ブラック・ミュージック千本ノック~SoulとR&Bと色々な音楽~

管理人が手に入れたR&Bのアルバム、1000枚の紹介文を書き続けるブログ その先に見えるものは天国か地獄か・・・

女性シンガー・ラッパー

Tamar - Bluebird Of Happiness [2017 Logan Land, eOne]

テイマー・ブラクストンこと、テイマー・エスティーヌ・ブラクストンはメリーランド州セヴァーン出身のシンガーソングライター。

彼女は自身の姉妹と結成した5人組ヴォーカル・グループ、ブラクストンズとして5歳の頃から活動。多くのステージを経験していく中で実力を認められ、アリスタ・レコードと契約。90年にシングル”Good Life”をリリースする。その後、長女のトニはソロに転向、多くのヒット曲を残し90年代を代表する女性シンガーの一人となった。

その後、トニ以外の4人のうちトレイシーを除く3人は、96年にブラクストンズの名義でアルバム『So Many Ways』を発表。”Slow Flow”や”The Boss”(ダイアナ・ロスの同名曲のリメイク)などをヒットさせた。

また、彼女は1999年のEP『Tamar: Just Cuz』でソロ・デビューすると2016年までに4枚のフル・アルバムと8枚のシングルを録音。その中でも、2013年に発表した2枚目のアルバム『Love and War』と同作のタイトル・トラック”Love and War”は全米R&Bチャートを制覇する大ヒットとなった。

このアルバムは、自身の名義では2015年の『Calling All Lovers』以来となる通算5枚目のフル・アルバム。彼女が設立したレーベル、ローガン・ランドからの発売。しかし、ミュージックラトーヤなどの作品を扱っているeOneが配給を担当し、プロデューサーとして、ロドニー・ジャーキンスやヴォンセント・ハーバートといった有名ミュージシャンを数多く手掛けている面々が参加。可愛らしさと老練さを兼ね備えたヴォーカルを引き立てる、美しいメロディのR&B作品を揃えている。

本作のオープニングを飾る”My Forever”は、フェイス・エヴァンスの”I Love You”やジェニファー・ロペスの”All I Have”を連想させる、生演奏風の音色を使ったソウル・ミュージック色の強いトラックと、艶めかしいメロディが印象的なスロー・ナンバー。ボビー・ヴァレンチノやオマリオンなどに曲を提供しているコ・キャプテンズが制作に携わり、大人の色気を前面に押し出したスタイルは、姉のトニ・ブラクストンによく似ている。90年代にこの曲が発売されていたら、大ヒットしていたと思わせる、ロマンティックなバラードだ。

これに対し、トロイ・テイラーがプロデュースした”Run Run”は、彼女の作品では異色のレゲエ・ナンバーだ。ジェイZやカニエ・ウエストなどがサンプリングしたことでも知られているシスター・ナンシーの82年のヒット曲”Bam Bam”を引用した本作は、ミュージカル・ユースの”Pass The Dutchie”を思い起こさせるポップで躍動感あふれるトラックの上で、貫禄のある歌声を聴かせている。 丁寧な歌唱が持ち味のテイマーだが、この曲ではリディムの持つ陽気で軽快な雰囲気を上手く咀嚼した、軽妙なヴォーカルを披露している。

しかし、本作の目玉は何といっても彼女の歌唱力を前面に押し出したスロー・バラード”Blind”だろう。ロドニー・ジャーキンスが手掛けたこの曲は、映画「キャデラック・レコード」のクライマックスでビヨンセがカヴァーしたことも話題になった、エッタ・ジェイムスが68年に発表した名バラード”I'd Rather Go Blind”のフレーズを引用した作品。複雑なメロディを力強い歌声でねじ伏せたエッタやビヨンセに比べると、パワーでは見劣りする部分もあるが、ピアニッシモからフォルテッシモ、地声から裏声まで、途切れることなく繋ぐ技術は、彼女達に負けていない。ヴォーカリストとしてのテイマーの実力の高さを再確認できる良曲だ。

そして、本作に先駆けて後悔された”My Man”はTLCやボーイズIIメンなどの作品を手掛けているプロダクション・チーム、ティム&ボブのボブ・ロビンソンと制作したスロー・ナンバー。シンセサイザーを多用したスタイリッシュなトラックに乗って、艶やかなヴォーカルを披露する、ムーディーなバラード。彼女の代表曲”Love and War”や姉トニの”Un-Break My Heart”の路線を踏襲した作風からは、彼女達が20年以上の間貫いてきたスタイルが普遍的なものであることが伝わってくる。

このアルバムでは、90年代のブラクストンズやトニの作品を彷彿させる、主役の歌を引き立てるシンプルな伴奏と流麗なメロディ、美しい歌声を存分に聴かせるヴォーカルという組み合わせた曲が数多く収められている。安価で高性能な機材が流通し、斬新なサウンドが次々と生まれている中で、彼女のようにシンプルなアレンジと歌唱力で勝負する作品は珍しいが、このような録音が残せるのは、彼女が自身の歌唱力を武器に20年以上戦ったきた実績と実力があるからだろう。

スタイリッシュなサウンドとしなやかで美しいヴォーカルを思いっきり楽しめる希少なヴォーカル・アルバム。トニ・ブラクストンやメアリーJブライジの作品に心躍った90年代のR&Bシーンを経験した世代にはたまらない、本格的なR&Bを楽しみたい人にオススメ。

Producer
Tamar Braxtone, Rodney Jerkins, Vincent Herbert, Troy Taylor, Bob Robinson etc

Track List
1. My Forever
2. Wanna Love You Boy
3. Run Run
4. Hol' Up feat. Yo Gotti
5. The Makings Of You
6. Heart In My Hands
7. Blind
8. My Man
9. Pick My Up
10. How I Feel
11. Empty Boxes




Bluebird of Happiness
Tamar Braxton
Tamartianland
2017-09-29

Ledisi - Let Love Rule [2017 Verve]

2000年に自身のレーベル、ル・サンからリリースした1枚目のアルバム『Soulsinger』が、ソウルフルな歌声とロマンティックなメロディが光る佳作として評判になり、インディー・レーベル発の作品ながら、音楽ファンの間でも注目を集め、各国のレコード・ストアで目立つ位置に陳列された、ルイジアナ州ニューオーリンズ出身のシンガー・ソングライター、レディシことレディシ・アニベド・ヤング。

実は彼女、ジャズ・ミュージシャンのラリー・サンダースを父に持ち、祖父は伝説のブルース・シンガー、ジョニー・エース。それ以外にも、ミュージシャンとして活動している親戚が何人もいるという音楽家一族の出身。そんな彼女は、8歳の頃から地元のジャズ・バンドでヴォーカルを担当し、大学を卒業した後は西海岸を拠点にミュージシャンとして活動していたという。

2007年にジャズの名門レーベル、ヴァーヴと契約し彼女は、2016年までに5枚のアルバムを制作。全ての作品をアルバム・チャートの上位に送り込み、グラミー賞を含む多くの音楽賞にノミネートするなど、歌唱力をウリにした通好みのシンガーでありながら、商業的にも一定の成果を収め続ける本格派のミュージシャンとして活躍してきた。

今回のアルバムは、前作『The Truth』以来、実に3年ぶりとなる通算8枚目のオリジナル・アルバム。前作に引き続き、レックス・ライドアウトがプロデュースを担当。ほぼ全ての曲で彼女自身がペンを執り、カーク・フランクリンやDJカリルといった個性的なプロデューサーを起用し、ゲスト・ミュージシャンとしてBJザ・シカゴ・キッドジョン・レジェンドといった人気ミュージシャンが参加した力作になっている。

本作の収録曲で最初に気になったのは、彼女自身がプロデュースしたミディアム・ナンバー”Add To Me”だ。ダイナミックなベース・ラインと躍動感のあるビートの上で、軽やかなストリングスの演奏が響き渡るミディアム・ナンバー。一度聴いたら忘れない、キャッチーなフレーズを繰り返し鳴らすスタイルは、ヒップホップのビートにも似ている。力強い歌声を器用に扱う姿は、”Be Happy”や”I’m Going Down”などで、ソウル・ミュージックのフレーズを引用した複雑なトラックを巧みに乗りこなした、メアリーJ.ブライジを彷彿させる。

しかし、彼女の魅力は何といっても”歌”にスポットを当てたバラードだろう。そういう意味では、レックス・ライドアウトに加え、ストーンズ・スロウから4枚のアルバムを出しているバンド、ステップキッズのジェフ・ギテルマンが制作に参加した”Here”は、彼女のヴォーカルを思う存分堪能できる良曲だ。ストリングスとキーボードを駆使したしなやかな伴奏をバックに、美しい歌声をじっくりと聴かせているミディアム・バラード。力強い歌声が魅力の彼女だが、この曲でも流麗なメロディを丁寧に乗りこなしつつ、随所でパワフルな歌唱を披露している。

また、ゲスト・ヴォーカルを招いた作品では、2016年のアルバム『In My Mind』も記憶に新しいBJザ・シカゴ・キッドが参加した”Us 4ever”が面白い。70年代のソウル・ミュージックを思い起こさせる、温かい音色のギターが印象的な伴奏をバックに、しっとりと歌う二人の姿が印象的なスロー・ナンバーだ。ジャズの経験が豊富なレディシにヒップホップの影響が色濃いBJと、声質も音楽性も大きく異なる二人だが、この曲は両者に共通するルーツであるソウル・ミュージックの要素を強調することで、二人のスタイルを残しつつ、一つの作品に落とし込んでいる。シンセサイザーを盛り込んだモダンなトラックと、二人の泥臭いヴォーカルを組み合わせたジョン・レジェンドとのデュエット曲”Give You More”とはタイプの異なる曲を用意しつつ、きちんと自分の個性を発揮する技術は流石としか言いようがない。

そして、本作からの先行シングルである”High”は、彼女の作品に何度も参加しているダリル・キャンペルやチャールズ・ヒンショウが制作に携わっているスロー・ナンバー。同じフレーズを繰り返し演奏するホーン・セクションやキーボードが、ヒップホップのサンプリング・ソースのようにも聴こえる。曲調は”Add To Me”にも似ているが、こちらの曲ではアレサ・フランクリンを連想させるパワフルなヴォーカルを聴かせている。

彼女の初期の作品では、ジャズ・ヴォーカルのアルバムと勘違いしそうな程、繊細でテクニカルな演奏と歌唱が目立っていたが、ヴァーヴとの契約以降は、その傾向も薄れ、60年代、70年代のソウル・ミュージックや、現代のヒップホップ、R&Bを混ぜ合わせた、現代のトレンドを大人向けにアレンジしたR&B作品が増えてきている。大人向けの作品というと、往年の名アーティストを意識したものや、過剰な演出を控えたシンプルなものが多いが、彼女は新しい手法を積極的に取り入れつつ、それらをバンド・サウンドやソウル・ミュージックの歌唱法と混ぜ合わせることで、聴き手に懐かしさを感じさせつつ、新鮮な印象を与えていると思う。

ジャズとソウル・ミュージックをベースにしつつ、R&Bやヒップホップの手法も適度に取り入れることで、新鮮だけど飽きの来ない唯一無二の作品に落とし込んだ良作。ヒップホップやR&Bを聴いて育った人にこそ聴いて欲しい、大人になったヒップホップ世代のためのヴォーカル作品だ。

Track List
Ledisi Young, Rex Rideout, DJ Khalil, Timothy Bullock, Butta-N-Bizkit, Kirk Franklin etc

Track List
1. I Choose Today [Interlude] (Iyanla Vanzant)
2. Shot Down
3. Tomorrow Is A New Start [Interlude] (Soledad O’Brien)
4. Let Love Rule
5. Add To Me
6. Hello To The Pain [Interlude] (Iyanla Vanzant)
7. Hello
8. Forgiveness
9. Here
10. Us 4ever feat. BJ The Chicago Kid
11. Give You More feat. John Legend
12. High
13. Understanding / I Love You [Interlude] (Soledad O’Brien)
14. All The Way
15. If You Don't Mind





Let Love Rule
Ledisi
Verve
2017-09-22

Fergie - Double Dutchess [2017 Duthcess, BMG]

 1995年のメジャー・デビュー以降、親しみやすいメロディとヒップホップのイメージに囚われないバラエティ豊かなサウンドで、多くのファンを獲得してきたブラック・アイド・ピーズ。そんな彼らの転機となった2003年のアルバム『Elephunk』からグループに参加し、楽曲にポップで華やかな雰囲気をもたらしてきた女性シンガーが、ファーギーことステイシー・アン・ファーガソンだ。

カリフォルニア州のハシエンダハイツ出身の彼女は、10代のころから役者としてテレビ番組などに出演。その後、友人とガールズ・グループ、ワイルド・オーキッドを結成し、2枚のアルバムを残している。

ブラック・アイド・ピーズに加入した後は、その可愛らしくて個性的な歌声で存在感を発揮。また、2006年には初のソロ・アルバム『Dutchess』を発表。ブラック・アイド・ピーズの奇抜でキャッチーなサウンドと彼女のキュートなヴォーカルが合わさった作風が評価され、アメリカ国内だけで500万枚以上を売り上げる大ヒット作となった。

このアルバムは、前作から実に12年ぶりとなる2枚目のソロ作品。2015年に活動を再開したブラック・アイド・ピーズのライブには帯同せず、脱退したという噂もあった彼女だが、本作ではバンドの中心人物であるウィル・アイ・アムがプロデューサーとして参加。それ以外にも、DJアモやサーキットといったヒットメイカー達が作家陣に名を連ねている

本作の1曲目は、ザ・ゲームやマシンガン・ケリーなどの作品を手掛けているJPディド・ディス・ワンが制作に参加した”Hungry”。クリス・ブラウンの作品を彷彿させる陰鬱なトラップのビートに乗って、迫力のある歌声を聴かせてくれるミディアム・ナンバー。ラップを担当しているリック・ロスの重い低音が、楽曲の重厚な雰囲気を強調している。

これに対し、ウィル・アイ・アムがプロデュースを担当し、ニッキー・ミナージュをゲストに招いた”You Already Know”は、ヒップホップやエレクトロ・ミュージックとファンクを混ぜ合わせたキャッチーなアップ・ナンバー、多くのヒップホップ・クラシックにサンプリングされているリン・コリンズの”Think”を引用した軽快なビートに乗って、キュートな掛け合いを聴かせてくれるポップな作品だ。軽妙なラップや変幻自在のビートは、ブラック・アイド・ピーズのスタイルにそっくりだ。

また、前作に収録されている彼女の代表曲”London Bridge”を手がけたポロウ・ダ・ドンがプロデュースした”M.I.L.F. $”は、EDMやトラップの要素をふんだんに取り入れた躍動感あふれるサウンドが格好良いダンス・ナンバー。ディプロの音楽を連想させるエレクトロ・ミュージックに傾倒したトラックだが、きっちりと乗りこなしてヒップホップ作品に落とし込めているのは、変則的なビートが多いブラック・アイド・ピーズでの経験の賜物だろうか。

そして、本作の収録曲では最も早い、2014年にリリースされた”L.A.LOVE (la la)”は、ロス・アンジェルス出身のプロデューサー、DJマスタードを起用した作品。シンセサイザーを駆使してエレクトロ・ミュージックやトラップの要素を盛り込んだビートの上で、セクシーだけど荒々しいラップを繰り出すヒップホップ作品になっている。リル・ウェインやフューチャーの音楽を思い起こさせる、硬い音を多用したビートを、キャッチーなヒップホップに聴かせるセンスは流石の一言。絶妙なタイミングで入り込むYGのラップが、楽曲の重々しい雰囲気を引き立てている。

今回のアルバムでは、前作の路線を踏襲しつつ、新しい音を積極的に取り入れた2017年版の『Dutchess』を披露している。ヒップホップ・グループでありながらポップスのトレンドを取り入れてきた。ブラック・アイド・ピーズが飛躍するきっかけを作った彼女だけあって、コアなヒップホップを消化して、誰もが楽しめるポップスに落とし込める技術は群を抜いている。

ライブに俳優活動と、マルチな活躍を見せていた彼女だが、ミュージシャンとしても一線級の存在であることを再確認させてくれる良作。今の彼女がグループに戻ったらどんな化学反応を起こすのか、次の展開が楽しみになる充実の内容だ。

Producer
will.i.am, DJ Ammo, Alesso, Fergie, Cirkut, DJ Mustard etc

Track List
1. Hungry feat. Rick Ross
2. Like It Ain’t Nuttin’
3. You Already Know feat. Nicki Minaj
4. Just Like You
5. A Little Work
6. Life Goes On
7. M.I.L.F. $
8. Save It Til Morning
9. Enchanté (Carine) feat. Axl Jack
10. Tension
11. L.A.LOVE (la la) feat. YG
12. Love Is Blind
13. Love Is Pain






Double Dutchess
Fergie
Bmg
2017-09-22

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