ブラック・ミュージック千本ノック~SoulとR&Bと色々な音楽~

管理人が手に入れたR&Bのアルバム、1000枚の紹介文を書き続けるブログ その先に見えるものは天国か地獄か・・・

バンド・ユニット

Tuxedo & Zapp – Shy [2018 Stones Throw]

2017年初頭に3曲入りのEP『Fun With The Tux』を発表。その後、同作に新曲を追加した『Tuxedo II』をリリース。8月には、ロック・フェスへの出演を含む来日公演を成功させたことも記憶に新しい、メイヤー・ホーソンとジェイク・ワンによる音楽ユニット、タキシード。

彼らの約1年ぶりとなる新曲は、トーク・ボックスと電気楽器を駆使した独特のスタイルで、今も多くのファンがいる、オハイオ出身のファンク・バンド、ザップとのコラボレーション作品。80年代から多くのヒット曲を世に送り出してきた彼らは、99年に稀代のフロント・マン、ロジャー・トラウトマンが亡くなった後も、残されたメンバーで新作を録音し、来日公演を含む多くのステージをこなしてきた。

両者のコラボレーション曲は、タキシードが得意とする四つ打ちのビートと、ザップのウリである電気楽器のグラマラスなサウンドを組み合わせたディスコ・ナンバー。モダンな音色の伴奏や、トーク・ボックスを使ったヴォーカルは、一回聴いただけでザップの作品とわかるものだが、ハウス・ミュージック寄りのビートや、メイヤー・ホーソンの甘い歌声が入る箇所は、きちんとタキシードの曲に聴こえるから面白い。

この曲の醍醐味は、ソウル・ミュージックやハウス・ミュージックに近いタキシードのスタイルと、ザップのファンクが合わさって、一つの作品になっていることだ。水と油のように音楽性の異なる両者の音楽が合わさって、双方の個性を残しつつ、両者の音楽が融合した斬新な楽曲になっているところだろう。

強烈な個性が魅力のミュージシャンが手を組み、両者の可能性を切り開いた、画期的なダンス・ナンバー。1+1が2に留まらず、3にも5にもなる可能性を秘めていることを僕らに教えてくれる素晴らしいコラボレーションだ。

Producer
Tuxedo & Zapp

Tracck List
1. Shy
2. Shy(Instrumental)



Shy [7 inch Analog]
Tuxedo
Stones Throw
2018-02-02

Seun Kuti & Egypt 80 - Black Times [2018 Strut]

母国ナイジェリアのダンス・ミュージックと、アメリカやヨーロッパの黒人音楽を組み合わせた独特のサウンドや、強烈なメッセージを含む歌詞で世界にその名を轟かせ、アフロ・ビートというジャンルを確立した、イギリス出身のナイジェリア人ミュージシャン、フェラ・クティ。彼自身は97年にHIVの合併症でこの世を去ったものの、残されたバンド・メンバーや彼の子供達の手によって、その音楽は継承されてきた。

ショーン・クティは、フェラが遺した子供の一人。末っ子でありながら、幼いころから父のバンドでステージに立ち、彼の死後は父のバンドを受け継いで、現在も世界各地のステージに立っている。

本作は、2014年の『A Long Way To The Beginning』以来となる、通算4枚目のスタジオ・アルバム。前作ではロバート・グラスパーを招いていたが、本作ではサンタナを起用。父が遺したバンドと一緒に、アフロ・ミュージックを2018年仕様にアップデートした作品を録音している。

アルバムの1曲目は、バンドの面々による”Last Revolutionary”。複数のパーカッションと管楽器を組み合わせて、中毒性のある演奏を聴かせるバンドと、マルコムXやキング牧師のような、力強い言葉を投げかける、ショーンのヴォーカルが光る曲。フェラ・クティの魅力を丁寧に継承したパフォーマンスが楽しめる。

続く”Black Times”は、アイズレー・ブラザーズとのコラボレーション・アルバムも記憶に新しい、カルロス・サンタナを招いた作品。前曲より少しテンポを落とした伴奏に絡みつく、カルロス・サンタナの艶めかしいギターが格好良いミディアム・ナンバーだ。一つのフレーズを少しずつ変えて、曲に起伏を与えるエジプト80の演奏と、時に荒々しく、時に艶めかしく演奏するカルロスのギターのコンビネーションが聴きどころ。

また、”Kuku Kee Me”は、躍動感あふれるビートと、陽気な鍵盤楽器、勇壮なホーン・セクションを組み合わせたループが格好良いアップ・ナンバー。ホーン隊の演奏は、ジェイムス・ブラウンなどのファンク・ミュージックのエッセンスも垣間見える。ナイジェリアの音楽と、欧米の黒人音楽を融合した、フェラのスタイルを丁寧に踏襲した良曲だ。

そして、本作の収録曲では珍しい、ゆったりとしたテンポの”African Dreams”は、リズム・セクションとベースが生み出す粘り強いグルーヴが魅力の作品。テンポを落とすことで、起伏のある伴奏を丁寧に聴かせる技術が素晴らしい。一つのフレーズを繰り返すことで、中毒性のある楽曲を作る手法は、ハウス・ミュージックやヒップホップでもしばし見かけるが、人間が楽器を演奏することで、細かく曲調を変えられるのは、バンドならではの技だろう。

60年代から活動し、フェラの死後はショーンに引き継がれた、バンドの持ち味とアフロ・ビートの魅力は、このアルバムでも変わることなく引き継がれている。ナイジェリアの伝統音楽をベースに、ジャズやファンクの要素を加え、近年はハウス・ミュージックやヒップホップ、ラテン音楽のエッセンスを盛り込むようになった彼らの音楽は、アメリカの黒人音楽と一線を画しながら、アフリカの音楽を聴く機会の少ない人にも、聴きやすいものに仕立て上げられている。

メンバーが変わっても、色々な音楽を飲み込みながら、進化を続けることで、フェラ・クティの思想を体現しているバンドの魅力を思う存分堪能できる魅力的な作品。流行のポップスとは一味違う、唯一無二のグルーヴが心に残る良盤だ。

Producer
Seun Kuti, Arnaud Granet

Track List
1. Last Revolutionary
2. Black Times feat. Carlos Santana
3. Corporate Public Control Department
4. Kuku Kee Me
5. Bad Man Lighter (B.M.L.)
6. African Dreams
7. Struggle Sounds
8. Theory Of Goat And Yam






Precious Lo’s - Too Cool For Love [2018 P-Vine]

2000年代前半ごろから、ディム・ファンクなどの台頭によって注目を集め、近年はスヌープ・ドッグとディム・ファンクのコラボレーション作品や、メイヤー・ホーソンがヴォーカルを担当するタキシードのヒットも話題になっている、80年代テイストのソウル・ミュージック。2017年には日本人クリエイター、T-Grooveの『Move Your Body』が発売され、収録曲が複数の国のヒット・チャートに名を刻むなど、世界中のミュージシャンを巻き込んで盛り上がっているこのジャンルで、新たに頭角を現したのが、カナダ出身の二人組、プレシャス・ローズだ。

トロントを拠点に活動する、ニック・タイマーと日系カナダ人のギル・マスダによるこのユニットは、2000年ごろから、ヒップホップ・ユニット、サークル・リサーチの名義で複数の作品をリリースしている、経験豊富なベテラン。2017年には、後にイギリスのコンピレーション・アルバム『Roller Boogie Volume 3』にも収録される、T-Grooveのシングル”Roller Skate”にフィーチャーされたことでも話題になった。

今回のアルバムは、サークル・リサーチ名義の2008年作『Who?』以来、約11年ぶり、現在の名義では初となるスタジオ・アルバム。プロデュースはサークル・リサーチ名義で、ヴォーカルは二人が担当。ゲストとして、音楽とヴィジュアルの両分野で独創的な作品を残している、トロント出身のシンガー・ソングライター、メイリー・トッドなどが参加。ヒップホップの世界で培った経験と、ソウル・ミュージックへの深い造詣を活かした、本格的なソウル作品を披露している。

アルバムの1曲目は、タイトル・トラックの”Too Cool For Love”。ゆったりとしたビートと、ポロポロと鳴り響くピアノの音色を強調したトラックと、ラップのような抑揚のあるメロディは、ディスコ音楽というより、ディアンジェロやサーラ・クリエイティブ・パートナーズのような、ヒップホップを取り入れたソウル・ミュージックに近い。長い間、ヒップホップに取り組んできた彼ららしい曲だ。

この路線を突き詰めたのが、アルバムに先駆けてミュージック・ビデオが制作された”Right Time For Us”。太いシンセサイザーの音色を使ったビートが格好良いミディアム・ナンバー。ヴォーカルが入っている個所は少なめで、トラックのアレンジによって曲に起伏をつけているスタイルは、エイドリアン・ヤングの作品を彷彿させる。

また、”Older Now”との組み合わせで、7インチ・レコード化された”Small Town Girl”は、軽妙な伴奏とゆったりとしたメロディが心地よいスロー・ナンバー。ファルセットを多用した滑らかな歌唱は、メイヤー・ホーソンのそれを思い起こさせる。レゲエのエッセンスを盛り込んだ緩いビートとメロディも見逃せない。

そして、本作の隠れた目玉が”Older Now”。シカゴが生んだソウル界の巨匠、ジーン・チャンドラーの80年のヒット作”Does She Have A Friend?”のフレーズをサンプリングしたこの曲は、アナログ・シンセサイザーの音色を使ったスタイリッシュでグラマラスな伴奏の上で、メロディを崩すように歌う姿が心に残るミディアム・ナンバー。伴奏だけを聴くと”Does She Have A Friend?”のテイストが強いが、ヴォーカルのアレンジで現代のヒップホップのように聴かせている。

今回のアルバムの面白いところは、80年代のソウル・ミュージックと現代のヒップホップやR&Bの手法を組み合わせ、80年代の音楽の雰囲気を残しながら、現代のリスナーの琴線に響く作品に仕立てているところだ。音色選びやアレンジでは、随所にモダンな80年代のソウル・ミュージックの要素を取り入れつつ、メロディやアレンジに現代のブラック・ミュージックの先鋭さを盛り込むことで、80年代の洗練された雰囲気を残しつつ、過去の音楽とは一線を画した、現代的な新しいソウル・ミュージックに纏め上げている。

ヒップホップに慣れ親しんだ世代のミュージシャンによる、鋭い視点と斬新な解釈が面白いソウル・アルバム。サンプリング・ソースという形で結びつくことの多かった、80年代ソウルと現代のヒップホップの新しい関係を感じさせる良作だ。

Producer
Circle Research

Track List
1. Too Cool For Love
2. More Than Frends (feat. Maylee Todd)
3. Without You (feat.Tyler Smith)
4. Still The Same (feat.Tyler Smith)[Buscrates 16-Bit Ensebmle Remix]
5. Falling For You
6. Problems
7. Right Time For Us
8. This Is Love (Circle Research Remix)
9. Night Ridin’(feat. Tyler Smith)
10. Fly Away (Tyler Smith Remix)
11. Thinking
12. Small Town Girl
13. Older Now
14. U Turn Me Up





トゥ・クール・フォー・ラヴ
ザ・プレシャス・ローズ
Pヴァイン・レコード
2018-02-14

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