ブラック・ミュージック千本ノック~SoulとR&Bと色々な音楽~

管理人が手に入れたR&Bのアルバム、1000枚の紹介文を書き続けるブログ その先に見えるものは天国か地獄か・・・

バンド・ユニット

The Isley Brothers & Santana - Power Of Peace [2017 Sony Legacy]

57年にシングル”The Cow Jumped Over the Moon”で表舞台に登場して以来、60年もの間、音楽業界の一線で活躍しているソウル・グループ、アイズレー・ブラザーズ。一方、66年の結成以降、50年以上、コンスタントに作品を発表し、多くのステージに立ち続けたロック・バンド、サンタナ。この音楽業界屈指のキャリアを誇る、2組のベテランによる初のコラボレーション作品が『Power Of Peace』だ。

アイズレー・ブラザーズにとっては2006年の『Baby Makin' Music』以来、実に10年ぶり(ただし、2013年にはロナルドのソロ作品『This Song Is For You』がeOneから発売されている)、サンタナにとっては2016年の『Santana IV』以来のアルバムとなる本作。ロナルド(ヴォーカル)とアーニー(ギター)のアイズレー兄弟と、カルロス(ギター)とシンディ・ブラックマン(ギター)のサンタナ夫妻に加え、名うてのスタジオ・ミュージシャン達が参加。『Santana IV』や彼らのステージでも披露された、ソウル・ミュージックとロックの距離が近かった時代の、ダイナミックでワイルドな黒人音楽に取り組んでいる。

アルバムの1曲目は、チェンバー・ブラザーズの68年のヒット曲”Are You Ready People”(原題は”Are You Ready”)のカヴァー。ストリングスなどを使った分厚い演奏のオリジナルに対し、こちらではツイン・ギターやパーカッションなど、演奏者を絞った伴奏を取り入れている。荒々しいパーカッションの演奏が乱れ飛ぶ前奏から、鋭いギターの音色が耳に突き刺さるハードな伴奏へとつながる展開が格好良い。『It's Our Thing』や『Get Into Something』でも披露していた、ロナルドの激しいシャウトも聴きどころだ。

これに続くのは、ヴァージニア州ポーツマス出身のシンガー・ソングライター、スワンプ・ドッグが70年に発表した”Total Destruction To Your Mind”のカヴァー。原曲もギターやベースの音色を強調した、泥臭いロック・ナンバーだったが、彼らはそれをより攻撃的な作品にリメイク。鍵盤を叩くようなキーボードの伴奏や、荒っぽいヴォーカルはオリジナルを踏襲しているが、ダイナミックなギター・ソロを加えるなど、よりハードなアレンジを施している。バーケイズのような泥臭さと荒々しさが同居したロック・サウンドと、ロナルドの柔らかい歌声、スワンプ・ドッグのキャッチーなメロディを一つに融合させた面白い作品だ。

そして、スティーヴィー・ワンダーが73年に発表した楽曲”Higher Ground”のリメイクは、原曲よりもテンポを落とし、ドロドロとしたファンク・チューンにまとめ上げたミディアム・ナンバー。ハモンド・オルガンの伴奏を目立つように配置するなど、原曲の雰囲気を残しながら、ジミ・ヘンドリックスを思い起こさせる荒々しいギターの音色を加えるなど、オリジナルとは一味違うアレンジを施している。原曲を知らない人が聴いたら、ジミ・ヘンドリックスの曲のカヴァーと勘違いしてもおかしくない、ワイルドで幻想的なパフォーマンスが格好良い曲だ。

それ以外の曲で、ぜひ聞いてほしいのが、本作が初出となる”I Remember”だ。97年にシンディが制作したスロー・ナンバーは、シンディのキュートなヴォーカルと、ロナルド・アイズレーの滑らかなハイ・テナーの相性の良さが光る、ロマンティックなメロディの曲だ。曲の起承転結が明確な点や、しっとりとしたメロディは、アイズレー・ブラザーズやサンタナというよりも、アース・ウィンド&ファイアの”Reasons”や”After The Love Has Gone”にも近い印象。シンディの可愛らしいヴォーカルを優しく包み込む、ロナルドの貫禄あふれる歌声もいい味を出している。

今回のアルバムでは、スティーヴィー・ワンダーや、チェンバー・ブラザーズ、インプレッションズなど、60年代、70年代のソウル・ミュージックの名曲や、そのスタイルを踏襲した新曲を中心に、色々なスタイルの作品を収録している。しかし、どの曲も彼らの手による大胆なアレンジが施されており、何度も繰り返し聴かないと元ネタがわからないほど、大きく変わった曲も少なくない。だが、どれだけ奇想天外な解釈を加えても、当時の音楽によく似た雰囲気を感じることができるのは、刺々しいギターの音色や、力強いドラムの演奏、そして滑らかでグラマラスなロナルドのヴォーカルなど、彼らが経験し、演奏してきた、70年代のソウル・ミュージックのエッセンスを、丁寧に取り入れているからだろう。

色々なジャンルの音楽が花開き、融合と分裂を繰り返しながら互いに刺激を与えあっていた60年代後半から70年代の音楽の醍醐味を思う存分堪能できる傑作。人間が演奏する音楽の奥深さを感じてほしい。

Producer
Carlos Santana, Cindy Blackman Santana

Track List
1. Are You Ready People
2. Total Destruction To Your Mind
3. Higher Ground
4. God Bless The Child
5. I Remember
6. Body Talk
7. Gypsy Woman
8. I Just Want To Make Love To You
9. Love, Peace, Happiness
10. What The World Needs Now is Love Sweet love
11. Mercy Mercy Me (The Ecology)
12. Let The Rain Fall On Me
13. Let There Be Peace On Earth





パワー・オブ・ピース
サンタナ&アイズレー・ブラザーズ
SMJ
2017-08-09

Mr Jukes - God First [2017 Island]

2005年に結成。2009年に初のアルバム『I Had the Blues But I Shook Them Loose』でメジャー・デビューを果たした、イギリスのロンドン発の4人組ロック・バンド、ボンベイ・バイシクル・クラブ。

ロックやフォーク・ミュージックをベースに、エレクトロ・ミュージックや色々な国の音楽を混ぜ合わせた個性的な作風で注目を集めた彼らは、その後も多くのステージを経験し、コンスタントに新作を発表。2017年までに4枚のアルバムと複数のシングルをリリースし、うち3枚を全英アルバム・チャートの10位以内に送り込み、2014年の『So Long, See You Tomorrow』は同チャートの1位を獲得している。

このバンドでヴォーカルやギターの他、楽曲制作も担当しているのが、ジャック・ステッドマン。フォーク・ミュージックやエレクトロ・ミュージックだけでなく、ジャズやソウル・ミュージックにも造詣の深い彼が新たに立ち上げた音楽プロジェクトが、このミスター・ジュークスだ。

ブラック・ミュージックを含め、幅広い音楽に慣れ親しんできた彼が手掛ける楽曲には、2017年のグラミー賞で複数の部門にノミネートしたことも記憶に新しいBJザ・シカゴ・キッドや、ダップトーン一派の作品で有名なチャールズ・ブラッドリー、多くの作品をヒット・チャートの上位に送り込み、数多くの音楽賞を獲得してきたレイラ・ハザウェイなど、多くのゲスト・ミュージシャンが参加。イギリスのロック・シーンで成功を収めた彼のフィルターを通した、独特のソウル・ミュージックを披露している。

アルバムを再生して最初に目につくのは、BJザ・シカゴ・キッドをフィーチャーしたシングル”Angels / Your Love”だ。アーチー・シェップを思い起こさせる、渋い音色のサックスの演奏で幕を開けるこの曲は、三拍子のビートや子供の声のコーラスを絡めた演奏が不思議な雰囲気を醸し出す曲。色々な拍子のリズムを使い、コーラスを混ぜ込んだ作風はアーチー・シェップのアルバム『Attica Blues』にも似ている。中盤から登場する、マーヴィン・ゲイを連想させるBJの艶めかしいファルセットも格好良い。

これ以外の曲では、チャールズ・ブラッドリーをゲストに呼んだ”Grant Green”も面白い。ブルー・ノート・レコードに多くのヒット作を残しているギタリスト、グラント・グリーンによるジェイムズ・ブラウンの同名曲のカヴァー”Ain't It Funky Now”をサンプリングしたファンキーなアップ・ナンバーは、元ネタになったジェイムズ・ブラウンを彷彿させる、汗と熱気が飛び交うチャールズのダイナミックなパフォーマンスが格好良い曲。グラント・グリーンのヴァージョンを下敷きにした、スマートで洗練されたトラックのおかげで、ワイルドで力強いジェイムズのヴァージョンとは一味違う、スタイリッシュな演奏になっている。

また、ジャマイカのキングストン出身のホレス・アンディと、アメリカのニューヨーク出身のラップ・グループ、デ・ラ・ソウルを招いた”Leap of Faith”は、ドラムの乱れ打ちと、華やかな伴奏が格好良い、ヒップホップ色の強い曲。絹のように滑らかなファルセットを響かせるホレスのヴォーカルと、デ・ラ・ソウルの軽妙なラップのコンビネーションが魅力の、明るくゆったりとした雰囲気のミディアム・ナンバーだ。ヒップホップのビートやラヴァーズ・レゲエのヴォーカルを取り入れつつ、優雅なソウル・ナンバーに落とし込むセンスが面白い曲だ。

そして、レイラ・ハザウェイを起用した”From Golden Stars Comes Silver Dew”は、彼女の作品を思い起こさせるしなやかなメロディと、ヒップホップのトラックを組み合わせた、奇抜な作品。レコードから抜き出したような温かい音色のビートを使った、緩やかなビートと、しなやかな歌声の組み合わせが心地よいミディアム・ナンバーだ。レイラの父、ダニー・ハザウェイを連想させる力強く、洗練された歌声と、90年代以降のブラックミュージックに欠かせないものとなったヒップホップを組み合わせた発想が光っている。

今回のアルバムは、既に確固たる地位を確立している実力派シンガーを揃え、マーク・ロンソンやダフト・パンクの成功で、欧米を中心に再び注目を往年のソウル・ミュージックの雰囲気を現代に蘇らせた意欲作だと思う。しかし、彼の面白いところは、シンセサイザーやサンプラーなどの新しい楽器を取り入れつつ、それを使って、昔の音楽の雰囲気を演出しているところだろう。クラブミュージック畑出身のダフト・パンクやマーク・ロンソンに比べ、イギリスのロック・バンド出身という、アメリカの黒人音楽とは適度に距離を置ける立場にいること、ボビー・ウーマックをプロデュースしたデーモン・アルバーンのように、斬新な作品に拘らなくてもよい位置にいることが、斬新さと懐かしさ、現代的なサウンドとソウル・ミュージックのバランスを適度に取れた、絶妙な立ち位置に、彼の作品を落とし込んでいるのかもしれない。

ヒップホップ畑出身のメイヤー・ホーソンとは一味異なる、ロック畑出身のジャックの持ち味が発揮された、懐かしいようで新しいソウル作品。現代もブラック・ミュージックに多くの影響を与え続ける、ソウル・ミュージックの醍醐味を若者向けに咀嚼した、「初めての1枚」に最適の佳作だ。

Producer
Jack Steadman

Track List
1. Typhoon
2. Angels / Your Love feat. BJ The Chicago Kid
3. Ruby
4. Somebody New feat. Elli Ingram
5. Grant Green feat. Charles Bradley
6. Leap of Faith feat. De La Soul & Horace Andy
7. From Golden Stars Comes Silver Dew feat. Lalah Hathaway
8. Magic
9. Tears feat. Alexandria
10. When Your Lights Go Out feat. Lianne La Havas





GOD FIRST / LTD.DIGIPA
MR JUKES
ISLAN
2017-07-14

Moonchild - Voyager [2017 Tru Thoughts]

複数の楽器を操り、作曲もできる、アンバー・ナヴラン(ヴォーカルも担当)、マックス・ブリック、アンドリス・マットソンによる、カリフォルニア州ロス・アンジェルス発3人組ソウル・バンド、ムーンチャイルド。

2014年に発表したシングル『TheTruth』と、同曲を収めた2枚目のアルバム『Please Rewind』が配信限定ながら大ヒットとなり、イギリスのTru ThoughtsからCD化。また、ステージでも、スティーヴィー・ワンダーやジル・スコット、ジ・インターネットと共演するなど、縦横無尽の活躍を見せてきた。

今回のアルバムは『Please Rewind』から3年ぶりとなる3作目。ディアンジェロなどを手掛けてきたジェレミー・モストにインスパイアされた本作は、ディアンジェロやエリカ・バドゥのような、生演奏にソウル・ミュージックとヒップホップの要素を組み合わせた、ネオ・ソウルと呼ばれるスタイルの作風が特徴的。収録曲では、彼の手法を踏襲しつつ、自分達の音楽性に合わせて、色々な形にアレンジした楽曲を聴かせている。

アルバムの実質的な1曲目で、本作からの先行シングルでもある”Cure”は、ゆったりとした雰囲気の印象的なスロー・ナンバー。甘いギターの音色と、柔らかいキーボードの伴奏が心地よい。曲調は違うが、エリカ・バドゥの”Certainly”を思い起こさせる、透き通った歌声も魅力的。大規模なロック・フェスよりも、小規模な音楽ホールが似合いそうだ。

これに対し、4曲目に収められている”Every Part (for Linda)”は、色々な音色のシンセサイザーを使た伴奏と、、パーカッションを効果的に使ったヒップホップっぽいビートが格好良いミディアム。本作の収録曲では、最もディアンジェロやエリカ・バドゥの作風に近いものだが、彼らに比べると、シンプルで洗練されているように思う。演奏と比べて、一歩引いたところから丁寧に歌うヴォーカルが、電子音を多用した楽曲の不思議な雰囲気を強調している。

また、個人的には最も面白かった曲が”Run Away”だ。サーラ・クリエイティブ・パートナーズやプラチナム・パイド・パイパーズを連想させる、各音を微妙にずらした、癖のあるビートと、シンセサイザーを多用した幻想的な雰囲気の伴奏が光るミディアム・ナンバー。このようなビートはジョージ・アン・マルドロウの作品に時々登場するが、彼らの曲はヴォーカルの声域をフルに使った、メリハリのあるメロディで、ヒップホップ色を薄めているのが特徴的だ。

そして、本作のハイライトと呼んでも過言ではないのが”Show The Way”だ。温かい音色のキーボードや、パーカッションを効果的に使った軽妙なトラックと、アンバーの爽やかな歌声が魅力的な曲は、どことなくアメール・ラリューを思い起こさせる、優雅で神秘的なミディアム・ナンバー。従来の作風を残しつつ、ヒップホップの要素を盛り込んでいる。

彼らの音楽の面白いところは、インディア・アリーやマックスウェルのように、スタイリッシュで洗練された音色を使いながら、エリカ・バドゥやディアンジェロのように、奇抜なアレンジやフレーズを随所に盛り込むセンスだろう。あくまでも優雅に、流麗な音を響かせる楽器が、随所で抽象的なフレーズや、奇想天外なメロディを鳴らすあたりは、なかなか面白い。また、アンバーの繊細な歌声が、様々なギミックが盛り込まれた楽曲を、優雅な流麗なソウル・ミュージックに纏め上げている点も大きいと思う。

ヒップホップやソウル・ミュージック、ジャズなどのエッセンスを取り入れながら、どのジャンルにも分類できない、独創的な音楽に仕立て上げている彼ら。これらの曲をライブではどのように演奏するのか、演奏風景を想像するのも楽しい。バンドによる録音の新しい可能性を感じさせる作品だ。

Producer
Moonchild, Andris Mattson, Max Bryk

Track List
1. Voyager (intro)
2. Cure
3. 6am
4. Every Part (for Linda)
5. Hideaway
6. The List
7. Doors Closing
8. Run Away
9. Think Back
10. Now And Then
11. Change Your Mind
12. Show The Way
13. Let You Go





Voyager
Moonchild
Tru Thoughts
2017-05-26

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