melOnの音楽四方山話

オーサーが日々聴いている色々な音楽を紹介していくブログ。本人の気力が続くまで続ける。

バンド

Starchild & The New Romantic - Language [2018 Ghostly International]

ブラッドオレンジの『Freetown Sound』やソランジュの『A Seat At The Table』で腕を振るい、2012年以降は彼女のツアーにも帯同している、メリーランド州プリンス・ジョーンズ生まれのシンガー・ソングライター、ブラインドン・クック。

子供のころから、P-ファンクやプリンス、ディアンジェロなどの音楽に慣れ親しんできた彼は、その一方で、ニュー・ジャック・スウィングやジャム&ルイスのサウンドを研究するなど、一時代を築いたサウンドにも興味を持つ多感な青年だった。

そんな彼は、2012年に初のEP『Night Music』をリリース。自主制作ながら、先鋭的なサウンドが注目され、ミシガン州アナーバーに拠点を置く電子音楽やロックに強いインディー・レーベル、ゴーストリー・インターナショナルと契約を結ぶきっかけになった。

本作は彼にとって初のフル・アルバムであり、初のフィジカル・リリースとなる作品。ブラッドオレンジのレーベル・メイトでもあるロック・バンド、ポーチスの2016年作”Mood”のカヴァーを除く全曲で、作詞作曲とプロデュースを担当。フィーチャリング・ミュージシャンは招かず、彼自身とバンド・メンバーのみで録音するという、彼が影響を受けたプリンスを彷彿させる作品になっている。

アルバムのオープニングを飾る”Language”は、四つ打ちのビートと、軽やかに刻まれるギターが織りなす、スタイリッシュなリズムが心地よいディスコ・ナンバー。低音を強調したドラムは、ダフト・パンクの”Get Lucky”などでも取り入れられたディスコ・ブギーに近いもの。だが、わざと粗っぽく演奏した伴奏は、ロックやファンクの要素を強調したプリンスの音楽にも似ている。

続く、本作に先駆けて発表されたポーチスのカヴァー”Mood”は、原曲のテンポを大きく落として、ソウルフルなヴォーカルを強調したバラード。オリジナル版では、軽い音色を使ったミディアム・ナンバーだったが、この曲ではプリンスやロナルド・アイズレーを彷彿させる、ブライドンのテナー・ヴォイスを活かしたスロー・ナンバーに仕立て直している。スマートな声質と太いサウンドを活かして、前衛的なロック・ナンバーから新鮮な表情を引き出したテクニックが光っている。

そして、この曲の後に公開された”Hangin On”は、ディアンジェロの”Brown Sugar”を彷彿させる、太いベースの音とリズミカルなドラムの演奏が面白いミディアム・ナンバー。ヒップホップの要素を取り入れながら、その上に乗っかるメロディは滑らかで美しいというギャップが印象的。ファンカデリックからドゥー・ヒルまで、様々な時代のミュージシャンから影響を受けてきた彼の、音楽への愛情と造詣の深さが感じられる良曲だ。

また、本作のリリース直前にミュージック・ビデオが制作された”Ophelia’s Room”は、アルバムの収録曲では珍しい、ドラムやベースの音を抑え気味にしたバラード。低音を減らしつつ、異なるメロディを歌うテナー・ヴォイスを重ねて神秘的な雰囲気を醸し出した、ありそうでなかったタイプの作品。繊細なハイ・テナーはマーヴィン・ゲイっぽくもあるし、静かな伴奏をバックに訥々とメロディを紡ぐスタイルはシャーデーのようにも聴こえる。先鋭的な音楽スタイルを土台にしているにもかかわらず、奇抜さ以上に安心感が心に残る不思議な曲だ。

彼の音楽の面白いところは、アーティスト名の由来にもなったジョージ・クリントンや、多大な影響を受けたプリンスやジャム&ルイス、活動を共にすることが多いソランジュやブラッドオレンジといった、繊細で鋭い音楽センスと、ち密な曲作りで歴史に名を残した面々から多くの影響を受けつつ、多くの人にとって親しみやすいポップな作品に仕上がっているところだろう。ポピュラー音楽の世界に革命を起こすような、斬新なサウンドのミュージシャンから影響を受けたアーティストは、多くの場合、彼らのサウンドを踏襲したり、彼らの方向性をさらに突き詰めたりしている。そのことによって、新しい音楽が生まれたことも少なくないが、その一方で、一部のコアなファンにしか受け入れられない、マニアックな作品になってしまうことも少なくない。しかし、彼は難解な音楽から影響を受けつつも、流行の音楽をきちんと研究してきた経験を活かし、R&Bやソウル・ミュージックにあまり馴染みのない人にも親しみやすい作品に落とし込んでいる。この絶妙なバランス感覚が、彼の良さだと思う。

コンピュータを駆使して前衛的なビートを組み、ヒップホップやエレクトロ・ミュージックに近づくR&Bシンガーが多いなかで、尖った音楽性のミュージシャンから影響を受けつつも、キャッチーで親しみやすい音楽を、バンド演奏で表現する彼の存在はとても新鮮。ジョージ・クリントンやプリンスが、ロックとソウル・ミュージック、両方のファンから愛され続けたように、音楽ジャンルの壁を越えて多くの人に愛される可能性を感じさせる充実の内容だ。

Producer
Bryndon Cook

Track List
1. Language
2. Mood
3. Only If U Knew
4. Hands Off
5. Hangin On
6. Black Diamond
7. Ophelia’s Room
8. Some People I Know
9. Can I Come Over?
10. Doubts
11. Good Stuff
12. Boys Choir
13. Lost Boys
14. Hand To God







Tuxedo & Zapp – Shy [2018 Stones Throw]

2017年初頭に3曲入りのEP『Fun With The Tux』を発表。その後、同作に新曲を追加した『Tuxedo II』をリリース。8月には、ロック・フェスへの出演を含む来日公演を成功させたことも記憶に新しい、メイヤー・ホーソンとジェイク・ワンによる音楽ユニット、タキシード。

彼らの約1年ぶりとなる新曲は、トーク・ボックスと電気楽器を駆使した独特のスタイルで、今も多くのファンがいる、オハイオ出身のファンク・バンド、ザップとのコラボレーション作品。80年代から多くのヒット曲を世に送り出してきた彼らは、99年に稀代のフロント・マン、ロジャー・トラウトマンが亡くなった後も、残されたメンバーで新作を録音し、来日公演を含む多くのステージをこなしてきた。

両者のコラボレーション曲は、タキシードが得意とする四つ打ちのビートと、ザップのウリである電気楽器のグラマラスなサウンドを組み合わせたディスコ・ナンバー。モダンな音色の伴奏や、トーク・ボックスを使ったヴォーカルは、一回聴いただけでザップの作品とわかるものだが、ハウス・ミュージック寄りのビートや、メイヤー・ホーソンの甘い歌声が入る箇所は、きちんとタキシードの曲に聴こえるから面白い。

この曲の醍醐味は、ソウル・ミュージックやハウス・ミュージックに近いタキシードのスタイルと、ザップのファンクが合わさって、一つの作品になっていることだ。水と油のように音楽性の異なる両者の音楽が合わさって、双方の個性を残しつつ、両者の音楽が融合した斬新な楽曲になっているところだろう。

強烈な個性が魅力のミュージシャンが手を組み、両者の可能性を切り開いた、画期的なダンス・ナンバー。1+1が2に留まらず、3にも5にもなる可能性を秘めていることを僕らに教えてくれる素晴らしいコラボレーションだ。

Producer
Tuxedo & Zapp

Tracck List
1. Shy
2. Shy(Instrumental)



Shy [7 inch Analog]
Tuxedo
Stones Throw
2018-02-02

Seun Kuti & Egypt 80 - Black Times [2018 Strut]

母国ナイジェリアのダンス・ミュージックと、アメリカやヨーロッパの黒人音楽を組み合わせた独特のサウンドや、強烈なメッセージを含む歌詞で世界にその名を轟かせ、アフロ・ビートというジャンルを確立した、イギリス出身のナイジェリア人ミュージシャン、フェラ・クティ。彼自身は97年にHIVの合併症でこの世を去ったものの、残されたバンド・メンバーや彼の子供達の手によって、その音楽は継承されてきた。

ショーン・クティは、フェラが遺した子供の一人。末っ子でありながら、幼いころから父のバンドでステージに立ち、彼の死後は父のバンドを受け継いで、現在も世界各地のステージに立っている。

本作は、2014年の『A Long Way To The Beginning』以来となる、通算4枚目のスタジオ・アルバム。前作ではロバート・グラスパーを招いていたが、本作ではサンタナを起用。父が遺したバンドと一緒に、アフロ・ミュージックを2018年仕様にアップデートした作品を録音している。

アルバムの1曲目は、バンドの面々による”Last Revolutionary”。複数のパーカッションと管楽器を組み合わせて、中毒性のある演奏を聴かせるバンドと、マルコムXやキング牧師のような、力強い言葉を投げかける、ショーンのヴォーカルが光る曲。フェラ・クティの魅力を丁寧に継承したパフォーマンスが楽しめる。

続く”Black Times”は、アイズレー・ブラザーズとのコラボレーション・アルバムも記憶に新しい、カルロス・サンタナを招いた作品。前曲より少しテンポを落とした伴奏に絡みつく、カルロス・サンタナの艶めかしいギターが格好良いミディアム・ナンバーだ。一つのフレーズを少しずつ変えて、曲に起伏を与えるエジプト80の演奏と、時に荒々しく、時に艶めかしく演奏するカルロスのギターのコンビネーションが聴きどころ。

また、”Kuku Kee Me”は、躍動感あふれるビートと、陽気な鍵盤楽器、勇壮なホーン・セクションを組み合わせたループが格好良いアップ・ナンバー。ホーン隊の演奏は、ジェイムス・ブラウンなどのファンク・ミュージックのエッセンスも垣間見える。ナイジェリアの音楽と、欧米の黒人音楽を融合した、フェラのスタイルを丁寧に踏襲した良曲だ。

そして、本作の収録曲では珍しい、ゆったりとしたテンポの”African Dreams”は、リズム・セクションとベースが生み出す粘り強いグルーヴが魅力の作品。テンポを落とすことで、起伏のある伴奏を丁寧に聴かせる技術が素晴らしい。一つのフレーズを繰り返すことで、中毒性のある楽曲を作る手法は、ハウス・ミュージックやヒップホップでもしばし見かけるが、人間が楽器を演奏することで、細かく曲調を変えられるのは、バンドならではの技だろう。

60年代から活動し、フェラの死後はショーンに引き継がれた、バンドの持ち味とアフロ・ビートの魅力は、このアルバムでも変わることなく引き継がれている。ナイジェリアの伝統音楽をベースに、ジャズやファンクの要素を加え、近年はハウス・ミュージックやヒップホップ、ラテン音楽のエッセンスを盛り込むようになった彼らの音楽は、アメリカの黒人音楽と一線を画しながら、アフリカの音楽を聴く機会の少ない人にも、聴きやすいものに仕立て上げられている。

メンバーが変わっても、色々な音楽を飲み込みながら、進化を続けることで、フェラ・クティの思想を体現しているバンドの魅力を思う存分堪能できる魅力的な作品。流行のポップスとは一味違う、唯一無二のグルーヴが心に残る良盤だ。

Producer
Seun Kuti, Arnaud Granet

Track List
1. Last Revolutionary
2. Black Times feat. Carlos Santana
3. Corporate Public Control Department
4. Kuku Kee Me
5. Bad Man Lighter (B.M.L.)
6. African Dreams
7. Struggle Sounds
8. Theory Of Goat And Yam






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