ブラック・ミュージック千本ノック~SoulとR&Bと色々な音楽~

管理人が手に入れたR&Bのアルバム、1000枚の紹介文を書き続けるブログ その先に見えるものは天国か地獄か・・・

Hip-Hop

Talib Kweli - Radio Silence [2017 Javotti Media]

98年にモス・デフと組んだラップ・グループ、ブラック・スターの名義のアルバム『Mos Def & Talib Kweli Are Black Star』で華々しいデビューを飾ると、詩的な表現と哲学者を彷彿させる深い思索が光るラップで、注目を集めたタリブ・クウェリ。

ニューヨーク州ブルックリン出身の彼は、社会学者の父と言語学者の母の間に生まれ、後に大学教授として教鞭を執る弟を持つなど、アカデミックな家庭環境で育ってきた。そんな彼は、デ・ラ・ソウルの作品に触れたことで音楽へと興味を持ち、90年代中頃から、シカゴのラップ・グループ、ムードなどの作品に参加。レコーディングやライブを通して実力を蓄えてきた。

また、2002年に初のソロ・アルバム『Quality』を発表すると、その後はコンスタントに数多くのソロ作品やコラボレーション・アルバムを発表。マーリー・マールやKRSワンが活躍していた、90年代初頭のニューヨークのヒップホップ・シーンを思い起こさせる、サンプリングを効果的に使ったトラックと、現代社会やそこで生きる人々が抱える、様々な問題に鋭く切り込んだラップで評価を高めていった。

このアルバムは、今年4月に発売したニューヨーク出身のラッパー、スタイルスPとのコラボレーション・アルバム『The Seven』以来、自身名義の作品としては2015年の『Fuck the Money』以来となる、通算8枚目のフル・アルバム。前作同様、自身のレーベル、ジャヴォッティ・ミュージックからのリリースとなる本作は、プロデューサーとしてケイトラナダやオー・ノーが参加し、ゲスト・ミュージシャンとしてロバート・グラスパーアンダーソン・パックが名を連ねるなど、斬新なサウンドで音楽シーンを盛り上げてきた面々が集結した、新しい音へと挑戦する彼の野心を感じさせる作品になっている。

本作の収録曲の中でも、特に異彩を放っているのは2曲目の”Traveling Light”だろう。カナダ出身のケイトラナダがプロデュースを担当し、カリフォルニア州出身のアンダーソン・パックをフィーチャーしたこの曲は、60年代のソウル・ミュージックを連想させる勇壮なホーンの音色と、現代的な電子オルガンの伴奏を組み合わせたトラックが印象的な曲。ホーンの音色を使ったトラックは、多くのヒップホップ作品で見られるものだが、電子オルガンの音色を組み合わせることで新鮮な印象を与えている。アンダーソン・パックの歌も、タリブの切れ味鋭いラップをうまく盛り立てている。育った環境も世代も異なる、三人の持ち味が上手く噛み合った面白い曲だ。

これに対し、マッドリブの弟としても知られる、オー・ノーがプロデュースした”She's My Hero”は、古いレコードから引用した音を活かしたトラックが光る作品。オランダのプログレッシブ・ロック・バンド、スコープが74年に発表した”Kayakokolishi”をサンプリングした、アクション・ブロンゾンの”Bonzai”のトラックを再構築したこの曲。滑らかな管楽器の音色を効果的に使った、物悲しい雰囲気のビートは、ジャスト・ブレイズのプロデュース曲にも似ているが、こちらの方がよりレコードの質感を強調している。このトラックの上で、攻撃的なラップを聴かせるタリブ・クウェリの姿は、常に社会と闘ってきた、彼の孤独さを映しているようだ。

また、BJザ・シカゴ・キッドを招いた”The One I Love”は、サンファの”Can’t Get Close”をサンプリングした電子音楽のテイストが強い作品。泥臭いヴォーカルとモダンなサウンドを組み合わせた音楽性で、グラミー賞にもノミネートしたBJザ・シカゴ・キッドのスタイルを取り込んだ、懐かしさと新鮮さが入り混じった不思議な曲だ。立て続けに言葉を繰り出すタリブのラップと、シャイ・ライツのユージン・レコーズを思い起こさせる、艶めかしいBJのヴォーカルが心を掻き立てる良作。

そして、Jローズがトラックを制作し、リック・ロスとヤミー・ビンガムが客演した”Heads Up Eyes Open”は、本作のハイライトと呼んでも過言ではない作品。ジャスト・ブレイズや9thワンダーが作りそうな、70年代のソウル・ミュージックっぽい音色を使ったトラックが印象的だが、クレジットを見る限り、昔のレコードをサンプリングしたものではないようだ。このソウルフルなビートの上で、個性豊かなラップを披露するタリブとリックのコンビネーションが格好良い。サビでキュートな歌声を聴かせるヤミーの存在が、切れ味の鋭い二人のラップを聴きやすいものにしている。

これまでのアルバムでも、色々なスタイルのトラックに取り組んできた彼。だが、本作から感じるのは、往年のソウル・ミュージックやジャズに触発された音楽で知られる、若い世代の完成を取り込んだところだと思う。ソウル・ミュージックやファンク、ジャズの音を引用してきた彼が、それらの音楽に独自の解釈を加え、新しい音楽として聴かせている若いミュージシャンと組むことで、自分の軸を残しつつ、斬新な作品に仕上げている点が面白いと思う。

知的なリリックで、独創的な世界を組み立ててきた彼が、フレッシュな感性を取り込んで、その世界観を深めた良作。ヒップホップにはまだまだ進化できる可能性があると感じさせる、魅力的なアルバムだ。

Producer
The Alchemist, J Rhodes, KAYTRANADA, LordQuest, Oh No etc

Track List
1. The Magic Hour
2. Traveling Light feat. Anderson .Paak
3. All Of Us feat. Jay Electronica & Yummy Bingham
4. Let It Roll
5. Chips feat. Waka Flocka
6. Knockturnal
7. Radio Silence feat. Amber Coffman & Myka 9
8. She's My Hero
9. The One I Love feat. BJ The Chicago Kid
10. Heads Up Eyes Open feat. Rick Ross & Yummy Bingham
11. Write At Home feat. Datcha, Bilal & Robert Glasper






RADIO SILENCE
TALIB KWELI
JAVOTTI MEDIA/3D
2017-12-01

Eminem - Revival [2017 Aftermath, Shady, Interscope]

97年に発表した自主制作のアルバム『The Slim Shady EP』で表舞台に登場。同作のヒットを受けて出演した、ラジオ・ショーで披露したフリースタイルがDr.ドレに認められ、彼のレーベル、アフターマスと契約。99年に『The Slim Shady EP』に新曲を追加した『The Slim Shady LP』でメジャー・デビューすると、アメリカ国内だけで400万枚、全世界で600万枚を超える大ヒットとなった、ミズーリ州セントジョセフ生まれ、ミシガン州デトロイト育ちのラッパー、エミネムことマーシャル・ブルース・マーザーズ三世。

その後も彼は、『Marshall Marthers LP』や『The Eminem Show』などのヒップホップ・クラシックをリリース。特に前者は、発売初週の売り上げが179万枚、最終的にはアメリカ国内だけで1250万枚を売り上げ、ヒップホップのアルバムとしては史上最高となる売り上げ記録を残す。

また、彼の活動は音楽にとどまらず、自身の半生をもとにした映画『8 Mile』で主演俳優と音楽を担当。彼が歌う主題歌”Lose Yourself”がアカデミー賞を獲得するなど、高い評価を受けている。また、99年に立ち上げた自身が運営するレーベル、シェイディを本格的に始動し、50セントやオービー・トライスなどを世に送り出してきた。

そんな、2000年代にはトップ・ミュージシャンとして音楽業界をけん引してきた彼だが、2010年代に入ると活動は抑え気味に。ロイス・ダ59とのコラボレーション作品や自身名義の『Marshall Marthers LP 2』などを発表するなど、ゆっくりとしたペースで、着実にヒット作を残していった。

このアルバムは、彼にとって4年ぶりとなる9枚目のフル・アルバム。プロデュースは、デビュー前からのパートナー、Dr.ドレに加え、リック・ルービンやジャスト・ブレイズが担当。ゲスト・シンガーとしてビヨンセやエド・シーラン、ケラーニなどが参加した、ビック・ネームにふさわしい、豪華なものになっている。

アルバムの1曲目は、本作からのリード・シングル”Walk On Water”。多くのヒップホップ・ミュージシャンと仕事をしてきたリック・ルービンと、ホーリー・ブルック名義で複数のヒット作を残しているスカイラー・グレイがプロデュースを担当。ビヨンセの丁寧な歌唱が心を掻き立てるミディアム・ナンバーに仕上げている。Dr.ドレとエミネムのコラボレーション曲”I Need a Doctor”や、エミネムの”Asshole”にも関わっている、スカイラー・グレイの哀愁を帯びたメロディが光る良曲だ。

これに対し、彼自身がプロデュースした”Untouchable”は、唸るようなギターの音色が格好良い、ロック色の強い作品。サビで流れる威圧感のあるギターから、エミネムの軽妙なラップを引き立てるように、シンセサイザー中心のビートを組んだメロディ部分へとつながる展開も面白い。エミネムの武器である、コミカルでキャッチーなヒップホップが堪能できる作品。

また、エド・シーランをゲスト・ヴォーカルに招き、エミリー・ハインが制作を担当した”Rive”は、エドの物悲しい歌声が鳴り響くサビと、ギターの弾き語りを組み込んだ、フォークソングっぽいトラックの上で、荒っぽいラップを聴かせるエミネムの姿が印象的。ポップス畑のシンガーと組んだ作品には、他にイギリスのシンガー・ソングライター、ダイドを起用した”Stan”などがあるが、こちらの曲ではギターやベースの音を強調し、ポップス寄りの作品に仕上げている。

そして、ジャスト・ブレイズが制作に参加し、ゲスト・ヴォーカルとしてアリシア・キーズを招いた”Like Home”は、アリシア・キーズの楽曲を彷彿させる、ピアノの伴奏が光るロマンティックな作品。クラシック音楽の影響をうかがわせる荘厳なトラックに乗って、次々と言葉を繰り出すエミネムの姿が格好良い。ジェイZやナズ、ドレイクなど、個性豊かなラッパーとコラボレーションしながら、ブレる気配のない安定したアリシアの歌唱が、エミネムの個性を際立たせている。本作の目玉といっても過言ではない曲だ。

今回のアルバムは、前作同様、音楽業界の頂点を極めた後、自身の新しいアーティスト像を模索するエミネムの姿が姿が印象的な佳作だ。線の細い白人青年による、皮肉たっぷりのラップと、「スリム・シェイディ」という別人格を使い分けることで、成功への階段を駆け上がってきた彼。だが、今の彼は音楽界でもトップクラスの富豪であり、多くのヒット作を残しているトップスター。デビュー当初の異端児キャラとはミスマッチが起きているのも事実だ。それを乗り越えるため、色々なスタイルを取り入れて、新しい音楽を模索したのが今回のアルバムだろう。

反抗的な青年が大人になり、地位と名誉を掴んだあと、新たな目標を模索する。多くの大人が抱えている課題に、彼のスタイルで取り組んだ佳作。成長期から成熟期へと突入したエミネムの、「次」が楽しみになる面白い作品だ。

Producer
Dr. Dre, Rick Rubin, Just Blaze, Eminem, Emile Haynie, etc

Track List
1. Walk On Water feat. Beyonce
2. Believe
3. Chloraseptic feat. Phresher
4. Untouchable
5. Rive feat. Ed Sheeran
6. Remind Me (Intro)
7. Remind Me
8. Revival (Interlude)
9. Like Home feat. Alicia Keys
10. Bad Husband feat. X Ambassadors
11. Tragic Endings feat. Skylar Grey
12. Framed
13. Nowhere Fast feat. Kehlani
14. Heat
15. Offended
16. Need Me feat. Pink
17. In Your Head
18. Castle
19. Arose1.1.



a

Revival
Eminem
ユニバーサル ミュージック合同会社
2017-12-16


XL Middleton - Things Are Happening [2017 Mofunk Records]

プロデューサーやソングライターとして活動する一方、自身の名義でも多くの作品を残している、カリフォルニア州パサデナ出身のミュージシャン、XLミドルトン。

地元の友人と結成したラップ・グループ、クラウン・シティ・キングスからキャリアをスタートした彼は、2003年にエクストラ・ラージの名義で、アルバム『...aka Matthew Middleton』を発表してソロに転向。以後、80年代のディスコ・ミュージックを彷彿させる、アナログ・シンセサイザーを多用したダンス・サウンドで徐々にファンを広げ、オーケイ・プレイヤーズのような音楽メディアのみでなく、ワシントン・ポストやLAウィークリーのような一般メディアにも取り上げられるようになる。また、自身のレーベル、モー・ファンクを設立すると、女性シンガーのモニーカなどのレコードを配給。魅力的なディスコ音楽のレコードを発表するレーベルとして、日本でも知られるようになった。

今回のアルバムは、自身名義の録音としては1年ぶり15枚目となる作品。すべての曲で、彼自身がプロデュースと演奏、ヴォーカルを担当。ゲストには、2017年にモー・ファンクから発表した『Blackwavefunk』も記憶に新しいモニーカなどが参加。シンセサイザーのクールな音色を生かしたクールなダンス・ミュージックを聴かせている。

アルバムの1曲目は、リック・ジェイムスを思い起こさせる鋭いサウンドが格好良い”Never Have Too Many Freaks”。きらびやかなキーボードの音色と、精密なビートが光る伴奏をバックに歌う、彼の姿が印象的なダンス・ナンバーだ。ドライブの時に聴いたら気持ちよさそうな、疾走感が魅力的だ。

これに続く”Never Have Too Many Freaks”は、ハンドクラップの乱れ打ちのインパクトが強いイントロから、スタイリッシュな演奏へとつながる展開が面白いアップ・ナンバー。荒っぽいヴォーカルと洗練されたサウンドのコンビネーションがかっこいい。80年代に数多く見られた、強烈なインパクトと洗練された演奏を両立したディスコ音楽を連想させる良曲だ。

また、アリゾナ州タクソン出身のシンガー・ソングライター、ザッキー・フォース・ファンクを招いた ”Paradise Of Pavement”は、ブリブリと唸るようなベースの音が光るダンス・ナンバー。メイン・ヴォーカルを担当するザッキーの荒々しいテナー・ヴォイスと、絶妙なタイミングで合いの手を入れるXLのコンビネーションが素敵な佳曲だ。ボコーダーを使って、曲にメリハリをつけている点も見逃せない。彼同様、80年代のディスコ音楽を取り入れた作風で大ブレイクした、ディム・ファンクの音楽にも少し似た曲だ。

そして、モニーカをフィーチャーした”Better Friend”は、彼女のアルバムに入っていそうな、シックで上品な雰囲気の作品。低音を強調した伴奏をバックに、淡々と歌うXLが魅力の佳作。軽妙な掛け合いを聴かせるモニーカのヴォーカルが、曲に軽妙な雰囲気を与えている。実際に彼らのライブを観てみたいと思わせる、不思議な魅力のある曲だ。

西海岸を拠点に、80年代のディスコ・ミュージックからインスピレーションを得た音楽を作るミュージシャンというと、ディム・ファンクのことを思い出すが、古い楽器の音色を強調して、往年のサウンドを取り入れようとしたディム・ファンクに対し、彼の音楽は当時の音楽が持つ近未来的な雰囲気を現代の音楽に組み入れようとしているように映る。だからこそ、彼の音楽は懐かしさと新鮮さが同居した、斬新だけど親しみやすい作品になっているのだと思う。

ヨーロッパや日本でも根強い人気のディスコ・ミュージック。その魅力を、本場アメリカの人間が、現代のポピュラー音楽の主役であるヒップホップと融合することで、21世紀に蘇らせた面白い作品。当時の音楽を知る人には解釈の斬新さを、当時の音楽を知らない人にはサウンドの新鮮さを楽しんでほしい良作だ。

Producer
XL Middleton

Track List
1. Never Have Too Many Freaks
2. Look Who's Talkin'
3. Ice Level
4. Purple Sheets
5. Paradise Of Pavement feat. Zackey Force Funk
6. Better Friend feat. Moniquea
7. Prelude To The Invasion
8. Enjoy The Ride
9. Gotta Let You Go
10. They Don't Wanna Leave Me





THINGS ARE HAPPENING (CD)
XL MIDDLETON
MOFUNK RECORDS
2017-10-06

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