ブラック・ミュージック千本ノック~SoulとR&Bと色々な音楽~

管理人が手に入れたR&Bのアルバム、1000枚の紹介文を書き続けるブログ その先に見えるものは天国か地獄か・・・

女性グループ

KING - WE ARE KING [2016 KING CREATIVE]

ロス・アンジェルスを拠点に活動する、パリスとアンバーのストローザー姉妹と、アニタ・バイアスからなる3人組ヴォーカル・グループ、キングのデビュー・アルバム。

2011年にリリースされたロバート・グラスパーの代表作、『Black Radio』に収録された”Move Love”で、小川のせせらぎのような透き通ったヴォーカルを披露して注目を集め、その後も、ビラルやエリック・ロバーソンなどの作品で、美しい歌声を披露している彼女達。そんな3人にとって、初めてのアルバムとなる本作は、客演仕事で膨らんだファンの期待を裏切らない、爽やかで心地よいR&B作品になっている。

まず、アルバムが発表される5年前、2011年にリリースされた”THE STORY”に耳を傾けると、幾重にも重ねられたシンセサイザーの音色が、ふわふわとしたメロディのアクセントになって、幻想的な雰囲気の楽曲の輪郭を際立たせている点が面白い。滑らかなヴォーカルが織りなすハーモニーは、2000年代に活躍した2人組、フロエトリーにも少し似ているが、歌声の繊細さと電子楽器の多用という点で、彼女達よりも現代的。もっと言えば、フライング・ロータスやエイドリアン・ヤングなどの前衛的なヒップホップに近い、尖った雰囲気を醸し出している。

また、それ以外の曲に目を向けると、ロバート・グラスパーの新曲と勘違いしそうなシンセ・ドラムのビートと、ギラギラとした音色のシンセサイザーのリフを取り入れた”THE GREATEST”では、 ヴォーカルの響きを音響技術で強調して、ジェイムズ・ブレイクの作品を思い起こさせる、幻想的な雰囲気を作り出し、”SUPERNATURAL”ではデニ・ハインズを連想させるキュートなファルセットと、ビラルやエリック・ロバーソンが作りそうな、オーソドックスだが随所に電子音などのアクセントを加えた、オーソドックスだけどどこか先鋭的なパフォーマンスを披露している。

一方、SWVの”Weak”を彷彿させる甘酸っぱいメロディと歌声が印象的なバラード”IN THE MEANTIME”のように、ヴォーカルへのエフェクターの使用や、シンセサイザーのリフを控え目にして、三人の美しい歌声と緻密なハーモニーを強調した、90年代のR&Bに近い作風のものもある。

彼女達の音楽は、上述のフロエトリーや、エリカ・バドゥ、ジル・スコットといった、いわゆるネオソウルと呼ばれるジャンルのシンガーに近い部分も少なくない。だが、よく聴き比べると、ヴォーカルの声が硬く、シンセサイザーを多用した、無機質な一面も覗かせる彼女達の音楽は、柔らかい歌声とバンドの演奏によるトラックで、温かい雰囲気に纏め上げた他のシンガーとは一線を画している。

出身地や人脈の違いといえばそれまでだが、ブレインフィーダーやストーンズ・スロウを輩出した土地で、ロバート・グラスパーからフォーリン・エクスチェンジまで、色々なジャンルのミュージシャンと仕事をしてきた経験が、彼女達の音楽の幅を広げ、新しいサウンドを積極的に取り入れさせたのかもしれない。

バンドの演奏など、生音にこだわりを持つヴィンテージ系ミュージシャンと、コンピューターを積極的に取り入れ、ロックやエレクトロ・ミュージックも取り入れるミュージシャン。そのどちらとも適度に距離を置き、電子楽器と美しいヴォーカルが織りなすハーモニーをウリにした彼女達。商業的な成功は別として、R&Bの世界に新しい風を吹き込んでくれそうな、センスの良さを感じさせるアルバムだ。

Producer
Paris Strother

Track List
1. THE RIGHT ONE
2. THE GREATEST
3. RED EYE
4. SUPERNATURAL (EXTENDED MIX)
5. LOVE SONG
6. IN THE MEANTIME
7. CARRY ON
8. MISTER CHAMELEON
9. HEY (EXTENDED MIX)
10. OH, PLEASE!
11. THE STORY (EXTENDED MIX)
12. NATIVE LAND





We Are King
King
KING CRAB
2016-05-27


TLC – 『Joyride』 『Haters』 [2016 Warner]

92年、ニュージャック・スウィングのビートの上で、T-ボズとチリの個性的なヴォーカルとレフト・アイやんちゃなラップが飛び出す”Ain't 2 Proud 2 Beg”でデビューするや否や、若者の心を一気に掴み、続くセカンド・アルバムでは、オーガナイズド・ノイズが生み出す温かい音色のビートと、ドロドロとしたヴォーカルに乗せ、歌詞に強烈な人生訓を込めた”Waterfalls”で大ヒットを記録。三作目に収録された”No Scrubs”では新進気鋭のプロデューサー、ケヴィン”シェイクスピア”ブリッグスを起用し、変則ビートとキャッチーなメロディを融合させた楽曲を、あえて感情を押し殺して平坦に歌い上げることで、黒人音楽業界を席巻していた変則ビートの可能性を切り開いた三人組ガールズ・グループ、TLC。2003年にラッパーのレフトアイを失ってから、活動が停滞していた彼女らが2014年以来となる新曲を発表した。

2016年10月に突然、音楽配信サイト限定で発表された2曲のシングル『Joyride』と『Hater』には、正直なところ戸惑った。プロデューサー等のクレジットは一切なく、発売元も日本限定のベスト・アルバムを出したことが1回あっただけのワーナー・ミュージックということで、レーベルを移籍しての再出発か、それとも単発的な契約か、もしかしたら、ただの未発表曲なのか、情報が少ないがゆえに色々と勘ぐってしまった。

しかし、実際にこれらの曲を耳にすると、そんなことはどうでもいいと思えてしまう。”Joyride”はエフェクターの使い方こそ珍しいが、ギターやハンド・クラップなどのフレーズをループさせて、ホーン・セクションをアクセントに使った、90年代中期のショーン・コムズやトラック・マスターズを連想させるキャッチーなトラックが印象的なミディアム・ナンバー。T-ボズの粘っこいアルトと、チリのハスキーなコーラスが、レイド・バックした雰囲気のメロディの上で絡み合うスタイルは、トラックに使われている音色こそ違うが『CrazySexyCool』に収録されていても不思議ではない。また、もう一つの新曲”Hater”は電子音をアクセントに使った変則ビートの上に、明るいメロディとラップが乗ったミディアム・バラード。ダラス・オースティンやジャーメイン・デュプリの影響を感じるサウンドは、『FanMail』の没曲と言われたら信じてしまいそうな、チキチキビートを効果的に使ったバラードだ。

今回の2曲は、90年代に彼女らの曲に親しんだ人々にとっては懐かしく思える、良くも悪くも全盛期のTLCの影を引きずった曲だと思う。今後も過去の実績を引きずって生きるのか、それとも、今回の作品からさらに進化した新しいTLCを見せるのか、現時点ではわからないが、期待して待ちたいと思う。

Producer
Non Credit








SWV - Still [2016_eOneMusic]

90年代には、”Right Here”や”Weak”などのヒット曲で、歴史にその名を刻んできた3人組ガールズ・グループ、SWVが2016年にリリースした、5枚目のオリジナル・アルバム。

2012年に発売された、彼女達にとって再結成後初めてのフル・アルバム『I Missed You』では、ケイシア・コールの”Let It Go”やジャズミン・サリヴァンの”Need U Bad”などをヒットさせたCainon Lambをプロデューサーに迎え、90年代のR&Bを彷彿させる親しみやすいメロディと、2000年以降の楽曲制作では欠かせない存在になったシンセサイザーの鋭いサウンドを巧みに融合して、往年のR&Bファンの期待に応えつつ、懐古趣味では終わらせない、21世紀のR&B像を提示してくれた。

4年ぶりとなる本作では、ケイノン・ラムに加え、新たにヒップホップのプロデューサーとして活躍しているビッグ・Dが制作を担当。前作の路線を踏襲しつつ、流行も適度に取り入れた2016年のSWVを披露している。

アルバムに先駆けて発表された”Ain’t No Man”は、しっとりとしたメロディを、可愛らしいコーラスと、ジャーメイン・デュプリの影響を伺わせる打ち込みのビートでポップに聴かせるミディアム・バラード。また、もう一つの先行リリース曲”MCE(Man Crush Everyday)”は、”Weak”と”Use Your Heart”を混ぜた合わせたような、切ないメロディと気怠い雰囲気が合わさったスロー・バラードを聴かせてくれる。どちらの曲も、彼女らの持ち味である口ずさみやすいメロディを大切にしつつ、新しいサウンドを確実に取り入れた、良質なR&Bだ。

また、それ以外の収録曲では、”Right Here”や”I’m So Into You”を意識したフレーズが飛び出すタイトル曲”Still”や、”Anything”の2016年版といった趣のミディアム”Love Song”ような曲がある一方、パトリス・ラッシェンの”Never Gonna Give You Up”をサンプリングした、四つ打ちのダンス・ナンバー”On Night”や、ハロルド・メルビン&ブルー・ノーツの”I Miss You”をサンプリングした爽やかなバラード”Miss You”など、マーク・ロンソンの”Uptown Funk”以降、再び盛り上がっているディスコ・ミュージックや往年のソウル・ミュージックを取り入れた曲が登場している。

90年代のキャッチーなメロディを大切にしながら、流行のサウンドを積極的に取り入れた本作は、往年のR&Bファンを納得させつつ、新しい世代に彼女達や90年代R&Bの魅力を伝える橋渡し役になりそうだ。


Track List
1. Still
2. MCE (Man Crush Everyday)
3. On Tonight
4. Let's make music
5. Ain't No Man
6. Love Song
7. When Love Didn't Hurt
8. Miss You
9. Leaving You Alone
10. What We Gonna Do





スティル
SWV
ビクターエンタテインメント
2016-02-10


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