ブラック・ミュージック千本ノック~SoulとR&Bと色々な音楽~

管理人が手に入れたR&Bのアルバム、1000枚の紹介文を書き続けるブログ その先に見えるものは天国か地獄か・・・

アメリカ

Steve Aoki - Steve Aoki Presents Kolony [2017 Ultra Records, Sony]

2010年代以降、クラブ・ミュージックの主役になりつつあるEDM。ディプロやカルヴィン・ハリスのようなDJやクリエイターは、ウィル・アイ・アムやリアーナといったヒップホップ、R&B畑のミュージシャンを巻き込むことで、お茶の間にも進出。オーディオ機器のアイコンとして採用されるなど、クラブとは縁遠い人々の間も知られる存在となった。

スティーヴ・アオキも、このムーブメントを代表するクリエイターの一人。フロリダ州のマイアミに生まれ、カリフォルニア州のニューポートで育った彼は、ロッキー青木の名前でプロレスラーとして活躍し、のちに鉄板焼きレストラン「ベニハナ」を創業した青木廣彰を父に持つ日系人。大学生のころから、音楽活動をしていた彼は、96年に自身のレーベルを設立。アクロバティックなDJとキャッチーな作風で人気を集めてきた。

そんな彼は、2010年にウィル・アイ・アムとのコラボレーション曲”I'm in the House”を発表すると、イギリスのシングル・チャートにランクイン。2012年には初のアルバム『Wonderland』をリリース。LMFAOやリル・ジョンを招いた本作は、エレクトロ・ミュージックのアルバムとしては異例の全米アルバム・チャート入りを果たした。

その後も、DJやレコーディングを精力的にこなした彼は、現在では世界で五指に入る人気DJと称されるまでになった。

このアルバムは、2015年の『Neon Future』以来となる、通算4枚目のフル・アルバム。前作同様、多くのラッパーを招いた、ヒップホップ色の強い作品になっている。

本作の収録曲で最初に目を引いたのは、オランダを拠点に活動するDJチーム、イエロー・クロウとのコラボレーション・シングル”Lit”。オートチューンを使ったT-ペインのヴォーカルと、グッチ・メインの重いラップが格好良い作品。シンセサイザーを刺々しいビートと、T-ペインのロボット・ヴォイスがうまく噛み合った良作だ。

また、カナダのDJユニット、DVBBSやジョージア州出身のラッパー、2チェインズが参加した”Without You”は、サイレンのような音色が印象的なビートをバックに、泥臭いラップを聴かせる2チェインズの存在が光っている。2チェインズの作品同様、シンセサイザーを駆使したトラップ寄りの楽曲だが、エレクトロ・ミュージックの世界で育った面々がトラックを作ると、よりキャッチーで躍動感のあるものに聞こえるから不思議だ。

また、ミーゴスとリル・ヨッティをフィーチャーした”Night Call”は、本作の収録曲でも特にヒップホップ寄りの作品。チキチキという高音と、唸るような低音の組み合わせが心地よいビートに乗って軽妙なラップを聴かせている佳曲。リル・ヨッティやミーゴスのアルバムに入っていそうな作品だが、細かいところに工夫を凝らして、差別化を図っている点は流石の一言。

そして、バッド・ボーイに多くの作品を残しているメイスを招いた”$4,000,000”は、スティーヴ・アオキと同じ西海岸発のEDMユニット、バッド・ロイヤルが制作に携わり、ビッグ・ギガンティックのサックスやドラムの演奏を盛り込んだ作品。昔のソウル・ミュージックをサンプリングしたサウンドで一世を風靡したバッド・ボーイの音楽を彷彿させる部分と、EDMの手法を混ぜ合わせたトラックが新鮮に映る。

今回のアルバムは、彼の前作やディプロやカルヴィン・ハリスの近作同様、ヒップホップやR&Bのトレンドをエレクトロ・ミュージックに取り入れたものだ。その中でも、彼の音楽はEDMの高揚感とヒップホップの奇抜さを丁寧に取り入れたサウンドが印象的、EDM畑のクリエイターは、変則的なビートにも対応できる、アメリカ南部出身のラッパーや、海外のミュージシャンとコラボレーションが多いが、彼もその流れを踏襲している。

本格的なクラブ・ミュージックでありながら、自宅や通勤、通学中の鑑賞にも耐えうる良質なポップス作品。エレクトロ・ミュージックを聴いたことがない人にこそ、手に取ってほしいアルバムだ。

Producer
Steve Aoki, Yellow Claw, DVBBS, Bad Royale, Ricky Remedy

Track List
1. Kolony Anthem feat. Bok Nero, ILoveMakonnen
2. Lit feat. Gucci Mane, T-Pain
3. Without You feat. 2 Chainz
4. How Else feat. ILoveMakonnen, Rich The Kid
5. Been Ballin feat. Lil Uzi Vert
6. Night Call feat. Lil Yachty, Migos
7. $4,000,000 feat. Big Gigantic, Ma$e
8. If I Told You That I Love You feat. Wale
9. No Time feat. Jimmy October
10. Thank You Very Much feat. Sonny Digital







XL Middleton - Things Are Happening [2017 Mofunk Records]

プロデューサーやソングライターとして活動する一方、自身の名義でも多くの作品を残している、カリフォルニア州パサデナ出身のミュージシャン、XLミドルトン。

地元の友人と結成したラップ・グループ、クラウン・シティ・キングスからキャリアをスタートした彼は、2003年にエクストラ・ラージの名義で、アルバム『...aka Matthew Middleton』を発表してソロに転向。以後、80年代のディスコ・ミュージックを彷彿させる、アナログ・シンセサイザーを多用したダンス・サウンドで徐々にファンを広げ、オーケイ・プレイヤーズのような音楽メディアのみでなく、ワシントン・ポストやLAウィークリーのような一般メディアにも取り上げられるようになる。また、自身のレーベル、モー・ファンクを設立すると、女性シンガーのモニーカなどのレコードを配給。魅力的なディスコ音楽のレコードを発表するレーベルとして、日本でも知られるようになった。

今回のアルバムは、自身名義の録音としては1年ぶり15枚目となる作品。すべての曲で、彼自身がプロデュースと演奏、ヴォーカルを担当。ゲストには、2017年にモー・ファンクから発表した『Blackwavefunk』も記憶に新しいモニーカなどが参加。シンセサイザーのクールな音色を生かしたクールなダンス・ミュージックを聴かせている。

アルバムの1曲目は、リック・ジェイムスを思い起こさせる鋭いサウンドが格好良い”Never Have Too Many Freaks”。きらびやかなキーボードの音色と、精密なビートが光る伴奏をバックに歌う、彼の姿が印象的なダンス・ナンバーだ。ドライブの時に聴いたら気持ちよさそうな、疾走感が魅力的だ。

これに続く”Never Have Too Many Freaks”は、ハンドクラップの乱れ打ちのインパクトが強いイントロから、スタイリッシュな演奏へとつながる展開が面白いアップ・ナンバー。荒っぽいヴォーカルと洗練されたサウンドのコンビネーションがかっこいい。80年代に数多く見られた、強烈なインパクトと洗練された演奏を両立したディスコ音楽を連想させる良曲だ。

また、アリゾナ州タクソン出身のシンガー・ソングライター、ザッキー・フォース・ファンクを招いた ”Paradise Of Pavement”は、ブリブリと唸るようなベースの音が光るダンス・ナンバー。メイン・ヴォーカルを担当するザッキーの荒々しいテナー・ヴォイスと、絶妙なタイミングで合いの手を入れるXLのコンビネーションが素敵な佳曲だ。ボコーダーを使って、曲にメリハリをつけている点も見逃せない。彼同様、80年代のディスコ音楽を取り入れた作風で大ブレイクした、ディム・ファンクの音楽にも少し似た曲だ。

そして、モニーカをフィーチャーした”Better Friend”は、彼女のアルバムに入っていそうな、シックで上品な雰囲気の作品。低音を強調した伴奏をバックに、淡々と歌うXLが魅力の佳作。軽妙な掛け合いを聴かせるモニーカのヴォーカルが、曲に軽妙な雰囲気を与えている。実際に彼らのライブを観てみたいと思わせる、不思議な魅力のある曲だ。

西海岸を拠点に、80年代のディスコ・ミュージックからインスピレーションを得た音楽を作るミュージシャンというと、ディム・ファンクのことを思い出すが、古い楽器の音色を強調して、往年のサウンドを取り入れようとしたディム・ファンクに対し、彼の音楽は当時の音楽が持つ近未来的な雰囲気を現代の音楽に組み入れようとしているように映る。だからこそ、彼の音楽は懐かしさと新鮮さが同居した、斬新だけど親しみやすい作品になっているのだと思う。

ヨーロッパや日本でも根強い人気のディスコ・ミュージック。その魅力を、本場アメリカの人間が、現代のポピュラー音楽の主役であるヒップホップと融合することで、21世紀に蘇らせた面白い作品。当時の音楽を知る人には解釈の斬新さを、当時の音楽を知らない人にはサウンドの新鮮さを楽しんでほしい良作だ。

Producer
XL Middleton

Track List
1. Never Have Too Many Freaks
2. Look Who's Talkin'
3. Ice Level
4. Purple Sheets
5. Paradise Of Pavement feat. Zackey Force Funk
6. Better Friend feat. Moniquea
7. Prelude To The Invasion
8. Enjoy The Ride
9. Gotta Let You Go
10. They Don't Wanna Leave Me





THINGS ARE HAPPENING (CD)
XL MIDDLETON
MOFUNK RECORDS
2017-10-06

Ty Dolla Sign - Beach House 3 [2017 Hunnid, Taylor Gang, Atlantic]

2010年にYGの”Toot It and Boot It”にフィーチャーされたことで注目を集め、2012年にアトランティックと契約すると、同年にデビュー作となるミックス・テープ『Beach House』を発表。その後も多くのミックス・テープやシングルをリリースして、リスナーの耳目を惹きつけてきたカリフォルニア州サウス・ロス・アンジェルス出身のミュージシャン、タイ・ダラ・サインことタイロン・ウィリアム・グリフィンJr.。

父親はファンク・バンドのレイクサイドのメンバーだったという彼は、若いころはギャングのグループに入るなど、やんちゃな経歴を重ねてきたという。しかし、音楽に興味を持つようになると、次々に技術を習得。最後には自身の手でトラック制作からラップまで、一通りこなせるようになった。

そんな彼は、2015年に初のフル・アルバム『Free TC 』を発表。翌年にはフィフス・ハーモニーの”Work from Home”に参加し、多くの音楽賞を獲得。人気ミュージシャンの仲間入りを果たした。

本作は、彼にとって2年ぶり2枚目のフル・アルバム。前作に引き続き、アトランティックが配給を担当。プロデューサーにはマイク・ウィル・メイド・イットファレル・ウィリアムスといった売れっ子が参加。ゲスト・ミュージシャンとしてリル・ウェインやウィズ・カリファ、スクリレックスやダミアン・マーレイといった多彩な面々が顔を揃えた、豪華な作品になっている。

アルバムに先駆けてリリースされた”Love U Better”は、DJマスタードがプロデュースを担当、リル・ウェインとザ・ドリームをフィーチャーした作品。シンセサイザーを駆使した軽妙なビートと、二人の軽やかなラップの組み合わせが光る良曲だ。サビの部分を担当する、ザ・ドリームの甘酸っぱい歌声が、楽曲の爽やかな雰囲気を盛り上げている。

これに対し、ブレイクのきっかけとなった恩人YGを招いた”Ex”は、バッド・ボーイ発の男性ヴォーカル・グループ、112が96年に発表した大ヒット曲”Only You”のベース・ラインをサンプリングした(ヴォーン・メイソン・クルーの”Bounce, Rock, Skate, Roll”を再引用した)トラックが格好良いアップ・ナンバー。ビッグ・ショーンやオマリオンに楽曲を提供してきた、L&Fのボンゴ・バイ・ザ・ウェイが作ったトラックはダンス・ミュージックの古典を大胆に引用したものだが、シンセサイザーやリズム・マシーンを使った音楽が主流になった2017年には新鮮に映るから不思議だ。

また、マイク・ウィル・メイド・イットがプロデュースした”Dawsin’s Breek”は、シカゴ出身のシンガー・ソングライター、ジェレミーを起用したミディアム・ナンバー。重いドラムと、チキチキというハットの音を強調したトラップのビートの上で、個性豊かなラップを披露した面白い作品だ。重厚なビートに合わせて、音数を絞ったライムと、所々にメロディのついたフレーズを盛り込んだ器用なラップを披露する二人の姿が印象的だ。歌とラップを使う分けるスタイルがウリの、二人の持ち味が発揮されている。

そして、本作の収録曲でも異彩を放っているのがスクリレックスが制作に携わり、彼とダミアン・マーレイが客演した”So Am I”、EDM畑出身のクリエイターながら、ダミアン・マーレイ以外にも、ザ・ドアーズのメンバーやビッグバンのG-ドラゴンスヌープ・ドッグなど、様々なジャンルのミュージシャンとコラボレーションしてきたスクリレックスが作ったビートは、ゆったりとしたテンポのバス・ドラムの上に、パーカッションの音色を盛り込んだ、レゲエとヒップホップを混ぜ合わせたようなもの。温かい歌声でヴォーカルとラガマフィンを使い分けるダミアンを軸に据えた作品だ。普段はヒップホップをベースにしたパフォーマンスを披露することが多い、タイ・ダラ・サインとスクリレックスがレゲエの手法に挑戦した点も面白い。

今回のアルバムは、流行のサウンドを乗りこなしてきた彼らしい、新鮮さと親しみやすさが両立された佳作だ。個性豊かなプロデューサー達が作る多彩なトラックをきちんと乗りこなしつつ、硬派なイメージと大衆性を両立できるのは、地道な活動で鍛え上げた彼の高いスキルのおかげだろう。

次々と新しいスタイルが生まれ、消えゆくヒップホップ・シーンの中で、ゲームのルールに適応しつつ、独自性を発揮したタイ・ダラ・サインの高い技術が発揮された良質なアルバム。「2017年のヒップホップ」を1枚のCDに凝縮したような、充実した内容の作品だと思う。

Producer
Ty Dolla Sign, DJ Mustard, Mike Will Made It, Pharrell Williams, Skrillex, Poo Bear etc

Track List
1. Famous
2. Famous Lies
3. Love U Better feat. Lil Wayne & The-Dream
4. Ex feat. YG
5. Famous Excuses
6. Droptop In The Rain feat. Tory Lanez
7. Don’t Judge Me feat. Future & Swae Lee
8. Dawsin’s Breek feat.. Jeremih
9. Don’t Sleep On Me feat. Future & 24hrs
10. Stare feat. Pharrell Williams & Wiz Khalifa
11. Famous Friends
12. So Am I feat. Damian Marley & Skrillex
13. Lil Favorite feat. Madeintyo
14. In Your Phone with Lauren Jauregui
15. All The Time
16. Famous Amy
17. Side Effects
18. Famous Last Words
19. Message In A Bottle
20. Nate Howard Intro





Beach House 3
Ty Dolla $Ign
Atlantic
2017-11-07

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