ブラック・ミュージック千本ノック~SoulとR&Bと色々な音楽~

管理人が手に入れたR&Bのアルバム、1000枚の紹介文を書き続けるブログ その先に見えるものは天国か地獄か・・・

女性シンガー・ラッパー

Ravyn Lenae - Crush [2018 323Music, Atlantic]

2015年に自主制作で発表したEP『Moon Shoes』が、音楽通の間で注目を集めたことをきっかけに、アトランティックと契約。2016年に同作をアトランティックから再発すると、音と音の隙間を効果的に使った構成と、繊細なヴォーカルで多くの人を魅了した、イリノイ州シカゴ出身のシンガー・ソングライター、ラヴィン・レネー・ワシントン。

シカゴで生まれ育った彼女は、教会で宣教師をしていた祖父の影響もあり、子供のころから教会で音楽に慣れ親しんでいた。そんな彼女は、シカゴのハイスクールでクラシック音楽を専攻。卒業後は自身の作品を作りながら、同郷のプロデューサー、モンテ・ブッカーや、セントルイス出身のラッパーのスミノなどとコラボレーションしてきた。また、それらの縁もあり、2015年にはモンテが制作を担当した、自身名義では初となるミニ・アルバム『Moon Shoes』を録音している。

そして、2017年には2枚目のEP『Midnight Moonlight』をリリース。モンテに加え、シーザの作品に携わっているカーター・ラングなどが参加したことが話題になる。また、同じ年に行われたシーザのツアーでは、オープニング・アクトとして起用されるなど、着実に知名度を上げてきた。

このアルバムは、そんな彼女にとって、1年ぶり3枚目のEP。プロデューサーには初のソロ作品『Steve Lacy's Demo』を発表して話題になった、ザ・インターネットのスティーヴ・レイシーが担当。本作でも、バンド名義やシドの作品で魅せた、泥臭いソウル・ミュージックと先鋭的なヒップホップが融合した、独創的な音楽に取り組んでいる。

アルバムの1曲目は、本作からの先行シングル”Sticky”。不気味な雰囲気を醸し出すオルガンのイントロから、スライ&ザ・ファミリー・ストーンの作品を彷彿させる乾いた音色のギターへと繋がる展開が面白い曲。少し早めのイントロから一転、ゆったりとしたテンポのビートの上で、ラップとも歌とも形容しがたい、個性的なパフォーマンスを披露するラヴィンの姿が光るっている。バック・トラックはエリカ・バドゥやシドの作品にも少し似ているが、ヒップホップのエッセンスを盛り込んだヴォーカルはドレイクっぽくも聴こえる不思議な音楽だ。

続く”Closer (Ode 2 U)”は、エフェクターを使って歪ませたギターの伴奏や躍動感あふれるビートが、サイケデリック・ロックとソウル・ミュージックを融合した、70年代初頭のファンカデリックやカーティス・メイフィールドを思い起こさせるアップ・ナンバー。バス・ドラムの音を強調して、現代のヒップホップっぽく纏め上げたトラックや、ラヴィンの繊細な歌声を際立たせた演出が、サイケデリックなソウル・ミュージックを、2018年のR&Bのように聴かせた異色の作品だ。

また、スティーヴをフィーチャーした”Computer Luv”は、彼の作品では珍しい、思いっ切りギターをかき鳴らすフォーク・ミュージック寄りのアレンジが新鮮な作品。複数のシンセサイザーの音色を組み合わせて、エフェクターを多用したサイケデリックなサウンドとは一味違う、幻想的なフォーク・ソングに仕立てた伴奏が聴きどころ。

そして、もう一つのコラボレーション曲”4 Leaf Clover”は、リズム・マシンを使った軽快なビートとパワフルなギターの音色が眩しいミディアム・ナンバー。70年代前半のロキシー・ミュージックやデイヴィッド・ボウイを連想させる、グラマラスな伴奏に乗って、爽やかなヴォーカルを披露する二人の姿が心に残る良曲だ。

今回の作品で彼女は、独創的なサウンドに定評のあるスティーヴを起用することで、自身の持ち味である尖ったR&Bを維持しつつ。それを新しい切り口で表現した作品を生み出すことに成功している。多くのバンド・メンバーを抱えるザ・インターネットの中でも一番若く、かつ個性的な作品を残しているスティーヴを相方に選ぶことで、ゴスペルやクラシック音楽から、最新のヒップホップやR&Bまで、色々なジャンルに取り組んできた彼女の強みが遺憾なく発揮されている。

恵まれた環境で色々なジャンルの音楽を吸収する一方、自身の作品では鋭いセンスを発揮してきた彼女の長所が、遺憾なく発揮された佳作。大ベテランのエリカ・バドゥを筆頭に、シーザやシドといった多くの名シンガーが鎬を削る、ネオ・ソウルの分野に新しい風を吹き込んだ良盤だ。

Producer
Steve Lacy

Track List
1. Sticky
2. Closer (Ode 2 U)
3. Computer Luv feat. Steve Lacy
4. The Night Song
5. 4 Leaf Clover feat. Steve Lacy





Crush EP [Explicit]
Atlantic Records/Three Twenty Three Music Group
2018-02-09

Various Artist - Black Panther The Album [2018 Top Dawg, Aftermath, Interscope]

2017年には4枚目のスタジオ・アルバム『Damn』を発表。複数の国でゴールド・ディスクを獲得し、同作に収録されているシングル”Humble”は、各国の年間チャートに名前を連ねる大ヒットとなった、カリフォルニア州コンプトン出身のラッパー、ケンドリック・ラマー。2018年1月に開催されたグラミー賞では、主要部門のうち、最優秀レコードと最優秀アルバムの2部門にノミネートし、ラップ部門を総なめにするなど、2017年を代表するヒップホップ・アーティストとして、華々しい成果を上げた彼の2018年最初の作品は、アフリカ系アメリカ人が主人公のマーベル・コミックを実写化した、ハリウッド映画のサウンド・トラック。

彼が在籍するレーベル、トップ・ドーグから発売されたこのアルバムでは、同レーベルの所属アーティストを中心に、ジェイムス・ブレイクやウィークエンド、アンダーソン・パークなど、凝ったサウンドで多くの音楽ファンを魅了してきた面々が集結。斬新なサウンドとキャッチーな曲作りで、聴き手を魅了している。

本作の1曲目は、ケンドリック・ラマーと同郷のプロデューサー、マーク・スピアーズが手掛けるタイトル・トラック”Black Panther”。60年代のポピュラー・ミュージックから引用したような、ロマンティックなピアノの伴奏に始まり、シンセサイザーを駆使したおどろおどろしいビートへと繋ぐ展開が新鮮な作品。トラックの変化に合わせて、ラップのスタイルを変えるケンドリック・ラマーのテクニックも光っている。

これに続く”All the Stars”は、プロデュースをマークとロンドン出身のアル・シャックスが担当した、ケンドリック・ラマーとシーザのコラボレーション曲。エムトゥーメイの”Juicy Fruits”を彷彿させる、スタイリッシュなビートに乗って、爽やかな歌声を響かせるシーザと、切れ味の鋭いラップを聴かせるケンドリック・ラマーのコンビネーションが格好良いミディアム・ナンバー。強烈な存在感を発揮しながら、息の合ったパフォーマンスを見せる姿は、多くのシンガーとヒット曲を残してきた、ナズやジェイZを思い起こさせる。

また”Humble”の共作者としても有名な、マイク・ウィル・メイド・イットが制作に参加した”King's Dead ”は、ジェイ・ロックやフューチャーといった、実力に定評のあるラッパーに加え、ビヨンセやフランク・オーシャンのアルバムにも拘わっているジェイムス・ブレイクを起用。マイクが得意とするチキチキ・ビートの上で、三人が豊かな個性を遺憾なく発揮している。ジェイムス・ブレイクのヴォーカルを含め、最小限の音数でスリリングなヒップホップを聴かせるテクニックは、流石としか言えない。

そして、本作の最後を締める”Pray For Me”は、2016年のアルバム『Starboy』が年を跨いで売れ続けた、カナダ出身のシンガー・ソングライター、ウィークエンドとのコラボレーション曲。ウィークエンドがダフト・パンクと録音した大ヒット曲”Starboy”の共作者でもあるドック・マッキンネイに加え、ドレイクやニッキー・ミナージュに楽曲を提供しているカナダ出身のヒット・メイカー、フランク・デュークスが制作者に名を連ねるこの曲は、アナログ・シンセサイザーの太く、柔らかい音色を使ったトラックが”、Starboy”を連想させるミディアム・ナンバー。殺伐とした雰囲気の作品が多いケンドリック・ラマーに合わせて、哀愁を帯びたメロディや伴奏を取り入れた構成が心憎い。”Starboy”の路線を踏襲しつつ、このアルバムに合わせて絶妙な調整を加えた佳作だ。

本作の聴きどころは、強烈な個性で台頭したトップ・ドーグの面々の持ち味を際立たせながら、ゲスト・ミュージシャンやアルバム全体の構成で、作品全体に起伏をつけているところだろう。単独名義の作品ではアクが強過ぎて使いづらいスタイルの楽曲を録音しつつ、曲ごとにプロデューサーやアーティストの組み合わせを変えることで、パフォーマーの個性を引き出しつつ、アルバムにメリハリをつけている。また、映画という一つの軸を持つことで、バラエティ豊かな楽曲を揃えつつ、一本筋が通った作品に仕立てている点も見逃せないだろう。

ケンドリック・ラマーやシーザを輩出したトップ・ドーグの、高い実力が遺憾なく発揮された名盤。2018年初頭に発表されたアルバムだが、この年を代表する作品になりそうな風格さえ感じる。

Producer
Anthony "Topdawg" Tiffith, Kendrick Lamar, Dave "Miyatola" Free etc

Track List
1. Black Panther - Kendrick Lamar
2. All the Stars - Kendrick Lamar, SZA
3. X - Schoolboy Q, 2 Chainz, Saudi
4. The Ways - Khalid, Swae Lee
5. Opps - Vince Staples, Yugen Blakrok
6. I Am - Jorja Smith
7. Paramedic! - SOB X RBE
8. Bloody Waters - Ab-Soul, Anderson .Paak, James Blake
9. King's Dead - Jay Rock, Kendrick Lamar, Future, James Blake
10. Redemption Interlude
11. Redemption - Zacari, Babes Wodumo
12. Seasons - Mozzy, Sjava, Reason
13. Big Shot - Kendrick Lamar, Travis Scott
14. Pray For Me - The Weeknd, Kendrick Lamar





Black Panther: The Album
Various Artists
ユニバーサル ミュージック合同会社
2018-02-10

Chris Dave And The Drumhedz - Chris Dave And The Drumhedz [2018 Blue Note]

クリス・デイヴことクリストファー・デイヴィスは、テキサス州ヒューストン出身のドラマー。

10代のころから教会やジャズ・バンドなどでドラムを叩いていた彼は、「黒人のハーバード」の異名を持つハワード大学に在学していたころ、プリンスやジャネット・ジャクソンの作品を手掛けていたジャム&ルイスの知己を得る。

彼らとの出会いをきっかけに、ミント・コンディションのレコーディングにかかわるようになったクリスは、その後も、マックスウェルやディアンジェロのようなR&Bシンガーや、ミッシェル・ンデゲオチェロやロバート・グラスパーのような複数のジャンルに跨る作風のミュージシャン、アデルや宇多田ヒカルといったポップス畑の大物まで、様々なジャンルのアーティストの作品に参加。高い演奏技術と豊かな表現力で、ミュージシャン達から高い評価を受けてきた。

本作は、彼にとって初のスタジオ・アルバム。この作品は、ロバート・グラスパーのバンドで共演したこともあるデリック・ホッジや、マイルス・デイヴィスの作品でも演奏しているフォーリー、メイサ・リークやQ-ティップなどのアルバムにも携わっているゲイリー・トーマス、坂本龍一からエド・シーランまであらゆるジャンルのミュージシャンとセッションしているピノ・パラディノの4人と結成した、ドラムヘッズ名義のアルバム。この中では、アンダーソン・パックやミント・コンディションのストークリーといった、過去に共演経験のある面々のほか、ゴアペレやサー、ビラルやトゥイートなど、多くの人気R&Bシンガーがヴォーカルを担当。ジャズ・バンドで磨き上げた高い演奏技術と、個性豊かなシンガーの表現力を組み合わせた、魅力的なヴォーカル作品に仕上げている。

アルバムの収録曲で最初のヴォーカル曲は、ケンドリック・ラマーなどを擁する、トップドーグ所属の女性シンガー、サーを招いた”Dat Feelin’”。ファンクの要素を盛り込んだ泥臭く、躍動感のある演奏をバックに、しゃがれ声が響き渡るアップ・ナンバー。どことなく、スリーピー・ブラウンの音楽を思い起こさせる武骨さが面白い。

続く、”Black Hole”は、アンダーソン・パックが制作とヴォーカルを担当した楽曲。変則的なビートとエフェクターを多用したサイケデリックな音色の伴奏のインパクトが強い曲だ。ヒップホップともジャズともファンクとも異なる、一癖も二癖もあるサウンドと、歌とラップを混ぜ合わせた歌唱の組み合わせが光っている。

そして、エリック・ロバートソンに加え、元スラム・ヴィレッジのエルザイと元リトル・ブラザーのフォンテをフィーチャーした”Destiny n Stereo”は、クリスの力強いドラムと、ピノが鳴らす太いベースの音が、ジェイ・ディラの作品を連想させるミディアム・ナンバー。ヒップホップのビートを人力で再現する手法は、ウィル・セッションズやザ・ルーツが行っているし、クリスもロバート・グラスパー・エクスペリメンツで経験している。今回の演奏は、そのスタイルを踏襲したものだが、ほかのアーティスト以上に、楽器の音色を強調しながら、ヒップホップのビートのように聴かせて演出は新鮮。天国のジェイ・ディラが、彼らを後ろから操っているのではないかと錯覚してしまう曲だ。

そして、サーに加えて、アナ・ワイスをヴォーカルに迎えた”Job Well Done”は、ジャズともロックとも形容しがたい摩訶不思議なアレンジと、急激にテンポが変わる構成、レディオヘッドを思い起こさせる幻想的なメロディの組み合わせが斬新な作品。ジャズやヒップホップ以外の音楽のエッセンスをふんだんに盛り込みつつ、ダイナミックなグルーヴや表情豊かな歌唱で、ジャズとして聴ける曲に落とし込む技は圧巻の一言。

このアルバムの面白いところは、ハード・バップやモダン・ジャズのような「ステレオタイプのジャズ」とも、ヒップホップやR&Bのような現代のブラック・ミュージックとも適度に距離を置きながら、ジャズが好きな人にも、ブラック・ミュージシャンが好きな人にも楽しめる音楽を作り上げていることだろう。ソウル・ミュージックやゴスペル、ファンクやロックといった色々な音楽を取り込み、ジャズの枠を広げた、70年代のマイルス・デイヴィスやジョン・コルトレーンの思想を取り込み、現代の音楽に当てはめる発想が功を奏したのだと思う。

ロバート・グラスパーやサンダーキャットとは異なるアプローチで、ジャズ・ミュージシャンの可能性を示した良質な作品。ジャズに馴染みのない人にはジャズの面白さを、ジャズが好きな人には、楽器の持つ無限の可能性を教えてくれる名盤だと思う。

Producer
Chris Dave and the Drumhedz

Track List
1. Rocks Crying
2. Universal Language
3. Dat Feelin’ feat. SiR
4. Black Hole feat. Anderson .Paak
5. 2n1
6. Spread Her Wings feat. Bilal &Tweet
7. Whatever
8. Sensitive Granite feat. Kendra Foster
9. Cosmic Intercourse feat. Stokley Williams
10. Atlanta, Texas feat. Goapele
11. Destiny n Stereo feat. Elzhi, Phonte Coleman & Eric Roberson
12. Clear View feat. Anderson .Paak
13. Job Well Done feat. Anna Wise& SiR
14. Lady Jane
15. Trippy Tipsy






Chris Dave & the Drumhedz
Chris Dave And The Drumhedz
Blue Note Records
2018-01-26

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