Instrumental-






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