melOnの音楽四方山話

オーサーが日々聴いている色々な音楽を紹介していくブログ。本人の気力が続くまで続ける。

ジャマイカ

Damian Marley - Stony Hill [2017 Island]

“One Love”や”Get Up Stand Up”などの名曲を残し、レゲエ界のアイコンとして今も絶大な人気のあるボブ・マーリー。彼の息子達も、それぞれミュージシャンとして個性的な作品を送り出しているが、その中でも特に精力的に活動しているのが、ボブにとって二人目の妻である、シンディ・ブレイクスピアとの間に生まれたダミアン・マーリーだ。

10代前半から他の兄弟と一緒に音楽を始めた彼は、歌やプロダクションに興味を持った他の兄弟とは異なり、早くからディージェイ(ヒップホップでいうMCに相当)に傾倒し始める。

そんな彼は、96年に初のアルバム『Mr. Marley』でレコード・デビューを果たすと、ビルボードのレゲエ・アルバム・チャートで2位を獲得。その5年後に発表した2作目『Halfway Tree』はグラミー賞を獲得するなど、華々しい実績を上げてきた。

また、彼は自身の活動と並行して、色々なジャンルのアーティストとコラボレーション作品を録音。なかでも、2010年にヒップホップ・ミュージシャンのナズと共作した『Distant Relatives』は全米アルバム・チャートの5位を獲得。彼をフィーチャーしたエレクトロ・ミュージックのクリエイター、スカイレックスのシングル”Make It Bun Dem”は、プラチナ・ディスクに認定されるなど、偉大な父と同様に、レゲエに詳しくない人達からも親しまれるようになった。

今回のアルバムは、自身の名義では実に12年ぶりとなる通算4枚目のアルバム。近年もジェイZの『4:44』に参加するなど、多芸っぷりを発揮していた彼だが、本作ではセルフ・プロデュースの作品や兄であるステファン、幾度となくグラミー賞を獲得しているジャマイカを代表するプロダクション・チーム、スライ&ロビーといった、レゲエ畑のクリエイターを中心に起用。ゲストもステファンやメジャー・マイジャーといったレゲエ・ミュージシャンが顔を揃えた、原点回帰とも受け取れる作品に仕上がっている。

2016年に、アルバムに先駆けてリリースされたシングル曲”Nail Pon Cross”は、彼自身のプロデュースによるミディアム・ナンバー。コンピューターによる重低音を強調したビートはスレンテンのような80年代終わりから90年代初頭に流行したスタイルを踏襲したものだが、彼はナズやノートリアスB.I.G.のようなニューヨークのヒップホップ・ミュージシャンを連想させる、昔のソウル・ミュージックのような温かい音色を取り入れて、アメリカの音楽っぽく仕上げている。

また、彼自身がペンを執ったR.O.A.R.は、ブジュ・バントンの”Me & Oonu”をサンプリングした作品。マーチング・バンドっぽい軽快で緻密なビートをバックに、荒々しいパフォーマンスを聴かせてくれる。ブジュ・バントンのワイルドな歌声が、楽曲に攻撃的な雰囲気を加えている。

これに対し、ピットブルの作品に参加するなど、ダミアン同様アメリカでの活躍が目立つ兄、ステファンが参加した”Medication”は、生前のボブ・マーリーの音楽を思い起こさせる、生バンドによるゆったりとしたサウンドが心地よい曲。ステファンの艶やかなテナー・ヴォイスとダミアンのワイルドな歌声の組み合わせが面白い。歌とディージェイ、スタイルは違うが一緒に仕事をすることも多い二人だから作れる、際立った個性と一体感が両立された佳作だ。

そして、本作の隠れた目玉と言っても過言ではないのが、バウンティ・キラーやアシュリー・ロスなどの作品に携わってきた気鋭の若手、メジャー・マイジャーを招いた”Upholsteryv”だ。ピコピコという電子音を使った躍動感溢れるサウンドは、2000年代初頭、アメリカを中心に世界を席巻したダンス・ホール・レゲエを思い起こさせる。ファルセットを多用したメジャーのヴォーカルと、ダミアンのパンチが効いたパフォーマンスのコンビネーションも、いい味を出している。ボブ・マーリーの音楽が持つ親しみやすさと、21世紀に世界の耳目を惹きつけたダンス・ホールの斬新さを融合させた面白い曲だ。

今回のアルバムでも、レゲエをベースにしつつ、アメリカの音楽市場を意識してメロディやサウンドに工夫を凝らした、彼の持ち味が遺憾なく発揮されている。ボブの音楽がロックやソウル・ミュージックを取り入れながら唯一無二の個性を発揮したように、彼はヒップホップやエレクトロ・ミュージックを取り込みつつ、自分の音楽に落とし込んでいる。

ショーン・ポールやウェイン・ワンダーなど、アメリカの音楽を取り込んで成功を収めたレゲエ・ミュージシャンは少なくないが、アメリカの音楽を分解、研究して、自分の音楽の糧にした例は希少だと思う。海外のトレンドを意識しつつ、母国の音楽や自身のスタイルに昇華した好事例といえる傑作だ。

Producer
Damian Marley, Stephen Marley, Sly & Robbie, Stephen McGregor

Track List
1. Intro
2. Here We Go
3. Nail Pon Cross
4. R.O.A.R.
5. Medication feat. Stephen Marley
6. Time Travel
7. Living It Up
8. Looks Are Deceiving
9. The Struggle Continues
10. Autumn Leaves
11. Everybody Wants To Be Somebody
12. Upholsteryv feat. Major Myjah
13. Grown & Sexy feat. Stephen Marley
14. Perfect Picture feat. Stephen Marley
15. So A Child May Follow
16. Slave Mill
17. Caution
18. Speak life






ストーニー・ヒル
ダミアン“ジュニア・ゴング”マーリー
ユニバーサル ミュージック
2017-08-09

Denai Moore - We Used To Bloom [2017 Because Music]

2013年に4曲入りのEP『Saudade』でレコード・デビュー。翌年にはイギリス出身の音楽プロデューサー、Sbtrktのアルバム『Wonder Where We Land』に収録された”The Light”に客演したことで注目を集め、2016年にはアメリカのソウル・ミュージシャン、クリスチャン・アンドリュー・ベリシャージによるユニットJMSNのアルバム『It Is.』に収められている”Fantasize”に客演したことも話題になった、ジャマイカ生まれロンドン育ちのシンガー・ソングライター、デナイ・ムーア。

2014年に初のフル・アルバム『Elsewhere』をリリースしている彼女にとって、3年ぶり2枚目のアルバムが本作。前作同様、収録曲のほぼ全てで彼女がペンを執った意欲作になっている。

本作に先駆けて公開された”Trickle”は、ドラムの音圧を抑え、シンセサイザーを中心に据えた伴奏の上で、訥々と歌い上げる姿が印象的なミディアム・ナンバー。使っている音色こそ違うが、シャーデーやインディア・アリーにも通じる、さわやかなメロディが光る佳曲だ。

これに対し、”Leave It Up To You”は、電子音を強調したトラックと、繊細なヴォーカルのコンビネーションが魅力的なミディアム・ナンバー。電子音楽とソウル・ミュージックを融合させた作品といえば、サンファケイトラナダを思い出すが、彼らの楽曲と比べると音数は少なくシンプルで、ヴォーカルを丁寧に聴かせている。電子音楽のエッセンスを巧みに取り込んで、先鋭的なサウンドとシンプルだが味わい深いメロディを両立した、面白いソウル・ミュージックだ。

そして、”Does It Get Easier?”はシンセサイザーを駆使した幻想的なサウンドと、彼女の透き通った歌声の組み合わせが心地よいミディアム・ナンバー。シンセサイザーを駆使して、涼しげな雰囲気のR&Bにまとめ上げたこの曲は、シザシドの作品にも少し似ている。R&Bやヒップホップが好きな人は、この曲から聴いてほしい。アメリカのR&Bを意識しつつ、彼女の持ち味を活かした楽曲に落とし込んでいる。

そして、本作の収録曲では唯一、フィーチャリング・アーティストを起用した”All The Way”はロンドン生まれのシンガー・ソングライター、クワブスを起用したスロー・ナンバー。シンセサイザーを多用した重厚で荘厳なサウンドの上で、細くしなやかな歌声を響かせるデナイと、ジェラルド・レバートを彷彿させる、太く柔らかいヴォーカルを披露するクワブスのコンビネーションが光っている。クワブスのグラマラスなヴォーカルが、デナイの繊細な声の魅力を引き出しつつ、楽曲にソウルフルな雰囲気を与えている。

彼女の音楽の面白いところは、ソウル・ミュージックやR&Bをベースにしつつ、ロックや電子音楽の手法を取り入れ、聴きやすさと斬新さを両立している点だと思う。その手法はR&Bやヒップホップを軸に、色々な音楽を取り込んで、独自の音楽を構築するインターネットに通じるものがある。

R&Bの可能性を切り開いた、新鮮さと普遍性を両立したアルバム。マックスウェルアリシア・キーズのように、幅広い年代の人々から長気に渡って親しまれそうな、味わい深い音楽だ。

Track List
1. Let It Happen
2. Desolately Devoted
3. Trickle
4. Twilight
5. Do They Care?
6. Leave It Up To You
7. Bring You Shame
8. Does It Get Easier?
9. Poor Person
10. All The Way feat. Kwabs





We Used to Bloom
Denai Moore
Because Music / Sire
2017-06-23

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