melOnの音楽四方山話

オーサーが日々聴いている色々な音楽を紹介していくブログ。本人の気力が続くまで続ける。

デンマーク

New Street Adventure - Stubborn Sons [2017 Acid Jazz]

2007年に、当時バーミンガム大学の学生だったニック・コルビンが中心となって結成した、3人組(現在は5人組)のロック・バンド、ニュー・ストリート・アドベンチャー。同年には、ドラムを加えた4人体制で、初の録音作品となるEP『 An Excuse to Talk』を発表。その後は、大小様々なステージを経験しながら、複数の作品をリリース。バーミンガムに拠点を置く実力派バンドとして、学生を中心に幅広い世代の人々の支持を集めた。

そして、2010年には活動拠点をロンドンに移し、メジャー・デビューを目指して活動を本格化する。まず、2011年には、サウス・ロンドン出身のソウル・シンガー、ノエル・マッコイをプロデューサーに招き、ホーンセクションを大胆に取り入れたソウル・ミュージック色の強いEP『Just the Kind of People』をリリース。60年代の黒人音楽を現代のロックと融合した個性的なサウンドで、新しい音楽に敏感な人々の間で話題となった。だが、この時期を境に、メンバーが頻繁に入れ替わるなど、平坦とは言えない道を歩み始める。

しかし、2012年に自主制作のEP『Say It Like You Mean It was』を発売すると状況は一転、同作からのシングル・カットされた”Hangin' on / hangin' up”がBBCのプレイリスト入り、彼らの知名度は急上昇。2014年にはブラン・ニュー・ヘビーズなど、多くの有名ミュージシャンを輩出してきた、ロンドンに拠点を置くアシッド・ジャズ・レコードと契約を結ぶ。そして、同年には初のフル・アルバム『No Hard Feelings 』を発表。世界各地の熱心なロック・ファン、ソウル・ファンを魅了した彼らは、この作品を切っ掛けに、日本を含む世界各地のロック・フェスなどに招待されるようになった。

本作は、彼らにとって2枚目のフル・アルバム。1作目を手掛けているザ・ミルクのミッチー・アイリングをプロデューサーに迎え、前作同様、ソウル・ミュージックのエッセンスをふんだんに盛り込んだ、ポップだけど味わい深いロックを聴かせている。

アルバムの1曲目を飾る”(What's So Good About) Happiness”は、本作に先駆けて2016年に7インチがリリースされたシングル曲。重いドラムと図太い音のベースが生み出すダイナミックなグルーヴの上で、乾いた音色のギターと、温かい音色のキーボードが鳴り響く、懐かしい雰囲気のアップ・ナンバー。硬い声質を活かした、グラマラスだけど、どこか逞しいニックのヴォーカルは、エルビス・コステロにちょっと似ている。

これに対し、ミディアム・テンポのバラードの”Why Should We Do Anything”は、小刻みに演奏されるベースや、キーボードを使ったメロウなフレーズが、70年代、80年代にアイズレー・ブラザーズが世に送り出した名曲”Footsteps in the Dark”や”Between The Sheets”を思い起こさせる作品。流麗なメロディを、あえて肩の力を入れて荒っぽく歌うことで、パワフルなロック・バラードのように聴かせている点が面白い。

一方、ソウル・ミュージックの要素を強く押し出したのは”Hard Living (No Easy Way Out)”だ。ピアノやドラムがリズミカルに音を刻む演奏をバックに、ニックがグラマラスな歌声で伸び伸びと歌ったアップ・ナンバー。モータウンのミュージシャン達やカーティス・メイフィールドといった、アメリカ北部のソウル・シンガー達から影響を受けた楽曲だが、太く温かい音色の伴奏とポップなメロディ、甘くふくよかな歌声を使った軽妙なメロディは、メイヤー・ホーソンにもちょっと似ている。

そして、本作の収録曲の中でも屈指のクオリティと言っても過言ではないのが、ミディアム・バラードの” If That's All You Got”だ。小刻みに演奏されるベース・ラインや、ロマンティックなキーボードのフレーズは”Why Should We Do Anything”と似ているが、ロマンティックなメロディを丁寧に歌うニックや、随所で曲を盛り上げる緻密なコーラスなど、ヴォーカル・パートがよりソウル・ミュージックっぽくなっている。

彼らの音楽は、ソウル・ミュージックへの造詣の深さと愛情を示しながら、現代の機材や流行を意識した、懐かしさと新鮮さが同居したものになっている。イギリスには、古くはビートルズやローリング・ストーンズ、近年ではエイミー・ワインハウスやアデルなど、ブラック・ミュージックの要素を取り入れた作風で成功を収めたミュージシャンが沢山いるが、彼らはその流れを汲みつつ、自分達の声質や楽器の響きを活かしたワイルドでポップな作品に仕上げることで、独自性を打ち出しているのだと思う。

精密だけど荒々しい、ダイナミックだけど繊細なパフォーマンスが魅力的な、ブルー・アイド・ソウルの佳作。メイヤー・ホーソンやイーライ・ペイパーボーイ・リードなどの、ソウル・ミュージックから影響を受けたミュージシャン達の音楽が好きな人にお勧めだ。

Producer
Mitch Ayling

Track List
1. (What's So Good About) Happiness
2. Smooth Talker
3. Rascal
4. One and the Same
5. Why Should We Do Anything
6. Hard Living (No Easy Way Out)
7. Something More Than This
8. If I Had You Back In My Life
9. If That's All You Got
10. Can't We Just Be Friends





Stubborn Sons
New Street Adventure
Pias America
2017-03-24

Black Dylan – Hey Stranger [2016_Black Dylan Records]

シンガー・ソングライターのワフェンデと、DJやプロデューサーとしても活動しているニュープレックスによる、デンマーク発のソウル・ユニット、ブラック・ディランにとって1枚目のオリジナル・アルバム。

2015年にアルバムに先駆けてリリースされたシングル”Don’t Wanna Be Alone”では、初期のシュープリームスやヴァンデラスを彷彿させるポップでキャッチーなサウンドと、ジョン・レジェンドを思い起こさせる、泥臭い声で丁寧に歌うワフェンデの姿が印象的だった二人。待望のファースト・アルバムでは、同曲のような60年代以前のソウルから影響を受けたことを伺わせる楽曲が、数多く収められている。

アルバムの発売前にリリースされたもう一つのシングル曲“Hey Stranger”は、曇ったホーンの音色と、今時のR&Bっぽい打ち込みによる安定したビートを組み合わせて、アナログ楽器の温かい音色と精密な演奏技術で独特のサウンドを生み出した、モータウンの作風を現代に蘇らせたアップ・ナンバー。この他にも、フィンガー・スナップとウッドベースっぽい音色のベースを使って、街頭で演奏されていた初期のドゥー・ワップっぽく聴かせたミディアム”The One”。崩れ落ちるような歌と演奏で、初期のジェイムズ・ブラウンのダイナミックなパフォーマンスを取り入れつつ、ヒップホップで用いられるような硬いビートを使うことで、21世紀のリズム&ブルース像を示したスロー・ナンバー”She Said I Was A Failure”など、60年代以前のソウル・ミュージックやリズム&ブルースのスタイルをベースに、新しい楽器も積極的に使って、新しいブラック・ミュージックの形を感じさせる良曲が揃っている。

往年の黒人音楽を現代風にアレンジしたと聞くと、メイヤー・ホーソンやジョン・レジェンドを思い出す人もいるかもしれない。実際、ワフェンデの歌を聴くと、ジョンに似た部分も見受けられる。しかし、彼の歌声はロック・シンガーのように硬く、ソウル・シンガーに多いゴスペルの影響が薄いうえ、バックのトラックも音数を絞り込んだシンプルなもので、現行のR&Bとリズム&ブルースの中間にあるものだと思う。この点で、分厚いトラックを背景に、豊かな声を披露するほかのソウル・シンガーとは一線を画しているだろう。

イギリスのイーライ・ペイパーボーイ・リードやフランスのベン・ロンクル・ソウルに続く、欧州発のソウル・リヴァイバル。初期のルーファス・トーマスやバレット・ストロングのような、60年代初頭のソウルやリズム&ブルースを現代風にリメイクした、ありそうでなかったアルバムだ。

Track List
1. Hey Stranger
2. Get Up Child
; 3. Don’t Wanna Be Alone
4. You’re Getting Stronger
5. The One
6. She Said I Was A Failure
7. Who Got My Back
8. Keep Your Eyes On The Road
9. Papa
10. Hummin’





Hey Stranger
Black Dylan
Imports
2016-09-02

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