melOnの音楽四方山話

オーサーが日々聴いている色々な音楽を紹介していくブログ。本人の気力が続くまで続ける。

バンド・ユニット

The New Respects - Before The Sun Goes Down [2018 Credential]

少ない人数と比較的安価な機材で作れるヒップホップやR&B、電子音楽の隆盛によって、不利な立場に置かれている、ロック・バンド。

アメリカのポップス史を振り返ると、スライ&ザ・ファミリー・ストーンやアイズレー・ブラザーズ、ファンカデリックなど、黒人によるロック・バンドが多くの名作を残していたが、近年は少数派になっていた。そんな中、数少ない黒人によるロック・バンドとして頭角を現しているのが、ナッシュビルを拠点に活動する4人組、ザ・ニュー・リスペクツだ。

彼女達は、ヴォーカル兼ギターのジャスミン・マレン。ギターのザンディ、ベースのレキシのフィッツジェラルド姉妹、彼女達の兄弟であるドラムのダリウスからなる4人組。10代の頃からゴスペル・シンガーであるジャスミンの母、ニコールのステージで演奏するなど、多くのステージを経験してきた叩き上げのバンドである。

本作は2017年の『Here Comes Trouble』以来となる新作で、彼女達にとって初のフル・アルバム。10曲の新曲に加え、前作に収められている”Come As You Are “、”Frightening Lightning”、”Trouble”を収録したものになっている。

新曲のうち、本作に先駆けて公開されたのは7曲目の”Something To Believe In”。スライ&ザ・ファミリー・ストーンの”Family Affaire”を思い起こさせる軽快なビートと、陽気な歌声が心に残るアップ・ナンバー。リズミカルなギターの演奏と、パワフルでありながら適度に力を抜いたジェシーの歌声が印象的な曲だ。キュートでセクシーなコーラスは、スリー・ディグリーズやエモーションズに少し似ている。

これに対し、本作のリリース直前に発表された”Before The Sun Goes Down”は、しなやかなベース・ラインと少しゆったりとしたテンポの演奏、流麗なメロディと可愛らしい歌声の組み合わせが心地よい楽曲。粗削りな音色の楽器を組み合わせて、ポップで洗練された楽曲を生み出すセンスと技術に驚かされる。ベース・ラインがカーティス・ブロウなどの80年代のヒップホップに少し似ているのも見逃せない。

また、エミネムなどを手掛けているセロン・フェムスターが制作に参加した”Freedom”は、ゴツゴツとしたサウンドを活かした泥臭いミディアム・ナンバー。60年代のスタックス・レコードや、70年代のハイ・レコードのような、往年のアメリカ南部の音楽レーベルが遺したお蔵入り作品ではないかと思わせる、泥臭い演奏が魅力のミディアム・ナンバー。重く荒々しい伴奏をバックに、雄叫びのような力強い歌声を響かせるジャスミンには、エッタ・ジェイムスやビヨンセのような威圧感すらある。

それ以外の曲では、”Future”も見逃せない。エフェクターを使って電子楽器っぽく仕立てたベースが生み出すグルーヴと軽快にリズムを刻むギターの伴奏が心地よい曲。スライ&ザ・ファミリー・ストーンの尖った雰囲気と、ザ・ルーツの安定感が融合したような曲だ。

このアルバムの聴きどころは、ツイン・ギターにベース、ドラムにヴォーカルという、ビートルズの時代から現代まで、多くのバンドが取り入れてきたスタイルを用いながら、独自性を発揮しているところだ。シンプルな編成のバンドでありながら、様々なアーティストの演奏手法を引用し、独自性を発揮しているところだ。ロックという成熟した分野で、過去の蓄積を利用しつつ、それらを組み合わせて独自の作品を組み立てているのが彼女達の面白いところだと思う。

ヒップホップやエレクトロ・ミュージックのような打ち込み音楽に押されがちなバンド・サウンドの魅力と可能性を感じさせる良作。アルバムを聴き終えた後、楽器が弾きたくなる魅力的な作品だ。

Track List
 Ben Shive, Jeremy Lutito, Theron Feemster


Track List
1. Ain't Goin' Nowhere
2. Before The Sun Goes Down
3. What You Really Want
4. Trigger
5. Hands Up
6. Freedom
7. Something To Believe In
8. Come As You Are
9. What Makes The World
10. Trouble
11. Frightening Lightning
12. Future
13. Rich





BEFORE THE SUN GOES DOWN [LP] [Analog]
THE NEW RESPECTS
CREDENTIAL RECORDINGS
2018-08-17

88rising - Head in the Clouds [2018 88rising]

多くの日本人ダンサーが目標に掲げるブライアン・パスポスのような、アメリカの実力派アーティストを扱いつつも、ユーモアに富んだ独特のリリックで、中国国内のラップ禁止令のきっかけを作ったハイヤー・ブラザーズ、10代の若さでアジアを代表するラッパーの一人に上り詰めたインドネシアのリッチ・ブライアン、韓国のキース・エイプのような、アジア各国のヒップホップ・アーティストを世界に紹介してきたアメリカの音楽レーベル、88ライジング

音楽メディアとレコード・レーベルの機能を持ち、母国でも音楽好きの間でしか知られていなかった、隠れた名アーティストを紹介してきた同レーベルの、初のコンピレーション・アルバムが本作。リッチ・ブライアンやハイヤー・ブラザーズといった、同社と契約しているアーティストの新曲と既発曲のリミックスを収録。ゲストとしてゴールドリンクやプレイボーイ・カルディといったアメリカの人気ラッパーに加え、日本からもm-floのバーバルが参加するなど、国際色豊かな同レーベルらしい豪華なアルバムになっている。

アルバムのオープニングを飾るのは、大阪出身のジョージと、インドネシアのニキという、二人のシンガー・ソングライターが組んだ”La Cienega”。電子楽器を使った、もっさりとしたビートの上で気だるく歌うニキと、時に彼女に寄り添うように優しく、時にマックスウェルのように鋭いファルセットを聴かせるジョージの歌唱力が光るスロー・ナンバーだ。二人の繊細な歌声は、アメール・ラリューやレミー・シャンドのような、ネオ・クラシック・ソウルのシンガーに通じるものがあるが、この曲では、電子楽器を駆使した現代的なビートと組み合わせることで、彼らと差別化している。

これに対し、ハイヤー・ブラザーズと、ロス・アンジェルス近郊のワッツ出身の03グリードががコラボレーションした”Swimming Pool ”は、タイ・ダラ・サインなどの作品に関わっているフランス出身のキャッシュマネーAPと、ロイ・ウッズdvsnなどを手掛けているカナダ出身のアキール・ヘンリーがプロデュースを担当した国際色豊かな曲。ドレイクグッチ・メインのアルバムに収録されていそうな、電子楽器中心のシンプルなトラップ・ビートの上で、英語と中国語を使い分けながらラップする姿が印象的な曲。アメリカで流行しているサウンドを自分の音楽に染め上げるハイヤー・ブラザーズの強烈な個性が心に残る。

だが、本作の隠れた目玉はシカゴ出身の24歳のラッパー、フェイマス・デックスが2018年に発表して、アメリカの総合シングル・チャートの28位に入った”JAPAN ”のリミックス・ヴァージョンだろう。「日本でドラックを5万回もやったぜ」と歌った原曲を、韓国出身のキース・エイプと日本出身のバーバルが改変。バーバルは英語で「女の子からLINEが来たら楽しい時間の始まり」「朝までカラオケで歌うぜ」とラップし、キースは「みんなは俺を日本人か?と聞くけど、俺は韓国人だ」「腕にも拳にもNIGOのグッズがあるぜ」と、英語と韓国語を織り交ぜたパフォーマンスを繰り出している。余談だが、バーバルのパートには「P.K.C. on his boys」(EXILEの元メンバー、ヒロやマキダイ達と組んだラップ・グループPKCZのこと)というフレーズをさり気なく盛り込んでいるのが心憎い。

そして、本作の最後を締めるのが、ロス・アンジェルス出身のプロデューサー、バーニー・ボーンズとジョージが共作したタイトル曲”Head In The Clouds”。レゲエの緩いビートと、EDMのような高揚感があるシンセサイザーの伴奏を組み合わせたトラックの上で、甘い歌声を響かせるスロー・ナンバーだ。曲の後半ではストリングスのような音色を加え、最後までゆったりとしたバラードとして聴かせる演出が印象的。

今回のアルバムを通して感じるのは、アメリカのミュージシャンにも見劣りしないアジア勢の高いスキルと豊かな個性だ。各国の言語に慣れ親しんだ人でもなければ、誰がどの国のアーティストか判別するのは難しい。むしろ、同じ言語を使うアーティストでも、声質やキャラクターによって表現の方法が全然違う。この各人の際立った個性と、それを活かすレーベルの編集能力が本企画の面白さを生んでいると思う。

世界各地で腕を磨いてきた名手たちの素晴らしいパフォーマンスを、存分に楽しめる良作、アメリカで生まれ、世界に散らばったヒップホップが、各国の文化を飲み込んでで進化していることを僕らに教えてくれる貴重なアルバムだ。

Producer
NIKI, CashMoneyAP, Akeel Henry, J Gramm, Barney Bones, joji etc

Track List
1. La Cienega feat. ​joji & NIKI
2. Red Rubies feat. Don Krez, Higher Brothers, Rich Brian, Yung Bans & Yung Pinch
3. Swimming Pool feat. 03 Greedo & Higher Brothers
4. Peach Jam feat. BlocBoy JB & ​joji
5. Midsummer Madness feat. AUGUST 08, Higher Brothers, ​joji & Rich Brian
6. Plans feat. NIKI & Vory
7. History feat. Rich Brian
8. Lover Boy (88 Remix) by Phum Viphurit feat. Higher Brothers
9. Poolside Manor feat. AUGUST 08 & NIKI
10. Beam by Rich Brian feat. Playboi Carti
11. Let It Go feat. BlocBoy JB & Higher Brothers
12. Disrespectin feat. AUGUST 08, Higher Brothers & Rich Brian
13. Warpaint feat. NIKI
14. I Want In (feat. AUGUST 08 & NIKI
15. JAPAN (88 Remix) by Famous Dex feat. Keith Ape & Verbal
16. Nothing Wrong (Remix) by Higher Brothers & Harikiri feat. GoldLink
17. Head In The Clouds feat. ​joji





Head In The Clouds [Explicit]
88rising Music/12Tone Music, LLC
2018-07-20

The Internet - Hive Mind [2018 Columbia]

フランク・オーシャンタイラー・ザ・クリエイターといった、鋭いセンスと強烈な個性が魅力のアーティストを多数輩出し、アメリカのヒップホップ界に新しい風を吹き込んだ、カリフォルニア州のロス・アンジェエルス発のヒップホップ集団、オッド・フューチャー。

同クルーのサウンドを支えるプロデューサー、マット・マーシャンと、飛びぬけた個性が武器の女性シンガー、シド(2016年にクルーを脱退)、が中心になって2011年に結成した、ソウル・バンドが、ジ・インターネットだ。

シドとマットの音楽ユニットとして始まったこのグループは、後に彼らのツアーに帯同していたパトリック・ペイジなどのメンバーを加え、正式なバンドとして活動を開始。2011年にはフランク・オーシャンも制作に参加した『Purple Naked Ladies』を発表すると、スライ&ザ・ファミリー・ストーンを彷彿させる前衛的な音楽性と、ロータリー・コネクションのミニー・リパートンを彷彿させるシドの透き通った歌声が注目を集める。その後も、精力的にライブを行いながら2013年に『Feel Good』を、2015年には『Ego Death』を録音。後者はグラミー賞にノミネートするなど、高い評価を受けた。

本作は、彼らにとって3年ぶり4枚目となるスタジオ・アルバム。サンダーキャットの弟としても知られるジャミール・ブルーナがグループを離脱し、シドがクルーを離れる一方、シド、マット、スティーヴがソロ作品を発表するなど、前作よりもパワー・アップしたバンドの能力が遺憾なく発揮された作品になっている。

本作に先駆けて発表されたシングル曲”Roll (Burbank Funk)”は、リック・ジェイムスやスレイヴの作品を思い起こさせる、太いベースの音色とスタイリッシュなビートが心地よいアップ・ナンバー。洗練されたダンス・ナンバーと思いきや、随所でエフェクターを使用した幻想的なサウンドに意表を突かれる曲。朴訥としたスティーヴ・レイシーのヴォーカルが、スライ・ストーンっぽく聴こえるのも面白い。

続く”Come Over”はシドがリード・ヴォーカルを担当したミディアム・ナンバー。重いベースや乾いたギターの音色をバックに、透き通った歌声を響かせるシドの姿が光る良曲。繊細なメロディの楽曲だが、あえて荒っぽく演奏することで、ファンクやヒップホップにも通じるラフな雰囲気を醸し出している。

また、ブラジル音楽の要素を盛り込んだアップ・ナンバー”La Di Da”は、ブラック・アイド・ピーズのウィル・アイ・アムがプロデュースしたセルジオ・メンデスの2006年作『Timeless』を彷彿させる軽妙なメロディとパンチの効いたビートが格好良い作品。エフェクトを効かせたギターや、荒っぽい演奏のホーンが、スライ&ザ・ファミリー・ストーンの作品を思い起こさせる。

そして、彼らの個性が最も発揮された曲が、マット・マーシャンとスティーヴ・レイシーが制作を主導した”Beat Goes On”だ。60年代後半のサイケデリック・ロックを彷彿させる、エフェクターを駆使した幻想的な演奏とヴォーカルに70年代初頭のジェイムス・ブラウンを思い起こさせる躍動感のあるビートが格好良いアップ・ナンバー。2分半で曲が終わったと思いきや、ドラムン・ベースの上でゆったりと歌うR&B作品に切り替わる奇抜な演出と高い演奏技術に驚かされる。

今回のアルバムは、前作の路線を踏襲しつつ、表現の幅を広げたものだ。R&Bやヒップホップを軸に、ファンクやサイケデリック・ロック、ブラジル音楽やエレクトロ・ミュージックなど、様々な音楽を取り込み、一つの作品に融合するスタイルは前作と変わらないものの、引用の斬新さと楽曲の完成度はこれまでの作品を大きく上回っている。この変化は、各人がソロ活動を通して自身の持ち味を磨き上げ、音楽の幅を広げたことによるものが大きいと思う。

様々なジャンルのミュージシャンが刺激し合い、新しい音楽を生み出していた70年代のソウル・ミュージックが持つ、刺激的な雰囲気を現代に蘇らせた稀有な存在である彼ら。、音楽はジャンルで括るようなものではなく、自由で楽しいものであることを教えてくれる良作だ。

Producer
The Internet

Track List
1. Come Together
2. Roll (Burbank Funk)
3. Come Over
4. La Di Da
5. Stay the Night
6. Bravo
7. Mood
8. Next Time / Humble Pie
9. It Gets Better (With Time)
10. Look What U Started
11. Wanna Be
12. Beat Goes On
13. Hold On





ハイヴ・マインド
ジ・インターネット
SMJ
2018-07-25


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