ブラック・ミュージック千本ノック~SoulとR&Bと色々な音楽~

管理人が手に入れたR&Bのアルバム、1000枚の紹介文を書き続けるブログ その先に見えるものは天国か地獄か・・・

イギリス

Denai Moore - We Used To Bloom [2017 Because Music]

2013年に4曲入りのEP『Saudade』でレコード・デビュー。翌年にはイギリス出身の音楽プロデューサー、Sbtrktのアルバム『Wonder Where We Land』に収録された”The Light”に客演したことで注目を集め、2016年にはアメリカのソウル・ミュージシャン、クリスチャン・アンドリュー・ベリシャージによるユニットJMSNのアルバム『It Is.』に収められている”Fantasize”に客演したことも話題になった、ジャマイカ生まれロンドン育ちのシンガー・ソングライター、デナイ・ムーア。

2014年に初のフル・アルバム『Elsewhere』をリリースしている彼女にとって、3年ぶり2枚目のアルバムが本作。前作同様、収録曲のほぼ全てで彼女がペンを執った意欲作になっている。

本作に先駆けて公開された”Trickle”は、ドラムの音圧を抑え、シンセサイザーを中心に据えた伴奏の上で、訥々と歌い上げる姿が印象的なミディアム・ナンバー。使っている音色こそ違うが、シャーデーやインディア・アリーにも通じる、さわやかなメロディが光る佳曲だ。

これに対し、”Leave It Up To You”は、電子音を強調したトラックと、繊細なヴォーカルのコンビネーションが魅力的なミディアム・ナンバー。電子音楽とソウル・ミュージックを融合させた作品といえば、サンファケイトラナダを思い出すが、彼らの楽曲と比べると音数は少なくシンプルで、ヴォーカルを丁寧に聴かせている。電子音楽のエッセンスを巧みに取り込んで、先鋭的なサウンドとシンプルだが味わい深いメロディを両立した、面白いソウル・ミュージックだ。

そして、”Does It Get Easier?”はシンセサイザーを駆使した幻想的なサウンドと、彼女の透き通った歌声の組み合わせが心地よいミディアム・ナンバー。シンセサイザーを駆使して、涼しげな雰囲気のR&Bにまとめ上げたこの曲は、シザシドの作品にも少し似ている。R&Bやヒップホップが好きな人は、この曲から聴いてほしい。アメリカのR&Bを意識しつつ、彼女の持ち味を活かした楽曲に落とし込んでいる。

そして、本作の収録曲では唯一、フィーチャリング・アーティストを起用した”All The Way”はロンドン生まれのシンガー・ソングライター、クワブスを起用したスロー・ナンバー。シンセサイザーを多用した重厚で荘厳なサウンドの上で、細くしなやかな歌声を響かせるデナイと、ジェラルド・レバートを彷彿させる、太く柔らかいヴォーカルを披露するクワブスのコンビネーションが光っている。クワブスのグラマラスなヴォーカルが、デナイの繊細な声の魅力を引き出しつつ、楽曲にソウルフルな雰囲気を与えている。

彼女の音楽の面白いところは、ソウル・ミュージックやR&Bをベースにしつつ、ロックや電子音楽の手法を取り入れ、聴きやすさと斬新さを両立している点だと思う。その手法はR&Bやヒップホップを軸に、色々な音楽を取り込んで、独自の音楽を構築するインターネットに通じるものがある。

R&Bの可能性を切り開いた、新鮮さと普遍性を両立したアルバム。マックスウェルアリシア・キーズのように、幅広い年代の人々から長気に渡って親しまれそうな、味わい深い音楽だ。

Track List
1. Let It Happen
2. Desolately Devoted
3. Trickle
4. Twilight
5. Do They Care?
6. Leave It Up To You
7. Bring You Shame
8. Does It Get Easier?
9. Poor Person
10. All The Way feat. Kwabs





We Used to Bloom
Denai Moore
Because Music / Sire
2017-06-23

Ella Mai - Ready [2017 Interscope Records]

サウスウエスト・ロンドンに生まれ、12歳の時にニューヨークへ移住。高校卒業とともに再度渡英したという、異色の経歴を持つシンガー、エラ・マイ。高校卒業後は、3人組のヴォーカル・グループを結成。イギリスの人気オーディション番組「Xファクター」に挑戦するが、あえなく落選。その後は、グループを解散し、彼女はソロに転向。音楽配信サイトに自作曲を投稿するなど、地道な活動を続けていた。

そんな彼女の活動が、タイガの”Rack City”やジェレミーの”Don't Tell 'Em”などを手掛けてきた、ロス・アンジェルス出身のプロデューサー、DJマスタードの目に留まり、2016年に彼が経営する10サマーズと契約。同じ年に6曲入りのEP『10Times』を発表して、配信限定だがレコード・デビューを果たした。

今回のアルバムは、2016年に発表された2作目のEP『Change』から、僅か3か月という短い間隔でリリースされた、彼女にとって通算3枚目のEP。過去2作品同様、配信限定のリリースだが、ユニヴァーサル系列のインタースコープが配給し、プロデュースはDJマスタードが担当。ソングライターには、ブリトニー・スピアーズの作品にも携わっているタライ・ライリーや、ジル・スコットの曲も書いているジャミール・ロバーツが参加し、彼女も全ての曲でペンを執っているなど、有名アーティストのアルバムにも見劣りしない力作になっている。

アルバムのオープニングを飾る”Boo'd Up”は、80年代のベイビーフェイスの作品を思い起こさせる、煌びやかな音色のシンセサイザーを使ったトラックと、彼女の甘い歌声を活かしたロマンティックなメロディが印象的なミディアム・ナンバー。レコーディング時点で27歳だった彼女の若く溌剌とした歌声と、色っぽい歌唱が光っている。80年代、90年代っぽい音色を使いながら、現代風の爽やかなメロディを取り入れている点も面白い。

続く”Breakfast in Bed”は、リアーナやシャンテ・ムーア等の作品に携わってきた、ニック・アウディノが参加した作品。トラックに使っている音色は”Breakfast in Bed”と似ているが、伴奏の音数を絞って、ビートを強調した、ヒップホップに近い曲。DJマスタードのトラック制作技術と、ニック達の美しいメロディを生むスキルが合わさった、心地よいミディアム・ナンバーだ。

そして、”Nobody Else”は自身の声をサンプリングしたフレーズから始まるミディアム・ナンバー。地声を多用した落ち着いた雰囲気のヴォーカルが、メアリーJ.ブライジやリアーナを思い起こさせる。ゴードン・チェンバースの手による流麗なメロディも、彼女のしなやかな歌声の魅力を引き出している。

また、ロー・ジェイムズやマイリー・サイラスなどの作品にかかわってきた、サミュエル・ジーンがソングライターに名を連ねている”My Way”は、煌びやかなシンセサイザーの音色を使ったロマンティックなミディアム・ナンバー。一方、”Breakfast in Bed”でも作者に名を連ねている、ニック・アウディノがペンを執った”Makes Me Wonder”は甘酸っぱいメロディが印象的なミディアム・ナンバー。彼女の若々しい一面が堪能できる佳曲だ。

そして、本作のハイライトが、アッシャーやメアリーJブライジなどの作品にも参加してきた、ロナルド・コルソンが制作にかかわっている”Anymore”だ。ピアノの音色を効果的に使った切ない雰囲気のトラックと、激しい感情をむき出しにしたダイナミックなヴォーカルを組み合わせた、壮大なバラードだ。

今回のEPでも、過去の2作品同様、しなやかな歌声と、地声からファルセットまで、フルに使った表情豊かなヴォーカルが堪能できる。そのスタイルは、モニカやブランディのような、スマートな歌唱と、力強い歌声を売りにする女性シンガー達を連想させる。また、ソングライターにもゴードン・チェンバースのような、美しいメロディを生み出してきた作家を並べ、トラックもヴォーカルやメロディを引き立てることに気を配った、シンブルで洗練されたものになっている。この「しなやかな歌」を聴かせることに力を注いだことが、若手シンガーの作品でありながらロマンティックで落ち着いた雰囲気と、一本筋の通った軸のようなものを感じさせているのだと思う。

ビヨンセやリアーナとはスタイルが違うが、「歌の魅力」で勝負している稀有な作品。恵まれた容姿と強靭な歌声を兼ね備えた彼女。90年代のブランディやモニカ、2000年以降のジェニファー・ハドソンやクリセット・ミッシェルが好きな人はぜひ聞いて欲しい、クールなヴォーカルとビジュアルが魅力の女性シンガーだ。

Producer
DJ Mustard

Track List
1. Boo'd Up
2. Breakfast in Bed
3. Nobody Else
4. My Way
5. Makes Me Wonder
6. Anymore



Ready [Explicit]
Universal Music LLC
2017-02-26

Bastien Keb - 22.02.85 [2017 First Word Records]

2012年ごろに音楽活動を開始。自作曲をインターネット上で発表する一方、ライブも精力的にこなしてきた、イギリスのロイヤル・レミントン・スパ出身のクリエイター、バスティン・ケブことセブ・ジョーンズ。

2015年には、初のアルバム『Dinking In The Shadows Of Zizou』を発表。電子音楽とヒップホップやファンクを混ぜた独特の作風が、新しい音楽に敏感な人々の間で注目を集めた。

その後も、フランスのプロデューサー、クワイエット・ドーンや、イギリスのファンク・バンド、ペーパータイガー等の作品で、楽曲制作やリミックスを担当。特に、ペーパー・タイガーの”Weight In Space ‎”をリミックスしたものは、同作の発売元であるイギリスのレーベルワー・ワー・45sのコンピレーションにも収められるなど、好評を博した。

今回のアルバムは、2年ぶりの新作となる2枚目のオリジナル・アルバム。影響を受けたミュージシャンとして、トム・ウェイツやサン・ラ、アリス・コルトレーンを上げ、多くの映像作品に親しんできたという、芸術への造形と鋭い嗅覚と、電子楽器だけでなく、ギターやフルートなど、色々な楽器を操る技術を兼ね備えた彼だけあって、本作でも電子楽器の先鋭的なサウンドと、生楽器の柔らかい音色を組み合わせた、ソウルフルな音楽を聴かせている。

アルバムの実質的な1曲目である”Pick Up”は、ジェイ・ディラを彷彿させる、微妙な揺らぎが心地よいビートと、サックスやキーボードの温かい音色が混ざり合ったトラックの上で、ファンカデリックを彷彿させる幻想的なヴォーカルを聴かせるミディアム・ナンバー。一つ一つの楽器の音を微妙にずらし、聴き手の感覚を揺さぶるテクニックが心憎い。

これに対し、アルバムに先駆けて公開されたもう1つの曲である”Cashmere”は、シンセ・ドラムの重い音色を使って、ダブを連想させるゆったりとしたビートを組んだミディアム・ナンバー。エフェクターを多用して、幻想的な雰囲気を演出しつつ、きらきらとしたシンセサイザーの音色を混ぜ込むことで、輪郭をはっきりさせている点が面白い。

また、”Night Hustle”はシンセ・ドラムやアナログ・シンセを使った、モダンなトラックで始まったと思いきや、急にヒップホップのビートに切り替わる奇想天外な曲。サーラ・クリエイティブ・パートナーズを彷彿させる、生音と電子楽器を組み合わせたソウルフルなトラックと、映画『死刑台のエレベーター』のような起伏のある展開が印象的な曲だ。

そして、本作の収録曲で唯一、ゲスト・ミュージシャンを起用した”Fit Rare”は華やかなシンセサイザーの音色と、荒っぽい管楽器の演奏のループが耳に残る、ヒップホップ色の強い曲。リズムに乗って言葉を繋ぐラップというよりも、音楽の上で強烈なメッセージを放つギル・スコット・ヘロンのような詩人に近い、カッポのラップもセブの先鋭的なビートと上手くかみ合って、独特の存在感を放っている。

彼の音楽の面白いところは、一つ一つの曲が起伏のある構成を持っている点と、ヴォーカルや各楽器が、異なるリズムやメロディを奏でながら、それらが組み合わさって一つの音楽を作り上げている点だと思う。それはまるで、映画監督がカメラを通して、役者の動きや背景を切り取り、一つの作品に落とし込む行為を音楽でやっているようだ。

映画監督のように作品全体を見渡し、一つの作品を組み立てる技術と、ジャズやロック、ソウルなど、多彩な音楽に触れてきた豊かな感性が生み出す、懐かしさと新鮮さが入り混じった作品。サン・ラが現在も生きていたら、こんなアルバムを作るんじゃないかな?と思わせる不思議な音楽だ。

Producer
Seb Jones

Track List
1. Intro
2. Pick Up
3. Cashmere
4. My Lovely Wool
5. The Lug
6. Night Hustle
7. Rare Fit
8. Fit Rare feat. Cappo
9. Glue (The End)
10. Nocturnal/Midnight Shift (Serious Thumb)
11. Town
12. Yela
13. The Cut
14. Glue (Daydream)
15. Younger
16. Crumbs




22.02.85 [12 inch Analog]
Bastien Keb
First Word
2017-03-03

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