melOnの音楽四方山話

オーサーが日々聴いている色々な音楽を紹介していくブログ。本人の気力が続くまで続ける。

Pops

Charlie Puth - Voicenotes [2018 Atlantic]

作曲家として活動していた父を持ち、自身も子供の頃から自作曲を売ってお金を得ていたという、ニュージャージー州ラムソン出身のシンガー・ソングライター、チャーリー・プースことチャーリー・オットー・プースJr。

動画投稿サイトにアップロードした、ヒット曲のカヴァーが注目を集めた彼は、2010年に初のオリジナル作品”These are My Sexy Shades”を公開。その後も複数の動画を発表し、その多くが高い評価を受けた彼は、2015年にアトランティックと契約。同年にシングル”Marvin Gaye”でメジャー・デビューを果たした。

そんな彼の転機となったのは、2015年に発表されたウィズ・カリファのシングル”See You Again”への参加。映画「Furious 7」のサウンドトラックに収録されたこの曲は、亡き友への思いを切々と歌ったバラード。この曲で、胸を切り裂くようなサビを歌い上げたチャーリーは、ジャスティン・ティンバーレイクやロビン・シックの系譜に連なる、ブルー・アイド・ソウルのシンガーとして名を高めた。

本作は、アメリカ国内だけで100万枚以上を売り上げた1枚目のアルバム『Nine Track Mind』から、約2年の期間を挟んで作られた2枚目のスタジオ・アルバム。全ての収録曲でペンを執り、プロデュースも担当するなど、前作以上に自身の個性を強く打ち出した作品になっている。

本作の収録曲で真っ先に目を惹いたのは、2017年4月に発表された先行シングル”Attention”だ。 太い音色のギターを使った軽妙なアルペシオと、モダンな音のシンセサイザーを組み合わせた伴奏の上に、繊細な歌声が乗っかったアップ・ナンバーだ。生楽器と電子楽器を組み合わせた洗練された伴奏や、チャーリーの甘く爽やかな歌声は、黒人のR&Bシンガーとは一味違う高貴な雰囲気さえ感じる。

だが、本作の目玉はもう一つの先行シングル”How Long”だろう。跳ねるようなベースの音色とハンド・クラップを組み合わせた伴奏は、60年代のモータウンのソウル・ミュージックを思い起こさせる軽快なもの。その上で、流麗なメロディを歌い上げるチャーリーの姿が光るアップ・ナンバーだ。壁や塀の上を、宙を舞うように歩く不思議な雰囲気のミュージック・ビデオも、楽曲の軽やかな雰囲気を上手く表現している。

それ以外の曲では、ケラーニを招いた”Done For Me”も格好良い。ローファイなシンセサイザーの音色を使った伴奏は、ダフト・パンクが参加したウィークエンドの"I Feel It Coming"にも通じる近未来的な雰囲気のトラックと、滑らかなファルセットを活かした美しいメロディの組み合わせが聴きどころ。黒人シンガーの中では珍しい淡白な表現がウリのケラーニと、白人シンガーの中では異色の豊かな感情表現が武器のチャーリーによるデュエットもいい味を出している。

そして、本作の収録曲でも異彩を放っているのが、ボーイズIIメンとコラボレーションした”If You Leave Me Now”だ。チャーリーがリードを取り、ボーイズIIメンの3人がコーラスを担当したこの曲は、4人の声とフィンガー・スナップの音だけで作られた本格的なアカペラ作品。チャーリーが手掛けた清涼感溢れるメロディと、柔らかい4人の歌声、じっくりとメロディを聴かせる編曲が聴きどころ。ソウル・ミュージック以外の音楽にも精通したチャーリーが制作を主導したからか、AZ YETによるシカゴの楽曲のアカペラ・カヴァー"Hard to Say I'm Sorry"のような、ポップス色の強い作品に仕上がっている。

今回のアルバムでは、様々なジャンルの音楽の表現技法を組み合わせて、ソウル・ミュージックを新しい音楽に組み替えるチャーリーの制作技術が光っている。メロディやヴォーカル表現、アレンジの随所にソウル・ミュージックのエッセンスが盛り込みつつ、楽曲全体を通して聴くと、ロックやポップスの手法をふんだんに取り入れた、上品なポップスに纏めている。既に多くのミュージシャンに取り入れられてきたソウル・ミュージックのテクニックを用いつつ、他のジャンルの音楽の手法を加えることで、独自性を打ち出している点が彼の音楽の特徴だ。また、他のミュージシャンがあまり使わない、白人向けのポップスの技術を用いることで、奇をてらうことなく、新鮮な作品として聴かせられている点も大きいだろう。

アメリカ北東部の中流家庭に生まれ育った白人という、他の歌手とは異なる出自を生かして、ソウル・ミュージックに新しい解釈を持ち込んでくれたチャーリー。ロビン・シックやメイヤー・ホーソンとは異なるアプローチで、ソウル・ミュージックの魅力を引き出した面白いアルバムだ。

Producer
Charlie Puth, Pharrell Williams
Track List
1. The Way I Am 2. Attention
3. LA Girls
4. How Long
5. Done For Me feat. Kehlani
6. Patient
7. If You Leave Me Now feat. Boyz II Men
8. BOY
9. Slow It Down
10. Change feat. James Taylor
11. Somebody Told Me
12. Empty Cups
13. Through It All





VOICENOTES [CD]
CHARLIE PUTH
ATLANTIC
2018-05-11

Torii Wolf - Flow Riiot [2017 TTT]

80年代から2000年代前半にかけて、ヒップホップ・デュオ、ギャングスターの一員として活躍する一方、プロデューサーとしてノートリアスB.I.G.ジェイZからジャネット・ジャクソンやクリスティーナ・アギレラまで、多くの人気ミュージシャンを手掛けてきた、ヒューストン生まれニューヨーク育ちのDJでプロデューサー、DJプレミアことクリストファー・エドワード・マーティン。

近年もラッパーをフィーチャーした自身名義のアルバムをリリースしたり、バンド・メンバーを連れたツアーを行ったりするなど、精力的に活動している彼。そんな彼の全面的なバック・アップを受けてデビューしたのが、このトリイ・ウルフだ。

2016年に配信限定のシングル”1st”で表舞台に躍り出た彼女は、DJプレミアがプロデュースしたシンガーという話題性と、ビヨークを彷彿させる神秘的なヴォーカルで、音楽好きの度肝を抜いた。

その後も、DJプレミアらしい、サンプリングを多用したヒップホップのトラックに、しなやかで繊細なヴォーカルを組み合わせた独特のスタイルの楽曲で注目を集めてきた彼女、待望のフル・アルバムではその路線を踏襲しつつ拡大した、音楽ファンの期待を裏切らない音楽を聴かせてくれる。

彼女のデビュー曲”1st”は、DJプレミアがプロデュースしたディレイテッド・ピープルズの”Good As Gone”をサンプリングしたミディアム・ナンバー。ポロポロと鳴り響くピアノの音色が切ない、物悲しい雰囲気の作品だ。ラッパーの声をアクセントに使うことで、哀愁を帯びたメロディの曲を軽妙なヒップホップ・ソウルのように聴かせるテクニックが光っている。

これに続く”Big Big Trouble”は、同じくDJプレミアがプロデュースしたパプースの”The Plug”をサンプリングした作品。元ネタ(厳密にいえばシャーリー・ベッシーの”Light My Fire”の孫引きに当たるのだが)のフレーズを使った荘厳なストリングスの伴奏と、DJプレミアらしい精密なビートの上で、軽妙な歌唱を披露するスタイルが格好良いミディアム・ナンバー。本作で使われているビートの中では、DJプレミアがこれまでに制作したトラックに最も近い作風だが、歌い手の解釈で先鋭的なポップスに聴こえるから面白い。

また、マックルモア&ライアン・ルイスの名義で2枚のアルバムを残し、ケンドリック・ラマーを押しのけてグラミー賞を獲得したことも記憶に新しいシアトル出身のラッパー、マックルモアとDJプレミアが手掛けた”Free”は、レコードの音を組み合わせた緻密で温かいトラックに定評のあるDJプレミアと、ポップで軽快な作品を作らせたらアメリカ屈指の技術を持つマックルモアの良いところが合わさった、キャッチーでグラマラスなビートが格好良いアップ・ナンバー。DJプレミアらしい、古いレコードの音を巧みに引用した太くて温かい音を使って、シュガーヒルズ・ギャングやグランドマスター・フレッシュのような80年代のヒップホップ・ミュージシャンを彷彿させる軽やかなビートが印象的だ。このビートの上で、あえて音数を絞った流れるようなメロディを披露するトリイ・ウルフと、自身名義の作品同様、キャッチーで親しみやすいラップを披露するマックルモアの対照的なパフォーマンスが互いの長所を引き出している。全く違うスタイルの三者の個性が存分に発揮された作品にもかかわらず、それらが一体化して一つの音楽に落とし込まれている点は流石としか言いようがない。

そして、ドレイクDJキャリッドの作品に携わっているマイク・ゾンビが制作した”Pain Killer”は、ピアノっぽい音色を使った伴奏が光るスロー・ナンバー。ドラムの音を控えめにして、ふわふわとしたシンセサイザーの音色を使った幻想的なトラックの上で、丁寧にメロディを歌った作品。ポップスのバラードでありながら、エレクトロ・ミュージックやヒップホップの手法を混ぜ合わせることで、斬新な音楽に聴かせる手腕が光っている。

DJプレミアと言えば、ナズやラキムといった通好みのラッパーとのコラボレーション作品が知られる一方、ディアンジェロなどのヴォーカル曲も制作するなど、音楽に詳しくない人がイメージするヒップホップやR&Bを体現したような楽曲が多かった、そんな彼が手掛けたこのアルバムは、ディアンジェロやジャネット・ジャクソンとは全く異なる、ビヨークやトム・ヨークのような繊細な表現と先鋭的な感性が合わさった歌手とのコラボレーションという意外な組み合わせだ。しかし、様々なタイプのヒップホップを生み出してきたDJプレミアの感性と、それを独自の解釈で自身の音楽に組み替えるトリイ・ウルフの創造力が合わさったおかげで、90年代のヒップホップが持つ温かい空気と、サンダーキャットやフライング・ロータスのような斬新さが融合した、唯一無二の作品になっている。

60年代、70年代の音楽をサンプリングし、現代の音楽に再構築してきたDJプレミアの持ち味を残しつつ、現代の前衛的なクラブ・ミュージックに取り組んだ意欲作。斬新なビートと個性的なラッパーに心踊った90年代の彼を思い起こさせる、鋭い感性と高い技術が発揮されている充実の内容だ。

Producer
DJ Premier, King Of Chill, M araabMUZIK, Macklemore, Mike Zombie, Torii Wolf

Track List
1. Everlasting Peace
2. Meant To Do
3. 1st
4. Big Big Trouble
5. Body
6. I'd Wait Forever And A Day For You
7. Take It Up On Monday
8. Go From Here
9. Shadows Crawl
10. Nobody Around
11. You're Not There
12. Where We Belong
13. Free feat. DJ Premier, Macklemore
14. Pain Killer
15. Moscow






Lana Del Rey - Lust For Life [2017 Interscope, Polydor]

2008年にリジー・グラント名義のEP『Kill Kill』で鮮烈なレコード・デビューをした、ニューヨーク出身のシンガー・ソングライター、ラナ・デル・レイこと、エリザベス・ウールリッジ・グラント。

2012年にインタースコープと契約を結び、アルバム『Born To Die』を発表すると、全米アルバム・チャートで1位を獲得。全世界で700万枚を売り上げる大ヒット作となる。その後も2014年に『Ultraviolence』を、2015年には『Honeymoon』をリリース、両作品とも各国のヒット・チャートで上位に食い込み、ゴールド・ディスクを獲得するなど、華々しい成果を上げている。

また、2012年にはボビー・ウーマックの遺作となったアルバム『The Bravest Man in the Universe』に収録されている”Don't Let Me Be Misunderstood”に客演。2015年にはウィークエンドのアルバム『Beauty Behind the Madness』からシングル・カットされた”Prisoner”に参加、翌年にはアルバム『Starboy』からのシングル曲”Party Monster”にソングライターとして関わるなど、R&Bファンの間でも知名度を高めていった。

このアルバムは、彼女にとって2年ぶり4枚目のフル・アルバム。これまでの作品では、ポップス畑のクリエイターと一緒に作ることが多かった彼女だが、本作ではボーイ・ワン・ダやメトロ・ブーミンといったヒップホップやR&Bで実績のあるプロデューサーを多数起用。ゲスト・ミュージシャンにもウィークエンドやエイサップ・ロッキーなど、ヒップホップやR&Bが好きな人にはおなじみのアーティストが集まるなど、ブラック・ミュージックを積極的に取り入れた音楽に取り組んでいる。

本作の2曲目、ウィークエンドをフィーチャーした”Lust for Life”は、ブリトニー・スピアーズからウィークエンドまで、幅広いジャンルのミュージシャンと仕事をしてきたスウェーデン出身の名プロデューサー、マックス・マーティンが参加したミディアム・ナンバー。電子楽器を多用した幻想的なサウンドをバックに、繊細な歌声をじっくりと聴かせている。電子音を多用した伴奏と、高音を聴かせることに重きを置いたメロディ、ガラス細工のように繊細で透明な歌声活かしたヴォーカルの組み合わせはウィークエンドの”Starboy”を思い起こさせる。

これに対し、エイサップ・ロッキーとプレイボーイ・カルティの二人が参加し、ボーイ・ワン・ダがプロデュースを担当した”Summer Bummer”はピアノをバックに訥々と歌うという意外な幕開けが面白い曲。ここからパーティネクストドアドレイクを彷彿させる、シンセサイザーを多用したダークな雰囲気のヒップホップのトラックにつなぐ手法が新鮮だ。ゆったりとしたテンポのビートの上で、リズミカルに言葉を繋ぐ二人のラッパーと、あくまでも淡々と歌うラナ・デル・レイの対照的なパフォーマンスが光っている。

一方、エイサップ・ロッキーを招いたもう一つの楽曲” Groupie Love”はリック・ノウェルズら、ポップス畑のクリエイターが制作に携わっている楽曲。シンセサイザーの音色を重ね、ストリングスのように聴かせる伴奏に乗って、語り掛けるように歌う姿が印象的な曲。スロー・テンポのバラードに、あえてラップを組み込んで起伏をつけるセンスと、ポップスのバラードに溶け込むよう、抑揚を抑えたラップを披露するエイサップ・ロッキーの技術が聴きどころ。

そして、メトロ・ブーミンがプロデューサーに名を連ねる”God Bless America: And All the Beautiful Women in It”は、ヒップホップのビートを取り入れたミディアム・ナンバー。DJプレミアやピート・ロックが作っていたような、緻密でリズミカルなトラックを採用しつつ、じっくりとメロディを歌う姿が魅力的。パワフルなヴォーカルをウリにするソウル・ミュージックとは一味違うポップスのバラードだが、荘厳なメロディに軽妙な印象を持たせるアレンジが魅力の曲だ。

今回のアルバムでは、ヒップホップやR&Bのミュージシャンを起用して、新しいスタイルに挑戦しつつ、これまでの作品に慣れ親しんできたファンの期待を裏切らない絶妙なバランスの楽曲が目立っている。ウィークエンドやフランク・オーシャンなど、ヒップホップやR&Bとロックやポップスの要素を融合したスタイルのミュージシャンが流行る中で、彼らの手法をポップスの側から取り入れたように映る。

R&Bやソウル・ミュージックではないが、アメリカの音楽に黒人音楽が深く根差していることを感じさせる佳作。好き嫌いは別として、「時代の音」として触れてほしい。

Producer
Lana Del Rey, Rick Nowels, Benny Blanco, Boi-1da Emile Haynie etc

Track List
1. Love
2. Lust for Life feat. The Weeknd
3. 13 Beaches
4. Cherry
5. White Mustang
6. Summer Bummer feat. ASAP Rocky, Playboi Carti
7. Groupie Love feat. ASAP Rocky
8. In My Feelings
9. Coachella: Woodstock in My Mind
10. God Bless America: And All the Beautiful Women in It
11. When the World Was at War We Kept Dancing
12. Beautiful People Beautiful Problems feat. Stevie Nicks
13. Tomorrow Never Came feat. Sean Ono Lennon
14. Heroin
15. Change
16. Get Free





Lust For Life
Lana Del Rey
Interscope
2017-07-21

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