melOnの音楽四方山話

オーサーが日々聴いている色々な音楽を紹介していくブログ。本人の気力が続くまで続ける。

日本

赤西仁 – A la carte [2018 Go Good, Universal]

ジャクソン5のリード・シンガーからキャリアをスタートし、キング・オブ・ポップとして音楽史にその名を刻んだマイケル・ジャクソンを筆頭に、メヌードを経て中南米を代表するシンガーに上り詰めたリッキー・マーティンや、イン・シンクのリード・ヴォーカルから、大統領の前でパフォーマンスを披露する、アメリカ屈指のソウル・シンガーになったジャスティン・ティンバーレイクなど、世界各地で大きな足跡を残している、ボーイズ・グループ出身のアーティスト達。彼らのようにボーイズ・グループで経験を積み、ソロ・アーティストとして大きく飛躍した日本人の一人が、元KAT-TUNの赤西仁だ。

2001年にグループの一員として活動を開始すると、レコード・デビューの前でありながら、東京ドームでのライブを成功させるなど、規格外の活躍を見せる。その後、2006年にシングル”Real Face”でメジャー・デビュー。B'zの松本孝弘の手によるハードなロックのサウンドにダンス・ミュージックの要素を組み合わせた楽曲と、やんちゃな雰囲気の中にも大人の色気を感じさせるパフォーマンスが注目を集め、アメリカの音楽情報サイト、ローリング・ストーンが2013年に発表した「男性ヴォーカル・グループの名曲50選」に、日本のグループでは唯一選出された。また、シングル自体も100万枚を超える売り上げを記録するなど、華々しいデビューを飾った(余談だが、同作は2018年7月末現在、日本国内で100万枚以上の売り上げを記録した、最後のデビュー・シングルである)。

その後も、歌手や俳優として一線で活躍を続けるが、海外志向が強い彼は2010年にグループを脱退し、ソロに転向。翌年には念願のアメリカ・ツアーを決行し、海外向けのアルバムをリリースするなど、自身の夢に向かって歩み始める。また、2014年以降は個人事務所を設立。楽曲の配信を開始し、中国公演を成功させるなど、目標に向けて着実に結果を残してきた。

このアルバムは、彼にとって初のリアレンジ・アルバム。これまでにリリースした作品をアレンジし直した楽曲に、新曲を加えている。過去の作品同様、彼自身がプロデュースを担当。その一方で、共同制作者にDJスウィングを迎え、アルバムの発売に先駆けて収録曲をライブで披露するなど、2018年の彼のスタイルを強調した作品になっている。

本作の1曲目は、唯一の新曲である”Feelin'”。制作にDr.スウィングが参加したこの曲は、ジェイソン・デルーロやジャスティン・ビーバーの音楽を思い起こさせる、鮮やかな音色の上物と、跳ねるようなハウスのビートが格好良いアップ・ナンバー。流れるようなメロディを歌う、赤西のセクシーな歌声が聴きどころ。

続く”Go Higher”は、2013年のアルバム『#JustJin』の限定版に収録されている曲のリメイク。太い低音が印象的なR&B色の強い原曲を、鋭い高音の伴奏を強調したEDMの要素を含むヒップホップにリメイク。スマートでありながら、芯の強いヴォーカルと激しいダンスが魅力の彼にふさわしい、華やかでスタイリッシュなダンス・ナンバーに仕上がっている。

これに対し、2015年のアルバム『Me』の収録曲をリメイクした”Dayum”は、四つ打ちのビートにギターやハンド・クラップを乗せた賑やかなダンス・ナンバーの原曲を、重いドラムとピアノの音色の伴奏を組み合わせたトラックでスタイリッシュなR&Bに再構築した作品。複数のビートを組み合わせて、楽曲に起伏をつけるアレンジは、歌とダンスで勝負するライブを意識したものか。30代前半で20年近いキャリアを誇る彼の艶めかしい歌声にも注目してほしい。

そして、本作に先駆けてリリースされた”Baila”は2014年のEP『Mi Amor』の楽曲のリメイク。曲名の「Baila」を連呼するイントロでリスナーの期待を掻き立てる演出が心憎い。原曲ではホーンの音色などを盛り込んでいたが、今回のリアレンジ版では、ビートを強調したシンプルなアレンジに仕上げている。

このアルバムを聴いていて強く感じたことは、彼のアーティストとしての高い表現力だ。声量よりも繊細で色っぽい表現をウリにするヴォーカルと、複雑で激しいダンスを武器にする彼。このアルバムでは、そんな彼の持ち味が活きる、洗練されたメロディと、尖った音のトラック、複数のビートを組み合わせたアレンジの曲が並んでいる。

また、アルバムに先駆けて公開された、収録曲のライブ・パフォーマンス映像を観ると、アジア系シンガーの魅力であるスマートなヴィジュアルに、KAT-TUN時代のやんちゃ坊主のような雰囲気と、30代を迎えて際立つようになった大人の色気が合わさった、現在の彼の魅力を引き出すアレンジに仕上げていることに気づかされる。この、自身の魅力を理解しつつ、それに合った音や舞台を用意できる技術と人間関係が、彼の音楽を特別なものにしていると思う。

新しい音を取り入れつつ、あくまでも「赤西仁」であり続ける彼の現在の姿を象徴した一枚。音とビジュアルの両方で自分の魅力を引き出し、観客を魅了する姿は、マイケル・ジャクソンやリッキー・マーティンと並べても見劣りしない。現代のアジアを代表するポップ・スターだと思う。

Producer
Jin Akanishi

Track List
1. Feelin'
2. Go Higher (Rearranged)
3. Ain't Enough (Rearranged)
4. Slow (Rearranged)
5. Dayum (Rearranged)
6. Baila (Rearranged)
7. Mami Loca (Rearranged)
8. One Last Time (Rearranged)
9. Heart Beat (Rearranged)
10. Opaque (Rearranged)
11. Can't Get Enough (Rearranged)
12. Summer Loving (Rearranged)
13. Hey What's Up? (Rearranged)
14. Mi Amor (Rearranged)





A la carte(初回限定盤)(DVD付)
赤西仁
ユニバーサル ミュージック
2018-08-01

88rising - Head in the Clouds [2018 88rising]

多くの日本人ダンサーが目標に掲げるブライアン・パスポスのような、アメリカの実力派アーティストを扱いつつも、ユーモアに富んだ独特のリリックで、中国国内のラップ禁止令のきっかけを作ったハイヤー・ブラザーズ、10代の若さでアジアを代表するラッパーの一人に上り詰めたインドネシアのリッチ・ブライアン、韓国のキース・エイプのような、アジア各国のヒップホップ・アーティストを世界に紹介してきたアメリカの音楽レーベル、88ライジング

音楽メディアとレコード・レーベルの機能を持ち、母国でも音楽好きの間でしか知られていなかった、隠れた名アーティストを紹介してきた同レーベルの、初のコンピレーション・アルバムが本作。リッチ・ブライアンやハイヤー・ブラザーズといった、同社と契約しているアーティストの新曲と既発曲のリミックスを収録。ゲストとしてゴールドリンクやプレイボーイ・カルディといったアメリカの人気ラッパーに加え、日本からもm-floのバーバルが参加するなど、国際色豊かな同レーベルらしい豪華なアルバムになっている。

アルバムのオープニングを飾るのは、大阪出身のジョージと、インドネシアのニキという、二人のシンガー・ソングライターが組んだ”La Cienega”。電子楽器を使った、もっさりとしたビートの上で気だるく歌うニキと、時に彼女に寄り添うように優しく、時にマックスウェルのように鋭いファルセットを聴かせるジョージの歌唱力が光るスロー・ナンバーだ。二人の繊細な歌声は、アメール・ラリューやレミー・シャンドのような、ネオ・クラシック・ソウルのシンガーに通じるものがあるが、この曲では、電子楽器を駆使した現代的なビートと組み合わせることで、彼らと差別化している。

これに対し、ハイヤー・ブラザーズと、ロス・アンジェルス近郊のワッツ出身の03グリードががコラボレーションした”Swimming Pool ”は、タイ・ダラ・サインなどの作品に関わっているフランス出身のキャッシュマネーAPと、ロイ・ウッズdvsnなどを手掛けているカナダ出身のアキール・ヘンリーがプロデュースを担当した国際色豊かな曲。ドレイクグッチ・メインのアルバムに収録されていそうな、電子楽器中心のシンプルなトラップ・ビートの上で、英語と中国語を使い分けながらラップする姿が印象的な曲。アメリカで流行しているサウンドを自分の音楽に染め上げるハイヤー・ブラザーズの強烈な個性が心に残る。

だが、本作の隠れた目玉はシカゴ出身の24歳のラッパー、フェイマス・デックスが2018年に発表して、アメリカの総合シングル・チャートの28位に入った”JAPAN ”のリミックス・ヴァージョンだろう。「日本でドラックを5万回もやったぜ」と歌った原曲を、韓国出身のキース・エイプと日本出身のバーバルが改変。バーバルは英語で「女の子からLINEが来たら楽しい時間の始まり」「朝までカラオケで歌うぜ」とラップし、キースは「みんなは俺を日本人か?と聞くけど、俺は韓国人だ」「腕にも拳にもNIGOのグッズがあるぜ」と、英語と韓国語を織り交ぜたパフォーマンスを繰り出している。余談だが、バーバルのパートには「P.K.C. on his boys」(EXILEの元メンバー、ヒロやマキダイ達と組んだラップ・グループPKCZのこと)というフレーズをさり気なく盛り込んでいるのが心憎い。

そして、本作の最後を締めるのが、ロス・アンジェルス出身のプロデューサー、バーニー・ボーンズとジョージが共作したタイトル曲”Head In The Clouds”。レゲエの緩いビートと、EDMのような高揚感があるシンセサイザーの伴奏を組み合わせたトラックの上で、甘い歌声を響かせるスロー・ナンバーだ。曲の後半ではストリングスのような音色を加え、最後までゆったりとしたバラードとして聴かせる演出が印象的。

今回のアルバムを通して感じるのは、アメリカのミュージシャンにも見劣りしないアジア勢の高いスキルと豊かな個性だ。各国の言語に慣れ親しんだ人でもなければ、誰がどの国のアーティストか判別するのは難しい。むしろ、同じ言語を使うアーティストでも、声質やキャラクターによって表現の方法が全然違う。この各人の際立った個性と、それを活かすレーベルの編集能力が本企画の面白さを生んでいると思う。

世界各地で腕を磨いてきた名手たちの素晴らしいパフォーマンスを、存分に楽しめる良作、アメリカで生まれ、世界に散らばったヒップホップが、各国の文化を飲み込んでで進化していることを僕らに教えてくれる貴重なアルバムだ。

Producer
NIKI, CashMoneyAP, Akeel Henry, J Gramm, Barney Bones, joji etc

Track List
1. La Cienega feat. ​joji & NIKI
2. Red Rubies feat. Don Krez, Higher Brothers, Rich Brian, Yung Bans & Yung Pinch
3. Swimming Pool feat. 03 Greedo & Higher Brothers
4. Peach Jam feat. BlocBoy JB & ​joji
5. Midsummer Madness feat. AUGUST 08, Higher Brothers, ​joji & Rich Brian
6. Plans feat. NIKI & Vory
7. History feat. Rich Brian
8. Lover Boy (88 Remix) by Phum Viphurit feat. Higher Brothers
9. Poolside Manor feat. AUGUST 08 & NIKI
10. Beam by Rich Brian feat. Playboi Carti
11. Let It Go feat. BlocBoy JB & Higher Brothers
12. Disrespectin feat. AUGUST 08, Higher Brothers & Rich Brian
13. Warpaint feat. NIKI
14. I Want In (feat. AUGUST 08 & NIKI
15. JAPAN (88 Remix) by Famous Dex feat. Keith Ape & Verbal
16. Nothing Wrong (Remix) by Higher Brothers & Harikiri feat. GoldLink
17. Head In The Clouds feat. ​joji





Head In The Clouds [Explicit]
88rising Music/12Tone Music, LLC
2018-07-20

W-inds. - 100 [2018 FLIGHT MASTER, PONY CANYON]

安室奈美恵やSPEED、三浦大知が在籍していたFOLDERなど、多くのダンス・ヴォーカル・アクトを輩出してきたライジング・プロダクション。同社の所属タレントの中でも、特に異彩を放っているのが、千葉涼平、橘慶太、緒方龍一の3人組、ウィンズだ。

2001年に”Forever Memories”でメジャー・デビューを果たした彼らは、本格的なダンスとヴォーカル、R&Bやヒップホップを取り入れつつ、それに囚われないポップな楽曲で一躍ブレイク。『w-inds.〜1st message〜』や『ageha』などのアルバムがオリコン・チャートの1位を獲得する一方、2000年代半ば以降は、東アジアを中心に海外でも活躍。台湾では4枚のアルバムを現地のヒット・チャートの1位に送り込み、日本出身のアーティストの最多記録を打ち立てるなど、日本を代表するダンス・ヴォーカル・グループとして認められてきた。

このアルバムは、彼らにとって1年ぶり、13枚目のスタジオ作品。発売時点の3人の年齢の合計(千葉:34歳,橘:33歳,緒方:33歳)からタイトルを取ったこのアルバムは、彼らにとって初の完全セルフ・プロデュース作品。本職のクリエイターに師事し、本格的な制作スペースを整備してきた橘を中心に、音楽に強い思い入れを持つ3人の熱意が感じられる力作になっている。

本作の1曲目、”Bring back the summer”は、乾いた音色のギターとシンセサイザーを組み合わせたトラック、ファルセットを多用したヴォーカルが、ファレル・ウィリアムスの音楽を彷彿させるミディアム。ファレルに比べると声量のある橘慶太のヴォーカルと、シンプルで洗練されたビートが印象的。バック・トラックの微妙な響きの違いにも気を配る、彼の良さが発揮された佳作だ。

続く”Dirty Talk”は2018年3月にリリースされた本作からの先行シングル。テディ・ライリーやベイビーフェイスが採用し、90年代初頭に一世を風靡したR&Bのスタイル、ニュー・ジャック・スウィングを取り入れたアップ・ナンバーだ。甘く爽やかな歌声を引き立てる甘酸っぱいメロディと、テディ・ライリーが90年代半ばに結成したヴォーカル・グループ、ブラックストリートの1作目を連想させる、ヒップホップのアレンジを盛り込んだニュー・ジャック・スウィングのトラックが面白い。音楽に対する造詣の深さと鋭い感性、高い表現力が生み出した魅力的な曲だ。

また、本作のリリースと同時にミュージック・ビデオが公開された”Temporary”は、華やかで高揚感のあるサウンドが魅力の電子音楽、EDMの要素を盛り込んだミディアム・バラード。甘い歌声とロマンティックなメロディ聴かせるメロディ部分から、派手なシンセサイザーの伴奏に続く手法は、アッシャーの”Love In This Club”や、ジャスティン・ビーバーを招いたジャックUの”Where Are U Now”に通じるものがある。欧米のエレクトリック・ミュージックと日本のポップスのバラードをうまく混ぜ合わせた、彼らのバランス感覚が光る作品。

そして、本作の収録曲では一番最初にリリースされた”Time Has Gone”は、限界まで音数を絞ったシンプルなアレンジと、繊細なファルセットが魅力のミディアム・ナンバー。90年代後半のイギリスのR&Bを思い起こさせる、洗練されたトラックと味わい深いメロディが魅力的な作品だが、低音の響きやヴォーカルの聴かせ方は今時のアメリカのR&Bっぽい。日本人の琴線に訴えるメロディと欧米のサウンドを融合した良曲だ。

彼らの音楽の凄いところは、日本のポップスの魅力と、アメリカやヨーロッパのヒップホップの心地よいところを、一つの音楽に同居させているところだ。それは、プロダクションの技術を基礎から身に着けた橘慶太の制作能力と、10年以上、歌とダンスに心血を注いできた3人の高いパフォーマンス・スキルがあるから可能だったと思う。

アメリカやヨーロッパの音楽とは一味違う、「日本のR&B」の個性を確立した貴重な作品。1枚のアルバムをじっくり聴き込んでも、各国の個性豊かなアーティストの作品と聴き比べても面白い、細部にまで気を配った曲作りが面白い良盤だ。

Producer
W-inds. Keita Tachibana etc

Track List
1. Bring back the summer
2. Dirty Talk
3. Temporary
4. I missed you
5. Celebration
6. We Gotta Go
7. Time Has Gone
8. Stay Gold
9. The love
10. All my love is here for you
11. Drive All Night
12. Sugar





100(初回限定盤)(Blu-ray Disc付)
w-inds.
ポニーキャニオン
2018-07-04

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