melOnの音楽四方山話

オーサーが日々聴いている色々な音楽を紹介していくブログ。本人の気力が続くまで続ける。

女性グループ

BLACKPINK - Square Up EP [2018 YG Entertainment]

平昌オリンピックの入場時にも使われた“Fantastic Baby”などのヒット曲を残し、アジア屈指の人気グループとして、多くの大記録を打ち立ててきたBIGBANGを筆頭に、”Fire”や”I am The Best”といった名曲を発表し、アジア人女性によるヒップホップ・グループのロール・モデルとなった2Ne1など、多くの名グループを輩出してきた韓国のYGエンターテイメント

近年は、メンバーがラッパーのオーディション番組で、ストリート出身の参加者を押しのける活躍を見せたWinnerやiKonといった新しい世代のグループのほか、クラブ・シーンで絶大な人気を誇る、エピック・ハイやザイオンTなどの移籍組、R&Bにフォークソングの要素を盛り込んだ作風で注目を集めている楽童ミュージシャンなど、個性豊かなタレントを擁立。ヒップホップを中心に、幅広いジャンルの音楽に強い総合エンターテイメント企業となった。

ブラックピンクは、同社にとって7年ぶりとなる女性ヴォーカル・グループ。韓国出身のジスとジェニー、オーストラリア出身のロゼ、タイ出身のリサかならる4人組だ。6年以上の長い研修生期間を経て、2016年にシングル”Boombayah”でメジャー・デビューした彼女達は、BIGBANGや2Ne1を手掛けてきたYGの看板プロデューサー、テディ・パクが作る本格的なヒップホップのサウンドと、流行のファッションを身にまとったセクシーなビジュアル。キュートだけど安定感のある歌声で、着実にファンを増やしてきた。

本作は、彼女達にとって初のEP(それ以外にも日本語作品『Blackpink』があるが)。制作陣にはテディ・パクやチョイス37といった事務所所属のプロデューサーのほか、BIGBANGのテヤンの代表曲”"Eyes, Nose, Lips" を手掛けたことでも知られるアメリカのソングライター、レベッカ・ジョンソンなどが参加。YGエンターテイメントらしい、アメリカのヒップホップ、R&Bを咀嚼したクールなサウンドを聴かせている。

本作の1曲目は、アルバムと同時にミュージック・ビデオが発表された、本作からのシングル曲。テディ・パクが制作を主導したトラックは、レゲトンを連想させる華やかな音色を使いつつ、トラップやクランクのエッセンスを盛り込んだビートが格好良いヒップホップ作品。レベッカ・ジョンソンや24、R.ティーを共同制作者に迎え、こまめに曲調を変えたアレンジと、ビートとは真逆のキュートな4人の歌声が聴きどころ。

続く、”Forever Young”はテディに加え、フューチャー・バウンスが制作に参加したアップ・ナンバー。BTSの”Blood Sweat Tears”を彷彿させる。鮮やかな音色のビートを使った情熱的な雰囲気のナンバー。レゲトンの要素を盛り込み、彼女達のセクシーな一面を引き出した演出が格好良い。

これに対し、”Really”はチョイス37がプロデュースを担当、ソングライティングをテディと韓国系アメリカ人のダニー・チャンが担当したゆったりとしたテンポの曲。フィフス・ハーモニーTLCのアルバムで聴けるような、遅めのテンポのヒップホップのトラックと、リラックスした雰囲気で歌う4人の姿が心に残る楽曲。SWVや3LWのような、90年代から2000年代にかけてアメリカで活躍した、スター性と実力を兼ね備えたガールズ・グループの流れを汲んだ楽曲だ。

そして、本作の最後を飾るのが”See U Later”。R.ティーと24がプロデュースしたアップ・ナンバー。ムーンバートンのビートを取り入れているものの、低音は控えめで、サビの印象的なフレーズに重きを置きつつ、起承転結がはっきりしたメロディを聴かせることに力を入れた、韓国のポップスのトレンドを取り入れたアレンジの作品だ。

彼女達の面白いところは、プロダクションではアメリカのヒップホップに傾倒しつつ、パフォーマンスではヒップホップの臭いを感じさせないところだ。音楽性こそヒップホップが土台になっているが、ファッションやヴォーカルからはヒップホップの影響を感じさせない。このヒップホップのクールなサウンドと、同世代の女性が憧れる格好良いガールズ・グループというロール・モデルを同時に打ち出したところが、彼女達の特徴だと思う。

TLCやデスティニーズ・チャイルドのような、R&Bの枠を超え、多くの人の心に訴えかける力を持つ稀少なアルバム。近年少なくなった「ポップスのいちジャンルとしてのR&B」の面白さを堪能できる良作だ。

Producer
Teddy Park, Bekuh Boom, Future Bounce, R.Tee, 24, Choice37

Track List
1. Ddu-Du Ddu-Du
2. Forever Young
3. Really
4. See U Later





Xscape - Here For IT [2018 Redzone]

1993年に、ジャーメイン・デュプリが率いるソニー傘下のソー・ソー・デフから、アルバム『Hummin' Comin' at 'Cha』でメジャー・デビュー。総合アルバム・チャートの3位に入る華々しいデビューを飾った、4人組の女性ヴォーカル・グループ、エクスケイプ。

その後も、95年に『Off The Hook』、98年に『Traces of My Lipstick』 を発表。全ての作品で100万枚を売り上げるなど、TLCアン・ヴォーグSWVと並び称される、90年代を代表する人気ガールズ・グループとして大きな成功を収めた。

しかし、3作目の発表後に、ラトチャ・スコットがソロ活動のためにグループを離れると、キャンディもシンガー・ソングライターに転身。TLCの”No Scrubs”やディスティニーズ・チャイルドの”Bills, Bills, Bills”などのヒット曲を制作して人気ソングライターとしてグラミー賞を獲得すると、それ以外のメンバーも、歌手や俳優として個人の活動に打ち込むようになり、グループとしての活動は停滞していった。

このアルバムは、『Traces of My Lipstick』以来、実に20年ぶりとなる彼女達の新作。キャンディこそ不参加なものの、ラトチャを含む3人が参加。ほぼ全ての楽曲をトリッキー・スチュアートが手掛け、美しいメロディとセクシーな3人のパフォーマンスが存分に堪能できる、魅力的なR&B作品に仕上がっている。

本作の1曲目は、トリッキー・スチュアートとピエール・メドーがプロデュースした”Memory Lane”。トニ・ブラクストンからオマリオンまで、新旧の名シンガーを成功に導いてきた彼らが手掛ける曲は、『Traces of My Lipstick』の収録曲と勘違いしそうな、ヒップホップのビートを使ったスロー・バラード。尖ったサウンドの上で、艶めかしい歌声をじっくりと聴かせる手法は、 90年代に一世を風靡した彼女達の音楽を丁寧に再現している。

続く”Dream Killa”は、本作からの先行シングル。ソングライティングを3人が担当した楽曲は、90年代に流行した、メロディをじっくりと聴かせるタイプのスロー・バラード。しかし、バックトラックはチキチキ・ビートではなく、ジョーやR.ケリーの作品を思い起こさせる色っぽいサウンド。年を重ね、大人の色気を身に着けた3人の持ち味が、遺憾なく発揮された作品だ。

また、もう一つのシングル曲である”Wifed Up”は、ピエール・メドーが制作を主導したミディアム。跳ねるようなドラムと軽妙なメロディの組み合わせは、ジェイソン・デルーロやオマリオンの作風に近い。ポップなメロディと躍動感あふれるビートが心地よい、聴きなれない作風ではあるが、きちんと自分達の作品に落とし込んでいるのは、彼女達の経験と技術の賜物だろう。

そして、本作のタイトル・トラックである”Here For It”はトリッキー・スチュアートやピエール・メドーに加え、彼女達自身も制作に参加したミディアム。ダンスホール・レゲエの要素を取り込んだ作風は、フィフス・ハーモニーの”Down”にも少し似ている。フィフス・ハーモニーと比べると、経験を積んで重みを増した3人の歌声と、軽快なレゲエのビートを組み合わせる技術が素晴らしい良曲だ。

今回のアルバムは、全盛期のイメージを踏襲しつつ、年を重ねて老練さを身に着けた3人の表現が魅力の作品だ。ジャーメイン・デュプリからは離れたものの、彼と同じく90年代から活躍するトリッキー・スチュアートを多くの曲に起用。現在もコンスタントに新作を発表している彼の新鮮な感性と豊富な経験を活かして、90年代の音楽の雰囲気を盛り込んだ、現代向けのR&Bを録音している。また、3人のヴォーカルも「高い表現力とキュートな歌声を兼ね備えた少女」から「高い表現力で豊かな人生経験を音楽に吹き込む大人の女」へとアップデートし、昔の彼女達の魅力を残しつつ、現在のエクスケイプの表現に落とし込んでいる。この、「残せる部分は残しつつ、残せない部分は現代に合わせて作り直す」という方針を徹底したことが、彼女達の強いところだろう。

前作から20年以上の時を経ても、彼女達の輝きは衰えることがないことを再確認させてくれる良作。ここにキャンディが加わったらどんな音楽が生まれるのか、次の作品に期待が膨らむ充実の内容だ。

Producer
Tricky Stewart, Medor J Pierre, Xscape etc
Track List
1. Memory Lane
2. Dream Killa
3. Wifed Up
4. Here For It
5. Craving
6. Last Of Me




En Vogue - Electric Café [2018 En Vogue, eOne]

80年代にクラブ・ヌーヴォなどを手掛けていた、フォスター&マッケルロイが主催するオーディションの合格者で結成。1990年にアルバム『Born to Sing』で華々しいデビューを飾った、カリフォルニア州オークランド発の4人組ガールズ・グループ、アン・ヴォーグ。

メンバー全員がリード・ヴォーカルを執れる高い技術とスター性、曲の途中でリードとコーラスを切り替える大胆で緻密なアレンジ。往年のドゥー・ワップ・グループを思い起こさせる端正の取れたヴォーカルと、有名ファッション誌から貰った「Vogue」の名前にふさわしい、洗練されたヴィジュアルが魅力の彼女達。ストリート色の強いファッションと、ヒップホップを取り入れた華やかな音楽性で人気を集めたTLCとは対極の、大人っぽい雰囲気がウリのグループとして、多くの人の記憶にその名を刻んだ。

しかし、2000年以降はメンバーの脱退やソロ転向などで、グループの活動は停滞。2002年には初のクリスマス・アルバム『The Gift of Christmas」を発表し、2004年にはアルバム『Soul Flower』を発売するが、商業面では苦戦。その後は、ライブや各人の活動に軸足を移すようになる。

このアルバムは、そんな彼女達にとって14年ぶりとなる通算7枚目のフル・アルバム。残念なことに、2011年に収録曲の一部が公開されたものの、後にお蔵入りになったEP『Rufftown Presents En Vogue』に入る予定だった楽曲は収められていない。だが、新たに録音された作品は、彼女達のヒット曲を生み出してきたフォスター&マッケルロイを中心に、元サムシン・フォー・ザ・ピープルのカーティス・ウィルソン、元メンバーのドーン・ロビンソンと組んだ音楽ユニット、ルーシー・パールも話題になったラファエル・サディークなど、彼女達と一緒に90年代のR&Bシーンを盛り上げてきた面々が参加。それ以外にも、ドクター・ドレの『Compton』で辣腕を振るっていたディム・ジョインズを起用するなど、西海岸出身の新旧の敏腕クリエイターが顔を揃えた力作になっている。

収録曲で最初に目を惹くのは、フォスター&マッケルロイがプロデュースした”Deja vu”だ。ロドニー・ジャーキンスのプロデュースで、2001年にソロ歌手としてデビュー、後にグループに加入したローナ・ベネットと、ソロ作品の発売経験もあるテリー・エリスがペンを執ったアップ・ナンバーだ。ピート・ロックやマーリー・マールを仕事を彷彿させる軽快なヒップホップのトラックの上で、艶めかしい歌声を響かせる3人の姿が印象的。複雑なヒップホップのグルーヴを巧みに乗りこなす、絶妙なさじ加減のメロディも見逃せない。

これに続く”Rocket”は、プロデュースをカーティス・ウィルソン、曲作りにニーヨとウィルソンが担当したスロー・ナンバー。電子楽器を多用したスタイリッシュなトラックと、みずみずしい歌声をじっくりと聴かせるスタイルは、カーティスが在籍していたサムシン・フォー・ザ・ピープルの音楽そのもの。その一方で、一聴したら忘れない、シンプルでキャッチーなメロディでは、ニーヨの持ち味がきちんと発揮されている。カーティスの色っぽいサウンドと、ニーヨの親しみやすいメロディ、透き通った歌声で精密なコーラスを聴かせる三人のヴォーカルがうまく噛み合った、良質なバラードだ。

また、スヌープ・ドッグが客演した”Have a Seat”は、キッド・モンローが制作に参加。ブリブリと唸るベースは、レイクサイドやオハイオ・プレイヤーズが70年代に録音したファンク・ミュージックを連想させる。ディスコ・サウンドをバックに、軽やかなメロディと息の合ったコーラスを披露する3人の姿は、70年代に一世を風靡したエモーションズにも少し似ている。2005年にスティーヴィー・ワンダーの『Time to Love』で軽妙なコーラスを披露していた彼女達らしい、ソウル・ミュージックとの相性の良さを感じさせる良曲だ。

そして、オークランドが世界に誇る名シンガー・ソングライター、ラファエル・サディークが手掛けた”I'm Good”は、本作に先駆けて公開された楽曲。生のバンドを使ったと思われる、太く荒々しい音色の伴奏をバックに、囁きかけるような歌声を聴かせる3人のパフォーマンスが魅力のバラード。一音一音の間に隙間を置いたメロディや、抽象的なフレーズを盛り込みながら、流麗なR&Bに纏めた構成は、トニ・トニ・トニの代表作『House of Music』を連想させる。

本作の聴きどころは、高いコーラス技術を活かした3人のパフォーマンスと、現代の流行を融合した曲作りだ。いまや、欧米のヒット・チャートではヴォーカル・グループが少数派になり、その希少なヴォーカル・グループも、ラッパーを交えたメンバー間の掛け合いがウリの、ソロ・アーティストの集合体のようなものになっている。その中で、彼女達は昔ながらのハーモニーで勝負している点は驚きだ。

また、本作は往年の輝きを懐かしむに留まらず、ディム・ジョーンズのような若いクリエイターを起用し、あくまでも「2018年の新作」として仕上げている。この前例や先駆者のいない作品に取り組んでいる点も、このアルバムの面白いところだろう。

「複数人の声を組み合わせることで、楽曲に色々な感情を吹き込む」という、言葉に起こすとシンプルだが、実践するのは難しい表現技法でポップスの歴史に名前を残した彼女達の新作にふさわしい、充実の内容。高いレベルの歌の技術と制作技術の両方が揃ったことで生まれた、味わい深い作品だ。


Producer
Foster & McElroy, Dem Jointz, Raphael Saadiq, Curtis "Sauce" Wilson etc

Track List
1. Blue Skies
2. Deja vu
3. Rocket
4. Reach 4 Me
5. Electric Cafe
6. Life
7. Love the Way
8. Oceans Deep
9. Have a Seat feat. Snoop Dogg
10. I'm Good
11. So Serious
12. Have a Seat (No Rap Ver)





ELECTRIC CAFE
EN VOGUE
EONE
2018-04-06

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