ブラック・ミュージック千本ノック~SoulとR&Bと色々な音楽~

管理人が手に入れたR&Bのアルバム、1000枚の紹介文を書き続けるブログ その先に見えるものは天国か地獄か・・・

Hip-Hop

Sky-Hi - Marble [2017 avex trax]

2005年にエイベックス主催のオーディションを勝ち上がったメンバーで結成、同年にシングル”BLOOD on FIRE”でメジャー・デビューを果たした、男女混成のダンス・ヴォーカル・グループ、AAA。

以後も、コンスタントに作品を発表し、2017年までに57枚のシングルと、11枚のフル・アルバムをリリース。複数の作品でゴールド・ディスクやオリコン・チャートの1位を獲得し、2016年と17年にはドーム・ツアーを敢行。2010年以降は7年連続で紅白歌合戦に出場(余談だが、彼らは紅白歌合戦の歴史で唯一、赤組と白組の両方で出演しているグループでもある)するなど、日本を代表するダンス・ヴォーカル・グループとして活躍してきた。

Sky-Hiこと日高光啓は、同グループでヴォーカルとラップを担当。メジャー・デビューの前からクラブ・イベントやMCバトルなどに出演し、デビュー曲の”BLOOD on FIRE”の頃からラップ詞を手掛けるなど、外部のソングライターを起用してきたグループの中で、早くからアーティストとしての才能を発揮してきた。また、2011年以降はSky-Hi名義でも活動を始め、これまでに14枚以上のシングルと3枚のフル・アルバムを発表。それ以外にも、餓鬼レンジャーやtofubeatsなど、様々なジャンルのミュージシャン達の作品に客演、ラッパーとしての実力をいかんなく発揮してきた。

本作は彼にとって初のデジタル・アルバム。2つの新曲と8つの既発曲からなる作品で、初の海外公演を控えた彼のキャリアを総括しつつ、新たなスタイルにも挑戦した意欲作になっている。

このアルバムでお披露目となった新曲”Marble”は、KMのプロデュース作品。ファイヤー・ホーンズのトランペット奏者、アツキ・ヤマモトを招いた曲は、ポロポロと爪弾かれるキーボードの演奏と、柔らかいトランペットの音色が、アート・ブレイキー&ジャズ・メッセンジャーズのような洒脱さを感じさせる。軽やかなサウンドが魅力の上で、茶目っ気たっぷりのラップを聴かせるスカイ・ハイも面白い。畳み掛けるようにラップを繰り出すメロディ部分から、軽妙な歌を聴かせるサビへと繋ぐ展開は、ラップとヴォーカルを両方経験している彼ならではの演出だ。

続く”Bitter Dream”は、91ウエストがプロデュースを担当した作品。乾いた音色のギターの演奏が印象的なトラックに乗って、軽やかなラップを披露するアップ・ナンバー。ラテン音楽のような陽気で軽快なサウンドを活かしたリズミカルなラップが格好良い曲だ。

それ以外の曲では、2014年にリリースしたシングル曲のリメイク”Smile Drop’16”が印象的。敢えて押韻に拘らないスタイルを取り入れることで、AAAの作品ともスカイ・ハイ名義の作品とも異なる、歌とラップを織り交ぜた、荒々しい雰囲気とキャッチーなフレーズ、強いメッセージ性が一体化したパワフルなヴォーカル作品に仕上がっている。

また、キック・ザ・カン・クルーのクレヴァがプロデュースした”As A Sugar”は、クレヴァの持ち味である奇想天外なトラック・メイクのスキルが発揮された曲。ベートーヴェンの”運命”を彷彿させる畳み掛けるようなストリングスの演奏バックに、次々と言葉を放つスカイ・ハイのラップ技術が素晴らしい。

彼の魅力は「Sky-Hi」と「AAAの日高光啓」を切り分けることなく、一人のアーティストの中に同居させる絶妙なバランス感覚だと思う。「教室の人気者」や「近所の気さくなお兄さん(お姉さん)」のような華やかで親しみやすいグループの雰囲気を残しつつ、ウィットに富んだ言い回しと軽妙な表現で聴き手を唸らせる本格的なヒップホップを聴かせる技術は、マッチョなキャラクターをウリにするステレオタイプなラッパーとは一線を画していると思う。

また、歌とラップの両方が求められるグループで活動することで、場面に応じてスタイルを切り替える技を身に着けている点も彼の強みだと思う。歌とラップを使い分けるには人は、日本のAIや、カナダのドレイク、韓国のG-ドラゴンなど、高い評価と商業面での成功を収めた人も少なくないが、日本を拠点に活動する男性ラッパーに限れば、とても珍しい存在だと思う。

日本のポップスのトレンドを踏襲しつつ、それを通好みのヒップホップと融合するセンスと技術が光る面白い作品。マッチョなイメージやアンチ・メジャーをウリにするヒップホップ・アーティストが多い中、本格的なヒップホップをメインストリームのポップスのいちスタイルに昇華した彼の存在はとても貴重だと思う。

Producer
KM, 91 West, Sunny Boy ,UTA, KREVA etc

Track List
1. Marble
2. Bitter Dream(Colorful Urban Mix)
3. Double Down
4. Smile Drop’16
5. Nanairo Holiday
6. As A Sugar
7. Stray Cat
8. Limo
9. Tokyo Spotlight
10. Over The Moon






Gucci Mane - Mr. Davis [2017 Guwop Entertainment, Atlantic]

T.I.やヤング・ジージーといったアトランタ出身のラッパーの作品によって、アメリカのブラック・ミュージック界に一大ブームを巻き起こしたトラップ。このスタイルを早くから取り入れ、多くのヒット作を残しているのが、アラバマ州バーミンガム出身のラッパー、グッチ・メインことラドリック・デランティック・デイヴィスだ。

14歳から音楽活動を始めた彼は、2005年には初のフル・アルバムとなる『Trap House』をリリース。インディー・レーベル発の新人の作品ながら、10万枚を超えるセールスを上げるヒット作となった。その後も立て続けにアルバムを発表した彼は、2007年にアトランティックと契約すると、ミックス・テープを含む多くの作品を世に送り出し、全ての作品で商業的な成功を収める。また、それと同時に、作品やライブを通して、色々なミュージシャンと舌戦を繰り広げたことも話題になった。

本作は、メトロ・ブーミンとのコラボレーション・アルバム『Droptopwop』から5か月ぶり、単独名義の作品としては昨年12月の『The Return of East Atlanta Santa』以来、約10か月ぶりの新作となる通算11枚目のオリジナル・アルバム。これまでの作品同様、プロデューサーに多くのヒット・メイカーを起用し、ゲスト・ミュージシャンにはミーゴスやウィークエンド、タイ・ダラ・サインといった人気ミュージシャンを多数招いた、ワイルドでキャッチーなヒップホップを披露している。

本作に先駆けて発表されたシングル曲”I Get the Bag”は、アトランタ出身のサウス・サイドとメトロ・ブーミンがプロデュースを担当し、トラップのビートを使ったヒット曲を数多く残しているラップ・グループ、ミーゴスがゲストとして参加。重低音を強調した陰鬱なトラックに乗って、リズミカルに言葉を繋ぐラップが魅力の作品。チキチキというハットの音がキモになるトラップだが、この曲では高音を抑え気味にして重厚でダークな雰囲気を演出している。重々しいビートを軽妙なラップで聴きやすくする4人のスキルが発揮された良曲だ。

これに対し、カナダ出身のシンガー・ソングライター、ウィークエンドを招いた”Curve”は、ウィークエンドと同じカナダ出身のプロデューサー、ナーヴが制作を担当。ゴムボールのように弾む電子音がウィークエンドの作品っぽくも聴こえるビートに乗って、次々と言葉を繰り出すウィークエンドと、一つ一つの言葉を丁寧に紡ぐグッチ・メインの対照的なパフォーマンスが光る曲だ。メロディ部分では言葉数が多いにも関わらず、サビでは甘酸っぱい歌声をじっくり聴かせるウィークエンドの器用さも魅力だ。

また、クリス・ブラウンが参加した”Tone It Down”は、カルディアックとヒットメイカーがプロデュースした作品。ジェイZの”Big Pimpin”にも少し似ている、変則的なビートを取り入れたトラップ・ナンバー。トラップを取り入れた作品が多い両者のコラボレーションだけあって、奇抜なビートの上でも流れるようなメロディとラップを聴かせてくれる。この分野で多くのヒット曲を残してきた二人の経験が発揮された、安定感が光る佳曲だ。

そして、本作の目玉と言っても過言ではないのが、アメリカを代表する人気女性ラッパー、ニッキー・ミナージュをフィーチャーした”Make Love”だ。サウス・サイドに加え、デトロイト出身のディテイルがプロデューサーとして参加したこの曲は、音数を絞ったビートとマリンバのような音色の上物が不思議な雰囲気を醸し出す作品。シンセサイザーの音色を強調しないポップなトラックはニッキー・ミナージュに近い印象、畳み掛けるようなグッチ・メインのラップも彼女の作品を連想させるものだ。

彼の音楽は、シンセサイザーを駆使して流行の音を自分のスタイルに合わせて咀嚼したトラックと、50セントやウータン・クランの面々のような硬く重い声質を活かしつつ、絶妙な力加減で聴きやすいラップに還元するスキルが合わさった、コアな音楽ファンからそうでない人まで、万人受けするスタイルが特徴的。彼の持ち味は本作でも健在で、新しい音を積極的に取り入れながら、それに色々な解釈を加えて自分の作風と融合している。

10代のころからラップ・ゲームの一線で戦い続けてきた早熟の天才らしい、安定感と柔軟な感性が光る佳作。現代のアメリカで流行っているヒップホップに興味がある人はぜひ聴いてほしい。

Producer
Gucci Mane, Southside, Metro Boomin, Cardiak, Hitmaka, Southside, Detail etc

Track List
1. Work in Progress (Intro)
2. Back On
3. I Get the Bag feat. Migos
4. Stunting Ain't Nuthin feat. Slim Jxmmi & Young Dolph
5. Curve feat. The Weeknd
6. Enormous feat. Ty Dolla $ign
7. Members Only
8. Money Make Ya Handsome
9. Changed feat. Big Sean
10. We Ride feat. Monica
11. Lil Story feat. ScHoolboy Q
12. Tone It Down feat. Chris Brown
13. Make Love feat. Nicki Minaj
14. Money Piling
15. Jumping Out the Whip feat. A$AP Rocky





Mr.Davis
Gucci Mane
Atlantic
2017-10-13

Wu-Tang Clan - The Saga Continues [2017 eOne]

往年のブラック・ミュージックをサンプリングしているにもかかわらず、他のミュージシャンとは一味違う不気味な雰囲気を醸し出すトラックと、ドスの効いた声で紡がれる攻撃的なラップが印象的だった93年のデビュー・アルバム『Enter the Wu-Tang (36 Chambers)』で、多くの音楽ファンの度肝を抜いた、ニューヨークのスタッテン・アイランド出身のヒップホップ・グループ、ウータン・クラン。

91年にプリンス・ラキームの名義でトミー・ボーイからアルバムをリリースしているRZAを中心に、彼の従兄弟であるGZAやオール・ダーティー・バスタード(2004年に死去)、既にラッパーとして活動していたゴーストフェイス・キラーやU-ゴッドといった個性豊かな面々からなる彼らは、RZA達が生み出すおどろおどろしいのに中毒性の高いビートと、全身全霊で自分のキャラをアピールする各メンバーのラップを武器に、多くのヒット作を残してきた。

また、メアリーJ.ブライジとのコラボレーション曲でグラミー賞を獲得したメソッド・マンや、マライア・キャリーの”Fantasy”のリミックス版で、主役を押しのける強烈なパフォーマンスを披露したオール・ダーティー・バスタードをはじめ、映画「キル・ビル」の映画音楽を手掛けたRZAや、様々なコラボレーション作品を含む多くのアルバムを残しているゴーストフェイス・キラーなど、各メンバーがソロ・アーティストとしても成功を収めてきた。

このアルバムは、2014年の『A Better Tomorrow』 以来、約3年ぶりとなる新作。すべての楽曲をリーダーのRZAと、彼らのライブをDJとして支えているマスマティックスが制作し、各曲ではメンバーに加え、キラー・プリーストやストリート・ライフのような準メンバー、レッドマンやショーン・プライスなどの人気ミュージシャンが集結、地道な活動で鍛え上げた逞しさとしなやかさを兼ね備えたヒップホップを聴かせている。

アルバムの実質的な1曲目”Lesson Learn'd”は、インスペクター・デックとメソッド・マンのコラボレーション作品。デビュー当時の彼らを思い起こさせる、微妙な揺らぎが不安を掻き立てるビートの上で渋いラップを聴かせるインスペクター・デックと、軽い声質でがなり立てるようなラップを披露するレッドマンのコンビネーションが光る曲だ。どことなくだが、90年代に鮮烈なデビューを飾ったときのことを思い起こさせる。

これに対し、ゴーストフェイス・キラー、メソッド・マン、RZAというソロでも実績豊富な面々に加え、ブロンクス出身のベテラン・ラッパー、ショーン・プライスが参加した”Pearl Harbor”は、ドロドロとしたビートの上で繰り広げられるマイク・リレーが魅力の作品。楽器の演奏とサンプリングを混ぜ合わせたビートの上で、個性豊かな4人のラップが次々と繰り出されるスリリングな曲だ。タイトルからも予想できるように、日本人には少し引っ掛かる内容のリリックだが、それを割り引いても捨てがたい魅力がある。

また、本作に先駆けて公開された”People”は、本作の収録曲では唯一ウータン・クランのメンバー全員が集結した曲。ディプロマッツの”I've Got the Kind of Love”をサンプリングしたソウルフルなトラックの上で、各人が強烈な個性を発揮している佳作。ゲストとして招かれたレッドマンを含めると8人の大人数によるマイク・リレーだが、各人のキャラがきちんと立っているから恐ろしい。

そして、アルバムの収録曲では珍しい、ヴォーカル・パートが入っている”G'd Up”はメソッド・マンに加えてムジー・ジョーンズとR-ミーンが参加した作品。ウータンの面々に比べると、知名度では大幅に劣る面々だが、メソッド・マンに負けない存在感を発揮している。ほかの曲に比べると、ドラムの音を強調したシンプルなトラックだが、サビを担当する泥臭いヴォーカルと合わさるとちょうどいい感じに聴こえる。

尖ったビートとラップで華々しいデビューを飾った彼らだが、今回のアルバムでは2000年以降の彼らの作品で頻繁に見られるような、強烈な印象を与えつつ、聴き手を疲れさせないポップな楽曲が増えていると思う。音楽界のトップ・スターから気鋭のビート・メーカーまで、様々なタイプのアーティストとコラボレーションしながら、映画音楽にも携わるなど、様々な仕事で結果を残してきた経験が、先鋭的だけど大衆的という、独特な作風を育んだのだと思う。

強い個性と、それを支える確かな実力を備えた彼らにしか作れない唯一無二の作品。色々なラッパーが試行錯誤しながら新しい音楽を生み出していた、90年代のヒップホップ・シーンの熱気と、ベテランらしい高い完成度が同居した、懐かしさと新鮮さが同居した面白い音楽だ。

Producer
RZA, Mathematics

Track List
1. Wu-Tang the Saga Continues Intro feat. Rza
2. Lesson Learn'd feat. Inspektah Deck and Redman
3. Fast and Furious feat. Huehef and Raekwon
4. Famous Fighters (Skit)
5. If Time Is Money (Fly Navigation) feat. Method Man
6. Frozen feat. Method Man, Killa Priest and Chris Rivers
7. Berto and the Fiend (Skit) feat. Ghostface Killah
8. Pearl Harbor feat. Ghostface Killah, Method Man, RZA, and Sean Price
9. People Say Wu-Tang Clan feat. Redman
10. Family (Skit)
11. Why Why Why feat. RZA and Swinkah
12. G'd Up feat. Method Man, R-Mean and Mzee Jones
13. If What You Say Is True Wu-Tang Clan feat. Streetlife
14. Saga (Skit) feat. RZA
15. Hood Go Bang feat. Redman and Method Man
16. My Only One feat. Ghostface Killah, RZA, Cappadonna and Steven Latorre
17. Message D5. The Saga Continues Outro feat. RZA



WU-TANG: THE SAGA CONTINUES [CD]
WU-TANG CLAN
36 CHAMBERS ALC/EONE
2017-10-13

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