ブラック・ミュージック千本ノック~SoulとR&Bと色々な音楽~

管理人が手に入れたR&Bのアルバム、1000枚の紹介文を書き続けるブログ その先に見えるものは天国か地獄か・・・

ハイチ

Wyclef Jean - J'Ouvert [2017 eOne]

ハイチ共和国のクロワ・デ・ブーケ生まれ、ニューヨーク育ちのラッパー、ワイクリフ・ジョン。

80年代からヒップホップ・グループ、トランスレイター・クルーとして活動し、93年にコロンビアと契約。フージーズに改名すると、96年に発表した2枚目のアルバム『The Score』が全世界で1000万枚以上を売り上げる大ヒット。90年代を代表するヒップホップ・グループとなる。

その後、97年にグループが活動を休止すると、『 Wyclef Jean Presents the Carnival Featuring the Refugee All-Stars (generally called The Carnival)』でソロに転向。以後、2016年までに通算7枚のアルバムをリリース。2010年にはハイチの大統領選挙にも出馬を試みている(在留期間の関係で立候補は受理されず)。

今回のアルバムは、2010年の『If I Were President: My Haitian Experience』以来、約8年ぶりとなる新作。マデリン・ネルソンを中心に複数のプロデューサーを起用し、これまでの作品同様、ヒップホップやR&B、レゲエやカリブ海の音楽を混ぜ合わせた、バラエティ豊かな音楽になっている。

本作のオープニングを飾る”The Ring”は、フージーズの”Fu-Gee-La”を思い起こさせる、泥臭いビートと、歌うようなラップが印象的なミディアム・ナンバー。コーラスを効果的に使った荘厳な伴奏が心地よい曲だ。

これに対し、ヤング・サグを招いた”I Swear”は、シンセサイザーを多用した伴奏が心地よいアップ・ナンバー。カリプソの要素を取り入れたトラックは、ウィズキッドの作品にも少し似ている。しなやかなトラックをバックに、流麗な歌を響かせるワイクリフにも注目してほしい。

また、”Lady Haiti”は、色鮮やかな音色の伴奏が心地よいアップ・ナンバー。作風としては”I Swear”に近いが、こちらの曲は低音を抑え気味にして、パーカッションの華やかな雰囲気と軽快さを強調している。肩の力を抜いて、軽やかに歌うワイクリフの安定したパフォーマンスも見逃せないか曲だ。

そして、本作に先駆けて発表された”Hendrix”は、荒々しいギターの音色がサンタナを彷彿させる曲。 しゃがれたワイクリフの歌声が、哀愁を帯びた楽曲の魅力を引き出している面白い曲だ。

前作から長いブランクがあったものの、彼の作風は大きく変わることなく、ソウル、R&B、ヒップホップ、レゲエ、カリブ海音楽などを巧みに引用した、独創的な作品に落とし込んでいる。それにとどまらず、シンセサイザーを駆使したカラフルなトラックを用意することで、ムーンバートンなどの新しい音楽をしっかりと拾い上げているようにも見える。

ハイチとアメリカの2国を代表するミュージシャンとして、確固たる地位を築き上げた彼らしい、

Producer
Wyclef Jean, Madeline Nelson, John "Jube" Altino etc

Track List
1. The Ring
2. I Swear feat. Young Thug
3. Rear View
4. Holding On The Edge feat. Walk the Moon
5. Little Things feat.T-Baby and Allyson Casado
6. Lady Haiti
7. Party Started feat. Farina and Nutron
8. Hendrix
9. Life Matters
10. If I Was President 2016





J'ouvert
Wyclef Jean
Ent. One Music
2017-02-03

Kaytranada ‎– 99.9%[2016 XL Recordings]

15歳のときに楽曲制作を始め、2010年以降はケイトラナダ名義でプロデュースやリミックス、ヨーロッパやオセアニア地域を含む世界各地でのライブ活動などを行なっている、ハイチのポルトープランス生まれ、カナダのモントリオール育ちのクリエイター、ルイス・ケヴィン・セレスティン。彼にとって、初のフル・アルバムとなる作品が、英国のXLレコーディングスからリリースされた。

これまではビート・メイカーとして、主に電子音楽の分野で楽曲制作やDJ、ライブ活動などを行う一方、プロデューサーや演奏者として、ジ・インターネットの2015年作『Ego Death』に収録されている"Gift"や、アンダーソン・パックが2016年に発表した『Malib』に収録の"Lite Weight"、バッドバッドノットグッドの2016年作『IV』に収録されている"Lavender"を手がけるなど、色々なジャンルの音楽に携わってきた彼。今回のアルバムでは、これらのコラボレーションを通して培った、幅広い人脈をフル活用して、ヴォーカル曲やラップものにも挑戦。インストゥメンタル曲やリミックスを通して磨かれた音に対する鋭いセンスと、シンガーの持ち味を活かした、親しみやすい作風の好作品に仕上げている。

まず、収録された15曲の中から、ヴォーカルものに目を向けると、クレイグ・デイヴィッドをフィーチャーした"Got It Good"と、アンダーソン・パックを起用した"Glowed Up"の2曲が目立っている。音と音の隙間を多めにとった、抽象的なトラックを採用している両曲。だが、前者はジェイ・ディラの作品を彷彿させるシンプルなビートに乗せて、流麗なメロディをじっくりと歌い込む、電子音楽版ディアンジェロといった趣の楽曲。耳元を爽やかに抜ける電子音と、クレイグのクールな歌声がマッチした佳曲だ。一方、後者は、電子音楽畑出身らしいルイスが作る前衛的なトラックと、ラップもこなせるパックのリズム感が光る楽曲。コンピュータでなければ作れない、ドラムから上物まで全てが異なる変則的なリズムを刻むトラックと、そこから一定のリズムを見出し、正確なメロディを紡ぎ出すパックのセンスが合わさった、奇抜だけど緻密な楽曲。この2曲は、ヴォーカルの個性に応じて、色々なスタイルを使い分けるケイトラナダの技術力が堪能できる名演だ。

それ以外の曲では、ドラマーが参加した2曲も面白い。まず、ストーンズ・スロウから3枚のアルバムを発表しているドラマーのカリーム・リギンズとトロント出身のシンガー・ソングライター、リヴァー・ティバーが参加した"Bus Ride"。こちらは、ジェイ・ディラやコモンの作品でも披露している、カリームの複雑なのに正確無比なビートと、リヴァー・ティバーのストリングスやホーンが心地よいインスト・ヒップホップ。また、彼らの作品でも共演しているカナダのジャズ・バンド、バッドバッドノットグッドと組んだ"Weight Off"は、カリーム・リギンズとは対極の荒っぽいけど力強く、勢いのある演奏が格好良い人力ドラムンベース。バンド演奏ならではの、ダイナミックなグルーヴが魅力的だ。

だが、彼の本領が発揮されているのは、コンピュータを駆使したインストゥメンタルだろう。中でも、ブラジルの女性シンガー、ガル・コスタの"Pontos de Luz"をサンプリングした"Lite Spots"は、ブラジル音楽独特のリズムを、前衛的な電子音楽の構成にうまくはめ込んだ、DJの経験も豊かな彼の編集センスが発揮された楽曲だ。

XLといえば、インディペンデント・レーベルでありながら、アデルやプロディジーなどの有名ミュージシャンの作品を取り扱う一方で、タイラー・ザ・クリエイターやジェイミーxxのような気鋭のアーティスト、ボビー・ウーマックの『Bravest Man in the Universe』や、ギル・スコット・ヘロンの『I'm New Here』といった大物の作品まで配給してきた英国の名門レーベル。その中でも、ボビー・ウーマックやギル・スコット・ヘロンのアルバムでは、経験豊かなミュージシャンとフレッシュな感性で評判の高いクリエイターをコラボレーションさせることで、先鋭的でありながら、キャッチーで聴きやすい音楽を聴かせてくれた。今回のアルバムでは、そのときのノウハウが活かされており、ケイトラナダの斬新なサウンドを、幅広い層から受け入れられているゲストの個性を合わせて、とっつきやすい楽曲に着地させているように映る。

ビート・メイカーの作る音楽というと、コンピュータを使った奇抜な作品をイメージする人も少なくない。だが、このアルバムでは斬新さを保ちつつ、尖った音楽に慣れていないリスナーの耳に届くよう、細かいところまで配慮されている。20代前半とは思えない、鋭い感性と老練さが両立された傑作だと思う。


Producer
Kaytranada

Track List
1. Track Uno
2. Bus Ride feat. Karriem Riggins and River Tiber
3. Got It Good feat. Craig David
4. Together feat. AlunaGeorge and GoldLink
5. Drive Me Crazy feat. Vic Mensa
6. Weight Off feat. BADBADNOTGOOD
7. One Too Many feat. Phonte
8. Despite the Weather
9. Glowed Up feat. Anderson .Paak
10. Breakdance Lesson N.1.
11. You're the One feat. Syd
12. Vivid Dreams feat. River Tiber
13. Lite Spots
14. Leave Me Alone feat. Shay Lia
15. Bullets feat. Little Dragon





99.90%
Kaytranada
Xlrec
2016-05-06

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