ブラック・ミュージック千本ノック~SoulとR&Bと色々な音楽~

管理人が手に入れたR&Bのアルバム、1000枚の紹介文を書き続けるブログ その先に見えるものは天国か地獄か・・・

エレクトロ

Kelela - Take Me Apart [2017 Warp]

ケレラことケレラ・ミザンクリストスはワシントンD.C.出身のシンガー・ソングライター。

エチオピア系アメリカ人の彼女は、2010年ごろからロス・アンジェルスを拠点に音楽活動を開始。大学を卒業したあとは、カフェなどでジャズ・スタンダードを歌うシンガーとしての活動を皮切りに、メタル・バンドやエレクトロ・ミュージックのユニットなど、色々なジャンルの音楽グループで経験を積んできた。

そんな彼女は、エレクトロ・ミュージックのユニット、ティーンガールズ・ファンタジーが2012年にリリースしたアルバム『Tracer』に収録されている”EFX”に参加したことをきっかけに、キングダムなどが所属するフェイド・トゥ・マインドと契約。2013年に初のミックス・テープ『Cut 4 Me』をリリースすると、ソランジュやビヨークを彷彿させる先鋭的な音楽性で、熱心な音楽ファンや評論家から高い評価を受けた。

その後も、ロンドンに拠点を置くクラブ・ミュージックの名門、ワープ・レコードから複数のシングルを発表する一方、ゴリラズの『Humanz』やソランジュの『A Seat At The Table』といった、各国の人気ミュージシャンの作品に参加。一度聴いたら忘れられない個性的な歌声と、神秘的な雰囲気で存在感を発揮してきた。

本作は、彼女にとって初のフル・アルバム。彼女のシングルを配給してきたワープからのリリースで、収録曲は2017年に入ってから録音されたもの。プロデューサーにはロンドンを拠点に活動するジャム・シティやロス・アンジェルス在住のアリエル・レックシェイドなど、各国の実力派クリエイターを起用し、彼女の豊かな表現力と繊細な歌声を活かした、魅力的なポップスを聴かせている。

アルバムのオープニングを飾る”Frontline”はジャム・シティのプロデュース、ロックネイション所属のシンガー・ソングライター、サミュエル・デューが制作に参加したミディアム・ナンバー。ジャーメイン・デュプリやティンバランドが90年代に録音したような、チキチキというハットの音色が印象的なビートの上で、フェイス・エヴァンスを彷彿させるグラマラスな歌声を響かせた作品。90年代のR&Bのエッセンスを取り入れることで、電子音を多用したビートを聴きやすくする発想が面白い。

続く”Waitin”は、ジャム・シティとアリエル・レックシェイドに加え、カナダ出身のシンガー・ソングライター、モッキーが制作に携わっている国際色豊かな作品。シンセサイザーを駆使したスタイリッシュなトラックの上で、しなやかな歌声を聴かせるアップ・ナンバー。軽妙なメロディを盛り込んだスタイルは『All For You』を出した頃のジャネット・ジャクソンにも少し似ている。尖った雰囲気を残しつつ、ポップに纏め上げた佳作だ。

また、本作に先駆けて発表された”LMK”は、ソランジュの作品にも携わっているクウェスとジャム・シティの共同プロデュース作品。電子音を効果的に使った軽快でモダンなトラックの上で、軽やかな歌声を聴かせるミディアム・ナンバー。音楽性はイギリスの女性シンガー、ナオのそれに近いが、繊細で甘酸っぱいヴォーカルはデビュー当時のブランディやマイアにも少し似ている。ロマンティックなメロディと洗練されたビートが格好良い、キャッチーな曲だ。

そして、ニューヨークを拠点に活動するプロダクション・チーム、ダブル・ダッチを招いた”Blue Light”は、シンセサイザーの音を重ねた荘厳な伴奏が印象的なミディアム・ナンバー。ファルセットを上手に使ってセクシーな歌声が心地よいと思っていたら、ビヨビヨと唸るような電子音を取り入れた先鋭的なトラックへと切り替わる奇抜な作品。斬新な演出を盛り込みつつ、始まりから終わりまで、一つの曲として聴かせる彼女の手腕が光っている。

このアルバムの面白いところは、エレクトロ・ミュージック分野で実績を上げているミュージシャンをプロデューサーに起用しつつも、マニア向けの前衛音楽ではなく、親しみやすいポップス作品に落とし込んでいるところだろう。恐らく、彼女の声質やヴォーカル・スタイルが、マイアやジャネット・ジャクソンのような可愛らしく聴きやすい、ポップ・スターの素質を備えている点が大きいと思う。

ウィークエンドSZAなど、エレクトロ・ミュージックとR&Bを融合したスタイルのミュージシャンの活躍が目立つ中で、ポップスの手法を取り入れる卓越した技術で存在感を示す彼女。常に新しいスタイルが生まれ、作品化されているエレクトロ・ミュージックの面白さを分かりやすく伝えてくれる傑作だ。

Producer

Jam City, Ariel Rechtshaid, Kwes, Mocky, Kingdom etc

Track List
1. Frontline
2. Waitin
3. Take Me Apart
4. Enough
5. Jupiter
6. Better
7. LMK
8. Truth Or Dare
9. S.O.S.
10. Blue Light
11. Onanon
12. Turn To Dust
13. Bluff
14. Altadena





Take Me Apart
Kelela
Warp Records
2017-10-06

Toddla T - Foreign Light [2017 Steeze]

14歳の頃からDJとして活動し、16歳になるとハイスクールを辞めて専業のミュージシャンに転身した、サウスヨークシャー州シェフィールド出身のDJでトラックメイカーのトドラTことトーマス・マッケンジー・ベル。

2007年にロンドンの1965レコーズと契約すると、同年に初のEP『Do U Know』を発表。ダンスホール・レゲエとエレクトロ・ミュージックを融合したサウンドで話題になった。その後も、ルーツ・マヌーヴァなどを起用した初のフル・アルバム『Skanky Skanky』を2009年にリリースするなど、精力的に活動していた彼は、2011年にはクラブ・ミュージックの名門、ニンジャ・チューンと契約。2枚目のフルアルバム『Watch Me Dance』を発売する一方、ジャマーやリトル・ドラゴンの作品をプロデュース、リミックスするなど、活躍の場を広げていた。

今回のアルバムは、2012年の『Watch Me Dance: Agitated By Ross Orton & Pipes 』から実に5年ぶりとなる新作(といっても、シングルは継続的に発売していたが)。自身のレーベル、スティーズからのリリースだが、ほぼすべての曲で”Set It Off”などのヒット曲を手掛けたことでも知られているブルックリン出身のシンガー・ソングライター、アンドレア・マーティンがマイクを執った、キャリア初の本格的なヴォーカル作品になっている。

本作の1曲目は、2017年5月に発売された先行シングル”Blackjack21”。ダフト・パンクの” Get Lucky”を連想させる、強靭なベースの演奏と、芯の強い歌声、そしてしなやかなメロディの一体感が心地よいアップ・ナンバーだ。シックやシャラマーといった80年代に活躍したディスコ・バンドの影響を感じさせるが、シンセサイザーを多用して、当時の音楽以上に洗練された雰囲気に纏め上げるなど、随所で差別化を図っている。

また、アンドレアに加えてバーミンガム出身のラッパー、ステフロン・ドンを起用した”Beast”は、重く、陰鬱な音色のシンセサイザーを効果的に使ったスリリングなアップ・ナンバー。ディジー・ラスカルのようなグライムをベースにしつつ、ビートの音圧を抑えて、ポップスっぽく聴かせている点が面白い。彼の器用な一面が垣間見える佳曲だ。

それ以外の曲にも、BBCのRadio1でラジオ・パーソナリティとして活躍するベンジBがミックスで参加した”Always”など、魅力的な作品は多い。この曲ではアンドレア・マーティンに加えて、レゲエDJのシルキ・ワンダをフィーチャー。80年代終盤に一世を風靡したリディム、スレンテンを思い起こさせる重低音を強調したビートの上で、朗々と声を張り上げるアンドレアと柔らかい声で言葉を繋ぐシルキのコンビネーションがのんびりとした雰囲気を醸し出している。往年のダンスホール・レゲエをベースにしつつ、現代のクラブ・ミュージックと一緒に聴いても違和感を感じさせないミックス技術にも注目してほしい。

そして、本作の最後を締める”Magnet ”はジェイソン・ベックが制作に参加したダンス・チューン。アンドレア・マーティンの力強い歌声で幕を開ける手法は、ロリータ・ハロウェイやグロリア・ゲイナーのようなディスコ音楽の歌姫を連想させる。しかし、シンプルな四つ打ちのビートと、太く温かい音色のシンセサイザーを使った伴奏は、ムーディーマンやルイ・ヴェガのようなハウス・ミュージックっぽくも聴こえる。往年のディスコ・ミュージックの高級感を残しつつ、気鋭のミュージシャンらしい新鮮な音楽に落とし込むトドラTのセンスが炸裂した面白い曲だ。

デビュー作でもダンスホール・レゲエやグライムを取り入れた楽曲を披露していたように、一つのジャンルにとらわれない柔軟な感性と広い視野が持ち味のトドラTだが、その作風は本作でも変わらない。しかし、本作は過去の作品とは異なり、アンドレア・マーティンという確かな実力を持ったシンガーをフロントに据えたからか、ディスコ音楽やレゲエ、ハウスといった多彩なスタイルを取り入れた「女性ヴォーカルの黒人音楽」という、クラブ・ミュージックには縁遠い人にも楽しめる作品になっている。

ブラック・ミュージックを音楽のいちジャンルとして親しんできた彼らしい、様々なスタイルの要諦を押さえて、自分の音楽の糧にした完成度の高いアルバム。懐かしさと新鮮さを一つの作品に閉じ込めた、先鋭的なクリエイターらしい音作りが堪能できる良作だ。

Producer
Benji B, Toddla T etc

Track List
1. Blackjack21 feat. Andrea Martin
2. Won't Admit It's Love feat. Andrea Martin, Casisdead
3. Beast feat. Andrea Martin, Stefflon Don
4. Ungrateful feat. Andrea Martin
5. Foreign Light feat. Andrea Martin, Coco
6. Foundation feat. Addis Pablo
7. Always feat. Andrea Martin, Silkki Wonda
8. Tribute feat. Wiley
9. Faithful Skit feat. Andrea Martin
10. Magnet feat. Andrea Martin



a

FOREIGN LIGHT
TODDLA T
BELIE
2017-07-28

Calvin Harris - Funk Wav Bounces Vol. 1 [2017 Columbia]

10代のころ、魚の加工場のアルバイトで貯めたお金を元手にDJ機材を購入。エレクトロ・ミュージックのDJとしてキャリアをスタートした、スコットランドのダムフリーズ出身のDJ兼プロデューサー、カルヴィン・ハリスこと、アダム・リチャード・ウィリス。

その後、ロンドンに移住し、プロとしてのキャリアをスタート。また、次第にDJと並行してインターネット上に自作曲やDJミックスを発表するようになり、気鋭のクリエイターとして注目を集めるようになる。そして、最終的にはEMI、ソニーBMG、スリー・シックス・ゼロの3社と契約を結ぶに至る。

2007年にアルバム『I Created Disco』でメジャー・デビューすると、同作はイギリスのアルバム・チャートで8位を獲得、ゴールド・ディスクに認定され、同国のトップDJの一人として知らぬものはいない存在になる。そんな彼は、2012年に発売した3枚目のアルバム『18 Months』が複数の国でゴールド・ディスクに認定(うちイギリスとオーストラリアはプラチナ・ディスクを獲得)される大ヒット。リアーナに提供して各国のヒットチャートで1位を獲得した”We Found Love” や、ニーヨを起用した”Let's Go”など、多くのヒット曲を送り出し、彼の名を世界に轟かせた。

今回のアルバムは、前作『Motion』から約3年ぶりとなる、通算5枚目のオリジナル・アルバム。フランク・オーシャンファレル・ウィリアムス、ニッキー・ミナージュやジョン・レジェンドなど、アメリカのヒップホップ、R&B界隈でトップをひた走るアーティストが集結。世界屈指の人気を誇るトップDJの新作にふさわしい、豪華なものになっている。

アルバムのオープニングを飾るのは、フランク・オーシャンとミーゴスが参加した”Slide feat”。エレクトリック・ピアノの伴奏で幕を開けるこの曲は、フランク・オーシャンの作風に近い、しなやかなメロディとサウンドが心地よいアップ・テンポのR&Bナンバー。アップ・テンポといっても、これまでの作品と比べるとBPMを10以上落としている、彼の録音の中ではゆったりとしたテンポの楽曲だ。シンセサイザーを駆使したモダンなサウンドはフランク・オーシャンの渋い歌声の良さを巧みに引き出しており、往年のソウル・ミュージックの泥臭さと、ニーヨなどの洗練されたサウンドを一つの作品に同居させている。

一方、ジョン・レジェンドとスヌープ・ドッグ、ヤング・サグの3人を招いた”Holiday”は、エレクトリック・ベースとゴムボールのように弾けるドラムの音色が印象的なミディアム・ナンバー。色々な音色を使った、鮮やかで爽やかなエレクトロ・サウンドは、山下達郎の”Sparkle”や、ネプチューンズの”Frontin’”などを連想させる。他の作品同様、変則ビートの上でもペースを崩すことなく飄々と言葉を繋ぐスヌープのラップ・スキルの高さも聴きどころだが、注目して欲しいはハジョン・レジェンドのヴォーカル。ファルセットを多用したヴォーカルは、マーヴィン・ゲイを連想、温かく色っぽいものだ。二人の巨頭に挟まれたヤング・サグもいい味を出している。

また、ニッキー・ミナージュを起用した ”Skrt”は、彼の作品では珍しいレゲトン・ナンバー。ファルセットを多用した可愛らしいヴォーカルと、地声を使った荒々しいラップを使い分けるニッキー・ミナージュの姿は、まるでデュエット曲のようだ。ラテン音楽を取り入れた作品といえば、直近でもDJキャレドの”Wild Thoughts”や、『ワイルド・スピード ICE BREAK』のサウンドトラックに収められているピットブルの”Hey Ma”など、色々なものがヒットしているが、彼女の曲はアメリカのR&Bに近いと思う。3曲を聴き比べしても面白そうだ。

そして、ファレル・ウィリアムスとケイティ・ペリー、ビッグ・ショーンをフィーチャーした”Holiday”は、乾いたギターの音色と、アナログ・シンセサイザーのコンビネーションが光るミディアム・ナンバー。シンセサイザーやギターの音だけ聞くと、ネプチューンズの新作と勘違いしそうな曲だが、レゲトンのビートを盛り込みつつ、スタイリッシュに纏めたアレンジはカルヴィン・ハリスの作風だ。ファレルのヴォーカルはもちろん、ケイティ・ペリーのキュートな歌声も眩しい。暑い季節に似合いそうな曲だ。

このアルバムでは、彼のトレード・マークともいえるEDMの要素は最小限に抑えられ、大部分の曲でヒップホップ、R&Bのアーティストとコラボレーションした作品になっている。21組のゲスト・ミュージシャンのうち、ケイティ・ペリーとジェシー・レイズ以外はヒップホップ、R&B作品をレコーディングしたことのある面々という点も、本作の方向性を端的に示していると思う。その一方で、R&Bやヒップホップのミュージシャンを招きながらも、近年のR&Bで多用される、トラップなどの変則ビートを取り入れず、しなやかで洗練されたフレーズや、ラテン音楽のエッセンス、エレクトリック・ベースやシンセサイザーを取り込んだ作風は、世界各地のステージに立ち、多くの聴衆を熱狂させてきた彼らしい、絶妙なバランス感覚が発揮されていると思う。端的に言えば、ダフト・パンクやマーク・ロンソンのような、リビングとクラブのフロア、そしてロック・フェスの全てに気を配った、全方位的な作品に聞こえるのだ。

エレクトロ・ミュージック界のトップ・クリエイターの独創的な解釈が光る。キャッチーで親しみやすいR&B,ヒップホップ作品。これからの季節に似合いそうな、陽気でポップな佳作だと思う。



Producer
Calvin Harris

Track List
1. Slide feat. Frank Ocean, Migos
2. Cash Out feat. D.R.A.M., PARTYNEXTDOOR, Schoolboy Q
3. Heatstroke feat. Ariana Grande, Pharrell Williams, Young Thug
4. Rollin feat. Future, khalid
5. Prayers Up feat. A-Trak, Travis Scott
6. Holiday feat. John Legend, Snoop Dogg, Takeoff
7. Skrt It feat. Nicki Minaj
8. Feels feat. Big Sean, Katy Perry, Pharrell Williams
9. Faking It feat.Kehlani, Lil Yachty
10. Hard To Love feat. Jessie Reyez






FUNK WAV BOUNCES VOL. 1 [CD]
CALVIN HARRIS
COLUMBIA
2017-06-30

記事検索
タグ絞り込み検索
アクセスカウンター
  • 今日:
  • 昨日:
  • 累計:

アクセスカウンター


    にほんブログ村 音楽ブログへ
    にほんブログ村
    にほんブログ村 音楽ブログ ブラックミュージックへ
    にほんブログ村

    音楽ランキングへ

    ソウル・R&Bランキングへ
    LINE読者登録QRコード
    LINE読者登録QRコード
    メッセージ

    名前
    メール
    本文
    • ライブドアブログ