ブラック・ミュージック千本ノック~SoulとR&Bと色々な音楽~

管理人が手に入れたR&Bのアルバム、1000枚の紹介文を書き続けるブログ その先に見えるものは天国か地獄か・・・

演奏者

DJ Khaled - Grateful [2017 We The Best, Epic]

アラビア音楽のミュージシャンだった両親の間に生まれ、自身も早い時期から音楽に興味を持っていたという、ニューオーリンズ生まれマイアミ育ちのDJ兼プロデューサー、DJキャレドこと、カリッド・カリッド。

レコーディング・ストアで職を得た彼は、そこでブレイク前のリル・ウェインやマヴァドなどの知己を得る。また、マイアミを代表するプロデューサー、ルークと一緒にラジオ番組を担当するようにもなり、自身の知名度も上げていった。こうして、地元では知られた存在となった彼は、プロデューサーとしても活動するようになる。

ファビュラスやピットブル、ファット・ジョーなどの作品を手掛けるようになった彼は、ヒット・メイカーとしても知られるようになる。そして、2006年には初の自身名義のアルバム『Listennn... the Album』を発表。ピットブルやリル・ウェインなど、彼の人脈をフル活用した豪華なゲスト・ミュージシャンが名を連ね、DJ名義のアルバムながら、全米アルバム・チャートの12位まで上り詰めた。その後も、2016年までに8枚のアルバムを発売。そのほとんどを全米アルバム・チャートの10位以内に送り込み、2016年にリリースした『Major Key』は全米アルバム・チャートの1位とゴールド・ディスクを獲得。グラミー賞のベスト・ラップ・アルバムにもノミネートした。

本作は、そんな彼の通算10枚目のオリジナル・アルバム。今回のアルバムでは、リック・ロスやリル・ウェインといった、過去の作品にも参加していた面々に加え、アリシア・キーズやビヨンセなどの人気シンガーも登場。人気DJの新作に彩を添えている。

本作に先駆けて発表された”Shining”は、ビヨンセとジェイZをフィーチャーし、ソングライターにパーティネクストドアが参加した作品。詳しい説明は過去の記事でも行っているので簡単にまとめるが、オスンラダの”Dionnne”をサンプリングした、スタイリッシュなダンス・ナンバーだ。ファンクマスター・フレックスの”Good Life”やトニー・タッチの”I Wonder Why ? (He's The Greatest DJ)”、DJクルーの”Back 2 Life 2011”などに続く、DJ発のR&Bクラシックになりそうだ。

これに対し、リアーナブライソン・ティラーを起用した”Wild Thoughts”は、ワイクリフ・ジョンがソングライティングで参加、プロデューサーにナスティ・ビートメイカーズが名を連ねたミディアム・ナンバー。サンタナが99年に発表した”Maria Maria”のベース・ラインをサンプリングし、エレキ・ギターやフラメンコ・ギターの伴奏を追加した、ラテン・フレーバーの強い曲。バルバドス出身のリアーナによる、情熱的で艶めかしいヴォーカルと、ラップを織り交ぜながら、セクシーな歌声を響かせるブライソン・ティラーのコンビネーションが素晴らしい。

そして、本作の目玉といっても過言ではないのが、ジャスティン・ビーバーにチャンス・ザ・ラッパー、リル・ウェインにミーゴスのクアヴォを招いた”I'm the One”だ。クリス・ブラウンやショーン・キングストンなどに楽曲を提供しているニック・ナックが制作に参加したこの曲は、G-イージーとケラーニのコラボレーション曲、”Good Life”を彷彿させるゆったりとしたトラックの上で、各人が個性的なパフォーマンスを披露するキャッチーなミディアム・ナンバーだ。余談だが、ヒップホップ作品としてはエミネムの”Not Afraid”以来の、全米シングル・チャート初登場1位に輝いている。

それ以外の曲では、カルビン・ハリスとのコラボレーション作品で、トラヴィス・スコットとジェレミーが参加した”Don't Quit”も面白い。四つ打ちのビートを使いつつも、カルヴィンの作品と比べると大幅にテンポを落とし、ディム・ファンクタキシードのようなディスコ・ブギーっぽく聴かせている。ディスコ音楽の影響を強く受けた、太いベースや跳ねるようなビートをベースに、ヒップホップやエレクトロ・ミュージックの要素を組み合わせた、魅力的なダンス・ミュージックだ。

今回のアルバムでも、これまでの作品同様、ラジオDJやプロデューサーとしての経験で培われた流行を捉える目と、実績豊富なゲスト・ミュージシャンを組み合わせ、意外な一面を引き出すセンスが遺憾なく発揮されている。プロデューサー名義の作品であることを活かして、普段はあまりコラボレーションしない面々を繋ぎ合わせ、彼らの隠れた魅力に光を当てて新鮮な作品に落とし込むスキルは確かなものだ。

人気プロデューサーの幅広い人脈と、編集センスが生み出した明るく、楽しく、キャッチーなヒップホップ作品。これからの季節に欠かせない1枚になりそうだ。

Producer
Asahd Khaled, DJ Khaled, 808-Ray, Ben Billions, Calvin Harris etc

Track List
1. (Intro) I'm so Grateful feat. Sizzla
2. Shining feat. Beyonce & JAY-Z
3. To the Max feat. Drake
4. Wild Thoughts feat. Rihanna & Bryson Tiller
5. I'm the One feat. Justin Bieber, Quavo, Chance the Rapper & Lil Wayne
6. On Everything feat. Travis Scott, Rick Ross & Big Sean
7. It's Secured - feat. Nas & Travis Scott
8. Interlude (Hallelujah) feat. Betty Wright
9. Nobody feat. Alicia Keys & Nicki Minaj
10. I Love You so Much feat. Chance the Rapper
11. Don't Quit - DJ Khaled & Calvin Harris feat. Travis Scott & Jeremih
12. I Can't Even Lie feat. Future & Nicki Minaj
13. Down for Life feat. PARTYNEXTDOOR, Future, Travis Scott, Rick Ross & Kodak Black
14. Major Bag Alert feat. Migos
15. Good Man feat. Pusha T & Jadakiss
16. Billy Ocean feat. Fat Joe & Raekwon
17. Pull a Caper feat. Kodak Black, Gucci Mane & Rick Ross
18. That Range Rover Came With Steps feat. Future & Yo Gotti
19. Iced Out My Arms feat. Future, Migos, 21 Savage & T.I.
20. Whatever feat. Future, Young Thug, Rick Ross & 2 Chainz
21. Interlude feat. Belly
22. Unchanging Love feat. Mavado
23. Asahd Talk (Thank You Asahd) feat. Asahd Khaled



a

Grateful
Black Butter Int.l
2017-07-07

Karriem Riggins - Headnod Suite [2017 Stones Throw]

90年代にコモンやジェイ・ディラといった、多くの人気ヒップホップ・ミュージシャンの作品を手掛けたことで名を上げ、近年はエリカ・バドゥやカニエ・ウエストなどの作品にも起用されている、ミシガン州デトロイト出身のドラマー兼プロデューサー、カリーム・リギンス。

そんな彼は、演奏者としてもオスカー・ピーターソンやダイアナ・クラールの作品に参加するなど、多くの実績を残していることで知られている。2016年には、カナダ出身のクリエイター、ケイトラナダのアルバム『99.9%』に収録されている”Bus Ride”にフィーチャーされたことも記憶に新しい。

本作は、そんな彼にとって、2012年の『Alone Together』以来となる通算2枚目のオリジナル・アルバム。前作同様、ヒップホップの制作手法とドラムの演奏を組み合わせた、彼らしい作品になっている。

アルバムの実質的な1曲目である”Other Side of the Track”は、ジュニー・モリソンの”Spirit”をサンプリングしたミディアム・ナンバー。DJシャドウとカット・ケミストのツアーでプレイされたことも話題になった”A Whole Lot Of Love”(原曲はレッド・ツェッペリン、シャドウ達はデニス・コフィーのカヴァー・ヴァージョンをプレイ)を彷彿させる、荒々しいギターのサウンドが格好良い楽曲。”Spirit”からサンプリングされたキーボードの音色が、刺々しい雰囲気のトラックをマイルドにしている。

これに対し、同じ”Spirit”をサンプリングしながら、”Other Side of the Track”全く違う雰囲気を醸し出しているのが、デトロイト出身の詩人、ジェシカ・ケア・ムーアをフィーチャーした”Suite Poetry”だ。キーボードの音色をサンプリングした前者に対し、こちらはピアノの演奏を中心に引用。ニッキ・ジョヴァンニを連想させる透き通った声と、重厚で存在感のある言葉が印象的。同じレコードを使いながら、対極の作品を生み出せる彼のスキルとセンスが光る曲だ。

また、ロックやソウルをサンプリングした本作では異色の、電子音楽を使った曲が”Pay.gio”だ、ジョエル・ヴァンドローゲンブロエックが81年に発表した”Computer Groove”を引用したこの曲は、80年代の電子音楽で多用されていたアナログ・シンセサイザーの音色を効果的に使った近未来的な雰囲気の曲。電子音楽をジャズやソウルと同じように、ヒップホップの素材として分解、再構築する姿は、彼とも縁の深いジェイ・ディラの作風を思い起こさせる。

だが、本作の目玉はなんといっても”Bahia Dreamin’”だろう。彼がプロデュースしたエルザイの”Two 16's”のトラックを組み替えた曲で、原曲の雰囲気を生かしつつ、打楽器などの音を追加したインストゥメンタル作品になっている。中盤以降にジャズのピアノトリオの演奏を挟み込み、混ぜ合わせるセンスは、ヒップホップのプロデューサーとジャズ・ドラマーという、二つの顔を持っている彼の持ち味が発揮された楽曲だ。

今回のアルバムでも、彼のビート・メイカーとしての高いセンスと、豊富な演奏経験が反映された正確無比、かつ躍動感溢れるグルーヴが堪能できる。これだけ確固たる作風を持ちながら、収録された29曲一つ一つに個性を与えられるのは、ヒップホップやR&B、ジャズの世界で、いろいろなスタイルのアーティストと一緒に作品を生み出してきたからだろう。

長いキャリアを通して、多くの音楽を見聞きし、経験してきた彼にしかつくれない、魅力的なインストゥメンタル作品。歌やラップが入っていない音楽は苦手な人、ヒップホップや電子音楽のようなコンピュータを使った音楽が苦手な人にこそ、ぜひ聞いてほしい。トラックメイカーの奥深い世界の一端を垣間見れると思う。

Producer
Karriem Riggins

Track List
1. Suite Intro
2. Other Side of the Track
3. Yes Yes Y’all
4. Invasion
5. Trombone Love
6. Crystal Stairs
7. Sista Misses
8. Detroit Funk
9. Oddness
10. Tandoor Heat
11. Chop Chop
12. My Reflection
13. Dirty Drum Warm Up
14. Pay.gio
15. Suite Poetry feat. Jessica Care Moore
16. 4Es’J
17. Joy and Peace
18. Cheap Suite 1
19. Cheap Suite 2
20. Cheap Suite 3
21. Cheap Suite 4
22. Never Come Close
23. Re-doze
24. Bahia Dreamin’
25. Cheap Suite 5
26. Cia
27. Keep It On
28. Fluture
29. Suite Outro – Hodge, Poyser, Riggins





Headnod Suite
Karriem Riggins
Stones Throw
2017-02-24

Mike City - Feel Good Agenda Vol.1 [2017 BBE]

99年にリリースされたカール・トーマスの”I Wish”が、全米ヒップホップ・R&Bチャートで6週連続の1位を獲得(その後、ドネル・ジョーンズの”U Know What’s Up”に奪われるものの、再度取り返している)する大ヒットになったことで名を上げ、その後もサンシャイン・アンダーソンの” Heard It All Before”や、ブランディの”Full Moon”、デイヴ・ホリスターの”One Woman Man”などヒット曲を手掛けてきた、フィラデルフィア出身のプロデューサー、マイク・シティことマイク・フラワーズ。近年はレイラ・ハザウェイやフェイス・エヴァンスなどの作品にも携わっている彼の、98年作『City Limits』以来となるフル・アルバムが本作だ。

前作は、自身がヴォーカルをとっていたが、本作では多くのゲスト・ヴォーカルを起用。カール・トーマスやレイラ・ハザウェイのような、彼とは縁の深いミュージシャンを中心に、フェイス・エヴァンスやメイサ・リークなど、人気と実力に定評のあるシンガーが集結している。

彼の出世作となった”I Wish”を歌っている、カール・トーマスをフィーチャーした”100 Miles”は、シンセサイザーを使った煌びやかなバック・トラックが印象的なアップ・ナンバー。”I Wish”の時はシンプルなメロディを丁寧に歌っていたカールだが、この曲では”She Is”に近いしなやかなメロディの上で美しい声を響かせている。ルイ・ヴェガやマスターズ・アット・ワークを思い起こさせるお洒落なトラックも心地よい。

一方、フェイス・エヴァンスが参加した”When I Luv”は、跳ねるようなベースの演奏と華やかな伴奏が格好良い曲。パワフルな歌声が魅力のフェイスには珍しい、クールなヴォーカルが光るダンス・ナンバーだ。自作のトラックの上で、軽やかなヴォーカルを披露するマイクの存在が、楽曲に軽快なイメージを与えている。ダフト・パンクの”Get Lucky”にも通じる、ディスコ音楽の影響が見え隠れする良曲だ。

また、2017年のアルバム『Love Is A Battlefield』も好評な、メイサ・リークを起用した”Head Over Heels”は、太いシンセサイザーの音色を使ったハウス・ナンバー。”100 Miles”同様、華やかな伴奏が印象的だが、メイサの流れるようなヴォーカルのおかげで、洗練されたダンス・ミュージックのように聴こえる。この曲でもマイクが歌声を披露しているが、こちらの曲では、スタイリッシュなメイサの歌唱を引き立てるように、軽妙なヴォーカルを聴かせてくれる。

そして、レイラ・ハザウェイを招いた”You’re In Heaven”は、本作では珍しいミディアム・テンポの楽曲。キラキラとしたキーボードと切れ味の良いギターの伴奏をバックに、じっくりとメロディを歌い込むj二人の姿が素晴らしい。” Heard It All Before”や”One Woman Man”を連想させる、ゆったりとしたメロディとミディアム・テンポのトラックが気持ちいい。

今回のアルバムは、カール・トーマスやフェイス・エヴァンスのように、恵まれた歌声と高い歌唱技術を兼ね備えたシンガーを集めて、ハウス・ミュージックのような四つ打ちのビートと、シンセサイザーを駆使したスタイリッシュな伴奏を組み合わせたという、アーティストとシンガー、両方にとって異色の作品だと思う。高い歌唱力がウリのシンガーを集めたハウス・ミュージック作品は、90年代から数多くあったが、味わい深い歌声の歌手を揃えて、今回のような作品を録音したものは非常に珍しい。おそらく、マイクが20年以上の長い間、R&Bの世界でじっくりと「歌」を聴かせる作品をたくさん手掛けてきた経験が、この作品に反映されているのだと思う。

EDMやトラップのような、華やかで高揚感のあるサウンドとは一味違う。クールで洗練された大人向けのダンス・ミュージック。ダフト・パンクやマーク・ロンソン、ブルーノ・マーズなどの音楽が好きな人にはぜひ聴いてほしい、おしゃれでロマンティックなR&Bだ。

Producer
Mike City

Track List
1. I Rock Wit U feat. Dwele
2. Everybody Loves A Winner
3. 100 Miles feat. Carl Thomas
4. When I Luv feat. Faith Evans
5. Been Too Afraid feat. Teedra Moses
6. Head Over Heels feat. Maysa
7. Up To It
8. More Of Me feat. Crystal Johnson
9. Here Together feat. Terri Walker
10. You’re The Kind
11. Sang & Dance feat. Junior
12. You’re In Heaven feat. Lalah Hathaway





▼CD/THE FEEL GOOD AGENDA VOL. 1 (解説付) (輸入盤国内仕様)/マイク・シティ/BBEACDJ-419 [6/21発売]
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