melOnの音楽四方山話

オーサーが日々聴いている色々な音楽を紹介していくブログ。本人の気力が続くまで続ける。

イギリス

Matador! Soul Sounds - Get Ready [2018 Color Red Records, P-Vine]

90年代後半、クラブ・イベントで演奏するためにニュー・マスターサウンドを結成し、以後20年、躍動感と高揚感が魅力の本格的なファンクを聴かせてきた、ウェールズ出身のギタリスト、エディ・ロバーツ。3人編成でありながら、大規模なバンドにも見劣りしない力強い演奏で、大小さまざまな会場を沸かせてきた、ニューヨーク発のファンク・バンド、ソウライブのドラマー、アラン・エヴァンス。出身地も演奏スタイルも違うが、ともにジャズやファンクへの深い愛情を感じさせる作風で、多くのファンを魅了してきた二人が手を組んだのが、このマタドール!ソウル・サウンド。

他のメンバーには、モニカやファーギーのような有名ミュージシャンの作品にも関わっているケヴィン・スコットや、クリスチャン・フランキやマーク・ストーンといった実力派のアーティストの録音にも参加しているクリス・スピーズ、オルゴンやニュー・マスター・サウンズの楽曲にも起用されているエイドリオン・ドゥ・レオンや、ロータスの作品にも名を連ねているキム・ドーソンなど、個性豊かな面々が顔を揃えている。

アルバムの1曲目は、本作に先駆けてリリースされたシングル曲”Get Ready”、DJプレミアやピート・ロックの作品を彷彿させる複雑なビートと、ジミー・スミスやシャーリー・スコットを思い起こさせるダイナミックでポップなオルガンの演奏が光る佳曲。ジャズとヒップホップを融合した作風は、ニュー・マスターサウンドともソウライブとも一味違う。

これに対し、両者が在籍するバンドの作風を積極的に取り入れたのが”The State Of Affairs”だ。ファンクを基調にしたビートはニュー・マスターサウンドの作風に近いし、グラント・グリーンを連想させる軽やかなギターの演奏は、ソウライブの楽曲っぽい。両者が相手の在籍するバンドのスタイルを演奏し、一つの楽曲に融合させた遊び心が印象的だ。

また、”Get Ready”のB面に収録されていた”Mr Handsome”は、チャールズ・ライト&ワッツ103rdストリート・バンドの”Express Yourself”やジェイムス・ブラウンの”Hot Pants”などを連想させる、軽快なビートと陽気なオルガンの演奏が心地よいアップ・ナンバー。ドラムの音数を増やした複雑なビートでありながら、聴き手に軽やかな印象を与えるのは、アランの高い演奏技術の賜物か?ヒップホップ世代にも馴染みのあるビートを取り入れつつ、リラックスして楽しめる軽妙な演奏に昇華するスキルは流石としか言いようがない。

そして、陽気な楽曲が多い本作では異色の、ロマンティックな雰囲気が魅力なのが”Computer Love”だ。ベティ・ライトやグウェン・マクレーのようなアメリカ南部のソウル・ミュージックにも通じる、洗練されたビートの上で、全盛期のジョージ・ベンソンが演奏しているかのような艶めかしい音色を響かせるギターが魅力の作品。シンセサイザー全盛期の時代だからこそ、彼らのような楽器の音を丁寧に聴かせる音楽が新鮮に聴こえる。

このアルバムの面白いところは、アメリカのミュージシャンが好んでカヴァーする黒人音楽と、イギリスのミュージシャンが積極的に演奏する黒人音楽を一つの演奏に同居させているところだろう。今も多くのファンを魅了する60年代のソウル・ミュージックやファンク、ジャズを土台にしながら、好みが異なる両国のミュージシャンの個性を上手に反映している点が特徴だ。しかも、単に両者の趣味趣向を足して2で割った音楽を作るのではなく、アレンジの幅を広げる手段にしている点にも着目すべきだろう。

経験と知識が豊富な二人だからこそ作れた、独創的なファンク作品。往年の黒人音楽の豊かな表現のい美味しいところを抽出し、一枚のアルバムに凝縮した聴きどころだらけの良盤だ。

Producer
Eddie Roberts, Alan Evans

Track List
1. Get Ready
2. Stingy Love
3. Too Late
4. The State Of Affairs
5. Anything For Your Love
6. Mr Handsome
7. El Dorado
8. Cee Cee
9. Soulmaro
10. Covfefe
11. Theme For A Private Investigator
12. Computer Love
13. Ludvig
14. Move Move Move




ゲット・レディ
マタドール! ソウル・サウンズ
Pヴァイン・レコード
2018-03-02

Young Gun Silver Fox ‎– AM Waves [2018 Légère Recordings]

60年代、70年代のソウル・ミュージックと、現代のR&Bを融合した作風で音楽好きを唸らせている、ロンドンを拠点に活動するR&Bバンド、ママズ・ガン。同バンドの中心人物であるアンディ・プラッツと、エイミー・ワインハウスやケリス、トミー・ゲレロなど、名だたるアーティストと仕事をしてきたプロデューサーのショーン・リー、強烈な個性と多芸っぷりでファンの多い二人が組んだ音楽ユニットが、このヤング・ガン・シルバー・フォックスだ。

2015年にリリースした初のスタジオ・アルバム『West End Coast』は、ボビー・コールドウェルやTOTOに代表される、電子楽器などを多用し、ソウル・ミュージックやジャズのエッセンスを盛り込んだ音楽性が魅力のロック、AORの手法をソウル・ミュージックに取り込むという逆転の発想でリスナーの度肝を抜いた彼ら。3年ぶりの新作となるこのアルバムでも、前作に引き続き、ロックとソウルを融合したスタイリッシュな音楽を聴かせている。

本作のオープニングを飾るシングル曲”Midnight In Richmond”は、シンセサイザーを使った煌びやかな伴奏と、流れるようなメロディが心地よいアップ・ナンバー。ちょっと荒っぽくかき鳴らされるギターや、肩の力を抜いてゆったりとリズムを刻むドラムが、楽曲にリラックスした雰囲気をもたらしている。

これに対し、本作のリリース後にシングル・カットされた”Take It Or Leave It”は、ブラッドストーンやニュー・バースにも通じる、洗練されたグルーヴと、爽やかなメロディが魅力のミディアム・ナンバー。太く柔らかい音色の楽器を使うことで、グルーヴを強調しつつ、ゆったりとした雰囲気を醸し出している点が特徴だ。

また、本作では珍しい、力強いベースの音色が印象的な”Caroline”は、ジーン・チャンドラーの”Does She Have A Friend?”にも少し似ている、力強い低音とロマンティックなメロディの組み合わせが面白いミディアム・ナンバー。伴奏の音数を絞り、ベースの音に重ねることで、低音を強調しつつ、落ち着いた雰囲気の伴奏の上で、朗々と歌い上げるアンディの姿は、洗練されたサウンドとダイナミックな歌唱表現が同居した80年代のソウル・ミュージックを彷彿させる。

そして、本作の最後を飾る”Lolita”は、彼らの作風を象徴するような、明るい雰囲気のアップ・ナンバー。軽やかにリズムを刻む、乾いた音色のギターや、グラマラスな響きを聴かせるベースが心地よいサウンドをバックに、サラサラと流れるようなメロディを歌うスタイルが心に残る。これからの季節に似合いそうな音楽だ。

彼らの音楽の面白いところは、アフリカ系アメリカ人の音楽であるソウル・ミュージックやジャズの要素を直接取り入れるのではなく、これらの音楽を白人が研究し自分達の音楽に組み替えた、AORやフュージョンのスタイルを参照しているところだ。本格的なソウル・ミュージックを聴かせる、ママズ・ガンのアンディをフロントに据えながら、サウンドには白人の解釈を通したAORなどの技法をふんだんに混ぜ込んでいる。この、他者のフィルターを介した音楽を利用することで、自分達の感性だけでは生み出せない、独創的な音楽を生み出していると思う。

ビリー・プレストンがビートルズでの経験を活かして、ゴスペルにロックのエッセンスを盛り込んだように、人種の異なるミュージシャンの音楽を参照することで、自分達の音楽に新しい視点を加えた異色のユニット。暑い季節を涼しくしてくれる、グラマラスなヴォーカルと洗練された伴奏が光る、洒脱さが魅力のソウル作品だ。

Producer
Shawn Lee

Track List
1. Midnight In Richmond
2. Lenny
3. Take It Or Leave It
4. Underdog
5. Mojo Rising
6. Just A Man
7. Love Guarantee
8. Caroline
9. Kingston Boogie
10. Lolita




AMウェイヴズ
ヤング・ガン・シルヴァー・フォックス
Pヴァイン・レコード
2018-05-02


Gizelle Smith - Ruthless Day [2018 Jalapeno Records, Mocambo]

2014年に発表した、ドイツのファンク・バンド、マイティ・モカンボスとのコラボレーション・アルバム『This Is Gizelle Smith & The Mighty Mocambos』で、ヴォーカルを担当したことをきっかけに注目を集め、その後は、自身の名義でも複数のシングルをリリース。マーサ・リーヴスを彷彿させる、可愛らしさと力強さを両立した歌唱と、キュートなルックスで人気を博した、イギリスのマンチェスター出身のシンガー・ソングライター、ジゼル・スミス。

近年は積極的にライブをこなしているものの、新作のリリースがなかったので気になっていた彼女だが、このたび8年ぶりの新作を発表した。

このアルバムは、彼女自身の名義では初のスタジオ・アルバム。ハンブルクを拠点に活動し、マイティ・モカンボスの作品も手掛けている、デフ・ステッフことステファン・ワグナーがプロデュースを担当。曲作りにはジゼル自身も携わるなど、マイティ・モカンボスとのコラボレーション作品を意識した、ソウル色の強いアルバムになっている。

本作の1曲目は、2018年の頭にリリースされたシングル曲”Dust”。ブリブリとうなるダイナミックなベースと優雅なストリングスの伴奏が心地よいアップ・ナンバー。ダイナミックな演奏を聴かせるリズム・セクションと上品な上物の組み合わせが、彼女のキュートな歌声を引き立てている。 これに対し、2017年に発表された”Sweet Memories”は、流麗なコーラスと愛らしいヴォーカルの組み合わせが光る、甘酸っぱい雰囲気のミディアム・ナンバー。端正の取れたバック・コーラスを効果的に使った曲作りは、メイン・イングリディエントの"Let Me Prove My Love to You"をサンプリングした、アリシア・キーズの”You Don't Know My Name”にも少し似ている。しかし、サビに入ると、リズム・セクションが急に荒々しくなるなど、随所に遊び心を盛り込んでいるから油断できない。

また、ストーンズ・スロウからアルバムを発売したことも記憶に新しい、マイロン&Eのエリック・ボスをフィーチャーした”S.T.A.Y.”は、軽妙で爽やかなメロディが心に残るミディアム・ナンバー。鍵盤楽器とホーンを組み合わせた軽やかな伴奏の上で、繊細でキュートなジゼルと、芯が強いけど柔らかい歌声のエリックによる、対照的な個性を活かしたメリハリのあるパフォーマンスを披露している。両者の持ち味を巧みに引き出すアレンジ技術が聴きどころだ。

そして、本作の隠れた目玉が、日本盤限定のボーナス・トラックである”Dust”のリミックス版だ。マジンガーZの主題歌をリミックスするなど、日本のサブカルチャーにも造詣が深いことで知られるフランスのクリエイター、ディミトリ・フロム・パリが手を加えたこの曲は、彼が得意とする太く、柔らかい音色を使ったハウス・ナンバー。ダフト・パンクやマーク・ロンソンなど、多くの人気ミュージシャンが取り入れているディスコ・サウンドだが、同ジャンルに何十年も取り組んできた彼が作るトラックは一味違う。

今回のアルバムは、メアリー・ウェルズやブレンダ・ハロウェイの流れを汲む、キュートな声と力強いパフォーマンスが武器の、彼女の魅力を丁寧に引き出した、本格的なソウル・アルバムだ。ポップなメロディと軽やかなパフォーマンスは、60年代、70年代のモータウン・レコードが得意としていた音楽とよく似ている。しかし、彼女のスタイルは、ポップだけどどこから粗削りな、60年代のモータウン・サウンドというよりは、ジャクソン5やスモーキー・ロビンソンなどが活躍していた70年代のモータウン・サウンドに近い。おそらく、洗練されたサウンドが流行している現在の音楽シーンを意識したものだが、偶然にも父、ジョー・スミスが演奏でかかわっていた、70年代のフォー・トップスの音楽に歩み寄っているから面白い。

力強い歌声で勝負をするシンガーが多い時代に、可愛らしい声で勝負した潔いアルバム。歌手の数だけ異なる音楽がある、ヴォーカル作品の醍醐味を存分に堪能してほしい。

Produceer
Def Steff

Track List
1. Dust
2. Hero feat. Eric Boss
3. Scared of Something
4. Love Song
5. Sweet Memories
6. Around Again
7. S.T.A.Y. feat. Eric Boss
8. Ruthless Day
9. Hey Romeo
10. Twelve
11. Amen
12. Dust (Dimitri From Paris Remix) *Bonus Track





Ruthless Day
Gizelle Smith
Jalapeno
2018-03-30

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