melOnの音楽四方山話

オーサーが日々聴いている色々な音楽を紹介していくブログ。本人の気力が続くまで続ける。

演奏者・プロデューサー

Kintaro - Commando Existentral & Universal EP [2018 Alpha Pup Records, DIW]

サンダーキャットの名義で多くの傑作を残しているステファン・ブルーナーや、名うてのドラマーとして、カマシ・ワシントンケンドリック・ラマーまで、様々なアーティストと共演しているロナルド・ブルーナーを兄弟に持ち、自身もマット・マーシャンズ率いるR&Bバンド、インターネットの一員として活動してきた、シンガー・ソングライター兼キーボード奏者の、キンタローことジャミール・ブルーナ。

カリフォルニア州ロスアンジェルス出身のジャミールは、2013年から2016年までインターネットの一員として活動。その縁もあり、タイラー・ザ・クリエイターやエイサップ・ロッキー、ゴールドリンクといった、ヒップホップ・ミュージシャンの作品に数多く関わってきた。

また、その一方で、2017年には初のミックス・テープ『Commando Existentral』を発表。同年には初のEP『Universal EP』をリリースするなど、アーティストとしても頭角を現してきた。

本作は、2017年に公開した2枚の録音作品を1枚のCDに収めた企画盤。収録された全ての曲をプロデュースし、ソングライティングや演奏、ヴォーカルも担当するなど、彼自身が大部分の工程に携わった力作となっている。

本作の目玉は、何といってもアンダーソン・パークをフィーチャーした”MK”。グラマラスなベースの音色とロックのビートを組み合わせたバック・トラックはゴリラズの作風に近い印象。テナーのパーク、バリトンのジャミールという違いはあるものの、しゃがれた声を絞り出すスタイルで共通する両者による息の合ったデュエットが面白い。

同作の収録曲で、もう一つ記憶に残ったのは”Alien Trap”。タイトルに違わないトラップのビートに、宇宙人が出るSF映画を彷彿させるふわふわとした電子音や、エフェクトをかけた声のラップを組み合わせたヒップホップ作品。この曲のように奇抜な音色を組み合わせた作品には、斬新なサウンドを強調しすぎて、何度も聴くのは辛いものが少なくないが、この曲では聴き手に強い印象を与えるポイントに絞り込んで使うことで、楽曲としての完成度を高めている。余談だが、曲中に流れるチャイムの音色は、アメリカでも使われているのだろうか。

これに対し、『Commando Existentral』の収録曲では”Song For Us Bounce”が目を惹く。電子楽器を多用した刺々しい音色と、声域全体を使った歪なメロディを歌うヴォーカルの組み合わせは、パーラメントの『Mothership Connection』を思い起こさせる。時代が違うとはいえ、大人数のバンドで生み出されたP-ファンクのサウンドを、一人で鳴らす彼の技術には驚かされる。

そして、このスタイルをさらに深めたのが”Song Joint Flip Lit”。乾いた音を鳴らす電子楽器を使ったトラックは、ネプチューンズのサウンドによく似ている。しかし、その上に乗っかるのはファレルが歌うような軽妙なメロディとは対極の、不可思議なメロディ、個性的なサウンドで一世を風靡した、ネプチューンズとファンカデリックの音楽を一つの作品に同居させた、大胆な発想が光る楽曲だ。

彼の音楽の面白いところは、シンセサイザーを軸に据えつつ、多彩な表現を繰り出している点だろう。トラップに始まりロックやファンク、R&Bなど、色々なジャンルの音楽を取り入れ、自分の作品の糧にしている。この豊かな感性と高い構成力が彼の良さだと思う。

二人の兄に勝るとも劣らない、高い演奏技術と音楽センスが遺憾なく発揮された良作。サンダーキャットやフライング・ロータスの音楽が好きな人なら絶対に夢中になるだろう。音楽に対する深い造詣と鋭い視点、具体的な作品に落とし込む技術が心に残る作品だ。

Producer
Kintaro

Track List
1. Alt Pln
2. Mk feat.Anderson .Paak
3. West
4. Trap You
5. Alien Trap
6. Aussie feat.Tru Sound
7. Chillin
8. Next To You
9. Song For Us Bounce
10. Song Joint Flip Lit
11. Soul Boy
12. Untitled Bullshit
13. Once More With This “Put In Work Bullshit”
14. Beez In Duh Trap Final (BONUS TRACK)






Stimulator Jones - Exotic Worlds And Masterful Treasures [2018 Stones Throw]

ジェイ・ディラやマッドリヴの作品を配給する一方、メイヤー・ホーソンやアロー・ブラックといった通好みのR&Bシンガーを世に送り出したことでも話題になった、ロス・アンジェルスに拠点を置くインディペンデント・レーベル、ストーンズ・スロウ

近年はアンダーソン・パークとノウレッジの音楽ユニット、ノー・ウォーリーズや、スヌープドッグディム・ファンクのコラボレーション作品を配給するなど、メジャー・レーベルと契約する人気アーティストと、アンダー・グラウンドな世界で活躍するミュージシャンの競演を手助けしたことで再び注目を集めた彼らが、新たに契約したのがスティミュレイター・ジョーンズこと、サム・ランスフォードだ。

ヴァージニア州ロアノーク出身のサムは、様々な人種や地域の人が交わりあい、新しい音楽を生み出していた70年代、80年代の音楽に強い興味を持つ一方で、ヒップホップのDJとしても活動していた。 そんな彼は、2014年ごろから、現在の名義で音楽を発表。2016年にはストーンズ・スロウのコンピレーション『Sofie’s SOS Tape』に提供した”Soon Never Comes”が注目を集め、同レーベルと契約を結んだ。

本作は、彼にとって初めてのスタジオ・アルバム。全ての曲で、彼自身がプロデュースやソングライティングを担当し、歌声を吹き込むなど、制作の大部分を自身の手で行った力作になっている。

本作で最初に目を惹いたのは、2曲目に収められた”Give My All”。アルバムのリリース直前に発表されたこの曲は、ブリブリと唸りを上げるベースの音色と、洗練されたビートの組み合わせが心地よいディスコ・ナンバー。ベースの音を強調したディスコ・サウンドといえば、レーベル・メイトのディム・ファンクを思い起こさせる。しかし、彼の場合は90年代のヒップホップで多用された、70年代のソウル・ミュージックのような温かい音色を取り入れるなど、細部に変化をつけることで独自性を打ち出している。繊細なハイ・テナーを組み合わせた作風は、ソウル・シンガーがリードを執るファンク・バンドよりも、白人歌手を起用したフュージョン・バンドに近い。

また、『Sofie’s SOS Tape』からの再録曲である”Soon Never Comes”は、ベースの音色を極端に強調したビートと、音数を絞った上物が、ジョージ・アン・マルドロウを連想させるミディアム・ナンバー。奇抜なトラックの上で歌われるのは、グルーヴ・セオリーやシャーデーを連想させる、起承転結がはっきりとした構成と、美しく滑らかなメロディ。2018年のインディー・ヒップホップの手法を用いて、90年代以前のポピュラー・ミュージックを現代に蘇らせた手腕が心に残る佳曲。

これに続く”Need Your Body”は、70年代のソウル・ミュージックのレコードからサンプリングしたような、太く温かい音色を使ったトラックの上で、甘酸っぱい歌声を響かせる姿が印象的な曲。爽やかなメロディとヒップホップのビートを組み合わせた作風は、ラルフ・トレスヴァントの”Sensitivity”にも通じるものがある。ブルーノ・マーズの成功で再評価が進む80年代後半から90年代前半のR&Bを、独自の解釈で新しい音楽として再構築した大胆な発想が面白い。

そして、本作の最後を締めるのは”Give My All”と同時に公開された”Tempt Me With Your Love”。エムトゥーメイの”Juicy Fruits”を思い起こさせる、ゴムボールのように跳ねる音色が心地よいトラックと、流れるようなメロディが印象的なミディアム・ナンバー。80年代のソウル・ミュージックを彷彿させるフレーズを多用しているが、流麗なメロディと洗練されたアレンジのおかげで、ポップスっぽく聴こえる。

彼の音楽を聴いていて感じるのは、70年代から90年代にかけて流行した、様々なジャンルの音楽を丁寧に聴き込み、自分の作品の糧にしてきた、音楽への深い愛情と造詣だ。当時のサウンドを徹底的に研究し、現在に蘇らせたことは特筆に値する。しかし、彼の凄いところは、当時の音楽を研究するだけでなく、それらを細かく分解して、自分の音楽として再構築している点だ。昔の音楽への傾倒を示すミュージシャンは少なくないが、当時の音を使いつつ、自身の時代に合わせて、新しい音楽に組み替える人は少ない。この深い知識と、鋭いセンスが彼の音楽の魅力だと思う。

多くの人が知る昔の音楽と、同じくらい一般化した最新の録音機材を組み合わせ、独創的なサウンドを生み出した稀有な例。温故知新を地で行く、懐かしさと新鮮さが入り混じたヒップホップ作品だ。

Producer
Stimulator Jones

Track List
1. Water Slide
2. Give My All
3. Feel Your Arms Around Me
4. Together
5. Trippin On You
6. I Want You Too
7. Soon Never Comes
8. Need Your Body
9. Suite Luv
10. Tell Me Girl
11. Tempt Me With Your Love






Exotic Worlds and Masterful Treasures
Stimulator Jones
Stones Throw/BBQ
2018-04-22

Robert Glasper x KAYTRANADA - ArtScience Remixes [2018 Blue Note]

2012年に発表した5作目のアルバム『Black Radio』が、グラミー賞の「最優秀R&Bアルバム賞」を獲得するという前代未聞の偉業を成し遂げ、翌年にリリースした『Black Radio 2』もヒット。2016年には、マイルス・デイヴィスが遺した録音と、新たに吹き込んだ自身の演奏を組み合わせ、時代を超えたコラボレーション作品に仕立てた『Everything's Beautiful』で、ヒップホップに慣れ親しんだ世代の新鮮な感性と、ジャズに対する深い造詣を遺憾なく発揮したロバート・グラスパー。

彼が2016年にリリースしたアルバム『ArtScience』をリミックスしたのが本作。

これまでにも、9thワンダーやピート・ロックを起用した『Black Radio』のリミックスや、元D12のMr.ポーターを起用した"Calls"のリミックス・シングルなど、ヒップホップ畑のクリエイターを起用したリミックス作品を発売してきたロバート。しかし、本作で起用したのはカナダのモントリオール出身のエレクトロ畑のクリエイター、ケイトラナダだ。

そんな彼が手掛けたリミックス盤の実質的な1曲目は、ドラムン・ベースのビートを取り入れた”No One Like You”。バス・ドラムの音を強調したビートは、ジャズ・ドラムの音色を活かした上品なトラックに比べるとワイルドな印象。ケーシー・ベンジャミンのサックスが受け持っていたメロディ部分は、アレックス・アイズレーのヴォーカルに担当。複雑なビートに合わせた器用な歌唱と、アーニー・アイズレーの娘(つまり、ロナルド・アイズレーの姪)らしい、滑らかで色っぽい歌声が光っている良曲。原曲の面白いところを残しつつ、ヴォーカルもののエレクロ・ミュージックのようにも聞こえる新しい解釈を披露している。

続く、 ”Thinkin Bout You”では、ロバート自身がヴォーカルを担当していたミディアム・ナンバーを、タリブ・クウェリのラップを加えてヒップホップ作品にリメイクしている。音数を絞り、音と音の隙間を強調した演奏スタイルは残しつつ、ドラムとベースの音を太くして、グルーヴを強調している。抽象的なアレンジの楽曲を、音のバランスを変えるだけで、ディアンジェロを彷彿させるソウル・ミュージックから、ジェイ・ディラの作品を連想させるヒップホップに生まれ変わらせる手法は面白い。

また、ディスコ・ブギーの手法を取り入れた”Day To Day”のリミックスは、パトリック・フォージを思い起こさせるラテン音楽やアフリカ音楽のフレーバーを盛り込んだ作品。どちらも四つ打ちのビートを土台にした音楽だが、リミックス版の方がより洗練されている。オリジナル版以上にロバートの作品っぽいサウンドが心に残る名リミックスだ。

そして、イマン・オマーリを起用した”Find You”は、太いベースと、ロマンティックなピアノの音色が心に残るミディアム。原曲では8ビートやドラムン・ベースなど、複数のビートを組み合わせた先鋭的な構成と、シンセサイザーの音色を多用した伴奏が魅力の、尖った作品だった。しかし、このリミックス版ではミュージックマックスウェルの作品にも似ている。温かい音色としっとりとした伴奏が堪能できる。ロバートの作品では異彩を放っていた原曲を、彼っぽい音楽に落とし込む技術が聴きどころ。

本作では、原作のイメージを打ち壊す大胆なリミックスがある一方、原曲以上にロバートの音楽っぽい作品も並んでいる。おそらく、ケイトラナダがエレクトロ・ミュージックのプロデューサーでありながら、バッドバッドノットグッドなどのバンドとも組み、スヌープドッグからアリシア・キーズまで、あらゆるスタイルのミュージシャンの作品に参加してきたからだろう。個性豊かな面々と仕事をしてきた経験のおかげで、ヒップホップやR&B、ジャズが入り混じったロバートの作品が持つ豊かな魅力を、余すところなく引き出していると思う。

ジャズ・ミュージシャンが他者の作品に自身の解釈を加え、新しい音楽に仕立て上げるように、ケイトラナダがロバートの音楽の自身の感性で再構築し、新しい音楽に落とし込んだ良質なリミックス作品。既存の音楽を分解、再構築して新しい音楽を生み出すという、ジャズやヒップホップ、エレクトロ・ミュージックに共通する手法の醍醐味が堪能できる良企画だ。

Producer
KAYTRANADA, Robert Glasper

Track List
1. Intro (Robert Glasper x KAYTRANADA)
2. No One Like You feat. Alex Isley [KAYTRANADA Remix]
3. Thinkin Bout You feat. Talib Kweli [KAYTRANADA Remix]
4. Day To Day (KAYTRANADA Remix)
5. Name Drop Interlude (Robert Glasper x KAYTRANADA)
6. Find You feat. Iman Omari [KAYTRANADA Remix]
7. Written In Stone (KAYTRANADA Remix)
8. Outro (Robert Glasper x KAYTRANADA)






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