ブラック・ミュージック千本ノック~SoulとR&Bと色々な音楽~

管理人が手に入れたR&Bのアルバム、1000枚の紹介文を書き続けるブログ その先に見えるものは天国か地獄か・・・

イギリス

Sam Smith - The Thrill of It All [2017 Capitol]

エイミー・ワインハウスやワン・ダイレクション、アデルやマーク・ロンソンなどの相次ぐ成功で、再び注目を集めているイギリス出身のミュージシャン達。その一人で、2015年にアデル以来、実に5年ぶりとなる、外国出身者によるグラミー賞のベスト・ニュー・アーティストを獲得したことも記憶に新しい、ロンドン出身のシンガー・ソングライター、サム・スミスことサミュエル・フレデリック・スミス。

仲立人の家に生まれた彼は、ジャズ・バンドやミュージカルを通して音楽の世界に足を踏み込む。その後、2012年にエレクトロ・バンド、ディスクロージャーの”Latch”のゲスト・ヴォーカルでレコード・デビューすると、その後は自身の名義で複数のシングルをリリース。ブラック・ミュージックを扱うイギリスのラジオ・チャンネル、BBCレディオ1エクストラでお披露目する機会を得るなど、ブルー・アイド・ソウル(白人が歌うソウル・ミュージック)の旗手として、広く知られるようになった。

そして、2014年には初のアルバム『In the Lonely Hour』をリリース。複数の国のヒット・チャートで1位を獲得し、全世界で1200万枚も売り上げる大ヒット作となる。また、同作からシングル・カットされた楽曲の多くが全英チャートを制覇、これらの実績を引っ提げて、日本を含む世界各地でライブを行うなど、英国を代表するシンガーの一人として、縦横無尽の活躍を見せてきた。

このアルバムは、前作から3年ぶりの新作となる2枚目のフル・アルバム。プロデュースは前作にも関わっているスティーヴ・フィッツモーリスやジミー・ネイプスなどが担当。それ以外にも、スターゲイトやティンバランドなどの有名プロデューサーが参加した、人気ミュージシャンらしい豪華な布陣になっている。

アルバムのオープニングを飾るのは、本作に先駆けてシングル・カットされた”Too Good At Goodbyes”。スターゲイトのミッケル・エリクセンがソングライティングで参加したこの曲は、生バンドのしっとりとした雰囲気が魅力的なトラックをバックに、じっくりと歌い込むサムの姿が印象的なミディアム・バラード。ニーヨやビヨンセに美しいメロディの楽曲を提供してきたエリクセンのセンスが加わることで、サムの洗練されたヴォーカルが際立った良曲だ。

これに対し、テイラー・スウィフトやジョン・レジェンドなどの作品を手掛けているアメリカの音楽プロデューサー、タイラー・ジョンソンを招いた”One Last Song”は、ディクシー・チックスやテイラー・スウィフトのような、カントリーやフォーク・ソングよりのミュージシャンの作品に近い、ゆったりとしたリズムが心地よい曲。ジャズやミュージカル音楽からキャリアをスタートしたサムだけあって、朴訥とした雰囲気のフォーク・ミュージックもきちんと乗りこなしている。

また、ロス・アンジェルスを拠点に活動するプロダクション・チーム、オーディブルズに所属するドミニク・ジョーダンと、コネティカット出身のソングライター、プーペーア制作に携わっているる”Burning”は、ピアノをバックに瑞々しい歌声を響かせるバラード、滑らかな歌声はマックスウェルやレミー・シャンドにも通じる洗練されたものだが、生楽器を多用したことでどこか柔らかい印象を受ける。

そして、本作の収録でも異彩を放っているのが、ティンバランドがプロデュースした”Pray”だ。ティンバランドに加え、彼と一緒にジョデシィのデヴァンテの元で腕を磨いてきたダリル・ピアソンが制作に携わったこの曲は、チキチキというハイハット以外は、シックに纏められた伴奏というティンバランドっぽくないスタイルの作品。しかし、ゴスペルの影響を感じさせるダイナミックで粘り強いヴォーカルや、荘厳でキャッチーなメロディなど、ジョデシィのような「歌」をウリにするアメリカのR&Bの影響が随所に盛り込まれている点は面白い。

今回のアルバムでは、前作に引き続き、往年のソウル・ミュージックを現代に合わせて再解釈した、美しいメロディと豊かな表現力、しなやかなアレンジが光る良曲を揃えている。スターゲイトやティンバランドなど、多くのヒットメイカーを起用して、彼らの持つ音楽への造詣の深さと、現代のブラック・ミュージックのトレンドを押さえる嗅覚の良さを取り入れつつ、ソウル・ミュージックがベースになっている自分のスタイルに昇華出来ているのは、スティーヴ・フィッツモーリスやジミー・ネイプスのような、前作にも携わってる面々と二人三脚でやっていることも大きいだろう。

斬新なサウンドや強烈な個性がなくても、高い歌唱力や演奏技術があれば、人の心を動かす音楽が作れることを再確認させてくれる良作。若い人には新鮮さを感じさせつつ、大人の鑑賞にも堪える稀有な作品だと思う。

Producer
Steve Fitzmaurice, Jimmy Napes, Timbaland  etc

Track List
1. Too Good At Goodbyes
2. Say It First
3. One Last Song
4. Midnight Train
5. Burning
6. Him
7. Baby, You Make Me Crazy
8. No Peace feat. YEBBA
9. Palace
10. Pray
11. Nothing Left For You
12. The Thrill Of It All
13. Scars
14. One Day At A Time



a

Thrill of It All
Sam Smith
Capitol
2017-11-03

Tawiah - Recreate [2017 Lina Limo]

2000年代の中頃から、コリーヌ・ベリー・レイやギルモッツなどのバック・コーラスで経験を積み、マーク・ロンソンのツアーにバンド・メンバーとして帯同するなどして実力をアピールしてきた、サウス・ロンドン出身のシンガー・ソングライター、タビアンこと、ビバーリー・タビアン。

演劇や舞踏を扱うブリット・スクールでパフォーミング・アートを学んだ彼女は、学校を卒業したあと、ジョディ・ミリナーとの共作で初の録音作品となるEP『In Jodi's Bedroom』を発表。ソウル・ミュージックに電子音楽やヒップホップを癒合した作品が評価され、ジャイルズ・ピーターソンが主催する音楽賞で新人賞を獲得している。

その後も、自身名義の作品をリリースしながら、エリック・ロウやブラッド・オレンジ、ポール・オークンフォードやティエストなどの作品に客演。BBCのドキュメンタリー番組にも取り上げられるなど、ジャンルの枠にとらわれない活躍で、着実に知名度を上げていった。

このアルバムは、自身名義の作品としては2011年のシングル『Sweet Me』以来、約6年ぶりとなる新曲。彼女の作品では初めて、インディー・レーベルが配給を担当している。また、プロデューサーにはロックバンド、ヘジラのメンバーで、エイミー・ワインハウスやマシュー・ハーバートなどの作品にも携わっているサム・ベスタを起用。彼女自身も積極的にペンを執り、密度の濃い音楽を聴かせている。

イントロの後に収められた本作の実質的な1曲目”Queens”は、コンピュータを多用した抽象的なサウンドと抑揚を抑えた淡白な歌唱が印象的なミディアム・ナンバー。ピアノやギターの演奏を混ぜ込んで、アコースティックな音楽のように聴かせつつ、人間の演奏ではあまり用いない変則的なビートで楽曲に斬新な印象を与えている。

続く”Don't Hold Your Breath”は、ヘジラのアレックス・リーヴやパーソナル・ライフのネイザン・アレンなどを招き、バンド演奏によるバック・トラックを採用したミディアム・ナンバー。ドラム・ロールを多用した重々しいビートをバックに、繊細な声質を活かした慎重な歌唱を聴かせている。生演奏を取り入れつつ、電子音楽のようなシンプルで先鋭的な音楽に聴かせるスキルは圧巻のものだ。

また、これに続く”Falling Short”は、本作の収録曲で唯一、楽曲制作の全てを彼女一人で行ったもの。 電子音を組み合わせたトラックは、デビュー作の収録曲を彷彿させる。テンポや調を随所で変える奇抜なバック・トラックを器用に乗りこなしつつ、ビートにはヒップホップの、上物にはエレクトロ・ミュージックの、ヴォーカルにはソウル・ミュージックのエッセンスを取り入れ、独特の作品に落とし込んでいる。

そして、本作の最後を飾る”Move With Me”は、彼女の作品では珍しい、シンプルなアレンジでメロディをじっくりと聴かせるタイプの曲。シャーデー・アデューを思い起こさせる透き通った歌声を、流麗なメロディに乗せて丁寧に届ける姿が光る曲だ。

今回の作品では、実質4曲というEPの形態を取りながら、彼女の先鋭的な音楽センスや、ヒップホップやエレクトロ・ミュージックといった、様々な音楽への深い造形、そして、しなやかな歌声を活かした繊細な表現が高いレベルで融合している。その作風は、サンファホセ・ジェイムスといったジャズや電子音楽とソウル・ミュージックを組み合わせたスタイルで、黒人音楽に新しい解釈を加えたアーティストの系譜を継いだものだといっても過言ではない。その中でも、彼女の場合、ヒップホップやソウル・ミュージックではあまり用いない奇抜なアレンジも積極的に取り入れつつ、メロディをしっかりと聴かせている点が大きな特徴だと思う。

色々なスタイルのミュージシャンが混在し、融合し、互いに刺激を与えあいながら新しいスタイルを生み続けているイギリスのブラック・ミュージック界隈を象徴する斬新な作品。R&Bやヒップホップに野蛮とか古臭いというイメージを持っている人にこそ聴いてほしい。

Producer
Sam Beste, Tawiah

Track List
1. Recreate Intro
2. Queens
3. Don't Hold Your Breath
4. Falling Short
5. Move With Me




Recreate
Tawiah
Imports
2017-08-18

Toddla T - Foreign Light [2017 Steeze]

14歳の頃からDJとして活動し、16歳になるとハイスクールを辞めて専業のミュージシャンに転身した、サウスヨークシャー州シェフィールド出身のDJでトラックメイカーのトドラTことトーマス・マッケンジー・ベル。

2007年にロンドンの1965レコーズと契約すると、同年に初のEP『Do U Know』を発表。ダンスホール・レゲエとエレクトロ・ミュージックを融合したサウンドで話題になった。その後も、ルーツ・マヌーヴァなどを起用した初のフル・アルバム『Skanky Skanky』を2009年にリリースするなど、精力的に活動していた彼は、2011年にはクラブ・ミュージックの名門、ニンジャ・チューンと契約。2枚目のフルアルバム『Watch Me Dance』を発売する一方、ジャマーやリトル・ドラゴンの作品をプロデュース、リミックスするなど、活躍の場を広げていた。

今回のアルバムは、2012年の『Watch Me Dance: Agitated By Ross Orton & Pipes 』から実に5年ぶりとなる新作(といっても、シングルは継続的に発売していたが)。自身のレーベル、スティーズからのリリースだが、ほぼすべての曲で”Set It Off”などのヒット曲を手掛けたことでも知られているブルックリン出身のシンガー・ソングライター、アンドレア・マーティンがマイクを執った、キャリア初の本格的なヴォーカル作品になっている。

本作の1曲目は、2017年5月に発売された先行シングル”Blackjack21”。ダフト・パンクの” Get Lucky”を連想させる、強靭なベースの演奏と、芯の強い歌声、そしてしなやかなメロディの一体感が心地よいアップ・ナンバーだ。シックやシャラマーといった80年代に活躍したディスコ・バンドの影響を感じさせるが、シンセサイザーを多用して、当時の音楽以上に洗練された雰囲気に纏め上げるなど、随所で差別化を図っている。

また、アンドレアに加えてバーミンガム出身のラッパー、ステフロン・ドンを起用した”Beast”は、重く、陰鬱な音色のシンセサイザーを効果的に使ったスリリングなアップ・ナンバー。ディジー・ラスカルのようなグライムをベースにしつつ、ビートの音圧を抑えて、ポップスっぽく聴かせている点が面白い。彼の器用な一面が垣間見える佳曲だ。

それ以外の曲にも、BBCのRadio1でラジオ・パーソナリティとして活躍するベンジBがミックスで参加した”Always”など、魅力的な作品は多い。この曲ではアンドレア・マーティンに加えて、レゲエDJのシルキ・ワンダをフィーチャー。80年代終盤に一世を風靡したリディム、スレンテンを思い起こさせる重低音を強調したビートの上で、朗々と声を張り上げるアンドレアと柔らかい声で言葉を繋ぐシルキのコンビネーションがのんびりとした雰囲気を醸し出している。往年のダンスホール・レゲエをベースにしつつ、現代のクラブ・ミュージックと一緒に聴いても違和感を感じさせないミックス技術にも注目してほしい。

そして、本作の最後を締める”Magnet ”はジェイソン・ベックが制作に参加したダンス・チューン。アンドレア・マーティンの力強い歌声で幕を開ける手法は、ロリータ・ハロウェイやグロリア・ゲイナーのようなディスコ音楽の歌姫を連想させる。しかし、シンプルな四つ打ちのビートと、太く温かい音色のシンセサイザーを使った伴奏は、ムーディーマンやルイ・ヴェガのようなハウス・ミュージックっぽくも聴こえる。往年のディスコ・ミュージックの高級感を残しつつ、気鋭のミュージシャンらしい新鮮な音楽に落とし込むトドラTのセンスが炸裂した面白い曲だ。

デビュー作でもダンスホール・レゲエやグライムを取り入れた楽曲を披露していたように、一つのジャンルにとらわれない柔軟な感性と広い視野が持ち味のトドラTだが、その作風は本作でも変わらない。しかし、本作は過去の作品とは異なり、アンドレア・マーティンという確かな実力を持ったシンガーをフロントに据えたからか、ディスコ音楽やレゲエ、ハウスといった多彩なスタイルを取り入れた「女性ヴォーカルの黒人音楽」という、クラブ・ミュージックには縁遠い人にも楽しめる作品になっている。

ブラック・ミュージックを音楽のいちジャンルとして親しんできた彼らしい、様々なスタイルの要諦を押さえて、自分の音楽の糧にした完成度の高いアルバム。懐かしさと新鮮さを一つの作品に閉じ込めた、先鋭的なクリエイターらしい音作りが堪能できる良作だ。

Producer
Benji B, Toddla T etc

Track List
1. Blackjack21 feat. Andrea Martin
2. Won't Admit It's Love feat. Andrea Martin, Casisdead
3. Beast feat. Andrea Martin, Stefflon Don
4. Ungrateful feat. Andrea Martin
5. Foreign Light feat. Andrea Martin, Coco
6. Foundation feat. Addis Pablo
7. Always feat. Andrea Martin, Silkki Wonda
8. Tribute feat. Wiley
9. Faithful Skit feat. Andrea Martin
10. Magnet feat. Andrea Martin



a

FOREIGN LIGHT
TODDLA T
BELIE
2017-07-28

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