ブラック・ミュージック千本ノック~SoulとR&Bと色々な音楽~

管理人が手に入れたR&Bのアルバム、1000枚の紹介文を書き続けるブログ その先に見えるものは天国か地獄か・・・

ヒップホップ

BTS - Mic Drop (Steve Aoki Remix) feat. Desiigner [2017 Big Hit Entertainment RED Music]

2013年にアルバム『2 Cool 4 Skool』でメジャー・デビュー。高い技術を持った7人による複雑なダンスと、甘酸っぱいヴォーカル、若い感性を生かした切れ味鋭いラップで、一躍人気グループに躍り出たBTS(漢字圏では「防弾少年団」表記)。

2016年のシングル”Blood Sweat & Tears”と、同曲を収録したアルバム『Wings』が世界的なヒットになった彼らは、2017年に入ってからも”Blood Sweat & Tears”に日本語詞をつけたシングル”血、汗、涙”や、新曲を収めたEP『LOVE YOURSELF 承“Her”』を発表。後者は、アジア地域出身のミュージシャンでは史上初となる、ビルボード総合アルバム・チャートのトップ10入り(7位)を果たした。

この曲は、同作に収録されている楽曲に、リミックスを施したリカット・シングル。鉄板焼きチェーン「ベニハナ」の創業者として知られるロッキー青木の息子で、アクロバティックなパフォーマンスと、キャッチーで高揚感のあるサウンドで定評のある世界屈指の人気DJ、日系アメリカ人のスティーヴ・アオキがリミックスを担当。ゲスト・ミュージシャンとして、ニューヨーク出身の若干20歳(発売当時)のラッパー、デザイナーが参加した、三者の鋭い感性が火花を散らすダンス・ナンバーになっている。

この曲は、韓国のアーティストとしては、スヌープ・ドッグと組んだPSYの2014年のシングル”Hangover”が26位に入って以来、アジア地域出身のヴォーカル・グループとしては、日本のピンク・レディ-が79年に発表した”Kiss In The Dark”が、39位に入って以来のトップ40入りとなる、全米総合シングル・チャートの28位を記録。2017年にアメリカでリリースされたヴォーカル・グループのシングルでは、最大のヒット作になった。

オリジナル・バージョンでは、重いバス・ドラムを強調したヒップホップ色の強いトラックの上で、攻撃的なパフォーマンスを聴かせてくれたが、この曲ではEDMのDJとして名を上げたスティーヴ・アオキらしい、鋭利なシンセサイザーの音色が格好良いトラックに差し替えられている。冒頭のラップ・パートはデザイナーの扇動的なパフォーマンスに差し替えられたほか、中盤のラップ・パートも疑似的な掛け合いになっている。攻撃的な音色のトラックに差し替えられたことで、7人のヴォーカルも原曲以上に躍動感のあるものに聴こえるなど、大きく雰囲気を変えている。

この曲の面白いところは、細部にまで気を使った制作体制だろう。リミキサーに起用されたスティーヴ・アオキは、2017年の『Steve Aoki Presents Kolony』こそ、多くのラッパーを起用した、ヒップホップ色の強いアルバムだったが、それまでに出した録音は四つ打ちのビートを使ったものが中心だったクリエイター。DJとしての実績こそ世界屈指だが、トップ40に入った楽曲は本作が初めてなのだ。また、ゲスト・ミュージシャンのデザイナーも、全米総合シングル・チャートを制覇した"Panda"など、複数のヒット曲を残しているが、スタジオ・アルバムを発表していない若手。このような、高いポテンシャルを秘めた面々を起用したことが、作品のクオリティを上げていると思う。

また、この曲にはデザイナーをフィーチャーしたシングル版に加え、MVやライブなどで披露されている、7人だけでパフォーマンスしたヴァージョンが作られているのも重要なポイントだ。他のミュージシャンとコラボレーションした作品は色々なアーティストが録音しているが、演奏者のスケジュールの関係で披露されなくなる曲も多い。この問題に、彼らは複数のバリエーションを用意することで対応していることも、この曲の知名度を上げていると思う。

EDMを取り入れたビッグバンの”Fantastic Baby”やPSYの”江南スタイル”のヒットによって、世界中で聴かれるようになった韓国のポピュラー・ミュージック。その後も、ディプロやスクリレックスがG-ドラゴンやCLとコラボレーションするなど、ヒップホップやR&Bに接近し、世界に打って出ようと野心を燃やすエレクトリック・ミュージックのクリエイターにとって、韓国のミュージシャン達は欠かせないパートナーになりつつある。本作は、その流れを踏襲しつつ、アメリカの大衆向けのポップスとして纏め上げた、K-Popとエレクトリック・ミュージックが目指した臨界点のような楽曲。"Sukiyaki"や”江南スタイル”とは異なる作風だが、これらの曲と同様に、ポップスの歴史の転換点として語り継がれると思う。

Producer
Steve Aoki Pdogg Supreme Boi “hitman”bang J-Hope RM Desiigner Tayla Parx Flowsik Shae Jacobs

Track List 1. Mic Drop (Steve Aoki Remix)





Talib Kweli - Radio Silence [2017 Javotti Media]

98年にモス・デフと組んだラップ・グループ、ブラック・スターの名義のアルバム『Mos Def & Talib Kweli Are Black Star』で華々しいデビューを飾ると、詩的な表現と哲学者を彷彿させる深い思索が光るラップで、注目を集めたタリブ・クウェリ。

ニューヨーク州ブルックリン出身の彼は、社会学者の父と言語学者の母の間に生まれ、後に大学教授として教鞭を執る弟を持つなど、アカデミックな家庭環境で育ってきた。そんな彼は、デ・ラ・ソウルの作品に触れたことで音楽へと興味を持ち、90年代中頃から、シカゴのラップ・グループ、ムードなどの作品に参加。レコーディングやライブを通して実力を蓄えてきた。

また、2002年に初のソロ・アルバム『Quality』を発表すると、その後はコンスタントに数多くのソロ作品やコラボレーション・アルバムを発表。マーリー・マールやKRSワンが活躍していた、90年代初頭のニューヨークのヒップホップ・シーンを思い起こさせる、サンプリングを効果的に使ったトラックと、現代社会やそこで生きる人々が抱える、様々な問題に鋭く切り込んだラップで評価を高めていった。

このアルバムは、今年4月に発売したニューヨーク出身のラッパー、スタイルスPとのコラボレーション・アルバム『The Seven』以来、自身名義の作品としては2015年の『Fuck the Money』以来となる、通算8枚目のフル・アルバム。前作同様、自身のレーベル、ジャヴォッティ・ミュージックからのリリースとなる本作は、プロデューサーとしてケイトラナダやオー・ノーが参加し、ゲスト・ミュージシャンとしてロバート・グラスパーアンダーソン・パックが名を連ねるなど、斬新なサウンドで音楽シーンを盛り上げてきた面々が集結した、新しい音へと挑戦する彼の野心を感じさせる作品になっている。

本作の収録曲の中でも、特に異彩を放っているのは2曲目の”Traveling Light”だろう。カナダ出身のケイトラナダがプロデュースを担当し、カリフォルニア州出身のアンダーソン・パックをフィーチャーしたこの曲は、60年代のソウル・ミュージックを連想させる勇壮なホーンの音色と、現代的な電子オルガンの伴奏を組み合わせたトラックが印象的な曲。ホーンの音色を使ったトラックは、多くのヒップホップ作品で見られるものだが、電子オルガンの音色を組み合わせることで新鮮な印象を与えている。アンダーソン・パックの歌も、タリブの切れ味鋭いラップをうまく盛り立てている。育った環境も世代も異なる、三人の持ち味が上手く噛み合った面白い曲だ。

これに対し、マッドリブの弟としても知られる、オー・ノーがプロデュースした”She's My Hero”は、古いレコードから引用した音を活かしたトラックが光る作品。オランダのプログレッシブ・ロック・バンド、スコープが74年に発表した”Kayakokolishi”をサンプリングした、アクション・ブロンゾンの”Bonzai”のトラックを再構築したこの曲。滑らかな管楽器の音色を効果的に使った、物悲しい雰囲気のビートは、ジャスト・ブレイズのプロデュース曲にも似ているが、こちらの方がよりレコードの質感を強調している。このトラックの上で、攻撃的なラップを聴かせるタリブ・クウェリの姿は、常に社会と闘ってきた、彼の孤独さを映しているようだ。

また、BJザ・シカゴ・キッドを招いた”The One I Love”は、サンファの”Can’t Get Close”をサンプリングした電子音楽のテイストが強い作品。泥臭いヴォーカルとモダンなサウンドを組み合わせた音楽性で、グラミー賞にもノミネートしたBJザ・シカゴ・キッドのスタイルを取り込んだ、懐かしさと新鮮さが入り混じった不思議な曲だ。立て続けに言葉を繰り出すタリブのラップと、シャイ・ライツのユージン・レコーズを思い起こさせる、艶めかしいBJのヴォーカルが心を掻き立てる良作。

そして、Jローズがトラックを制作し、リック・ロスとヤミー・ビンガムが客演した”Heads Up Eyes Open”は、本作のハイライトと呼んでも過言ではない作品。ジャスト・ブレイズや9thワンダーが作りそうな、70年代のソウル・ミュージックっぽい音色を使ったトラックが印象的だが、クレジットを見る限り、昔のレコードをサンプリングしたものではないようだ。このソウルフルなビートの上で、個性豊かなラップを披露するタリブとリックのコンビネーションが格好良い。サビでキュートな歌声を聴かせるヤミーの存在が、切れ味の鋭い二人のラップを聴きやすいものにしている。

これまでのアルバムでも、色々なスタイルのトラックに取り組んできた彼。だが、本作から感じるのは、往年のソウル・ミュージックやジャズに触発された音楽で知られる、若い世代の完成を取り込んだところだと思う。ソウル・ミュージックやファンク、ジャズの音を引用してきた彼が、それらの音楽に独自の解釈を加え、新しい音楽として聴かせている若いミュージシャンと組むことで、自分の軸を残しつつ、斬新な作品に仕上げている点が面白いと思う。

知的なリリックで、独創的な世界を組み立ててきた彼が、フレッシュな感性を取り込んで、その世界観を深めた良作。ヒップホップにはまだまだ進化できる可能性があると感じさせる、魅力的なアルバムだ。

Producer
The Alchemist, J Rhodes, KAYTRANADA, LordQuest, Oh No etc

Track List
1. The Magic Hour
2. Traveling Light feat. Anderson .Paak
3. All Of Us feat. Jay Electronica & Yummy Bingham
4. Let It Roll
5. Chips feat. Waka Flocka
6. Knockturnal
7. Radio Silence feat. Amber Coffman & Myka 9
8. She's My Hero
9. The One I Love feat. BJ The Chicago Kid
10. Heads Up Eyes Open feat. Rick Ross & Yummy Bingham
11. Write At Home feat. Datcha, Bilal & Robert Glasper






RADIO SILENCE
TALIB KWELI
JAVOTTI MEDIA/3D
2017-12-01

Eminem - Revival [2017 Aftermath, Shady, Interscope]

97年に発表した自主制作のアルバム『The Slim Shady EP』で表舞台に登場。同作のヒットを受けて出演した、ラジオ・ショーで披露したフリースタイルがDr.ドレに認められ、彼のレーベル、アフターマスと契約。99年に『The Slim Shady EP』に新曲を追加した『The Slim Shady LP』でメジャー・デビューすると、アメリカ国内だけで400万枚、全世界で600万枚を超える大ヒットとなった、ミズーリ州セントジョセフ生まれ、ミシガン州デトロイト育ちのラッパー、エミネムことマーシャル・ブルース・マーザーズ三世。

その後も彼は、『Marshall Marthers LP』や『The Eminem Show』などのヒップホップ・クラシックをリリース。特に前者は、発売初週の売り上げが179万枚、最終的にはアメリカ国内だけで1250万枚を売り上げ、ヒップホップのアルバムとしては史上最高となる売り上げ記録を残す。

また、彼の活動は音楽にとどまらず、自身の半生をもとにした映画『8 Mile』で主演俳優と音楽を担当。彼が歌う主題歌”Lose Yourself”がアカデミー賞を獲得するなど、高い評価を受けている。また、99年に立ち上げた自身が運営するレーベル、シェイディを本格的に始動し、50セントやオービー・トライスなどを世に送り出してきた。

そんな、2000年代にはトップ・ミュージシャンとして音楽業界をけん引してきた彼だが、2010年代に入ると活動は抑え気味に。ロイス・ダ59とのコラボレーション作品や自身名義の『Marshall Marthers LP 2』などを発表するなど、ゆっくりとしたペースで、着実にヒット作を残していった。

このアルバムは、彼にとって4年ぶりとなる9枚目のフル・アルバム。プロデュースは、デビュー前からのパートナー、Dr.ドレに加え、リック・ルービンやジャスト・ブレイズが担当。ゲスト・シンガーとしてビヨンセやエド・シーラン、ケラーニなどが参加した、ビック・ネームにふさわしい、豪華なものになっている。

アルバムの1曲目は、本作からのリード・シングル”Walk On Water”。多くのヒップホップ・ミュージシャンと仕事をしてきたリック・ルービンと、ホーリー・ブルック名義で複数のヒット作を残しているスカイラー・グレイがプロデュースを担当。ビヨンセの丁寧な歌唱が心を掻き立てるミディアム・ナンバーに仕上げている。Dr.ドレとエミネムのコラボレーション曲”I Need a Doctor”や、エミネムの”Asshole”にも関わっている、スカイラー・グレイの哀愁を帯びたメロディが光る良曲だ。

これに対し、彼自身がプロデュースした”Untouchable”は、唸るようなギターの音色が格好良い、ロック色の強い作品。サビで流れる威圧感のあるギターから、エミネムの軽妙なラップを引き立てるように、シンセサイザー中心のビートを組んだメロディ部分へとつながる展開も面白い。エミネムの武器である、コミカルでキャッチーなヒップホップが堪能できる作品。

また、エド・シーランをゲスト・ヴォーカルに招き、エミリー・ハインが制作を担当した”Rive”は、エドの物悲しい歌声が鳴り響くサビと、ギターの弾き語りを組み込んだ、フォークソングっぽいトラックの上で、荒っぽいラップを聴かせるエミネムの姿が印象的。ポップス畑のシンガーと組んだ作品には、他にイギリスのシンガー・ソングライター、ダイドを起用した”Stan”などがあるが、こちらの曲ではギターやベースの音を強調し、ポップス寄りの作品に仕上げている。

そして、ジャスト・ブレイズが制作に参加し、ゲスト・ヴォーカルとしてアリシア・キーズを招いた”Like Home”は、アリシア・キーズの楽曲を彷彿させる、ピアノの伴奏が光るロマンティックな作品。クラシック音楽の影響をうかがわせる荘厳なトラックに乗って、次々と言葉を繰り出すエミネムの姿が格好良い。ジェイZやナズ、ドレイクなど、個性豊かなラッパーとコラボレーションしながら、ブレる気配のない安定したアリシアの歌唱が、エミネムの個性を際立たせている。本作の目玉といっても過言ではない曲だ。

今回のアルバムは、前作同様、音楽業界の頂点を極めた後、自身の新しいアーティスト像を模索するエミネムの姿が姿が印象的な佳作だ。線の細い白人青年による、皮肉たっぷりのラップと、「スリム・シェイディ」という別人格を使い分けることで、成功への階段を駆け上がってきた彼。だが、今の彼は音楽界でもトップクラスの富豪であり、多くのヒット作を残しているトップスター。デビュー当初の異端児キャラとはミスマッチが起きているのも事実だ。それを乗り越えるため、色々なスタイルを取り入れて、新しい音楽を模索したのが今回のアルバムだろう。

反抗的な青年が大人になり、地位と名誉を掴んだあと、新たな目標を模索する。多くの大人が抱えている課題に、彼のスタイルで取り組んだ佳作。成長期から成熟期へと突入したエミネムの、「次」が楽しみになる面白い作品だ。

Producer
Dr. Dre, Rick Rubin, Just Blaze, Eminem, Emile Haynie, etc

Track List
1. Walk On Water feat. Beyonce
2. Believe
3. Chloraseptic feat. Phresher
4. Untouchable
5. Rive feat. Ed Sheeran
6. Remind Me (Intro)
7. Remind Me
8. Revival (Interlude)
9. Like Home feat. Alicia Keys
10. Bad Husband feat. X Ambassadors
11. Tragic Endings feat. Skylar Grey
12. Framed
13. Nowhere Fast feat. Kehlani
14. Heat
15. Offended
16. Need Me feat. Pink
17. In Your Head
18. Castle
19. Arose1.1.



a

Revival
Eminem
ユニバーサル ミュージック合同会社
2017-12-16


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