ブラック・ミュージック千本ノック~SoulとR&Bと色々な音楽~

管理人が手に入れたR&Bのアルバム、1000枚の紹介文を書き続けるブログ その先に見えるものは天国か地獄か・・・

男性シンガー・ラッパー

Miguel - War & Leisure [2017 ByStorm, RCA]

メキシコ系アメリカ人の父と、アフリカ系アメリカ人の母の間に生まれた、ロス・アンジェルス出身のシンガー・ソングライター、ミゲルことミゲル・ジョンテル・ピメンテル。

13歳のときに音楽活動を始めた彼は、友人の紹介で地元のプロダクション・チーム、ドロップ・スクアッドに加入。多くの経験を積んできた。そんな彼は、2004年にインディー・レーベル、ブラック・アイスと契約。アルバムを録音するがお蔵入りとなる。

その後、同レーベルを離れた彼は、ジャイヴに移籍。2010年にデビュー・アルバム『All I Want Is You』を発表すると、40万枚以上売れるヒット作になる。そして、2012年には2枚目のLP『Kaleidoscope Dream』をリリース。同作は50万枚を超える大ヒットとなり、収録曲の”Adorn”はR&Bチャートを制覇。彼にグラミー賞をもたらした。また、自身の活動以外に、ソングライターとしても才能を発揮。ビヨンセやアッシャーミュージック・ソウルチャイルドなどに楽曲を提供するヒット・メイカーとしても知られるようになった。

このアルバムは、2015年の『Wildheart』以来となる、通算4枚目のフル・アルバム。前作にも携わっているマーク・ピッツのほか、ラファエル・サディークやサラーム・レミといった大ベテランを中心に、多くのプロデューサーが参加。往年のソウル・ミュージックを咀嚼して、現代のヒップホップと融合させた、懐かしさと新しさが入り混じった音楽を聴かせている。

本作に先駆けてリリースされたのは、トラヴィス・スコットをフィーチャーした”Sky Walker”。ベイビー・バッシュの”Suga Suga”や、元フィフス・ハーモニーのカミラ・カベロの”Crying in the Club”などを手掛け、ミゲルともマライア・キャリーの”#Beautiful”を含む、多くの曲を一緒に作ってきたテキサス出身のハッピー・ペレスがプロデュースを担当。ゆったりとしたテンポと哀愁を帯びたメロディは”Suga Suga”にも似ているし、歌とラップを切れ目なく繋ぐ手法はドレイクの音楽っぽくもある。メロディや歌唱法はソウル・ミュージックと異なるにも拘わらず、往年の黒人音楽のような、聴き手を優しく包み込むような雰囲気を感じさせる、不思議な曲だ。

これに対し、ラファエル・サディークが制作に携わっている”Wolf ”は、個性的なヴィジュアルとパフォーマンスで注目を集めている女性シンガー、クインを招いたバラード。近年は、70年代のソウル・ミュージックやサイケデリック・ロックの要素を取り入れた作品が多いラファエルらしい、荒々しいギターの演奏と、ロックのバラードを連想させる崩したグルーヴが面白い作品だ。ミゲルの熱いヴォーカルは、ボビー・ウーマックやジョニー・テイラーを彷彿させる。脇役に徹するクインもいい味を出している。

また、ハッピー・ペレスに加え、ジェフ・バスカーが制作に参加した”Told You So”は、子供向けの電子楽器のような、軽妙でポップな音色のシンセサイザーと、乾いたギターのサウンドが心地よいアップ・ナンバー。奇抜な音色を使ったトラックは、80年代のディスコ音楽にも似ている。ポップで軽やかな伴奏に合わせて、爽やかな歌声を響かせるミゲルの姿が印象的だ。

そして、本作の最後を締めるのは、80年代に活躍したロック・バンド、ピクシーズの ”Where Is My Mind?”を引用したバラード。ポロポロとつま弾かれるエレキ・ギターの音が切ない雰囲気を醸し出す伴奏をバックに、繊細な歌声をじっくりと聴かせている。どちらかといえばポップス寄りのアレンジだが、きちんとR&Bとして聴かせる、ミゲルの歌唱力が光る作品だ。

今回のアルバムでも、前作同様、ロックやソウル・ミュージックといった、ヒップホップやR&B以外のジャンルの要素を消化し、取り込んだ作品が目立つ。色々なジャンルの音楽に目を配るミュージシャンの作品には、手を広げすぎて散漫な印象を持たせるものや、中庸なものに終わっているものも少なくないが、彼の音楽は各ジャンルのエッセンスを残しつつ、きちんと一つの作品に落とし込んでいる。この視野の広さとバランス感覚が、彼の音楽に深みと大衆性を与えているのだと思う。

「ポップスのいちジャンルとしてのR&B」が存分に堪能できる、魅力的な作品。R&Bが大好きな人にはもちろん、普段R&Bを聴かない人にもとっつきやすい、キャッチーだけど奥深いアルバムだと思う。

Producer
Miguel, Mark Pitts, Wayne Barrow, Happy Perez, Salaam Remi, Raphael Saadiq etc

Track List
1. Criminal feat. Rick Ross
2. Pineapple Skies
3. Sky Walker feat. Travis Scott
4. Banana Clip
5. Wolf feat. Quin
6. Harem
7. Told You So
8. City Of Angels
9. Caramelo Duro feat. Kali Uchis
10. Come Through And Chill feat. J. Cole, Salaam Remi
11. Anointed
12. Now





War & Leisure
RCA
2017-12-08


Steve Aoki - Steve Aoki Presents Kolony [2017 Ultra Records, Sony]

2010年代以降、クラブ・ミュージックの主役になりつつあるEDM。ディプロやカルヴィン・ハリスのようなDJやクリエイターは、ウィル・アイ・アムやリアーナといったヒップホップ、R&B畑のミュージシャンを巻き込むことで、お茶の間にも進出。オーディオ機器のアイコンとして採用されるなど、クラブとは縁遠い人々の間も知られる存在となった。

スティーヴ・アオキも、このムーブメントを代表するクリエイターの一人。フロリダ州のマイアミに生まれ、カリフォルニア州のニューポートで育った彼は、ロッキー青木の名前でプロレスラーとして活躍し、のちに鉄板焼きレストラン「ベニハナ」を創業した青木廣彰を父に持つ日系人。大学生のころから、音楽活動をしていた彼は、96年に自身のレーベルを設立。アクロバティックなDJとキャッチーな作風で人気を集めてきた。

そんな彼は、2010年にウィル・アイ・アムとのコラボレーション曲”I'm in the House”を発表すると、イギリスのシングル・チャートにランクイン。2012年には初のアルバム『Wonderland』をリリース。LMFAOやリル・ジョンを招いた本作は、エレクトロ・ミュージックのアルバムとしては異例の全米アルバム・チャート入りを果たした。

その後も、DJやレコーディングを精力的にこなした彼は、現在では世界で五指に入る人気DJと称されるまでになった。

このアルバムは、2015年の『Neon Future』以来となる、通算4枚目のフル・アルバム。前作同様、多くのラッパーを招いた、ヒップホップ色の強い作品になっている。

本作の収録曲で最初に目を引いたのは、オランダを拠点に活動するDJチーム、イエロー・クロウとのコラボレーション・シングル”Lit”。オートチューンを使ったT-ペインのヴォーカルと、グッチ・メインの重いラップが格好良い作品。シンセサイザーを刺々しいビートと、T-ペインのロボット・ヴォイスがうまく噛み合った良作だ。

また、カナダのDJユニット、DVBBSやジョージア州出身のラッパー、2チェインズが参加した”Without You”は、サイレンのような音色が印象的なビートをバックに、泥臭いラップを聴かせる2チェインズの存在が光っている。2チェインズの作品同様、シンセサイザーを駆使したトラップ寄りの楽曲だが、エレクトロ・ミュージックの世界で育った面々がトラックを作ると、よりキャッチーで躍動感のあるものに聞こえるから不思議だ。

また、ミーゴスとリル・ヨッティをフィーチャーした”Night Call”は、本作の収録曲でも特にヒップホップ寄りの作品。チキチキという高音と、唸るような低音の組み合わせが心地よいビートに乗って軽妙なラップを聴かせている佳曲。リル・ヨッティやミーゴスのアルバムに入っていそうな作品だが、細かいところに工夫を凝らして、差別化を図っている点は流石の一言。

そして、バッド・ボーイに多くの作品を残しているメイスを招いた”$4,000,000”は、スティーヴ・アオキと同じ西海岸発のEDMユニット、バッド・ロイヤルが制作に携わり、ビッグ・ギガンティックのサックスやドラムの演奏を盛り込んだ作品。昔のソウル・ミュージックをサンプリングしたサウンドで一世を風靡したバッド・ボーイの音楽を彷彿させる部分と、EDMの手法を混ぜ合わせたトラックが新鮮に映る。

今回のアルバムは、彼の前作やディプロやカルヴィン・ハリスの近作同様、ヒップホップやR&Bのトレンドをエレクトロ・ミュージックに取り入れたものだ。その中でも、彼の音楽はEDMの高揚感とヒップホップの奇抜さを丁寧に取り入れたサウンドが印象的、EDM畑のクリエイターは、変則的なビートにも対応できる、アメリカ南部出身のラッパーや、海外のミュージシャンとコラボレーションが多いが、彼もその流れを踏襲している。

本格的なクラブ・ミュージックでありながら、自宅や通勤、通学中の鑑賞にも耐えうる良質なポップス作品。エレクトロ・ミュージックを聴いたことがない人にこそ、手に取ってほしいアルバムだ。

Producer
Steve Aoki, Yellow Claw, DVBBS, Bad Royale, Ricky Remedy

Track List
1. Kolony Anthem feat. Bok Nero, ILoveMakonnen
2. Lit feat. Gucci Mane, T-Pain
3. Without You feat. 2 Chainz
4. How Else feat. ILoveMakonnen, Rich The Kid
5. Been Ballin feat. Lil Uzi Vert
6. Night Call feat. Lil Yachty, Migos
7. $4,000,000 feat. Big Gigantic, Ma$e
8. If I Told You That I Love You feat. Wale
9. No Time feat. Jimmy October
10. Thank You Very Much feat. Sonny Digital







Bobby - Love and Fall [2017 YG Entertainment]

2015年にデビュー・シングル”My Type”を発表すると、韓国のシングル・チャートで1位を獲得。同年の新人賞を総なめにするなど、一気に人気グループの仲間入りを果たしたYGエンターテイメント発のボーイズ・グループ、アイコン。

ボビー(韓国ではバビと発音するらしい)こと、キム・ジウォンは、同グループの核となるラップ担当。ソウルの生まれだが、両親の仕事の関係でヴァージニア州のフェアファクスで育った彼は、16歳の時に現在の事務所のオーディションを受け、契約を結ぶ。

そんな彼は、2011年に現在のメンバーとグループを結成するも、デビューを賭けたオーディション企画で敗北。デビューは延期となる。その後、彼は、プロとアマチュアが真剣勝負を披露することで人気のラップ・バトル番組『Show Me The Money』に参加。同僚のB.I.を含む多くのラッパーを押しのけて優勝する一方、2014年にはエピック・ハイのシングル”Born Hater”に客演。ベテランのラッパーや、彼らに先駆けてデビューしたウィナーのミノとともに「自分を嫌う奴らへのメッセージ」というテーマのラップを披露。デビュー前ながら鮮烈な印象を残した。

この作品は、アイコンのメンバーでは初めてとなるソロ・アルバム。セオ・タジ&ザ・ボーイズで、韓国のお茶の間にR&Bを広めたYGエンターテイメントのCEO、ヤン・ヒュンソクが陣頭指揮を執り、ビッグバンのG-ドラゴンSOLの作品にも携わっているチョイス37や、グループが2017年に発表した”Bling Bling”を手掛けているミレニアムが制作を担当。ボビー自身も全ての曲でペンを執った力作になっている。

アルバムの1曲目は、本作からの先行シングル”I Love You”は、ウィナーの”Really Really”などを手掛けているカン・ウ・ジンがプロデュース。ウィズ・キッドワーレイの作品を思い起こさせる、アフロ・ビートを取り入れた爽やかなトラックが心地よい作品。硬い声質のテナー・ヴォイスを聴かせるサビから、荒々しいラップへと繋ぐボビーのヴォーカルもいい味を出している。ボビーの持ち味である、ワイルドなパフォーマンスを活かしつつ、ポップにまとめた良作だ。

続く”Runaway”は、チョイス37が制作に参加。ゆったりとしたテンポのビートの上で、攻撃的なラップとレイド・バックした歌を披露する姿が印象的な作品だ。のんびりとしたムードはビッグ・バンの”Looser”にも似ているし、ラップとヴォーカルを使い分けて雰囲気を切り替える手法は、同グループの”Fxxk It”に通じるものがある。歌とラップ、両方をこなせる彼の長所が遺憾なく発揮された佳作だ。

だが、本作のハイライトは、なんといってもミノを招いた”UP”だろう。チョイス37が提供したトラックは、ミーゴスや2チェインズを彷彿させる、シンセサイザーを多用した重々しい雰囲気のトラップ・ビート。その上で、ドスの効いたバリトン・ヴォイスが格好良いミノと、鋭利な刃物のようなテナー・ヴォイスが魅力のボビーが、熾烈なラップ・バトルを繰り広げている。若者に人気のボーイズ・グループに所属しながら、本職のラッパー顔負けのハードなパフォーマンスを披露する二人の姿が聴きどころだ。

それ以外の曲では、ミレニアムがプロデュースした”Swim”も捨て難い曲だ。アッシャークリス・ブラウンを彷彿させる、トラップやバウンズ・ビートの要素を取り入れたトラックに乗って、熱い歌声と高速ラップを披露したミディアム・ナンバー。アメリカのシンガーであればゲスト・ミュージシャンを招いて録音するような曲だが、歌とラップ、両方をこなせる彼は一人で歌い切っている。ラッパーでありながら、ヴォーカルを担当することも多い、彼の持ち味を活かした作品だ。

彼の音楽の魅力は、アメリカのトレンドを丁寧に取り込みつつ、きちんと自分の個性を盛り込んでいるところだと思う。YGエンターテイメントといえば、ディプロやミッシー・エリオットとコラボレーション作品を録音しているG-ドラゴン、スヌープ・ドッグをフィーチャーした曲をリリースしたPSY、アメリカを拠点に活躍し、ブラック・アイド・ピーズとの共演も記憶に新しいCLや、ガラントと組んだ”Cave Me In”も記憶に新しいエピック・ハイのタブロなど、韓国の芸能事務所の中でも、特に欧米の音楽に傾倒していることで有名だ。彼の作品は、その強靭な声質を活かして、先達の路線を踏襲しつつ、トラップなどのアメリカで流行っているサウンドを、アジア人向けに咀嚼することなく、本場の音に近い形で取り込んでいる点が特徴的だ。”Born Hater”で見せた新人離れしたハードなラップのような「本場に負けないヒップホップ」と、人気ボーイズ・グループで培った「本格的なR&B」を一人で両立できることが、彼の良さだと思う。

事務所の偉大な先輩であるG-ドラゴンとは異なるアプローチで、アメリカのブラック・ミュージックに取り組んだ魅力的な作品。ボーイズ・グループ出身というキャリアの彼にしか作れない、ヒップホップとR&Bが高いレベルで融合した音楽だと思う。

Producer
Yang Hyun-suk, Bobby, Choice37, Diggy, Kang Uk-jin

Track List
1. I Love You
2. Runaway
3. I Love You -KR Ver.-
4. Runaway -KR Ver.-
5. Alien -KR Ver.-
6. Tendae -KR Ver.-
7. UP feat. Mino -KR Ver.-
8. SECRET feat. Dk, Katie -KR Ver.-
9. IN Love -KR Ver.-
10. Swim -KR Ver.-
11. Firework -KR Ver.-
12. Lean on Me -KR Ver.-





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