melOnの音楽四方山話

オーサーが日々聴いている色々な音楽を紹介していくブログ。本人の気力が続くまで続ける。

演奏者

George Porter Jr. And Runnin' Pardners - Crying For Hope [2021George Porter Jr.]

ジョージ・ポーターJr.はニューオーリンズ出身のファンク・ミュージシャン。ネイヴィル・ブラザーズのアート・ネイヴィルと結成したバンド、ミーターズの中心人物としても知られるベーシストだ。

また、ミーターズだけでなく、PBSやディープ・フライドなどのプロジェクトに参加し、ポール・マッカートニーやパティ・ラベル、Dr.ジョンの作品でも演奏している。彼は、同地を代表するベーシストとして、八面六臂の活躍を見せている大物ミュージシャンなのだ。

今回のアルバムを制作したランニング・パードナーズは、ミーターズが活動を再開した1989年に結成したバンド。結成30年を超えながら、スタジオ録音は3枚と少ない。だが、各メンバーが多忙な日々の合間を縫って集まり、多くのステージに立ってきた、ニューオーリンズが誇る実力派グループなのだ。 

13年ぶりのスタジオ・アルバムとなる本作は、近年のステージを支える、馴染みのメンバーと録音している。ここでは、ジョージの安定感抜群のベースを軸に、ドラムやギター、オルガンなどの楽器が、時に軽快に、時にダイナミックなパフォーマンスを披露している。その演奏は、メンバーの個性が正面からぶつかり合った、50年代のハード・バップのグループとよく似ている。

しかし、これだけ強い個性が揃っても、見るものがバンドとしての一体感を抱けるのは、ジョージの高い演奏技術と、アレンジ能力のおかげだろう。常に安定したグルーヴを生み出しつつ、曲の展開に合わせて表情を変える彼の演奏のおかげで、他のメンバーは遠慮なく自分の個性を発揮することができるのだ。

ベースと言えば「バントの下支え役」というイメージが強い。だか、ジョージの演奏はバンドの土台であり、他のメンバーを牽引するコンダクター(指揮者)でもあるのだ。ニューオーリンズを代表する名演奏者は、自身の作品を通して、バンドにおけるベースの役割と可能性を僕らに教えてくれる。

Producer
George Porter Jr.

Track List
1. Crying For Hope
2. Porter 13A
3. A Ladder
4. Get Back Up
5. I'm Barely
6. Cloud Funk
7. Wanna Get Funky
8. Spanish Moss
9. Just Start Groovin'
10. A Taste of Truth
11. Too Hot Too Cold
12. You Just Got Tired  

 
 

Crying For Hope
Controlled Substance Sound Labs
2021-03-26

 

MonoNeon - Supermane [2021 Mononeon]

ブーツィー・コリンズやサンダーキャットなど、個性的な人が多い音楽の世界でも、特にユニークな人が多いベーシスト。その中でも、今、特に強烈なキャラクターで注目を集めているのが、モノネオンことドウェイン・トーマスJr.だ。

黒人音楽の聖地、メンフィスに生まれ育った彼は、ジョン・ケージやアルバート・アイラーのような抽象性の高い現代音楽と、メイヴィス・ステイプルズのような泥臭い南部のソウル・ミュージックを融合させるという、ユニークな作風で話題のクリエイター。

今回の作品では、ディム・ファンクのような太いベース音が印象的なディスコ曲や、古いリズムマシンの軽い音色を効果的に使った軽妙なスロー・ナンバー、ゲストの女性ヴォーカルの力強い歌声が、60年代のステイプル・シンガーズを彷彿させる、ドロドロとしたソウルや、演奏者の指捌きが耳に伝わってくる繊細なポップスのバラードなど、色々なスタイルの楽曲を披露している。

しかも、本作で彼は、煌びやかなシンセサイザーの音と、泥臭い南部のソウル・ミュージックのヴォーカルを組み合わせるなど、周囲の予想を裏切る意外な組み合わせで、リスナーの度肝を抜いている。この、一歩間違えたら、イロモノで終わりかねない大胆なアレンジに挑戦しつつ、一つの作品に落とし込むコーディネート能力こそ、彼の強みであり、魅力なのだろう。

蛍光色を取り入れたファッションや、ベースヘッドにつけた靴下という、個性的なビジュアル以上に強烈な音楽と、ユニークなファッションですら周囲から納得されるように、色々なサウンドを一つの作品にとして纏め上げる構成力が光っている。

Producer
MonoNeon

Track List
1. Just Gettin' High, Just Gettin' By
2. Invisible
3. We Somebody Y'all
4. Grandma's House feat. Mr. Talkbox
5. The Crop feat. Wax
6. Done with the B-S feat. Ledisi
7. Fartin' All Ova the World
8. Supermane feat. Kirk Whalum




Supermane [Explicit]
Mononeon
2021-03-18

Gil Scott-Heron & Makaya McCraven - We’re New Again: A Reimagining by Makaya Mccraven [2020 XL Recordings]

1970年に初のスタジオ・アルバム『Small Talk At 125th & Lenox』を発表すると、ユニークな言語感覚を活かした鋭いリリックと、盟友ブライアン・ジャクソンをはじめとする名うてのミュージシャン達が生み出すダイナミックなサウンドで、ポエトリー・リーディングの可能性を大きく広げた、ギル・スコット-ヘロンことギルバート・スコット-ヘロン。

彼はXLレコーズに所属する電子音楽のクリエイター、リチャード・ラッセルと共作した『I’m New Here』を発表した翌年、2011年に62年の生涯を閉じるまで、15枚のスタジオ・アルバムと多くの楽曲を残してきた。また、その音楽はポエトリー・リーディングの作品としてはもちろん、良質の演奏が堪能できるジャズやファンクの傑作として、そして言語を音楽として楽しむヒップホップの元祖として、多くの音楽好きを魅了してきた。

本作は、2010年にリリースされた『I’m New Here』のヴォーカルを再編集し、シカゴ出身の気鋭のジャズ・ドラマー、マカヤ・マクレイヴンが率いるバンド・メンバーの演奏と組み合わせたリメイク作品。同じような企画は英国の電子音楽作家、ジェイミーXXがビートを再構築した2011年の『We're New Here』でも行われていたが、こちらはシンセサイザーを多用したエレクトロ・ミュージック作品だったこともあり、生演奏による再構成は初となる。

収録曲に目を向けると、実質的なタイトル・トラックに当たる”I’m New Here”は、2016年に『Wax & Wane』の日本盤CDがリリースされたことでも話題になったフィラデルフィア出身のハープ奏者、ブランディー・ヤンガーの艶めかしい演奏が印象的なミディアム・ナンバー。ダイナミックなグルーヴを叩き出すマカヤと、色っぽいギターやベースの伴奏、甘い歌声のように響くギルの声の組み合わせが心地よい作品だ。

これに対し、”Where Did the Night Go”は、60年代後期のオーネット・コールマンやアルバート・アイラーの作品を彷彿させる音と音の隙間を効果的に使った抽象度の高いアレンジが光る作品。生演奏のような豊かで温かい音色の伴奏だが、これは全部シンセサイザーで制作された打ち込み音楽。シンセサイザーの進化と、それを巧みに使いこなすマカヤ達の制作スキルが聴きどころだ。

それ以外の曲では、ブルック・ベントンが制作したボビー・ブランドの1959年のヒット曲”I’ll Take Care of You”のカヴァーも見逃せない。『I’m New Here』ではギターとピアノの音色をバックに訥々と歌った作品だったが、本作では、ブランディー・ヤンガーのハープやマカヤが打ち込んだシンセ・ベースを組み合わせたバンド・サウンドになっている。豪華な演奏の影響からか、ギルの声も殺伐としたブルースというよりはイナたいソウル・ミュージックのように聴こえるから面白い。演奏がヴォーカルの印象を大きく変えることを再認識できる良曲だ。

今回のアルバムは、ブライアン・ジャクソンと共作していた時代の作品のように、ジャズやソウルのエッセンスをふんだんに盛り込んでいながら、過去の作品の焼き直しに終わらない新鮮さがある。それはおそらく、このアルバムのヴォーカル・トラックが生演奏を前提に作られたものではないので、他の作品とは大きく異なるアレンジが施されているからだと思う。

偉大な先人の遺作を、鋭い感性と高い演奏スキルで新しい音楽に生まれ変わらせた名作。AIにはない豊かな想像力と大胆な発想を持つ人間だからこそ生み出せる音楽だろう。必聴。

Producer
Makaya McCraven

Track List
1. Special Tribute (Broken Home pt.1)
2. I'm New Here
3. Running
4. Blessed Parents
5. New York is Killing Me
6. The Patch (Broken Home pt.2)
7. People of the Light
8. Being Blessed
9. Where Did the Night Go
10. Lily Scott (Broken Home pt.3)
11. I'll Take Care of You
12. I've Been Me
13. This Can't Be Real
14. Piano Player
15. The Crutch
16. Guided (Broken Home pt.4)
17. Certain Bad Things
18. Me and the Devil




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