melOnの音楽四方山話

オーサーが日々聴いている色々な音楽を紹介していくブログ。本人の気力が続くまで続ける。

ナイジェリア

Seun Kuti & Egypt 80 - Black Times [2018 Strut]

母国ナイジェリアのダンス・ミュージックと、アメリカやヨーロッパの黒人音楽を組み合わせた独特のサウンドや、強烈なメッセージを含む歌詞で世界にその名を轟かせ、アフロ・ビートというジャンルを確立した、イギリス出身のナイジェリア人ミュージシャン、フェラ・クティ。彼自身は97年にHIVの合併症でこの世を去ったものの、残されたバンド・メンバーや彼の子供達の手によって、その音楽は継承されてきた。

ショーン・クティは、フェラが遺した子供の一人。末っ子でありながら、幼いころから父のバンドでステージに立ち、彼の死後は父のバンドを受け継いで、現在も世界各地のステージに立っている。

本作は、2014年の『A Long Way To The Beginning』以来となる、通算4枚目のスタジオ・アルバム。前作ではロバート・グラスパーを招いていたが、本作ではサンタナを起用。父が遺したバンドと一緒に、アフロ・ミュージックを2018年仕様にアップデートした作品を録音している。

アルバムの1曲目は、バンドの面々による”Last Revolutionary”。複数のパーカッションと管楽器を組み合わせて、中毒性のある演奏を聴かせるバンドと、マルコムXやキング牧師のような、力強い言葉を投げかける、ショーンのヴォーカルが光る曲。フェラ・クティの魅力を丁寧に継承したパフォーマンスが楽しめる。

続く”Black Times”は、アイズレー・ブラザーズとのコラボレーション・アルバムも記憶に新しい、カルロス・サンタナを招いた作品。前曲より少しテンポを落とした伴奏に絡みつく、カルロス・サンタナの艶めかしいギターが格好良いミディアム・ナンバーだ。一つのフレーズを少しずつ変えて、曲に起伏を与えるエジプト80の演奏と、時に荒々しく、時に艶めかしく演奏するカルロスのギターのコンビネーションが聴きどころ。

また、”Kuku Kee Me”は、躍動感あふれるビートと、陽気な鍵盤楽器、勇壮なホーン・セクションを組み合わせたループが格好良いアップ・ナンバー。ホーン隊の演奏は、ジェイムス・ブラウンなどのファンク・ミュージックのエッセンスも垣間見える。ナイジェリアの音楽と、欧米の黒人音楽を融合した、フェラのスタイルを丁寧に踏襲した良曲だ。

そして、本作の収録曲では珍しい、ゆったりとしたテンポの”African Dreams”は、リズム・セクションとベースが生み出す粘り強いグルーヴが魅力の作品。テンポを落とすことで、起伏のある伴奏を丁寧に聴かせる技術が素晴らしい。一つのフレーズを繰り返すことで、中毒性のある楽曲を作る手法は、ハウス・ミュージックやヒップホップでもしばし見かけるが、人間が楽器を演奏することで、細かく曲調を変えられるのは、バンドならではの技だろう。

60年代から活動し、フェラの死後はショーンに引き継がれた、バンドの持ち味とアフロ・ビートの魅力は、このアルバムでも変わることなく引き継がれている。ナイジェリアの伝統音楽をベースに、ジャズやファンクの要素を加え、近年はハウス・ミュージックやヒップホップ、ラテン音楽のエッセンスを盛り込むようになった彼らの音楽は、アメリカの黒人音楽と一線を画しながら、アフリカの音楽を聴く機会の少ない人にも、聴きやすいものに仕立て上げられている。

メンバーが変わっても、色々な音楽を飲み込みながら、進化を続けることで、フェラ・クティの思想を体現しているバンドの魅力を思う存分堪能できる魅力的な作品。流行のポップスとは一味違う、唯一無二のグルーヴが心に残る良盤だ。

Producer
Seun Kuti, Arnaud Granet

Track List
1. Last Revolutionary
2. Black Times feat. Carlos Santana
3. Corporate Public Control Department
4. Kuku Kee Me
5. Bad Man Lighter (B.M.L.)
6. African Dreams
7. Struggle Sounds
8. Theory Of Goat And Yam






Wizkid - Sounds from the Other Side [2017 Starboy, RCA, Sony]

子供のころからフェラ・クティやボブ・マーレーなどの音楽に慣れ親しみ、11歳の頃になるとレコーディング活動を開始。同時に、リル・プリンズの名義で多くのステージを経験してきた、ナイジェリアのラゴス出身のシンガー・ソングライター、ウィズキッドことアヨデジ・イブラヒム・バロガン。

2010年に初のフル・アルバム『Superstar』をリリースすると、アフロ・ビートとヒップホップやR&Bを融合した作風が評判を呼び、ナイジェリアの音楽賞でアルバム・オブ・ザ・イヤーを獲得。ナイジェリアを代表するアーティストの一人に上り詰めた。また、2014年には2枚目のアルバム『Ayo』を発表。フェミ・クティのようなナイジェリア出身のアーティストに加え、エイコンやウェイルのようなアメリカのミュージシャンも起用した本作も成功を収め、アフリカ地域を代表する人気ミュージシャンと称されるようになった。

3年ぶりの新作となる今回のアルバムは、RCAソニー(ただし、RCAはソニー系列)が配給を担当した世界デビュー作。サーズやスペルズといった、ナイジェリア出身のプロデューサーを起用しつつ、ドレイククリス・ブラウン、メジャー・レイザーなど、アメリカで人気のヒップホップ、R&Bアーティストを何人も招いた豪華な作品になっている。

ドレイクをフィーチャーした”Come Closer”は、サーズがプロデュースを担当。色々な音色を取り入れた色鮮やかなビートは、ドレイクの”Passionfruits”にも似ているが、こちらの方がビートは重い。声質が似ているだけでなく、歌うように言葉を繋ぐラップが特徴の両者のパフォーマンスは、一聴しただけでは判別できないくらいそっくりだ。そんな二人が、微妙な声質の違いを活かしてなめらかなマイク・リレーを行う姿は必見だ。

これに対し、メジャー・レイザーがプロデュースとパフォーマンスで参加した”Naughty Ride”は、アフロ・ビートとエレクトロ・ミュージックを融合した不思議なトラックが印象的なアップ・ナンバー。軽妙でリズミカルなビートに、アクセントとして電子音を加えたビートは新鮮だ。斬新なトラックの上で、流麗なメロディを響かせるヴォーカルも意外性があって面白い。

しかし、本作の斬新さを強く感じるのは、なんといってもクリス・ブラウンを招いた”African Bad Gyal”だろう。プロデュースはサーズだが、アフロビートにギターやサイレンの音を組み合わせたトラックは、ダンス・ホール・レゲエやトラップのようにも聴こえる。そんなビートをバックに、太い声で軽やかに言葉を繋ぐウィズキッドと、しなやかで色っぽい歌声を披露するクリス・ブラウンが個性豊かなパフォーマンスを披露する面白い曲だ。

そして、本作の最後を締めるのがトレイ・ソングスが客演した”Gbese”は、デルBが制作を担当した作品。低音を絞ったビートは、カリプソのようにも聴こえる新鮮なもの。その上で、滑らかな声質を活かした丁寧な歌唱がウリのトレイ・ソングスと、軽やかなラップを披露するウィズキッドのコンビネーションも見逃せない。

彼の音楽の面白いところは、アフロ・ビートをベースにしながら、アメリカのヒップホップやR&Bのトレンドを的確に押さえている点だろう。ヒップホップやR&Bがアフロ・アメリカン由来の音楽とはいえ、アフリカのポップスとは異なる点が数多くある。彼の音楽はその差異と正面から向き合い、アメリカの音楽をアフロ・ビートに多様性をもたらすパーツとして使いこなしている点が特徴的だと思う。

世界中の音楽市場に影響を与えてきたアメリカのブラック・ミュージックを丁寧に咀嚼し、母国のポピュラー音楽と組み合わせて、自身の音楽に落とし込んだ魅力的なアルバム。世界には魅力的なミュージシャンが沢山いることを再認識させてくれる良作だと思う。

Producer
Sarz, Del B, Major Razer, DJ Mastard etc

Track List
1. Sweet Love
2. Come Closer feat. Drake
3. Naughty Ride feat. Major Lazer
4. African Bad Gyal feat. Chris Brown
5. Daddy Yo feat. Efya
6. One for Me feat. Ty Dolla Sign
7. Picture Perfect
8. Nobody
9. Sexy
10. All for Love feat. Bucie
11. Dirty Wine feat. Ty Dolla Sign
12. Gbese feat. Trey Songz






Wayne Snow ‎– Freedom TV [2017 Tartelet Records]

ナイジェリア出身、現在はベルリンを拠点に活動するシンガー・ソングライター、ウェイン・スノー。

ベルリン移住後は、マックス・グリーフやニュー・ギニアといった電子音楽、ヒップホップ畑のクリエイターの作品でマイクを握る一方、自身の名義でも、2014年にシングル『Red Runner』を、翌年には『Rosie』を発表。それ以外にも、ベルリンをはじめ、ニューヨークやロンドン、シドニーなど、世界各地のステージでパフォーマンスを披露。精力的に活動してきた。

本作は、彼にとって初めてのフル・アルバム。プロデューサーにはマックス・グリーフやニュー・ギニア、ニュー・グラフィックといった、これまでにコラボレーションをしたことのあるクリエイターが集結。彼自身もヴォーカルだけでなく、ソングライティングやプロデュースなどで腕を振るった力作になっている。

アルバムの1曲目”Cooler”は、彼が他のミュージシャンとは一線を画していることをリスナーに感じさせる、このアルバムの作風を象徴するような楽曲。フライング・ロータスやトキモンスタのようなエレクトロ・ミュージック畑のクリエイターが多用するような電子音を使った、マックス・グリーフ作のトラックと、マックスウェルのような繊細さと、ディアンジェロのように絶妙な力加減を兼ね備えたウェインのヴォーカルが光る、神秘的な雰囲気のミディアム・ナンバー。音と音の隙間を長めに取り、「響き」を聴かせるトラックは、電子音楽畑の人間の持ち味が発揮されていると思う。

これに対し、2014年にシングル化された”Red Runner”は、ギターっぽい音色の伴奏や、ハウス・ミュージックのビートを取り入れたアップ・ナンバー。フランキー・ナックルズやジョーイ・ネグロのようなハウス・ミュージックの要素を取り入れつつ、テンポを変化させたり、色々な音色を挟んだりすることで、起伏に富んだ楽曲に仕上げている。

これに対し、もう一つのシングル曲である”Fall”は、電子音楽とソウル・ミュージックを融合させたR&B寄りの作品。甘い音色を響かせるギターや、ビヨビヨという電子音、R&Bではあまり耳にしない、変則的なビートなど、多くの要素を詰め込みながら、音数は少なく、シンプルなトラックをバックに、幻想的な歌声を響かせる楽曲。楽曲の中盤で、ビートが四つ打ちに変化するなど、ヒップホップのクリエイターとは一味違う曲作りに、電子音楽のクリエイターの矜持を感じる。余談だが、この曲のほか、”Red Runner”を含む序盤の4曲など、10曲中6曲がマックス・グリーフのプロデュース。一人のクリエイターがこれほどのバラエティ豊かな楽曲を作ったあたりに、エレクトロ・ミュージックの表現の幅広さと奥深さを再認識させられる。

だが、本作の隠れた目玉は”Rosie”だと思う。昔のレコードからサンプリングしたような温かい音色のドラムに、アナログ・シンセシンセサイザーの音とデジタル機材を使い分けた癖のある伴奏を組み合わせたトラックと、抽象的なメロディやファルセットを多用したヴォーカルのコンビネーションが素晴らしい、ディアンジェロの”Brown Sugar”を彷彿させるミディアム・ナンバー。本作の中では最も電子音楽の影響が薄い曲だが、楽器の音の並べ方や、ヴォーカルの使い方は、他の曲と同じスタイル。彼らの表現の幅の広さにも驚かされるが、それ以上に、ディアンジェロの先見性を再認識させられる魅力的なミディアム・ナンバーだ。

今回のアルバムは、電子音楽のバラエティ豊かなビートを用いて、アメリカのR&B作品とは一味違う、独創的な作品に仕上がっている。もっとも、サンファの『Process』FKJの『French Kiwi Juice』ケイトラナダの『‎99.9%』を聴いたときにも感じたのだが、電子音楽のクリエイターが作るR&Bは、メロディ、歌声、トラックの三つのバランスをとるのが凄く難しいように映る。だが、このアルバムで、上述の三者同様、主役の歌声や楽曲のメロディを大切にしつつ、多彩な楽曲を「R&Bに聴こえる範囲で」作り上げた彼らの技術と、ウェインの作曲、歌唱能力には目を見張るものがある。

本作は、R&Bには生演奏やサンプリング音源、美しいメロディが欠かせないと思っていた人には異色に映るだろう、だが、抽象的なトラックや、様々な電子音を駆使したトラック、繊細なメロディやヴォーカルを用いても、きちんと「R&B」に聴こえるのがこの作品の面白いところ。カンやクラフトワークといった、音楽業界に革命を起こしたアーティスト達を輩出した、ドイツのポピュラー・ミュージック・シーンの奥深さを感じさせる魅力的な作品だ。

Producer
Max Graef, Neue Grafik, Nu Guinea, Wayne Snow

Track List
1. Cooler
2. Still In The Shell
3. Drunk
4. Red Runner
5. The Rhythm
6. Rosie
7. Fall
8. Nothing Wrong
9. Freedom RIP
10. Nothing But The Best
11. Rosie (Hubert Daviz Remix) [Japan Bonus Track]
12. Red Runner (Glenn Astro & IMYRMIND Remix) [Japan Bonus Track]





Freedom TV
Wayne Snow
SWEET SOUL RECORDS
2017-04-12


 
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