ブラック・ミュージック千本ノック~SoulとR&Bと色々な音楽~

管理人が手に入れたR&Bのアルバム、1000枚の紹介文を書き続けるブログ その先に見えるものは天国か地獄か・・・

ソウル

Lalah Hathaway - Honestly [2017 Hathaway Entertainment]

90年に自身の名前を冠したアルバム『Lalah Hathaway』で表舞台に登場。それ以来、絹のように滑らかで繊細な歌声と、丁寧で緻密な歌唱を武器にファンを増やしてきた、イリノイ州シカゴ出身のシンガー・ソングライター、レイラ・ハザウェイ。

“A Song For You”や”The Ghetto”などのソウル・クラシックを残し、カーティス・メイフィールドやジーン・チャンドラーと並んで、シカゴを代表するシンガー・ソングライターとして今も愛されているダニー・ハザウェイを父に持つ彼女は、シカゴの芸術学校を卒業するとヴァージン・レコードと契約。バークリー音楽院で学びながら、プロとしてのキャリアをスタートする。

デビュー作である『Lalah Hathaway』で見せた、20代前半(当時)とは思えない落ち着いた歌唱と、洗練された演奏で音楽通を唸らせた彼女は、R&Bチャートの18位に入るなど一気にブレイク。その後は、2016年までに7枚のアルバムを録音する一方、メアリーJ.ブライジやチャカ・カーンなど、多くの有名ミュージシャンの作品に参加。中でも、2015年に発売されたケンドリック・ラマーの『To Pimp a Butterfly』や、2012年にリリースされたロバートグラスパーの『Black Radio』は、ヒット・チャートと音楽賞、両方で高い成果を上げる傑作となった。また、彼女自身も2015年のアルバム『Lalah Hathaway Live』と同作に収められている”Angel”や”Little Ghetto Boy”でグラミー賞など、複数の音楽賞を獲得。着実に成果を残してきた。

このアルバムは、彼女にとって『Lalah Hathaway Live』以来、約2年ぶりとなるフル・アルバム。スタジオ録音の作品としては『Where It All Begins』以来、実に7年ぶりのアルバムとなる本作は、ソランジュやジル・スコット、SiRなどを手掛けている、カリフォルニア州イングルウッド出身のシンガー・ソングライター、ティファニー・ガッシュがプロデューサーとして参加。ゲストの人数は最小限に抑え、彼女の歌にスポットを当てた、本格的なR&B作品を披露している。

アルバムのオープニングを飾る”Honestly”は、レイラとティファニーによる共作曲。重い低音とビヨビヨというシンセサイザーの音色を使ったトラックが、モダンな印象を与える曲だ。この曲の上で、繊細だがふくよかな歌声を駆使して、メロディを丁寧に歌う姿が光っている。起承転結のはっきりしたメロディは、父、ダニーや彼女が残してきた作品にも似た雰囲気を持っているが、電子楽器を多用することで、現代のR&Bとして聴かせている。

続く、”Don't Give Up”は、今年発売されたデビュー・アルバム『All Things Work Together』も記憶に新しい、ヒューストン出身のクリスチャン・ラッパー、レクレーがゲストとして参加した作品。 シンセサイザーの音を重ね合わせて、荘厳な雰囲気を醸し出したトラックの上で、低い声域を強調したヴォーカルを聴かせるレイラのパフォーマンスが光る曲だ。厳かな雰囲気のトラックに乗って、軽やかに言葉を繰り出すレクレーの姿も格好良い。厳粛な雰囲気とダイナミックなグルーヴが一体化した良曲だ。

また、ティファニー・ガッシュとのデュエット曲”What U Need”は、メアリーJ.ブライジの作品を彷彿させる、ヒップホップの要素を取り込んだ重厚なトラックが魅力的な楽曲。シンセサイザーを使った重いビートに乗って、艶めかしい歌声を響かせるミディアム・ナンバーだ。サビで聴かせる硬い声による荒っぽい歌唱が、メアリーJ.ブライジにそっくりなところも面白い。脇を固めるティファニーの歌唱が、彼女のパフォーマンスを引き立てている点も見逃せない。

そして、本作の収録曲では少し異色なのが”Won't Let It Go”だ。アコースティック・ギターの演奏を軸に据えたバック・トラックに乗せて、淡々と歌う彼女の姿が魅力のミディアム・バラード。しなやかなメロディはダニーの作品を思い起こさせるが、サビのところでヒップホップのライブのようなコール&レスポンスを盛り込んで見せるなど、ほかの曲とは一味違う演出が加わっていて面白い。21世紀を生きる彼女の感性と、往年のジャズやソウル・ミュージックのエッセンスがうまく混ざり合った佳曲だ。

今回のアルバムは、流麗なメロディに繊細さと強靭さを兼ね備えた歌声、きめ細やかな歌の表現が合わさった、シンプルで味わい深い楽曲が揃っている。そこに、シンセサイザーを駆使した現代的なサウンドを得意とするティファニー・ガッシュのプロダクション技術が加わり、70年代のソウル・ミュージックを彷彿させる美しいメロディと、2017年のR&B作品らしいモダンなサウンドが同居した、懐かしさと新しさが同居した作品に仕上がっているのが面白いところだ。この、往年のソウル・ミュージックをベースにしながら、新しい音を積極的に取り入れる姿勢が、彼女の魅力なのだろう。

リスナーに新鮮な印象を与えつつ、繰り返し聴きたいと思わせる普遍性も兼ね備えた面白い作品。ヒップホップに慣れ親しんだ若い人から、新しい音楽に抵抗のある年配の人まで、あらゆる世代の人に触れてほしい、2017年のクラシックだと思う。

Producer
Lalah Hathaway, Tiffany Gouche

Track List
1. Honestly
2. Don't Give Up feat. Lecrae
3. Change Ya Life
4. What U Need feat. Tiffany Gouche
5. Call On Me
6. Won't Let It Go
7. Storm
8. y o y
9. I Can't Wait



Honestly
Lalah Hathaway
8th Floor Production
2017-11-03

Golden Bridge - T.B.C. [2017 Spirit Soul]

2014年にシングル”Move Your Body”(後述のアルバムの収録曲とは別のインストゥメンタル作品)を発表。70年代、80年代のディスコ音楽を中心に、色々なスタイルのブラック・ミュージックを吸収、昇華した作風でファンを増やしてきた、プロデューサーのT-Grooveこと高橋佑貴。バークリー音楽院を卒業後、東京とボストンを拠点に活動。コモンやナズ、キース・スウェットなどの楽曲を取り上げた『Re:Live -JAZZ meets HIP HOP CLASSICS』が注目を集め、ソーシィー・レディーや山口リサなど、様々な国のアーティストとコラボレーションしてきた、monologこと金坂征広。両者が新たに結成した音楽ユニットが、このゴールデン・ブリッジ。(グループ名の由来は、両者の名字「”金”坂」と「高”橋”」だろうか?)

既にT-Grooveのアルバム『Move Your Body』やG.Rinaのシングル”想像未来”のリミックスで共演している二人が組んだ本作。レコーディングには金坂が運営するKomugiko Studioを使用。演奏には高橋と金坂に加え、管楽器でクガ・ユウが参加。一部の楽曲では海外のシンガーをゲストに迎えるなど、収録曲の少ないシングルながら、豪華で濃密な作品になっている。

1曲目の”Tribal”は、二人が共作したインストゥメンタル作品。パーカッションを強調した軽妙なビートは、ディスコ音楽から多くの影響を受けた、90年代以降のハウス・ミュージックを思い起こさせる。ヴィブラホンやギター、キーボードを組み合わせた演奏は、70年代から80年代にかけて流行した、ドナルド・バードやゲイリー・バーツのようなソウル・ミュージックを取り入れたジャズ・ミュージシャンの演奏っぽい。

続く”Baby, I Got Your Sugar”は、モデルとしても活躍している女性シンガー、アル・コープランドと、ニューヨークを拠点に活躍するヴォーカリスト、リー・ウィルソンの二人を招いたミディアムナンバー。ストリングスのような音色を使った伴奏が、70年代後半のバリー・ホワイトやアイザック・ヘイズの音楽のような上品な雰囲気を醸し出している。軽やかなメロディの曲でありながら、丁寧な歌唱で落ち着いた印象を与える二人のヴォーカルや、緻密なアレンジが光っている。

そして、ボストン出身のジャズ・シンガー、リオン・ビールを起用した”Charles River Drive”は、80年代後半に流行した音楽スタイル、ブラック・コンテンポラリーを思い起こさせるスタイリッシュなメロディとアレンジが魅力のスロー・ナンバー。初めて聞いた時は、カシーフかルーサー・ヴァンドロスの未発表曲ではないかと勘違いしてしまったくらい、高級感溢れる洗練された演奏と、貫禄はあるが親しみやすい雰囲気のヴォーカルが、聴き手の心を強く打つ作品だ。

彼らの作品の面白いところは、それぞれの曲が異なる時代やジャンルの音楽をベースにしながら、一貫したスタイルを持つ、一つのアルバムのように聴かせているところだと思う。ジャズの演奏手法やソウル・ミュージックのヴォーカル技術、ディスコ音楽やクラブ・ミュージックの構成など、色々なジャンルの手法を曲の展開に合わせて組み合わせることで、多彩なスタイルと、作品の一貫性を両立していると思う。

だが、何より凄いのは、国や地域を意識させない各人の確固たる個性と技術だと思う。日本在住のトラックメイカーとアメリカ在住の日本人演奏者、アメリカを拠点に活動するシンガーと、出自もキャリアもバラバラな面々だが、70年代から80年代にかけて流行した、スタイリッシュなソウル・ミュージックをベースを共有することで、一つの方向にまとまりつつ、各人の個性が発揮されている。

スペイン語の曲が英語圏のヒット・チャートを席巻し、アジア出身のアイドルがワールド・ツアーを行う時代を象徴する、作者の人種や出身地域よりも「作品の中身」でしている本格的なソウル作品。今後、彼らが誰を巻き込み、どんな音楽を生み出すのかとても楽しみなコラボレーション企画だ。

Producer
Yuki monolog Kanesaka, Yuki T-Groove Takahashi

Track List
1. Tribal
2. Baby, I Got Your Sugar feat. Al Copeland & Lee Wilson
3. Charles River Drive feat. Leon Beal



T.B.C.
Spirit Soul
2017-11-22

Sharon Jones & The Dap-Kings ‎– Soul Of A Woman [2017 Daptone]

アレサ・フランクリンやメイヴィス・ステイプルズを彷彿させる、ふくよかでダイナミックな歌唱が魅力のシャロン・ジョーンズを核に据え、名うてのミュージシャン達が脇を固めたスーパー・バンド、ダップ・キングス。 90年代中ごろから、ニューヨークを拠点に活動していた彼女達は、生演奏によるパワフルなパフォーマンスと、CD全盛期の時代に積極的にアナログ・レコードを発売するビジネス・スタイルが話題になり、徐々にファンを増やしていく。

また、バンドを支える演奏者の高いスキルは有名ミュージシャンの間でも注目を集め、エイミー・ワインハウスやマーク・ロンソンなどの作品に起用されたほか、バンドのメンバーが結成したメナハン・ストリート・バンドの”Make the Road by Walking”は、ジェイZなどのヒップホップの楽曲にサンプリングされるなど、様々なジャンルのアーティストから高い評価を受けてきた。

しかし、2013年にシャロン・ジョーンズの胆管癌が見つかると、その後は長い闘病生活と並行しての活動に突入する。そんな中でも、ホリデー・アルバムを含む複数の作品を発表し、病と闘いながら音楽活動を行うシャロンを題材にしたドキュメンタリー映画が発表をするなど、限られた時間の中で多くの足跡を残してきたが、2016年の11月に彼女はこの世を去ってしまう。

本作は、彼女が生前に録音した未発表曲を集めた編集盤。当初はアルバム2枚分の楽曲を作る予定だったが、本作では完成に至った11曲を収めている。

アルバムの1曲目は、本作からの先行シングルである”Matter Of Time”。ギターを担当しているビンキー・グリップタイトがペンを執ったこの曲は、三連符を効果的に使った優雅な雰囲気が魅力のミディアム・ナンバー。マヘリア・ジャクソンのゴスペル作品を思い起こさせる雄大なコール&レスポンスと、荒波のように強烈な音を繰り出すホーン・セクションのコンビネーションが面白い曲だ。

また、バンドの中心であるボスコ・マンが制作した”Just Give Me Your Time”は、60年代のジェイムズ・ブラウンを思い起こさせる激しい感情表現と、一つ一つのフレーズをじっくりと歌い込むシャロンの姿が光るスロー・ナンバー。絶妙なタイミングで彼女の歌を盛り立てる演奏が、ヴォーカルの豊かな表情を引き出した良曲だ。力技だけではない、彼女の多才な一面が垣間見れる魅力的な作品だ。

そして、ギターのジョー・クリスピアーノが提供した”Come And Be A Winner”は、軽やかなギターの伴奏が心地よいミディアム・ナンバー。ギターの音色を強調して爽やかな雰囲気を演出する手法は、スピナーズの”It’s A Shame”にも少し似ているが、この曲の演奏はもっと柔らかい。豊かな歌声を巧みに操って、リスナーに語り掛けるように歌うシャロンの姿が印象的な曲だ。

だが、本作のハイライトは何といっても彼女自身がペンを執った”Call On God”だろう。オルガンやコーラスを加えた本格的なゴスペル作品でもあるこの曲は、生演奏をバックに朗々と歌う姿が魅力的。 分厚いコーラスをバックに力強い歌声を聴かせる姿は、70年代にアレサ・フランクリンが発表したライブ録音を連想させる。闘病中とは思えない、力強さと生命力に溢れた歌唱が堪能できる名演だ。

今回のアルバムは、ふくよかで表情豊かなシャロンのヴォーカルと、ダップ・キングスの緻密な演奏が合わさった良質な作品だと思う。見方によっては、過去の路線を踏襲したようにも映るが、それをマンネリ化ではなく、バンドの一貫した作風だと思わせる説得力が、彼女達の凄いところだと思う。むしろ、病と闘いながらも、それ以前と変わらないパワフルなパフォーマンスを披露し続けている彼女と、それを普段の録音と同じような演奏で支えるバンドに、最後までブレることなく貫かれた、彼女達のチームワークと強い信念さえ感じられた。

音楽史に残る傑作を残してきた彼女達の最終作にふさわしい、充実した内容。今後、どんなシンガーを迎えても、本作みたいな音楽は作れないと思わせる力作だ。

Producer
Bosco Mann

Track List
1. Matter Of Time
2. Sail On!
3. Just Give Me Your Time
4. Come And Be A Winner
5. Rumors
6. Pass Me By
7. Searching For A New Day
8. These Tears (no Longer For You)
9. When I Saw Your Face
10. Girl! (you’ve Got To Forgive Him)
11. Call On God





SOUL OF A WOMAN [CD]
SHARON JONES & THE DAP-KINGS
DAPTONE RECORDS
2017-11-17

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