ブラック・ミュージック千本ノック~SoulとR&Bと色々な音楽~

管理人が手に入れたR&Bのアルバム、1000枚の紹介文を書き続けるブログ その先に見えるものは天国か地獄か・・・

ファンク

Ephemerals - Egg Tooth [2017 Jalapeno Records]

イギリス出身のギタリスト、ニコラス・ヒルマンと、フランス系アメリカ人のサックス奏者、ウォルフガング・パトリック・ヴァルブルーナが中心になって結成したファンク・バンド、エフェメラルズ。60年代、70年代のブラック・ミュージックを取り込んだサウンドと、ヴァルブルーナのエネルギッシュな歌唱が話題になり、ジャイルズ・ピーターソンやクレイグ・チャールズなどのラジオ番組でヘビー・プレイ。2016年にはフランスのDJ、クンズのシングル『I Feel So Bad』に参加。フランスを中心に、複数の国でヒットチャートに入る、彼らにとって最大のヒット曲となった。

このアルバムは、2015年の『Chasin Ghosts』以来となる、通算3枚目のオリジナル・アルバム。本作でも楽曲制作とプロデュースをヒルマンが、ヴォーカルをヴァルブルーナが担当。ファンクやソウル・ミュージックの要素をふんだんに取り入れた楽曲を披露している。

アルバムの2曲目、本作に先駆けて発売されたシングル曲”The Beginning”は、ゆったりとしたテンポのバラード。分厚いホーンセクションを軸にしたバンドをバックに、思いっきり声を張り上げるヴァルブルーナの姿が格好良い。余談だが、彼の歌い方が”Don't Look Back in Anger”を歌っていた時の、オアシスのリアム・ギャラガーに少し似ていると思うのは自分だけだろうか。

一方、これに続く”In and Out”は、陽気な音色のキーボードと、柔らかい音色のホーン・セクションに乗せて、切々と言葉を紡ぎ出すミディアム・ナンバー。ビル・ウィザーズを彷彿させる、スタイリッシュだがどこか温かい雰囲気の歌声が心に残る。良質なポップ・ソングだ。

そして、本作からのもう一つのシングル曲『Astraea』は、ストリングスを取り入れた、切ない雰囲気のアップ・ナンバー。徐々にテンポを上げていく伴奏と、何かに追い立てられるように、せかせかと言葉を吐き出すヴァルブルーナのヴォーカルが印象的な楽曲だ。

また、同曲のカップリングとしてシングル化された”And If We Could, We’d Say”はハモンド・オルガンの音色で幕を開けるミディアム・ナンバー。ヒップホップのエッセンスを取り入れた伴奏に乗せ、ギル・スコット・ヘロンの作品を引用したポエトリー・リーディングを聴かせるという通好みの楽曲。大衆向けとは言い難い素材を集めつつ、アイザック・ヘイズが”Ain’t No Sunshine”や”Never Can Say Goodbye”のカヴァーで見せた、テンポを落として低音をじっくりと聴かせる、キャッチーで粘っこいファンク・サウンドを使ってポップに纏め上げた名演だ。

そして、黒人音楽が好きな人には見逃せない曲が、スティーヴィー・ワンダーの”AnotherStar”にも似た雰囲気のアップ・ナンバー”Get Reborn”だ。オルガンのキラキラとした音色を軸に、華やかな伴奏と軽妙なヴォーカルを組み合わせた楽曲。ライブで聴いたら盛り上がりそうだ。

英国出身のファンク・バンドというと、ジャミロクワイのような世界中で人気のグループから、ストーン・ファンデーションジェイムズ・ハンター・シックスのように、好事家達を唸らせる実力派ミュージシャンまで、あらゆる趣向の人々に対応する層の厚さが特徴的だ。その中で、彼らを他のグループと差別化しているのは、古今東西の色々なソウル・ミュージックを取り込むヒルマンの制作技術と、デーモン・アルバーンやリアム・ギャラガーにも通じる、ヴァルブルーナの存在感のある歌声によるものが大きいと思う。

60年代、70年代のソウル・ミュージックに軸足を置きつつ、その子孫ともいえる90年代以降のブリティッシュ・ロックのエッセンスを混ぜ込むことで、先人や現行の同業者とは違う独自の音楽性を確立した面白い作品。ロック、もしくはブラック・ミュージックをあまり聴かない人にこそ聴いてほしい、ジャンルの壁を越えた魅力的なバンドだ。

Producer
Hillman Mondegreen

Track List
1. Repeat All +
2. The Beginning
3. In and Out
4. Go Back to Love
5. The Omnilogue
6. Coming Home
7. And If We Could, We’d Say
8. Get Reborn
9. Cloud Hidden
10. If Love Is Holding Me Back
11. Astraea
12. Repeat All





Egg Tooth
Ephemerals
Jalapeno
2017-04-21


El Michels Affair ‎– Return To The 37th Chamber [2017 Big Crown Records]

リー・フィールズやダップトーン一派の周辺で活動していたレオ・ミッシェルが、2000年代初頭に結成したファンク・バンド、エル・ミシェル・アフェア。

2003年にデビュー・シングル『Easy Access』を発表すると、太く柔らかい音色と、重心を低く抑えた粘っこい演奏が、好事家の間で注目を集めた。そして、2005年にはウータン・クランのレイクウォンとコラボレーションしたシングル『The PJ's... From Afar』をリリース。その後、2009年にウータン・クランの楽曲をカヴァーしたアルバム『Enter The 37th Chamber』を発売。ヒップホップのサンプリング・ソースを通してソウルやファンクに慣れ親しんできた若い世代に、人間が演奏するファンク・ミュージックの面白さを知らしめた。その後もアイザック・ヘイズの楽曲をインストゥルメンタルでカヴァーしたEP『Walk On By (A Tribute To Isaac Hayes)』等をリリース。ヒップホップを経由して昔のブラック・ミュージックを知った若者から、往年の名アーティストをリアルタイムで聴いてきた年配の人まで、幅広い層から高い評価を受けてきた。

今回のアルバムは『Enter The 37th Chamber』以来、約8年ぶりとなる、彼らにとって通算3枚目のフル・アルバム。『Return To The 37th Chamber』というタイトルが示す通り、前作に引き続きウータン・クランの楽曲に加え、メンバーのソロ作品を演奏した、カヴァー・アルバムになっている。

本作の1曲目、2016年にシングル盤でリリースされた”4th Chamber”はGZAの95年作『Liquid Swords』に収録された曲のリメイク。ヘヴィーなビートとズンズンと鳴り響くベース、おどろおどろしいギターやホーンの音色が印象的なオリジナル・ヴァージョンを、原曲よりもギターやキーボードの音を強調した、キャッチーなファンクに仕立て直している。音のバランスや楽器の音色以外、原曲とほとんど変わらないあたりに、彼らの演奏技術の高さと、ウータン一派のブラック・ミュージックへの愛着が感じられる。

これに続く”Iron Man”はゴーストフェイス・キラーが2000年に発表したアルバム『Supreme Clientele』に入っている”Iron's Theme”が原曲。1分半のインターミッションを3分半の楽曲に再構成するアレンジ技術も凄いが、ゴーストフェイス・キラーの楽曲の醍醐味ともいえる、人間が歌っているかのような、豊かな感情表現を忠実に再現した演奏も本作の醍醐味。個人的な願望だが、彼らの演奏をバックに、ゴーストフェイスがラップするステージを見てみたい。

それ以外の曲で気になるのは、前作にはなかったゲスト・ヴォーカルをフィーチャーした楽曲群。その中でも、2002年のアルバム『Problems』以降、ほぼ全ての作品でレオン・ミッシェルを起用するなど、彼らと縁の深いリー・フィールズが参加した、93年のアルバム『Enter the Wu-Tang (36 Chambers)』の収録曲”Tearz”のリメイクでは、原曲にサンプリングされた楽曲のフレーズを取り入れて、ヒップホップのビートとソウル・ミュージックの歌を融合させた面白い楽曲。元ネタが女性シンガーの曲であるサビの部分は、きちんと女性ヴォーカル(シャノン・ワイスという人らしい)が担当しているなど、芸が細かい点にも注目してほしい。

また、歌ものという意味では、彼らのレーベル・メイトでもあるレディ・レイが参加した”All I Need”も見逃せない。メソッドマンが94年にリリースしたグラミー受賞曲をリメイクしたこの曲は、マーヴィン・ゲイとタミー・テレルのデュエット曲“You're All I Need to Get By”のフレーズを取り入れたオリジナル・ヴァージョンを意識したのか、メアリーJブライジが担当したパートをレディ・レイが担当している。メアリーJに比べるとレイの歌声は線の細いが、元ネタで歌ってるタミー・テレルも可愛らしい声がウリのシンガーだったので、特に違和感はない。むしろ、可愛らしさを保ちつつ、演奏に負けないパワフルな歌が印象的なくらいだ。個人的には、マーヴィンのパートを男性シンガーに吹き込んでもらって、本格的なソウル・ミュージックとして作り直してほしいなと思った。

本作では、メンバーのソロ作品にまで視野を広げる一方、ヴォーカル・パートを含む曲やシングル・カットされなかった比較的地味な曲も丁寧に取り上げている。おそらく、実績を積んで色々な音楽に挑戦する機会を得られたことや、メンバー以外の様々なアーティストを作品に起用できるようになったのだと思う。

ヒップホップのカヴァーと銘打ちつつ、そのサンプリング・ソースであるソウル・ミュージックやファンクの醍醐味にまで手を伸ばした意欲作。収録曲や原曲はもちろん、その曲のサンプリング・ネタも聴きたくなる。ブラック・ミュージックの入り口には最適なアルバムだと思う。

Producer
Leon Michel

Track List
1. 4th Chamber
2. Iron Man
3. Shaolin Brew
4. Pork Chop Express
5. Snakes feat.Lee Fields
6. Drums For Sale
7. Shadow Boxing
8. Sipped Up
9. Tearz feat.Lee Fields and The Shacks
10. Verbal Intercourse 11. Wu-Tang Clan Ain’t Nuthing Ta F’ Wit
12. All I Need feat.Lady Wray
13. The End (Eat My Vocals)





リターン・トゥ・ザ 37th チェンバー
エル・ミシェルズ・アフェアー
Pヴァイン・レコード
2017-04-19

 

Tanika Charles - Soul Run [2017 Record Kicks‎]

アルバータ州エドモントン出身、当時のボーイフレンドとの別れを契機にオンタリオ州トロントへと移住。プロのミュージシャンとして新たな一歩をスタートした、シンガー・ソングライターのタニカ・チャールズ。当初は、ベドウイン・サウンドクラッシュやサンダーヘイストといった、地元を拠点に活躍するアーティストのバック・コーラスが主な活動の舞台だったが、後にミス・チャールズ(Ms. Chawlz)の名義で、自身のステージにも立つようになる。

その後、2010年にはデビュー作となるEP『What! What? What!?』を自主制作で発表。60年代以前のソウル・ミュージックやリズム&ブルースを取り入れた音楽性と、マーサ・リーヴスやグラディス・ナイトを彷彿させる力強いヴォーカルが、熱心なソウル・ミュージックの愛好家や、ヴィンテージ・ミュージックに熱い視線を送っている若い人々の間で注目を集めた。その後も、2015年に本作からの先行シングル『Soul Run / Endless Chain』を配信限定で発表。2016年には上の2曲を含むフル・アルバム『Soul Run』を自主制作で発表(CD盤やアナログ盤の存在は未確認)。カナダのグラミー賞とも呼ばれているジュノ・アワードで、R&B/ソウル・レコーディング・オブ・ザ・イヤーの最終候補作に選ばれている。

この新人離れした偉業に目を付けたのが、イタリアのミラノを拠点に置くインディー・レーベル、レコード・キックス。英国のベイカー・ブラザーズやニュー・マスターサウンズ、アメリカのサード・コースト・キングスといった、往年のファンクやソウル、リズム&ブルースから強い影響を受けたミュージシャン達の作品を数多く配給してきた企業。同社の配給の元、フィジカル・リリースという形で世界デビューを果たした。

さて、アルバムの中身に目を向けると、本作からの先行シングルでアルバムの実質的な1曲目でもある”Soul Run”は、畳みかけるようなドラムやベースが心を掻き立てるアップ・ナンバー。脇を固めるギターやコーラスの艶めかしい演奏や緻密なパフォーマンスが、演奏に一体感を与えている点も見逃せない。少し毛色が異なるが、ジーン・チャンドラーやマーサ・リーヴスのような、60年代にデトロイトやシカゴから多くのヒット曲を送り出したシンガー達に通じるところがあるキャッチーで高揚感のある楽曲だ。

これに対し、同曲に続く”Two Steps”は、ギターのカッティングや可愛らしいコーラス、アドリブを盛り込んだオルガンの伴奏などが、重厚なグルーヴにポップな雰囲気を吹き込んでいるアップナンバー。コブシを効かせたタニカの歌声が、シャロン・ジョーンズにちょっと似ている点は面白いが、全般的な印象は彼女をもっとポップにした感じだ。

そういう意味では、シャロン・ジョーンズのような音楽が好きな人には”Sweet Memories”の方が好みに合うかもしれない。ホーン・セクションを贅沢に使った伴奏とパーカッションを効果的に使ったリズム隊、色っぽい歌声と力強い歌唱を巧みに織り交ぜたタニカのヴォーカルは、シャロン・ジョーンズが終生貫いてきた、生演奏と豊かな歌唱力で勝負したスタイルの延長線上にあるような楽曲だ。

一方、それ以外の収録曲で見逃せないのは、軽妙なリズムを刻むベースが印象的なミディアム・ナンバー”Money”だ。バレット・ストロングなどが、同名のヒット曲を数多く発表しているが、こちらはオリジナル曲。軽快なベースの演奏にスポットを当てたポップなトラックと、高音を中心に伸び伸びと歌うヴォーカルの組み合わせが、フォンテラ・バスの”Rescue Me”を思い起こさせる陽気なソウル・ナンバー。この曲のようにポップなソウル・ナンバーが好きな人には”Endless Chain”と”Waiting”の2曲もオススメ。特に、シングル盤のB面にも収録されてる”Endless Chain”は、肩の力を抜いた伴奏やコーラスを

アルバム全体を通して感じた印象は、シャロン・ジョーンリー・フィールズの作品のように、60年代以降のソウルやファンクの要素をふんだんに取り入れている一方、ヴォーカルのスタイルはフォンテラ・バスやローラ・リーのような大衆性と華やかさ、可憐さを兼ね備えたポピュラー・ミュージック寄りのソウル・シンガーを意識しているように感じた。ポップ・スターに求められる華やかさを兼ね備えたソウル・シンガーといえば、ジャスミン・カラやジョス・ストーン、ジェニファー・ハドソンなどがいるが、彼女らに比べるとロックやヒップホップの影響が薄く、往年のソウル・ミュージックで用いられる手法を現代向けにアップデートすることで、独自性を打ち出している点で、大きく異なっていると思う。

ドレイクパーティネクストドアウィークエンドなど多くのライバルがひしめき合うカナダの黒人音楽シーンから飛び出してきた魅力的な新星。BADBADNOTGOODなどとコラボレーションしたら面白いことになりそうだけど、次はどんな一手を打ってくるのかな?

Producer
Michael Warrenn, Slakah the Beatchild, Christopher Sandes etc

Track List
1. Intro
2. Soul Run
3. Two Steps
4. Sweet Memories
5. More Than A Man
6. Money
7. Love Fool
8. Heavy
9. Endless Chain
10. Waiting
11. Darkness And The Dawn





Soul Run
Tanika Charles
Record Kicks
2017-05-05

 
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