ブラック・ミュージック千本ノック~SoulとR&Bと色々な音楽~

管理人が手に入れたR&Bのアルバム、1000枚の紹介文を書き続けるブログ その先に見えるものは天国か地獄か・・・

男性グループ

Mindless Behavior ‎– #officialMBmusic [2016 Conjunction Entertainment, EMPIRE]

2010年にシングル『My Girl』(テンプテーションズの同名曲とは別のオリジナル作)でデビュー。 その後は2011年に1枚目のアルバム『#1 Girl』を、2013年には2作目のフル・アルバムとなる『All Around the World』をインタースコープから発売。それぞれ全米アルバム・チャートの7位と6位に送り込んだロス・アンジェルス発のボーイズ・グループ、マインドレス・ビヘイビヴァ。その後は、メンバーの脱退など、苦労が続いたが、オリジナル・メンバーのプリンストンに、新メンバーのEJとマイク・リヴァーを加えた新体制で録音した3枚のアルバムが本作。

このアルバムがリリースされた2016年は、ヴォーカル・グループにとって厳しい時期だったと思う。個人でも高品質の録音機材を調達できるうえ、レーベルの垣根を越えたコラボレーションが当たり前になった時代に、同じメンバーでパフォーマンスを続けることによるマンネリ化や、人間関係のトラブルなどによる活動の停滞に気を配りながら活動を続けなければいけないヴォーカル・グループは、機動的に活動できるソロ・アーティストに比べて少数派になるのは仕方のないことだと思う。実際、彼らも本作の録音前にメイン・ヴォーカルを含む大部分のメンバーが入れ替わっている。だが、今回の作品では、グループ名義による録音という点を最大限に活用して、個性豊かなヴォーカルが複雑に絡み合う、ソロ・アーティストには作れない音楽を聴かせている。

アルバムのオープニングを飾るのは、本作に先駆けてシングルとして発売された”#iWantDat”。この曲は、ロス・アンジェルス出身のバッド・ラックとコンプトン出身のプロブレムをフィーチャーしたアップ・ナンバー。クリス・ブラウンやT.I.の楽曲を思い起こさせる、温かい音色のシンセサイザーとリズム・マシンを使ったトラックをバックに、新しいリード・ヴォーカルのEJがラップっぽい歌唱を披露している。オート・チューンを使ったバック・コーラスがシンセサイザーの音色と一体化して、一つの楽器のように機能している点も面白い。続く”FreaksOnly”もバッド・ラックがゲストで参加。こちらの曲も、温かい音色の電子楽器を活かしたトラックだが、音数を減らしてヴォーカルをじっくりと聴かせている点が大きな違いだ。

一方、”#Blur”はトラップ・ビートを取り入れたミディアム・ナンバー。スクラッチやサイレン、声ネタを挟みこんだトラックは、Tペインやリル・ウェインの楽曲を思い起こさせる。EJの気怠そうなヴォーカルもワイルドで格好良い。これに対し、”#DanceTherapy”は本作で唯一、四つ打ちのビートを取り入れたEDMっぽい華やかで高揚感のある楽曲。他の曲で使われている音色と、似ている音を出す機材を使うことで、アルバムにバラエティと統一感を与えている。色々なタイプのビートに対応する3人の適応力と、一つの音色を使って色々なスタイルのトラックを作り上げる制作陣の技術力に驚かされる。

そして、本作からシングル・カットされた、もう一つの楽曲”#OverNightBag”は、アッシャーやマーカス・ヒューストンのヒット曲を連想させる、ゆったりとしたテンポのビートとレイド・バックしたメロディが印象的なミディアム・バラード。ハンド・クラップなどを織り交ぜながらじっくりと歌を聴かせるロマンティックな楽曲だ。また、このタイプの曲が好きな人には”#ComeUp”もオススメ。こちらは、メロディはラップ寄りのラフなものだが、声の加工を抑え、EJのしっとりとした歌声と、感情を剝き出しにして歌う姿を強調したダイナミックなバラードだ。

あと、自分の中では見逃せないと思ったのは、本作では珍しいタイプのディスコ・ナンバー”#1UCall”だ。乾いた音色のギターと図太い音を響かせるシンセ・ベースを使ったトラックは、キャミオやギャップ・バンドのような80年代のファンク・バンドを彷彿させる。シンセサイザーなどを使ってディスコ・サウンドを再現するグループは珍しくないが、ディスコ・ブギーを一般向けの楽曲に落とし込む度胸と技術は凄いと思う。

今回のアルバムは、過去の2作品に比べると、魅力的な曲は多いが保守的な印象を受ける。トラップやディスコ・サウンドなど、ブラック・ミュージックのトレンドを的確に押さえてはいるものの、いずれも、他の人が成功した手法で、彼らが生み出した新しいスタイルというものは見られなかった。だが、それを差し引いても、個別の楽曲のクオリティ粒が立っていて完成度は高い。

B2Kやプリティー・リッキーのように、ポップスターとしてのわかりやすさと、R&Bのアーティストに求められる歌唱力や斬新さを絶妙なバランス感覚で両立した稀有なグループの一つ。一人では作れない、複雑なメロディや掛け合いの妙を楽しみたい人にはうってつけの佳作だ。

Producer Walter Millsap III, Walter Millsap IV, Alec Jace Millsap, Balewa Muhammad, Candice Nelson, Brian Peters, Teak Underdue etc

Track List
1. #iWantDat feat. Bad Lucc, Problem
2. #FreaksOnly feat. Bad Lucc
3. #Lamborghini
4. #Blur
5. #DanceTherapy
6. #Better feat. KR
7. #OverNightBag
8. #1UCall
9. #ComeUp
10. #SongCry
11. #Muzik





#Officialmbmusic (+ 2 Bonus Tracks)
Mindless Behavior
Conjunction
2016-08-12

 

They. - Nü Religion: HYENA [2017 Mind of Genius, Warner Bros. ]

その先進的な音楽性が評価され、グラミー賞の候補にも選ばれるなど、2016年を代表するアルバムの一つになった、ガラントの『Ology』。同作を配給している、ロス・アンジェルスのインディー・レーベル、マインド・オブ・ジニアスから、第2のガラントと呼んでも過言ではない、先鋭的な作風が魅力のデュオ、ゼイ.の初めてのフル・アルバムが配信限定でリリースされた。

このグループは、コロラド州デンバー出身のダンテ・ジョーンズと、テキサス州サンアントニオ生まれ、ワシントンD.C.育ちのドリュー・ラヴが、2015年にロス・アンジェルスで結成。同年には、本作にも収録されている”Motley Crew”、”Bad Habits”、”Back It Up”の3曲からなるEP『Nü Religion』をマインド・オブ・ジニアスからリリースして、新しい音に敏感なリスナーや批評家の間で注目を集めた。また、同じ年には、レーベル・メイトでもある音楽プロデューサーのズと、ロス・アンジェルスを拠点に活動する電子音楽家のスクリレックスの二人とコラボレーションしたシングル『Working for It』を発表。エレクトロ・ミュージックとR&Bを融合させた奇抜なサウンドで、イギリスやオーストラリアのヒットチャートにもその名を刻んだ。その後も、2017年までに4枚のシングルを発表。そのうち、”Working for It”を除く既発曲と新録曲を1枚のアルバムに纏めたのが、今回紹介する『Nü Religion: HYENA』だ。

彼らの音楽の特徴は、ジャンルに囚われず様々な音楽の要素を摂取する中で培われた視野の広さと柔軟性。2人へのインタビューによると、ジェイムズ・ブラウンやニュー・エディションの影響を受けている一方で、ニルヴァーナのカート・コヴァーンやシンガー・ソングライターのエド・シーランなどからも多くのインスピレーションをもらっているらしい。そして、そんな彼らの楽曲だが、大半が2人+外部のクリエイターという体制で作られている。

アルバムの実質的な1曲目、2人による書き下ろし曲である”Africa”は、カニエ・ウエストの近作を連想させる、色鮮やかな電子音を配したエレクトロ・トラックが面白いヒップホップ。歌うというよりも、言葉を投げると形容したほうが正確な、ラップとも歌とも異なる独特の言葉遣いが印象的だ。

一方、それに続く”Deep End”は2016年に発表された楽曲。変則ビートとマイク・エリゾンドのパワフルなギターを組み合わせたトラックと、喉がちぎれそうな勢いで切々と歌うヴォーカルが印象的な曲。ロックの世界では定番の組み合わせであるパワー・コードを使って、新鮮なトラックを作るセンスは、色々な音楽に慣れ親しんできた彼ららしさが発揮されたものだ。

そして、2015年のEPにも収録された”Motley Crew”は、ガラントの音楽にも似た、前衛的なトラックと、哀愁を帯びた歌声が切ない雰囲気を醸し出すミディアム・ナンバー。シンセサイザーとギター、そしてエフェクターを上手に組み合わせた、幻想的なトラックの上で、カート・コヴァーンやエド・シーランのような繊細さがウリのロック・シンガーを彷彿させる、ある種の暴力性すら感じさせる荒々しい歌声が物悲しいメロディを際立たせるミディアム・バラードだ。

それ以外にも、見逃せない曲はたくさんあるが、その中でも特に注目して欲しいのは、90年代から活躍する女性シンガー・ソングライター、ポーラ・コールが作曲で参加した”Dante's Creek”だ。ギターやエフェクターをアクセントに使ったサイケデリックなトラックは他の曲と同じだが、ポーラが参加することで流麗になったメロディに合わせて、その傾向は大幅に弱まっている。むしろ、チキチキ風のビートを取り入れつつも、最小限の加工を加えたギターの音色をじっくりと聴かせる伴奏をバックに、それに合わせてヴォーカルが切々と歌う、フォーク・ソングの弾き語りっぽいスタイルの曲で、ロックやポップスの要素とヒップホップやR&Bのエッセンスが高い次元で融合している。ヒップホップのミュージシャンによる、フォークソングの再解釈ともいえる名曲だ。

今回のアルバムを含め、彼らの残した録音を聴いていて感じるのは、近年流行しているオルタナティブR&Bをベースにしつつも、ストーンズ・スロウのミュージシャン、マッドリヴやメイヤー・ホーソンといったアーティストのように、ヒップホップやR&Bの要素を強く反映されているということだ。”Motley Crew”にしろ、”Dante's Creek”にしろ、ギターの演奏やガレージ・ロックのメロディを盛り込んでいるが、楽曲の土台となるビートは、一つのフレーズを繰り返すヒップホップの手法がベースになっているし、ビートに合わせて歌うときの節回しは、R&Bのマナーに従っている。その上で、ガレージ・ロックなどのメロディやアレンジを取り入れたり、シンセサイザーやエフェクターで各楽曲、およびアルバム全体に統一感を与えているのは大きい。

フランク・オーシャンやガラントにも言えることだが、彼らは音楽の趣味と人種や家庭環境が必ずしも一致しなくなった、21世紀のアメリカを象徴するアーティストだと思う。今回のアルバムは、アンダー・グラウンドのヒップホップが好きな人には魅力的な作品だと思うが、今後の方向性によっては、オッド・フューチャー一派やOVO勢を脅かす、コアなファンにも大衆にも愛されるミュージシャンに化ける可能性があると思う。そんな可能性を感じさせる斬新なR&B作品だ。

Producer
They., Mike Elizondo

Track List
1. Nü Religion: Hyena (Intro)
2. Africa
3. Deep End
4. Motley Crew
5. Truth Be Told
6. What You Want
7. Silence
8. Back Around
9. Bad Habits
10. Say When
11. All
12. Dante's Creek
13. Back It Up
14. U-RITE





Nü Religion: Hyena [Explicit]
Mind of a Genius/Warner Bros.
2017-02-24

Silk - Quiet Storm [2016 Shanachie]

92年にキース・スウェットがプロデュースしたシングル”Happy Days”でデビュー。翌年には、彼が手掛けた”Freak Me”と、アルバム『Lose Control』が全米R&Bチャートで1位を獲得(前者はHot100も制覇)するなど、90年代を代表する男性ヴォーカル・グループの一つとして、華々しい実績を残してきたアトランタ出身の5人組、シルク(通称90年代のシルク)。その後のキャリアは、度重なるメンバー交替やレーベル移籍、制作に時間とお金がかかるヴォーカル・グループへの厳しい風当たりなど、決して順風満帆なものではなかったが、キース譲りの個性的な声質を活かした粘り強い歌唱と、緻密なコーラス・ワークで常にR&Bファンの注目を集めていた。

2006年のアルバム『Always And Forever』から10年ぶりとなる新作は、前作に引き続き、ニュージャージー州のニュートンに拠点を置く、シャナチーからのリリース。彼らの作品のほかにも、シャンテ・ムーアやミント・コンディション、シリーナ・ジョンソンといった、歌唱力をウリにしているR&Bシンガーやグループの作品を数多く手掛けている同レーベルだけあって、本作も往年のファンの期待を裏切らない、じっくりと歌を聴かせる作品に仕上がっている。

アルバムのタイトル・トラック”Quiet Storm”は、70年代後半から80年代に流行した、甘く洗練されたスタイルのソウル・バラードの総称を曲名に使ったスロー・バラード。インディー・レーベルを中心に、多くのソウル・シンガに楽曲を提供しているダレル・デライト・アランビーがペンを執ったこの曲は、90年代の作品を再現したようなシンセサイザーが主体の洗練されたトラックと、豊かな歌声を丁寧に重ね合う5人のチーム・ワークが光る良曲。個人的にはこの曲だけでもお腹いっぱいだ。

続く”Love 4 U To Like Me”は、本作からシングル・カットされた曲。ジョニー・ギルやシスコの作品にも携わっているウィーリー・モリスが携わった楽曲は、”Quiet Storm”とは打って変わって、しっとりとしたトラックとメロディを取り入れたバラード。ブライアン・マックナイトが作りそうな、切ない雰囲気のメロディのトラックの上で、肩の力を抜いたスマートな歌唱を聴かせるロマンティックな佳曲だ。路線が全く異なる2曲を乗りこなしつつ、きちんと自分達の色に染め上げる姿は、流石としか言いようがない。

それ以外にも、同じくウィリー・モリスが手掛ける”Billionaire”や、ケヴィン・マッカチョンが参加した”Baby Maker”なども絶対に聴き逃せない曲だ。前者は、ハイ・ファイブの代表曲”I Like the Way (The Kissing Game)”の2016年版といった趣の、軽快なビートと甘酸っぱいメロディが心を刺激するアップ・ナンバー。跳ねるようなビートなど、そのままの形では採用しづらい部分は、現代の機材に合わせてアレンジを変えつつ、90年代初頭に流行した明るくキャッチーなR&Bの面影はしっかり残した、懐かしさと新鮮さを感じる曲だ。一方、後者は、ファルセットを多用した、色っぽいコーラス・ワークが光るバラード。ファルセットの使い方やメロディの崩し方は、ディアンジェロの作風にも似ているけど、この曲ではそれをアクセントのレベルに留めることで、同じような方向に向かいがちなバラード曲に個性を吹き込んでいる。

もっとも、このアルバムのクライマックスは、”Only Takes One”だろう。ウィリー・モリス作の同曲は、ボーイズIIメンやジョーが歌いそうな、洗練されたメロディを、重心の低いシックなトラックが引き立てるバラード。他の曲では色々な表現を見せる彼らだが、この曲では自分達の本来の声(?)と無駄のないアレンジを使って、シンプルに纏め上げている。前作の録音時のアウトテイクといわれたら納得してしまいそうな、時代を越えて残る普遍性を感じさせる名曲だ。

本作の面白いところは、比較的若い(といっても10年選手が少なくないが)ソングライターやトラックメイカーを起用したことだろう。彼らのフィルターを通して80年代から90年代にかけて流行したR&Bを、現代のアーティストやリスナーに合わせて再構築したことで、ロマンティックなメロディや甘いコーラス、洗練された演奏を聴かせつつ、2016年の新録作品として、当時を知らない人にも楽しめるものに仕上げたことには、ただただ敬服するしかない。

実力と実績を兼ね備えたベテランならではの安定したパフォーマンスと、若いプロデューサーによって2016年の音楽に再解釈された80年代、90年代のR&B風の楽曲が揃ったことで生まれた。味わい深い佳作。当時の音楽が好きな人はもちろん、本格的なソウル・ミュージックに興味を持った初心者にもおすすめしたい。わかりやすさと聴きごたえを両立した名作だ。

Producer
Marcus Daheatmizer Devine, Wirlie Morris etc

Track List
1. Quiet Storm
2. Love 4 U To Like Me
3. Slow Grind
4. Baby Suit
5. She's The One
6. Billionaire
7. On My Mind
8. Baby Maker
9. I Love You
10. Only Takes One



Silk
Shanachie
2016-03-18

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