ブラック・ミュージック千本ノック~SoulとR&Bと色々な音楽~

管理人が手に入れたR&Bのアルバム、1000枚の紹介文を書き続けるブログ その先に見えるものは天国か地獄か・・・

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Various Artist - The Fate Of The Furious: The Album [2017 Atlantic Records, Universal Music Group]

2001年に第1作が公開されると、本物の公道で繰り広げられるスリリングなレース・シーンと、自動車好きには堪らない、有名メーカーの人気車両を使ったダイナミックなカー・アクションが話題となり、あっという間に人気作品の仲間入りを果たした『Fast & Furious』(邦題『ワイルド・スピード』)。

派手なアクション・シーンと並んで、同シリーズの目玉になっているのが、劇中で使われている楽曲を収めたサウンドトラック。公道レースがテーマの作品ということもあり、ヒップホップやR&Bを中心に、ストリートを意識した人気のダンス・ミュージックや舞台になった都市にちなんだ楽曲を収録。2006年に公開された 『The Fast and the Furious: Tokyo Drift』では、舞台になった東京にちなんで、ドラゴン・アッシュやテリヤキ・ボーイズといった日本のアーティストの楽曲が取り上げられたことでも話題になった。

このアルバムは、2017年4月に公開された同シリーズの第8作『The Fate of the Furious / Fast & Furious 8』(邦題『ワイルド・スピード ICE BREAK』)のサウンドトラック。映画本編はアメリカ国内が舞台だが、サウンドトラックは西海岸出身のヒップホップ・アーティストからカナダ勢、ラテン・アメリカのアーティストまで、バラエティ豊かな面々を揃えている。

人気ミュージシャンが集結した企画盤だけあって、捨て曲は一つもないが、R&Bが好きな人に最初に聴いてほしい曲といわれたら 2017年にデビュー・アルバム『SweetSexySavage』を発表したケラーニとオークランド出身のラッパー、G-イージーのコラボレーション曲”Good Life”しかないだろう。トレイ・ソングスの”Touchin, Lovin”などを手掛けたフェザーストーンズが手掛けるこの曲は、レイド・バックしたメロディとケラーニのキュートな歌声が切ない雰囲気を醸し出すミディアム・ナンバー。G-イージーの華がある声と、シンセサイザーを多用した派手なトラックが、楽曲をポップで気軽に楽しめるものにしている点も見逃せない。

また、ヴォーカルもこなすルイジアナ州バトン・ルージュ出身のラッパー、ケヴィン・ゲイツが歌う”911”も面白い曲だ。LVやネイト・ドッグを彷彿させる。太く柔らかいバリトン・ヴォイスを駆使して、歌にラップに縦横無尽の活躍を見せる、切ない雰囲気のミディアム・ナンバー。フランク・デュークらが手掛ける、主役の声の魅力を巧みに引き出す味わい深いビートもこの曲の聴きどころ。

そして、同シリーズのサウンドトラックに収められている楽曲の中でも、五本の指に入る美しいメロディを堪能できるのが”Don't Get Much Better”だ。ジェレミー、タイ・ダラ・サイン、サーガ・ザ・ジェミニの三人がコラボレーションしたこの曲は、ジェイソン・デルーロの”Talk Dirty ”や”Wiggle”などを手掛けてきたリッキー・リードがプロデュースを担当。彼の作品らしいポップで切ないメロディの上で、甘酸っぱい歌声を響かせるジェレミーの存在感が光る佳曲。耳元で囁きかけるような、甘いラップを披露するタイ・ダラ・サインとサーガ・ザ・ジェミニのパフォーマンスが、楽曲にメリハリをつけている。

だが、本作の目玉は、英語とスペイン語の2ヴァージョンが収録された”Hey Ma”だろう。コロンビアのメデジン出身のレゲトン歌手Jバルヴィンとマイアミ出身のピットブル、キューバのハバナ出身で、フィフス・ハーモニーの元メンバーでもあるキャミリア・キャベーロと、出自も音楽性もバラバラの3人がコラボレーションしたこの曲は、レゲトンのビートをベースに、R&Bやポップス、ヒップホップの要素を織り込んだ切ない雰囲気のアップ・ナンバー。リッキー・マーティンを彷彿させる男の色気を見せつけるJバルヴィンと、R&Bグループ出身らしい妖艶なヴォーカルをを披露するキャミリアの個性が、互いの持ち味をうまく引き出している。

アルバムを通して聴いて抱いた印象は、隙のない作品だなということ。有名なアーティストやプロデューサーを起用し、流行のサウンドを取り入れながら、曲単位で聴いてもアルバム全体を通しても、第1弾のころから続く、一貫したスタイルのようなものが感じられる。おそらく、映画自体が「公道レース」という一つの軸を持っていて、サウンドトラックもそれを引き立てるストリート色と疾走感を重視しているからだと思う。

流行のダンス・ミュージックを1枚のアルバムに凝縮した、濃縮果汁のように密度の濃い作品だ。流行りものだと思って見逃していると、絶対に損をするよ。

Producer
Ricky Reed, 30 Roc, Frank Dukes, Murda Beatz etc

Track List
1. Gang Up - Young Thug, 2 Chainz, Wiz Khalifa & PnB Rock
2. Go Off - Lil Uzi Vert, Quavo & Travis Scott
3. Good Life – G-Eazy & Kehlani
4. Horses - PnB Rock, Kodak Black & A Boogie Wit Da Hoodie
5. Seize The Block - Migos
6. Murder (Remix) - YoungBoy Never Broke Again feat. 21 Savage
7. Speakerbox (F8 Remix) - Bassnectar feat. Lafa Taylor, Ohana Bam
8. Candy Paint - Post Malone
9. 911 - Kevin Gates
10. Mamacita - Lil Yachty feat. Rico Nasty
11. Don't Get Much Better - Jeremih, Ty Dolla $ign & Sage The Gemini
12. Hey Ma(Spanish Version) - Pitbull & J Balvin feat. Camila Cabello
13. La Habana - Pinto "Wahin" & DJ Ricky Lunafeat. El Taiger
14. Hey Ma - J Balvin & Pitbull feat. Camila Cabello






Fate of the Furious: The Album
Various Artists
Atlantic
2017-04-14


FKJ (French Kiwi Juice) - French Kiwi Juice [2017 ROCHE MUSIQUE]

2000年代中盤に音楽活動を開始。2013年にシングル『Time For A Change』でレコード・デビューすると、その後はライブやDJといった表舞台での活動も精力的にこなしつつ、オリジナル曲やテンプテーションズの"Cloud Nine"やイーライ・ペイパーボーイ・リードの"WooHoo"などのリミックスをサウンドクラウド上で発表。電子音楽の手法を用いてR&Bやヒップホップに独自の視点からアプローチをしてきた、パリを拠点に活動するクリエイターのフレンチ・キウイ・ジュース。彼にとって、初のフル・アルバムが本作だ。

フランスの音楽シーンに目を向けると、ダフト・パンクやディミトリ・フロム・パリ、ステファン・ポンポニャックといったエレクトロ・ミュージック畑のミュージシャンや、レ・ヌビアンズやフィンガズ、ベン・ロンクル・ソウルなどのヒップホップ、R&Bに強いアーティストなど、日本にも負けず劣らずの(もしかしたら日本以上に)バラエティ豊かな市場がある。また、それ以外にも、マイルス・デイヴィスやアート・ブレイキーの魅力をアメリカ人より先に見出し、評価してきた鋭い審美眼と、人種に囚われず、良い音楽を評価する厳しくも温かいがある。そんなフランスの音楽シーンで磨かれ、育まれた彼の豊かな感性は、本作でも遺憾無く発揮されている。

アルバムの1曲目に入っている"We Ain't Feeling Time"はジミー・スミスを彷彿させる、激しい鍵盤楽器のアドリブで幕を開けるミディアム・ナンバー。そこからメロウな管楽器(多分サックス)と甘いコーラスが絡み合うイントロへと続き、絶妙なタイミングで彼のヴォーカルが展開されるミディアム・ナンバー。電子楽器と生楽器を組み合わせた、モダンだけど柔らかいサウンドと、マックスウェルやレミー・シャンドを連想させる繊細なファルセットが気持ち良い佳曲だ。

そして、同曲に続く"Skyline"はポロポロと鳴り響くキーボードやギターなどの音色と、フライング・ロータスやジェイムズ・ブレイクなどの作品を思い起こさせる、シンプルで音の隙間を強調したビートの組み合わせが、日本の「能」のように優雅で神秘的な雰囲気を醸し出すミディアム・ナンバー。演奏やヴォーカルで垣間見える、色々な音楽に触れてきた彼ならではの、絶妙な力加減、多彩なフレーズ選びが堪能できる良曲だ。

これに対し、(((o)))が参加した"Vibin' Out"は、アメール・ラリューを連想させるスタイリッシュな女性ヴォーカルをフィーチャーした、甘酸っぱい雰囲気のミディアム・バラード。ミニー・リパートンやシリータ・ライトのように繊細な表現を聴かせるヴォーカルが胆になった、清涼感のある楽曲だ。

そして、本作の中でも最初期に作られた曲の一つである”Lying Together”は、女性ヴォーカルやハンド・クラップを効果的に使った、インストゥルメンタル・ナンバー。ヒップホップの軽快なビートと、シンセサイザーを使った重厚なハーモニーが癖になる、軽妙なようで荘厳、温かいようでどこか冷たい、不思議な感覚を覚える作品だ。

全体を通して感じることは、豊かな感情表現や絶妙な揺らぎを含む歌や演奏のような、ソウル・ミュージックやR&Bの醍醐味とも言える要素をきちんと押さえている一方、テンプテーションズやオーティス・レディング、ジョン・レジェンドやビヨンセの曲を聴いたときに感じるような、泥臭さ、汗臭さ、迫りくるような威圧感といったR&B、ソウル・ミュージックのシンガーの魅力になっている要素を削り落とした、スタイリッシュで洗練された音楽になっている。おそらく、電子楽器と生楽器の両方を使いこなしてきた経験や、インストゥルメンタル作品とヴォーカル曲の両方を手掛けてきた経験が、彼の音楽を特定のジャンルに束縛されない、柔軟で個性的なものにしたのだと思う。

電子音楽畑の経験と、ブラック・ミュージックのリミックスを経験してきた彼独特の、鋭い視点と楽曲構築技術が光る良作。ジェイムズ・ブレイクやアンダーソン・パック、フランク・オーシャンのような、異ジャンルの音楽を取り入れるセンスが魅力のR&Bシンガーが好きな人にはたまらない。ジャンルを横断した作風が魅力の良作だ。

Producer
French Kiwi Juice

Track List
1. We Ain't Feeling Time
2. Skyline
3. Better Give U Up
4. Go Back Home
5. Vibin' Out feat. (((O)))
6. Canggu
7. Blessed
8. Die With A Smile
9. Lying Together (interlude)
10. Lying Together
11. Joy
12. Why Are There Boundaries





French Kiwi Juice
Fkj
Roche Musique
2017-03-03

 

Kingdom - Tears In The Club [2017 Fade to Mind]

2000年代序盤からロス・アンジェルスを拠点に活動しているプロデューサーでビート・メイカーのエズラ・ルービン。これまでにケレラの”The High”やボーイズ・ノイズの”Femme Litre”を手掛けてきた彼が、自身のソロ・プロジェクト、キングダムの名義では初となるフル・アルバムをリリース。

本作では、2017年のアルバム『Fin』の傑出した収録曲も記憶に新しいオッド・フューチャー、ジ・インターネットのシドや、2014年のEP『Z』が配信限定にも関わらず多くの音楽ファンから注目を集めたSZAなど、熱心な音楽愛好家の間では評価の高い、実力派ミュージシャンが参加したヴォーカルもの。シンセサイザーを多用したエズラのトラックは、ゲストのクールで透き通った歌声と相まって、神秘的なムードを醸し出している。

アルバムの1曲目”What Is Love”はSZAをヴォーカルに起用したミディアム・ナンバー。ジ・インターネットの『Ego Death』を彷彿させるシンセサイザーを多用したトラックの上で、ミニー・リパートンを思い起こせる繊細で透き通った歌声を響かせるスタイリッシュな楽曲。エズラの作るビートは複雑で奇抜なものだが、それを感じさせない緻密さと一体感が印象的だ。彼女はもう1曲”Down 4 Whatever”にも参加しているが、こちらは90年代後半に流行したチキチキというビートに、シンセサイザーの伴奏を組み合わせたトラックをバックに、力強い歌を聴かせている。多くの言葉を複雑なメロディに組み込んだ曲は、”No Scrubs”の作者として有名なキャンディの楽曲を連想させる。

また、これ以外のヴォーカル・トラックでは女性シンガーのナジー・ダニエルをフィーチャーした”Each & Every Day”と、男性シンガーのシェイカーが参加した”Breathless”の2曲が特筆すべき存在だ。2人は本作が初めてのレコーディング作品ということで、手に入る情報が限られているが、収録された2曲を聴く限り、実力はエズラのお墨付きのようだ。まず、ナジー・ダニエルだが、こちらはネリー・ファータードの声を少しスマートにしたような癖のある歌声で、東南アジアの民族音楽に触発されたようなメロディがよく似合っている。彼女のヴォーカルを軸に、複数のドラム音、パーカッション音を組み合わせた複雑なビートを聴かせた”Each & Every Day”は、「アメリカ人が抱くアジア音楽のイメージ」を西洋の電子音楽の技術を用いて具現化したようで大変興味深い。一方、シェイカーがヴォーカルを担当した”Breathless”は、ロビン・シックやホセ・ジェイムスの系譜に近いスタイリッシュな歌唱と、R&Bではあまり使わないタイプの、個性的な電子音を使ったビートを使ったシンプルだが癖のあるトラックが面白いアップ・ナンバー。エレクトロ・ミュージックの技術を駆使してR&Bを作ると、斬新な音楽が生まれるのかと関心してしまう名曲。

だが、本作の目玉といえば、やはりシドがヴォーカルを担当した”Nothin”だろう。『Fin』でも聴かせてくれたシドのクールな歌声と、シンセサイザーを駆使して作られたシックなトラックが上手くマッチした、しっとりとした雰囲気のミディアム・ナンバー。『Fin』に収録されていた”Body”を聴いたときも同じことを感じたが、彼女の透き通った歌声には、電子楽器を使ったシンプルなトラックがよく似合うと思う。同曲のリミックスが11曲目に入っているが、こちらはオリジナル程ではないが、魅力的。

今回のアルバムは、ゲスト・ヴォーカルの面々によるものが大きいと思うが、全般的にR&B、ヒップホップのリスナーを意識した楽曲が目立っている。インストゥメンタルの楽曲でも、”Nurtureworld”や”Tears in the Club”などはその傾向が顕著だが、他の曲でも同様の傾向が見られる。これまでに彼が携わってきた録音が必ずしもヒップホップやR&Bの楽曲ではなかったことを考えると、彼は自分の感性や技術、ヴォーカルのイメージや個性を勘案しながら、今回の作品に落とし込んだのかもしれない。

個人的には、電子音楽やロック出身のクリエイターが生み出すR&Bには、ソウルやR&Bを聴いて育ったミュージシャンが見落としがちな音色やフレーズ、構成が取り入れられていてとても面白い作品が多いと思っている。その点、今回のアルバムは、エレクトロ畑出身のキングダムらしい、斬新な音色と「間」の使い方が随所で見られて、非常に新鮮だった。R&Bをマンネリと感じている人にこそ聴いてほしい、適度に斬新な作風が魅力の佳作だ。

Producer
Kingdom

Track List
1. What Is Love feat. SZA
2. Each & Every Day feat. Najee Daniels
3. Nurtureworld
4. Breathless feat. Shacar
5. Tears in the Club
6. Haunted Gate
7. Nothin feat. Syd
8. Into the Fold
9. Timex
10. Down 4 Whatever feat. SZA
11. Nothin feat. Syd (Club Mix)
12. Down 4 Whatever (Instrumental) (Vinyl Only)






 
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