ブラック・ミュージック千本ノック~SoulとR&Bと色々な音楽~

管理人が手に入れたR&Bのアルバム、1000枚の紹介文を書き続けるブログ その先に見えるものは天国か地獄か・・・

バンド・ユニット

Moonchild - Voyager [2017 Tru Thoughts]

複数の楽器を操り、作曲もできる、アンバー・ナヴラン(ヴォーカルも担当)、マックス・ブリック、アンドリス・マットソンによる、カリフォルニア州ロス・アンジェルス発3人組ソウル・バンド、ムーンチャイルド。

2014年に発表したシングル『TheTruth』と、同曲を収めた2枚目のアルバム『Please Rewind』が配信限定ながら大ヒットとなり、イギリスのTru ThoughtsからCD化。また、ステージでも、スティーヴィー・ワンダーやジル・スコット、ジ・インターネットと共演するなど、縦横無尽の活躍を見せてきた。

今回のアルバムは『Please Rewind』から3年ぶりとなる3作目。ディアンジェロなどを手掛けてきたジェレミー・モストにインスパイアされた本作は、ディアンジェロやエリカ・バドゥのような、生演奏にソウル・ミュージックとヒップホップの要素を組み合わせた、ネオ・ソウルと呼ばれるスタイルの作風が特徴的。収録曲では、彼の手法を踏襲しつつ、自分達の音楽性に合わせて、色々な形にアレンジした楽曲を聴かせている。

アルバムの実質的な1曲目で、本作からの先行シングルでもある”Cure”は、ゆったりとした雰囲気の印象的なスロー・ナンバー。甘いギターの音色と、柔らかいキーボードの伴奏が心地よい。曲調は違うが、エリカ・バドゥの”Certainly”を思い起こさせる、透き通った歌声も魅力的。大規模なロック・フェスよりも、小規模な音楽ホールが似合いそうだ。

これに対し、4曲目に収められている”Every Part (for Linda)”は、色々な音色のシンセサイザーを使た伴奏と、、パーカッションを効果的に使ったヒップホップっぽいビートが格好良いミディアム。本作の収録曲では、最もディアンジェロやエリカ・バドゥの作風に近いものだが、彼らに比べると、シンプルで洗練されているように思う。演奏と比べて、一歩引いたところから丁寧に歌うヴォーカルが、電子音を多用した楽曲の不思議な雰囲気を強調している。

また、個人的には最も面白かった曲が”Run Away”だ。サーラ・クリエイティブ・パートナーズやプラチナム・パイド・パイパーズを連想させる、各音を微妙にずらした、癖のあるビートと、シンセサイザーを多用した幻想的な雰囲気の伴奏が光るミディアム・ナンバー。このようなビートはジョージ・アン・マルドロウの作品に時々登場するが、彼らの曲はヴォーカルの声域をフルに使った、メリハリのあるメロディで、ヒップホップ色を薄めているのが特徴的だ。

そして、本作のハイライトと呼んでも過言ではないのが”Show The Way”だ。温かい音色のキーボードや、パーカッションを効果的に使った軽妙なトラックと、アンバーの爽やかな歌声が魅力的な曲は、どことなくアメール・ラリューを思い起こさせる、優雅で神秘的なミディアム・ナンバー。従来の作風を残しつつ、ヒップホップの要素を盛り込んでいる。

彼らの音楽の面白いところは、インディア・アリーやマックスウェルのように、スタイリッシュで洗練された音色を使いながら、エリカ・バドゥやディアンジェロのように、奇抜なアレンジやフレーズを随所に盛り込むセンスだろう。あくまでも優雅に、流麗な音を響かせる楽器が、随所で抽象的なフレーズや、奇想天外なメロディを鳴らすあたりは、なかなか面白い。また、アンバーの繊細な歌声が、様々なギミックが盛り込まれた楽曲を、優雅な流麗なソウル・ミュージックに纏め上げている点も大きいと思う。

ヒップホップやソウル・ミュージック、ジャズなどのエッセンスを取り入れながら、どのジャンルにも分類できない、独創的な音楽に仕立て上げている彼ら。これらの曲をライブではどのように演奏するのか、演奏風景を想像するのも楽しい。バンドによる録音の新しい可能性を感じさせる作品だ。

Producer
Moonchild, Andris Mattson, Max Bryk

Track List
1. Voyager (intro)
2. Cure
3. 6am
4. Every Part (for Linda)
5. Hideaway
6. The List
7. Doors Closing
8. Run Away
9. Think Back
10. Now And Then
11. Change Your Mind
12. Show The Way
13. Let You Go





Voyager
Moonchild
Tru Thoughts
2017-05-26

Two Jazz Project & T-Groove - COSMOS 78 [2017 LAD Publishing & Records]

探偵小説などを書いている、マルセイユ出身の小説家でデザイナーのエリック・ハッサンと、ベースやギターの演奏家であるクリスチャン・カフィエロによる音楽ユニット、トゥー・ジャズ・プロジェクト。そして、八戸出身、東京在住の音楽プロデューサー、ユウキ・タカハシによる音楽プロジェクト、T-グルーヴ。両者によるコラボレーション作品。

結成から10年を超え、『Hot Stuff』や『Experiences』といった、ジャズや電子音楽、ソウル・ミュージックなどを融合した、独創的なスタイルの傑作を残してきたトゥー・ジャズ・プロジェクトと、日本在住の若いクリエイターでありながら、UKソウル・チャートの2位を獲得したトム・グライドの“Party People”や、サン・ソウル・オーケストラの”Can't Deny It”のアレンジやリミックスに携わり、自身の名義でもソーシー・レディをフィーチャーした”Spring Fever”などのヒット曲を残しているT-グルーヴ。

これまでにも、いくつかの作品を一緒に録音してきた彼らのEPは、「ファンタスティック・レトロ・フューチャリスト・ファンク・オデッセイ」をテーマにしたコンセプト・アルバム。制作にはトゥー・ジャズ・プロジェクトの楽曲でも素敵なパフォーマンスを披露してきた、女性シンガーのマリー・メニーとサックス奏者のディダーラ・ラ・レジー、T-グルーヴの作品で躍動感溢れるベースを聴かせてくれたタカオ・ナカシマも参加。隙の無い強力な布陣でクールなダンス・ミュージックを作り上げている。

本作に先駆けて発表された”Night Flight”は、オクラホマ州出身のシンガー、エノイス・スクロギンスをフィーチャーした曲。フランスのディスコ音楽レーベル、ブーギー・タイムスからデビューするなど、ヨーロッパでの知名度が高い彼は、これまでにも2016年のシングル『Soho Sunset 』、2017年のシングル『Funky Show Time』などで共演している旧知の間柄。自身の作品ではグラマラスでファンキーな歌唱が魅力のエノイスだが、この曲ではバリー・ホワイトを彷彿させる優雅な歌声を聴かせてくれる。マリーの透き通った歌声と絶妙なタイミングで入り込むディダーラのサックスも格好良い。

これに続く”Space Machine”は、マリーがメイン・ヴォーカルを担当。ハウス・ミュージックのような四つ打ちのビートや、シンセサイザーを多用した伴奏は、ドナ・サマーの”I Feel Love”のような、黎明期のテクノ・ミュージックを彷彿させる楽曲。ディム・ファンクやダフト・パンクなど、70年代や80年代のディスコ音楽を咀嚼した作品を発表しているミュージシャンは少なくないが、ハイ・エナジーの要素を取り入れた曲は珍しい。

また”Passion”は、ピアノっぽい音色のキーボードを活かしたトラックが、ロリータ・ハロウェイのようなハウス・ミュージック寄りのディスコ音楽を連想させる佳曲。涼しげな声でメロディを歌いながら、曲間では急に色っぽい声を出すマリーの意外な一面が面白い。

そして、本作唯一のインストゥルメンタル作品”Cosmos 78”はニュー・オーダーの”Blue Monday”を思い起こさせるロー・ファイな電子音が格好良いテクノ色の強い曲。電子音とファンク寄りの太いベースを一つの音楽に組み合わせる技術が光っている。

アルバムの最後を飾るのは、マリーがヴォーカルを担当した”You Are My Universe”。温かい音色のキーボードやサックスを効果的に使ったサウンドは、ディミトリ・フロム・パリのような、きらびやかでおしゃれな雰囲気のハウス・ミュージックの影響も垣間見える。マリーの豊かな声量と表現力も見逃せない。

彼らの音楽の醍醐味は、機械を使った精密なビートと、ギターやキーボード、パーカッションといった人間が演奏する楽器を組み合わせながら、それを一つの音楽に落とし込むセンスだと思う。それが可能なのは、各人の技術の高さと感性の鋭さによる部分が大きいが、その中でも、ギターやベースを担当する、クリスチャン・カフィエロやタカオ・ナカシマによるダイナミックかつ緻密な演奏が、機械を使ったビートと人の手による生演奏を一体化するのに大きく貢献していると思う。また、各人の演奏を一つの作品に纏め上げる、録音、編集技術の妙も大きいだろう。

ダフトパンクやマークロンソンなど、70年代、80年代のディスコ音楽を意識した作品を発表するアーティストがひしめき合うなか、楽器の演奏と機械のビートを組み合わせた、モダンでファンキーな作風で、彼らとは一味違う「21世紀のディスコ音楽」を提示してくれた傑作。ディスコ音楽やクラブ・ミュージックが好きな人なら、思わずニヤリとしてしまう演出が盛り沢山の面白いアルバムだ。一つでも気になる曲があったら、ほかの作品も手に取ってほしい。そのクオリティの高さに驚くと思う。

Producer
Yuki T-Groove Takahashi & Two Jazz Project

Track List
1. Night Flight feat. Enois Scroggins & Marie Meney & Didier La Regie
2. Space Machine feat. Marie Meney & Didier La Regie
3. Passion feat. Marie Meney & Didier La Regie
4. Cosmos 78
5. You Are My Universe feat. Marie Meney & Didier La Regie




COSMOS 78
LAD Publishing & Records
2017-05-12

Mansionz - Mansionz [2017 Bear Trap, LLC, Monster Mountain, LLC, Island Records]

ミシガン州デトロイト生まれ、同州サウスフィールド育ちのシンガー・ソングライター、マイク・ポスナーと、フロリダ州デイトナビーチ生まれ、カリフォルニア州ロス・アンジェルス育ちのシンガー・ソングライター兼プロデューサーのブラックベアこと、マシュー・タイラー・マスト。彼らが結成したヒップホップ・ユニット、マンションズの初のフル・アルバム。

マイクは、2010年にアイランド・レコードからアルバム『31 Minutes to Takeoff』でデビュー。現在までに2枚のアルバムと3枚のミックス・テープをリリースし、”Cooler than Me”や”I Took a Pill in Ibiza”などのヒット曲を残している。特に、2015年に発表した”I Took a Pill in Ibiza”は複数の国のヒットチャートを制覇。本国アメリカでも、ホット100の4位、2016年の年間チャートの15位に輝き、グラミー賞の主要4部門の一つ、ソング・オブ・ザ・イヤーにもノミネートした、彼の代表曲となった。

一方、マシューは2012年にジャスティン・ビーバーの”Boyfriend”の共作者としてデビューすると、同じ年には初のEP『Foreplay』を発表。その後は、2017年までに5枚のEPと2枚のスタジオ・アルバムをリリース。本作の発売直後、2017年4月には3枚目のフル・アルバム『Digital Druglord』の発表を控えている。多作なクリエイターだ。

実は、二人の関係は私達の想像以上に長い。マシューが携わった”Boy Friend”は、マイクのプロデュース作品だし、その後も、マイクがブラックベアの”Obvious”(2016年のEP『Drink Bleach』に収録)にフィーチャーされたり、2013年にはマシューがマイクの”Marauder Music”や”OshFest”(どちらもアルバム未収録)を制作したりと、頻繁ではないものの、コンスタントにコラボレーションを重ねてきた。

さて、そんな二人が作った本作は、R&Bとヒップホップの要素をバランスよく取り入れた、ポップで親しみやすい音楽性が特徴。楽曲提供も行ってきた二人だけあって、色々なジャンルの音楽のテクニックを持ち込みつつ、一つの作品に纏め上げる高い編集能力が発揮されている。

まず、2016年にアルバムに先駆けて公開された “Stfu”は、2012年にミックス・テープ『Syrup Splash』を発表して以来、熱心なファンを集めているラッパー、スパーク・マスター・テープを起用したスロー・ナンバー。ギターの伴奏に合わせて歌うマイクから、同じ伴奏に合わせて歌うように言葉を繋ぐマシューとスパークへと繋ぐ流れが格好良い。後半でがなるように歌うスパークのラップが、予想外の展開で面白い。

また、これ続く”Dennis Rodman”は、NBAを引退しても話題を振りまき続ける伝説の名プレイヤー、 デニス・ロッドマンをフィーチャーしたミディアム・ナンバー。電子楽器を使った変則ビートと、太いギターを組み合わせたに乗せて、リズミカルなラップを聴かせるマシューと、哀愁を帯びた歌声を聴かせるマイクのコンビネーションが聴きどころ。絶妙なタイミングで曲を盛り上げるデニスのダミ声もいい味を出している。

これに対し、ラッパーのG-イージーを招いた”Wicked”は、シンセサイザーを駆使したスタイリッシュなビートとしなやかなメロディが、ドネル・ジョーンズの”U Know What’s Up”や、カール・トーマスの”She Is”などを連想させるアップ・ナンバー。ファルセットを多用したヴォーカルは、ネプチューンズ名義で多くのヒット曲を残していたころの、ファレル・ウィリアムスを思い起こさせる。

そして、本作の目玉でもある”Rich White Girls”は、コンピュータを使ったビートと、ギターを使った弾き語りを組み合わせたスロー・ナンバー。ちょっと癖のある歌詞を、切々と歌うマイクと、彼の歌を引き立てるような、甘いラップを聴かせるマシューの相性が素晴らしい。ヒット曲を残してきた2人らしい、聴きやすく、耳に残るメロディが光る曲だ。

今回のアルバムは、R&Bやヒップホップを取り込んだポップな作風で、多くの実績を残してきた二人らしい、とっつきやすく、飽きがこない親しみやすい曲が目立っている。白人ミュージシャンがR&Bやヒップホップに取り組んで成功した例としては、最近ではジャスティン・ティンバーレイクやウィズ・カリファなどが有名だが、マンションズの作風は、ヒップホップなどの要素を取り入れつつ、それを自分達の方向性に合わせて、柔軟に引用、加工している点が大きく異なると思う。

黒人ではないミュージシャン達が、黒人音楽を取り入れて成功した例は、無数にあるが、ここまで柔軟な発想で取り入れたのは、ビートルズ以来かもしれない。ブルー・アイド・ソウルの新しい形を予感させる面白い作品だ。

Producer
blackbear, O.C., Mike Posner, MdL etc

Track List
1. Snoozefest
2. My Beloved
3. Stfu feat. Spark Master Tape
4. Dennis Rodman feat. Dennis Rodman
5. I'm Thinking About Horses
6. Nobody Knows
7. A Million Miles
8. Wicked feat. G-Eazy
9. Rich White Girls
10. Strip Club
11. White Linen feat. CyHi Da Prynce
12. Gorgeous
13. The Life Of A Troubadour






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