ブラック・ミュージック千本ノック~SoulとR&Bと色々な音楽~

管理人が手に入れたR&Bのアルバム、1000枚の紹介文を書き続けるブログ その先に見えるものは天国か地獄か・・・

イギリス

Tawiah - Recreate [2017 Lina Limo]

2000年代の中頃から、コリーヌ・ベリー・レイやギルモッツなどのバック・コーラスで経験を積み、マーク・ロンソンのツアーにバンド・メンバーとして帯同するなどして実力をアピールしてきた、サウス・ロンドン出身のシンガー・ソングライター、タビアンこと、ビバーリー・タビアン。

演劇や舞踏を扱うブリット・スクールでパフォーミング・アートを学んだ彼女は、学校を卒業したあと、ジョディ・ミリナーとの共作で初の録音作品となるEP『In Jodi's Bedroom』を発表。ソウル・ミュージックに電子音楽やヒップホップを癒合した作品が評価され、ジャイルズ・ピーターソンが主催する音楽賞で新人賞を獲得している。

その後も、自身名義の作品をリリースしながら、エリック・ロウやブラッド・オレンジ、ポール・オークンフォードやティエストなどの作品に客演。BBCのドキュメンタリー番組にも取り上げられるなど、ジャンルの枠にとらわれない活躍で、着実に知名度を上げていった。

このアルバムは、自身名義の作品としては2011年のシングル『Sweet Me』以来、約6年ぶりとなる新曲。彼女の作品では初めて、インディー・レーベルが配給を担当している。また、プロデューサーにはロックバンド、ヘジラのメンバーで、エイミー・ワインハウスやマシュー・ハーバートなどの作品にも携わっているサム・ベスタを起用。彼女自身も積極的にペンを執り、密度の濃い音楽を聴かせている。

イントロの後に収められた本作の実質的な1曲目”Queens”は、コンピュータを多用した抽象的なサウンドと抑揚を抑えた淡白な歌唱が印象的なミディアム・ナンバー。ピアノやギターの演奏を混ぜ込んで、アコースティックな音楽のように聴かせつつ、人間の演奏ではあまり用いない変則的なビートで楽曲に斬新な印象を与えている。

続く”Don't Hold Your Breath”は、ヘジラのアレックス・リーヴやパーソナル・ライフのネイザン・アレンなどを招き、バンド演奏によるバック・トラックを採用したミディアム・ナンバー。ドラム・ロールを多用した重々しいビートをバックに、繊細な声質を活かした慎重な歌唱を聴かせている。生演奏を取り入れつつ、電子音楽のようなシンプルで先鋭的な音楽に聴かせるスキルは圧巻のものだ。

また、これに続く”Falling Short”は、本作の収録曲で唯一、楽曲制作の全てを彼女一人で行ったもの。 電子音を組み合わせたトラックは、デビュー作の収録曲を彷彿させる。テンポや調を随所で変える奇抜なバック・トラックを器用に乗りこなしつつ、ビートにはヒップホップの、上物にはエレクトロ・ミュージックの、ヴォーカルにはソウル・ミュージックのエッセンスを取り入れ、独特の作品に落とし込んでいる。

そして、本作の最後を飾る”Move With Me”は、彼女の作品では珍しい、シンプルなアレンジでメロディをじっくりと聴かせるタイプの曲。シャーデー・アデューを思い起こさせる透き通った歌声を、流麗なメロディに乗せて丁寧に届ける姿が光る曲だ。

今回の作品では、実質4曲というEPの形態を取りながら、彼女の先鋭的な音楽センスや、ヒップホップやエレクトロ・ミュージックといった、様々な音楽への深い造形、そして、しなやかな歌声を活かした繊細な表現が高いレベルで融合している。その作風は、サンファホセ・ジェイムスといったジャズや電子音楽とソウル・ミュージックを組み合わせたスタイルで、黒人音楽に新しい解釈を加えたアーティストの系譜を継いだものだといっても過言ではない。その中でも、彼女の場合、ヒップホップやソウル・ミュージックではあまり用いない奇抜なアレンジも積極的に取り入れつつ、メロディをしっかりと聴かせている点が大きな特徴だと思う。

色々なスタイルのミュージシャンが混在し、融合し、互いに刺激を与えあいながら新しいスタイルを生み続けているイギリスのブラック・ミュージック界隈を象徴する斬新な作品。R&Bやヒップホップに野蛮とか古臭いというイメージを持っている人にこそ聴いてほしい。

Producer
Sam Beste, Tawiah

Track List
1. Recreate Intro
2. Queens
3. Don't Hold Your Breath
4. Falling Short
5. Move With Me




Recreate
Tawiah
Imports
2017-08-18

Toddla T - Foreign Light [2017 Steeze]

14歳の頃からDJとして活動し、16歳になるとハイスクールを辞めて専業のミュージシャンに転身した、サウスヨークシャー州シェフィールド出身のDJでトラックメイカーのトドラTことトーマス・マッケンジー・ベル。

2007年にロンドンの1965レコーズと契約すると、同年に初のEP『Do U Know』を発表。ダンスホール・レゲエとエレクトロ・ミュージックを融合したサウンドで話題になった。その後も、ルーツ・マヌーヴァなどを起用した初のフル・アルバム『Skanky Skanky』を2009年にリリースするなど、精力的に活動していた彼は、2011年にはクラブ・ミュージックの名門、ニンジャ・チューンと契約。2枚目のフルアルバム『Watch Me Dance』を発売する一方、ジャマーやリトル・ドラゴンの作品をプロデュース、リミックスするなど、活躍の場を広げていた。

今回のアルバムは、2012年の『Watch Me Dance: Agitated By Ross Orton & Pipes 』から実に5年ぶりとなる新作(といっても、シングルは継続的に発売していたが)。自身のレーベル、スティーズからのリリースだが、ほぼすべての曲で”Set It Off”などのヒット曲を手掛けたことでも知られているブルックリン出身のシンガー・ソングライター、アンドレア・マーティンがマイクを執った、キャリア初の本格的なヴォーカル作品になっている。

本作の1曲目は、2017年5月に発売された先行シングル”Blackjack21”。ダフト・パンクの” Get Lucky”を連想させる、強靭なベースの演奏と、芯の強い歌声、そしてしなやかなメロディの一体感が心地よいアップ・ナンバーだ。シックやシャラマーといった80年代に活躍したディスコ・バンドの影響を感じさせるが、シンセサイザーを多用して、当時の音楽以上に洗練された雰囲気に纏め上げるなど、随所で差別化を図っている。

また、アンドレアに加えてバーミンガム出身のラッパー、ステフロン・ドンを起用した”Beast”は、重く、陰鬱な音色のシンセサイザーを効果的に使ったスリリングなアップ・ナンバー。ディジー・ラスカルのようなグライムをベースにしつつ、ビートの音圧を抑えて、ポップスっぽく聴かせている点が面白い。彼の器用な一面が垣間見える佳曲だ。

それ以外の曲にも、BBCのRadio1でラジオ・パーソナリティとして活躍するベンジBがミックスで参加した”Always”など、魅力的な作品は多い。この曲ではアンドレア・マーティンに加えて、レゲエDJのシルキ・ワンダをフィーチャー。80年代終盤に一世を風靡したリディム、スレンテンを思い起こさせる重低音を強調したビートの上で、朗々と声を張り上げるアンドレアと柔らかい声で言葉を繋ぐシルキのコンビネーションがのんびりとした雰囲気を醸し出している。往年のダンスホール・レゲエをベースにしつつ、現代のクラブ・ミュージックと一緒に聴いても違和感を感じさせないミックス技術にも注目してほしい。

そして、本作の最後を締める”Magnet ”はジェイソン・ベックが制作に参加したダンス・チューン。アンドレア・マーティンの力強い歌声で幕を開ける手法は、ロリータ・ハロウェイやグロリア・ゲイナーのようなディスコ音楽の歌姫を連想させる。しかし、シンプルな四つ打ちのビートと、太く温かい音色のシンセサイザーを使った伴奏は、ムーディーマンやルイ・ヴェガのようなハウス・ミュージックっぽくも聴こえる。往年のディスコ・ミュージックの高級感を残しつつ、気鋭のミュージシャンらしい新鮮な音楽に落とし込むトドラTのセンスが炸裂した面白い曲だ。

デビュー作でもダンスホール・レゲエやグライムを取り入れた楽曲を披露していたように、一つのジャンルにとらわれない柔軟な感性と広い視野が持ち味のトドラTだが、その作風は本作でも変わらない。しかし、本作は過去の作品とは異なり、アンドレア・マーティンという確かな実力を持ったシンガーをフロントに据えたからか、ディスコ音楽やレゲエ、ハウスといった多彩なスタイルを取り入れた「女性ヴォーカルの黒人音楽」という、クラブ・ミュージックには縁遠い人にも楽しめる作品になっている。

ブラック・ミュージックを音楽のいちジャンルとして親しんできた彼らしい、様々なスタイルの要諦を押さえて、自分の音楽の糧にした完成度の高いアルバム。懐かしさと新鮮さを一つの作品に閉じ込めた、先鋭的なクリエイターらしい音作りが堪能できる良作だ。

Producer
Benji B, Toddla T etc

Track List
1. Blackjack21 feat. Andrea Martin
2. Won't Admit It's Love feat. Andrea Martin, Casisdead
3. Beast feat. Andrea Martin, Stefflon Don
4. Ungrateful feat. Andrea Martin
5. Foreign Light feat. Andrea Martin, Coco
6. Foundation feat. Addis Pablo
7. Always feat. Andrea Martin, Silkki Wonda
8. Tribute feat. Wiley
9. Faithful Skit feat. Andrea Martin
10. Magnet feat. Andrea Martin



a

FOREIGN LIGHT
TODDLA T
BELIE
2017-07-28

Mr Jukes - God First [2017 Island]

2005年に結成。2009年に初のアルバム『I Had the Blues But I Shook Them Loose』でメジャー・デビューを果たした、イギリスのロンドン発の4人組ロック・バンド、ボンベイ・バイシクル・クラブ。

ロックやフォーク・ミュージックをベースに、エレクトロ・ミュージックや色々な国の音楽を混ぜ合わせた個性的な作風で注目を集めた彼らは、その後も多くのステージを経験し、コンスタントに新作を発表。2017年までに4枚のアルバムと複数のシングルをリリースし、うち3枚を全英アルバム・チャートの10位以内に送り込み、2014年の『So Long, See You Tomorrow』は同チャートの1位を獲得している。

このバンドでヴォーカルやギターの他、楽曲制作も担当しているのが、ジャック・ステッドマン。フォーク・ミュージックやエレクトロ・ミュージックだけでなく、ジャズやソウル・ミュージックにも造詣の深い彼が新たに立ち上げた音楽プロジェクトが、このミスター・ジュークスだ。

ブラック・ミュージックを含め、幅広い音楽に慣れ親しんできた彼が手掛ける楽曲には、2017年のグラミー賞で複数の部門にノミネートしたことも記憶に新しいBJザ・シカゴ・キッドや、ダップトーン一派の作品で有名なチャールズ・ブラッドリー、多くの作品をヒット・チャートの上位に送り込み、数多くの音楽賞を獲得してきたレイラ・ハザウェイなど、多くのゲスト・ミュージシャンが参加。イギリスのロック・シーンで成功を収めた彼のフィルターを通した、独特のソウル・ミュージックを披露している。

アルバムを再生して最初に目につくのは、BJザ・シカゴ・キッドをフィーチャーしたシングル”Angels / Your Love”だ。アーチー・シェップを思い起こさせる、渋い音色のサックスの演奏で幕を開けるこの曲は、三拍子のビートや子供の声のコーラスを絡めた演奏が不思議な雰囲気を醸し出す曲。色々な拍子のリズムを使い、コーラスを混ぜ込んだ作風はアーチー・シェップのアルバム『Attica Blues』にも似ている。中盤から登場する、マーヴィン・ゲイを連想させるBJの艶めかしいファルセットも格好良い。

これ以外の曲では、チャールズ・ブラッドリーをゲストに呼んだ”Grant Green”も面白い。ブルー・ノート・レコードに多くのヒット作を残しているギタリスト、グラント・グリーンによるジェイムズ・ブラウンの同名曲のカヴァー”Ain't It Funky Now”をサンプリングしたファンキーなアップ・ナンバーは、元ネタになったジェイムズ・ブラウンを彷彿させる、汗と熱気が飛び交うチャールズのダイナミックなパフォーマンスが格好良い曲。グラント・グリーンのヴァージョンを下敷きにした、スマートで洗練されたトラックのおかげで、ワイルドで力強いジェイムズのヴァージョンとは一味違う、スタイリッシュな演奏になっている。

また、ジャマイカのキングストン出身のホレス・アンディと、アメリカのニューヨーク出身のラップ・グループ、デ・ラ・ソウルを招いた”Leap of Faith”は、ドラムの乱れ打ちと、華やかな伴奏が格好良い、ヒップホップ色の強い曲。絹のように滑らかなファルセットを響かせるホレスのヴォーカルと、デ・ラ・ソウルの軽妙なラップのコンビネーションが魅力の、明るくゆったりとした雰囲気のミディアム・ナンバーだ。ヒップホップのビートやラヴァーズ・レゲエのヴォーカルを取り入れつつ、優雅なソウル・ナンバーに落とし込むセンスが面白い曲だ。

そして、レイラ・ハザウェイを起用した”From Golden Stars Comes Silver Dew”は、彼女の作品を思い起こさせるしなやかなメロディと、ヒップホップのトラックを組み合わせた、奇抜な作品。レコードから抜き出したような温かい音色のビートを使った、緩やかなビートと、しなやかな歌声の組み合わせが心地よいミディアム・ナンバーだ。レイラの父、ダニー・ハザウェイを連想させる力強く、洗練された歌声と、90年代以降のブラックミュージックに欠かせないものとなったヒップホップを組み合わせた発想が光っている。

今回のアルバムは、既に確固たる地位を確立している実力派シンガーを揃え、マーク・ロンソンやダフト・パンクの成功で、欧米を中心に再び注目を往年のソウル・ミュージックの雰囲気を現代に蘇らせた意欲作だと思う。しかし、彼の面白いところは、シンセサイザーやサンプラーなどの新しい楽器を取り入れつつ、それを使って、昔の音楽の雰囲気を演出しているところだろう。クラブミュージック畑出身のダフト・パンクやマーク・ロンソンに比べ、イギリスのロック・バンド出身という、アメリカの黒人音楽とは適度に距離を置ける立場にいること、ボビー・ウーマックをプロデュースしたデーモン・アルバーンのように、斬新な作品に拘らなくてもよい位置にいることが、斬新さと懐かしさ、現代的なサウンドとソウル・ミュージックのバランスを適度に取れた、絶妙な立ち位置に、彼の作品を落とし込んでいるのかもしれない。

ヒップホップ畑出身のメイヤー・ホーソンとは一味異なる、ロック畑出身のジャックの持ち味が発揮された、懐かしいようで新しいソウル作品。現代もブラック・ミュージックに多くの影響を与え続ける、ソウル・ミュージックの醍醐味を若者向けに咀嚼した、「初めての1枚」に最適の佳作だ。

Producer
Jack Steadman

Track List
1. Typhoon
2. Angels / Your Love feat. BJ The Chicago Kid
3. Ruby
4. Somebody New feat. Elli Ingram
5. Grant Green feat. Charles Bradley
6. Leap of Faith feat. De La Soul & Horace Andy
7. From Golden Stars Comes Silver Dew feat. Lalah Hathaway
8. Magic
9. Tears feat. Alexandria
10. When Your Lights Go Out feat. Lianne La Havas





GOD FIRST / LTD.DIGIPA
MR JUKES
ISLAN
2017-07-14

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