melOnの音楽四方山話

オーサーが日々聴いている色々な音楽を紹介していくブログ。本人の気力が続くまで続ける。

Gospel

Merry Clayton - Beautiful Scars [2021 Motown Gospel]

メリー・クレイトンの名前を知らなくても、映画「バックコーラスの歌姫達」に出演した、ローリング・ストーンズのバックコーラスの女性といえば思い出すかもしれない。

レイ・チャールズのバック・コーラスであるレイレッツの一員だった彼女は、同グループから発展したシスターズ・ラヴとしても多くの傑作を残している。特に、シスターズ・ラヴ時代の楽曲は、そのレアリティと内容の良さから、多くのファンが追い求めていることでも知られており、インターネットが発達し、再版市場が成熟した今も、幻の名作と評されている。

また、グループを離れた後も、ローリング・ストーンズやキャロル・キングなどバックコーラスを務め、ローリング・ストーンズの“Gimme Shelter”で見せた彼女のパフォーマンスは、主役のミック・ジャガーを喰ったと例えられる名演として知られている。

そんな彼女の27年ぶりとなる新作は、シスターズ・ラヴのアルバムを残したモータウン発のアルバム。本格的なゴスペル作品を目指したということもあり、アップテンポ、スローテンポの楽曲ともに、彼女のパワフルな歌声が堪能できる。

だが、それ以上に面白いのはオリジナル曲と一緒におさめられたカヴァー曲のラインナップだろう。レオン・ラッセルの"A Song For You"やファイブ・ステアステップスの"Ooh Child"のカヴァーでは、原曲の要素を残しつつ、本格的なゴスペルにアレンジする大技も見せている。ダイナミックな歌声と絶妙な匙加減のアレンジ、この二つが本作の聴きどころだと思う。

20世紀の音楽シーンに多くの伝説を残した名歌手の確かな実力を確認できる名盤。ゴスペルだからって敬遠してると損するよ。

Producer 
Leon Adler, Terry Young

Track List
1. A Song for You
2. Touch the Hem of His Garment
3. Beautiful Scars
4. Love Is a Mighty River
5. God's Love
6. Deliverance
7. Room at the Altar
8. He Made a Way
9. Oh What a Friend
10. Ooh Child Medley




Beautiful Scars
Merry Clayton
Motown
2021-04-09


CeCe Winans - Let Them Fall in Love [2017 Pure Springs Gospel]

スティーヴィー・ワンダーやダイアナ・ロスを輩出したことでも知られる、モータウン・レコードなどがオフィスを構えていたミシガン州の音楽の都デトロイト生まれ。ゴスペル・グループとして大成功を収めたワイナンスや、P.ディディ率いるバッド・ボーイからR&Bシンガーとしてデビューしたマリオ・ワイナンスなど、多くのシンガーやソングライターを輩出してきた音楽一家のワイナンス・ファミリーで育ち、自身も単独名義で9枚、兄のビービー・ワイナンスことベンジャミン・ワイナンスとのデュオ名義で7枚のオリジナル・アルバム(クリスマス・アルバムを含む)を発表してきた、シンガー・ソングライターのシーシー・ワイナンスこと、プリシラ・マリー・ワイナンス。彼女にとって2010年の『Songs of Emotional Healing』以来、約8年ぶりの新作となる通算10枚目のアルバムが本作。

彼女はこれまでに、グラミー賞のゴスペル部門や、ゴスペル界のグラミー賞とも例えられるステラ・アワードなどを何度となく獲得してきた、同業界のトップ・ランナー。そんな彼女の強みは、R&Bやソウル・ミュージックのトレンドを巧みに取り入れて、常に新鮮な作品を提示し続けている点だろう。今回のアルバムでも、過去の作品の路線を踏襲した、世俗音楽の録音にも負けないポップでバラエティ豊かな音楽を聴かせてくれる。

アルバムの1曲目”He's Never Failed Me Yet”はピアノの伴奏に乗せて彼女が美しい歌声を張り上げるミディアム・ナンバー、シンプルな伴奏と主役の歌声だけで勝負したゴスペル作品というと、アレサ・フランクリンのライブ・アルバム『Amazing Grace』を思い出してしまうが、彼女にも負けず劣らずの力強く、流麗な歌声が楽しめる。中盤以降に流れるオーケストラの上品で雄大な演奏も、彼女の可愛らしい歌声を引き立てている。

続く”Run To Him”は、ディオンヌ・ワーウィックの代表曲”I Say a Little Prayer”にも通じる、ポップで爽やかなアップ・ナンバー。ハンド・クラップやパーカッションを駆使したリズム・セクションや、小川のせせらぎのように軽やかなストリングスが楽曲に軽妙さを与えている点も面白いが、ディオンヌ・ワーウィックのように繊細で可憐な歌声を聴かせるプリシラの歌唱も前曲と対照的で面白い。それ以外では、ゴスペルの醍醐味ともいえる、大人数のゴスペル・クワイアを、楽曲のアクセントに使うアレンジ技術にも注目してほしい。

一方、多くの人がイメージするゴスペル像を形にしたのが、クラーク・シスターズをフィーチャーしたシングル曲”Hey Devil!”だ。1960年代から活動する、ワイナンス一家にも負けず劣らずの名門ファミリー・グループとして知られる、彼女達とコラボレーションしたこの曲は、オルガンやパーカッションを活用した軽妙な伴奏と、力強いコール&レスポンスを含むダイナミックな歌唱が堪能できる。ゴスペルの王道といっても過言ではない楽曲。起伏の激しいトラックに合わせて色々な表情を見せるベテラン・シンガー達の、老練な姿が印象的。スピーカーの音量をマックスに上げて、彼女らが放つ音の波に飲み込まれてほしい。

これに対し、彼女自身の歌唱力に光を当てたのが、もう一つのシングル曲”Never Have To Be Alone”だ。ピアノやギターを軸にしたシンプルな演奏をバックに、語り掛けるように歌う序盤から、全てを包み込むような勢いでダイナミックな歌声を響かせるクライマックスに続く展開は、”ボディガードのテーマ”としても有名になった”I Will Always Love You”でホイットニー・ヒューストンが見せた、クールだけど力強いパフォーマンスを彷彿させる。彼女の確かな実力を感じさせる傑出したバラードだ。

今回のアルバムも、過去の作品同様、流行のサウンドやメロディを取り入れた、親しみやすい作風にまとまっている。だが、本作の面白いところは、R&Bの流行を意識しつつ、ディオンヌ・ワーウィックやアレサ・フランクリン、ホイットニー・ヒューストンといった、R&Bやソウル・ミュージックの歴史を彩った名シンガーの作風を大胆に取り込んだ点だと思う。もちろん、キキ・ワイアットやリーラ・ジェイムスが往年のソウル・クラシックをカヴァーしたアルバムを発表したように、昔の名曲を評価する動きは以前からあるが、彼女のように新作でクラシックの要素を取り込む発想は、ちょっと大胆だと思う。

いつまでも廃れない往年の名曲のエッセンスを取り入れつつ、2017年の新しい音楽として纏め上げたセンスと歌唱力は、流石としか言いようがない。ゴスペルに興味を持った人にはもちろん、R&Bやヴォーカル作品に興味を持っている人はぜひ聴いてほしい。歌の奥深さに圧倒されると思う。

Producer
Alvin Love, Tommy Sims

Track List
1. He's Never Failed Me Yet
2. Run To Him
3. Hey Devil! feat. The Clark Sisters
4. Peace From God
5. Why Me
6. Lowly
7. Never Have To Be Alone
8. Dancing In The Spirit feat. Hezekiah Walker And The Love Fellowship Choir
9. Marvelous
10. Let Them Fall In Love





Let Them Fall in Love
Cece Winans
Pure Springs Gospel
2017-02-03

 
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