ブラック・ミュージック千本ノック~SoulとR&Bと色々な音楽~

管理人が手に入れたR&Bのアルバム、1000枚の紹介文を書き続けるブログ その先に見えるものは天国か地獄か・・・

男性シンガー・ラッパー

dvsn - Morning After [2017 OVO Sound Warner Bros.]

2006年にドレイクが設立。当初は彼のミックス・テープを配給するためのレーベルだったが、2012年以降は、ワーナー・ミュージックと契約した彼が率いるレーベルとして多くの人気ミュージシャンやクリエイターを輩出しているOVOサウンド。当初はボイ・ワン・ダやT-マイナスといった、プロデューサーが主力だったが、2013年のパーティーネクストドアやマジッド・ジョーダンを皮切りに、シンガー・ソングライターや音楽ユニットとも契約するようになる。特に、パーティーネクストドアは2枚のアルバムを全米R&Bチャートの1位に送りこむなど、レーベル内でもドレイクに次ぐ華々しい成果を上げてきた。

dvsnはシンガー・ソングライターのダニエル・ディレイと音楽プロデューサーのナインティーン85によるユニット。2015年に同レーベルと契約すると、翌年に発表した1枚目のフル・アルバム『Sept. 5th』がR&Bチャートの17位となるスマッシュ・ヒット。マックスウェルを彷彿させる、ダニエルの繊細でしなやかなヴォーカルと、ナインティーン85が作り出す洗練されたトラックが話題になった。

このアルバムは、前作から約1年ぶりとなる2枚目のフル・アルバム。制作には2人に加えレーベル・メイトの40や、ドレイクの作品にも数多く携わっているマニーシュ、オランダの人気ソングライター、ロビン・ハンニバル等が参加。前作の手法を踏襲しつつ、それを拡大したスタイリッシュなR&Bを聴かせている。

アルバムに先駆けてリリースされたシングル曲”Think About Me”は、制作を2人、プロデュースをナインティーン85が担当したバラード。重い音を使ったビートを軸にしたトラックと、みずみずしいヴォーカルのコンビネーションが魅力のバラード。浮遊感が心地よい上物が彼の色っぽい歌声を引き立てている。

これに続く”Don't Choose”はパーティーネクストドアがソングライティングに参加したスロー・ナンバー。彼の作品を連想させる、チキチキという音を使ったヒップホップ寄りのビートの上で、語り掛けるように歌う姿が印象的な曲。流れるようなメロディでありながら、ラップのように多くの言葉を盛り込むパーティーネクストドアのスタイルと、ナインティーン85が手掛けるシンプルなトラックの組み合わせが新鮮だ。コーラスとして組み込んだ、アイザック・ヘイズの歌声がアクセントになっている。

また、マニーシュが制作に携わった”Mood”は、ファルセットを多用した美しいメロディとピアノやギターの音色を巧みに取り入れたトラックづくりのセンスが光るスロー・ナンバー。高音を多用したスタイルはマックスウェルの”Fortunate”や”I Wanna Know”などを思い起こさせる。電子楽器を中心に使いつつ、アコースティック楽器のような音色を盛り込んで70年代のソウル・ミュージックのように聴かせる手法は面白い。

だが、本作の目玉は、二人で制作したスロー・ナンバー”P.O.V.”だろう。R.ケリーがペンを執ったマックスウェルのバラード”Fortunate”をサンプリングしたこの曲は、90年代のR&Bを思い起こさせる温かい音色のトラックと、ダニエルの繊細な歌声の組み合わせが気持ち良い作品。楽曲の冒頭で使われているマックスウェルの歌声が、ダニエルのきめ細かで滑らかな歌声を際立たせている。

彼の音楽は、レーベル・メイトのR&Bミュージシャンであるマジッド・ジョーダンやロイ・ウッズ、プラザと比べると、繊細な歌声の魅力を引き立たせる、流麗なメロディをじっくりと聴かせる作風が特徴的だ。シンプルなトラックとしなやかなメロディという、90年代から現代にかけて、色々なミュージシャンが挑戦し、ヒット曲を残してきたR&Bの王道ともいえるスタイルを取り入れながら、新しい音楽のように聴かせているのは、音の配置や響きにも配慮した彼らの高いスキルによるものが大きいと思う。

新しい音を取り入れているにもかかわらず、どこか懐かしい雰囲気を感じる佳作。90年代にR&Bを聴いていた人にお勧めしたい本格的なR&Bグループだ。

Producer
Nineteen85, 40, Alpha, Maneesh, Noël, Robin, Hannibal

Track List
1. Run Away
2. Nuh Time / Tek Time
3. Keep Calm
4. Think About Me
5. Don't Choose
6. Mood
7. P.O.V.
8. You Do
9. Morning After
10. Can't Wait
11. Claim
12. Body Smile
13. Conversations in a Diner






Gucci Mane - Mr. Davis [2017 Guwop Entertainment, Atlantic]

T.I.やヤング・ジージーといったアトランタ出身のラッパーの作品によって、アメリカのブラック・ミュージック界に一大ブームを巻き起こしたトラップ。このスタイルを早くから取り入れ、多くのヒット作を残しているのが、アラバマ州バーミンガム出身のラッパー、グッチ・メインことラドリック・デランティック・デイヴィスだ。

14歳から音楽活動を始めた彼は、2005年には初のフル・アルバムとなる『Trap House』をリリース。インディー・レーベル発の新人の作品ながら、10万枚を超えるセールスを上げるヒット作となった。その後も立て続けにアルバムを発表した彼は、2007年にアトランティックと契約すると、ミックス・テープを含む多くの作品を世に送り出し、全ての作品で商業的な成功を収める。また、それと同時に、作品やライブを通して、色々なミュージシャンと舌戦を繰り広げたことも話題になった。

本作は、メトロ・ブーミンとのコラボレーション・アルバム『Droptopwop』から5か月ぶり、単独名義の作品としては昨年12月の『The Return of East Atlanta Santa』以来、約10か月ぶりの新作となる通算11枚目のオリジナル・アルバム。これまでの作品同様、プロデューサーに多くのヒット・メイカーを起用し、ゲスト・ミュージシャンにはミーゴスやウィークエンド、タイ・ダラ・サインといった人気ミュージシャンを多数招いた、ワイルドでキャッチーなヒップホップを披露している。

本作に先駆けて発表されたシングル曲”I Get the Bag”は、アトランタ出身のサウス・サイドとメトロ・ブーミンがプロデュースを担当し、トラップのビートを使ったヒット曲を数多く残しているラップ・グループ、ミーゴスがゲストとして参加。重低音を強調した陰鬱なトラックに乗って、リズミカルに言葉を繋ぐラップが魅力の作品。チキチキというハットの音がキモになるトラップだが、この曲では高音を抑え気味にして重厚でダークな雰囲気を演出している。重々しいビートを軽妙なラップで聴きやすくする4人のスキルが発揮された良曲だ。

これに対し、カナダ出身のシンガー・ソングライター、ウィークエンドを招いた”Curve”は、ウィークエンドと同じカナダ出身のプロデューサー、ナーヴが制作を担当。ゴムボールのように弾む電子音がウィークエンドの作品っぽくも聴こえるビートに乗って、次々と言葉を繰り出すウィークエンドと、一つ一つの言葉を丁寧に紡ぐグッチ・メインの対照的なパフォーマンスが光る曲だ。メロディ部分では言葉数が多いにも関わらず、サビでは甘酸っぱい歌声をじっくり聴かせるウィークエンドの器用さも魅力だ。

また、クリス・ブラウンが参加した”Tone It Down”は、カルディアックとヒットメイカーがプロデュースした作品。ジェイZの”Big Pimpin”にも少し似ている、変則的なビートを取り入れたトラップ・ナンバー。トラップを取り入れた作品が多い両者のコラボレーションだけあって、奇抜なビートの上でも流れるようなメロディとラップを聴かせてくれる。この分野で多くのヒット曲を残してきた二人の経験が発揮された、安定感が光る佳曲だ。

そして、本作の目玉と言っても過言ではないのが、アメリカを代表する人気女性ラッパー、ニッキー・ミナージュをフィーチャーした”Make Love”だ。サウス・サイドに加え、デトロイト出身のディテイルがプロデューサーとして参加したこの曲は、音数を絞ったビートとマリンバのような音色の上物が不思議な雰囲気を醸し出す作品。シンセサイザーの音色を強調しないポップなトラックはニッキー・ミナージュに近い印象、畳み掛けるようなグッチ・メインのラップも彼女の作品を連想させるものだ。

彼の音楽は、シンセサイザーを駆使して流行の音を自分のスタイルに合わせて咀嚼したトラックと、50セントやウータン・クランの面々のような硬く重い声質を活かしつつ、絶妙な力加減で聴きやすいラップに還元するスキルが合わさった、コアな音楽ファンからそうでない人まで、万人受けするスタイルが特徴的。彼の持ち味は本作でも健在で、新しい音を積極的に取り入れながら、それに色々な解釈を加えて自分の作風と融合している。

10代のころからラップ・ゲームの一線で戦い続けてきた早熟の天才らしい、安定感と柔軟な感性が光る佳作。現代のアメリカで流行っているヒップホップに興味がある人はぜひ聴いてほしい。

Producer
Gucci Mane, Southside, Metro Boomin, Cardiak, Hitmaka, Southside, Detail etc

Track List
1. Work in Progress (Intro)
2. Back On
3. I Get the Bag feat. Migos
4. Stunting Ain't Nuthin feat. Slim Jxmmi & Young Dolph
5. Curve feat. The Weeknd
6. Enormous feat. Ty Dolla $ign
7. Members Only
8. Money Make Ya Handsome
9. Changed feat. Big Sean
10. We Ride feat. Monica
11. Lil Story feat. ScHoolboy Q
12. Tone It Down feat. Chris Brown
13. Make Love feat. Nicki Minaj
14. Money Piling
15. Jumping Out the Whip feat. A$AP Rocky





Mr.Davis
Gucci Mane
Atlantic
2017-10-13

Tank - Savage [2017 Atlantic]

2000年に、ラッパーのドゥー・オア・ダイをフィーチャーしたシングル”Freaky”でレコード・デビュー。翌年に初のフル・アルバム『Force of Nature』を発表すると、70万枚以上のセールスを記録して人気ミュージシャンの仲間入りを果たした、シンガー・ソングライターのタンクことダレル・バブス。

ウィスコンシン州ミルウォーキー育ち、ワシントンD.C.育ちの彼は、ヒップホップの手法を取り入れた尖ったサウンドが流行していた2000年代に、歌詞と歌声を丁寧に聴かせる昔ながらのスタイルで台頭。2016年までに7枚のアルバムを発表し、ほぼすべての作品でR&Bチャートの1位を獲得している。また、2007年には彼同様、ヴォーカルにフォーカスを当てた音楽性で注目を集めていたジニュワインやタイリースと、ヴォーカル・グループTGTを結成。ツアーを行ったほか2013年にはアルバム『Three Kings』を発売している。

この作品は、2016年の『Sex Love & Pain II 』から約1年8か月という短い間隔で発表された、彼にとって8枚目のフル・アルバム。これまでの作品同様、収録曲のほぼ全てで彼自身がペンを執り、ミディアムからスロー・テンポの曲を中心に揃えた、歌い手としてのタンクにスポットを当てたアルバムになっている。

アルバムのオープニングを飾るタイトル・トラック”Savage”は、デイヴ・ホリスターやキキ・ワイアットなどの作品も手掛けているジェイヴォン・ヒル等が制作に携わっているミディアム・ナンバー。キラキラとしたシンセサイザーの伴奏と、トラップの要素を盛り込んだビートを使った現代的な作品だ。モダンなトラックを使った楽曲だが、その上に乗っかるメロディはしなやかで、ヴォーカルは納豆のように粘り強い。彼の持ち味を生かしつつ、現代のトレンドを巧みに取り込んだ佳曲だ。

これに続く”Everything”は、今年の3月に発売されたアルバム『Tremaine』も記憶に新しいトレイ・ソングスと、ラッパーのリュダクリスをフィーチャーしたミディアム・ナンバー。前作にも関わっているリッキー・オーフォードが制作に参加し、チキチキという音色が印象的なビートを使ったスタイリッシュなトラックを用意。落ち着いた雰囲気のバリトン・ヴォイスが魅力的なタンクと艶めかしいテナー・ヴォイスがウリのトレイ・ソングスが、男の色気を見せつけ合うような、ヴォーカル・バトルを繰り広げている。リュダクリスが得意の高速ラップを挟むことで、甘くとろけるような歌声が続く曲を、絶妙なタイミングで引き締めてくれている点も見逃せない。二人の高い歌唱力と、それを引き立てるラップやアレンジの技術が合わさったことで生まれた、唯一無二の作品だ。

また、本作に先駆けて発売された”When We”は、タンク自身がプロデュース、カール・マッコーミックが制作にかかわっているスロー・ナンバー。シンセサイザーの音色を効果的に使ったしっとりとした雰囲気のトラックに乗って、みずみずしい歌声を響かせるバラード。色々なタイプの楽曲に取り組んできた彼だが、一番相性が良いのはこの曲のような、美しいメロディがウリのバラードだと思う。

そして、本作の最後を飾る”Stay Where You Are”は、タンクやTGTの作品のほか、ラトーヤやキーシャ・コール等のアルバムにソングライターとして携わってきたサン・フランシスコ出身のシンガー・ソングライター、J.ヴァレンティンとのコラボレーション曲。ビヨンセやメアリーJ.ブライジにも曲を提供しているヴィンセント・ベリーがペンを執ったこの曲では、バス・ドラムを軸にしたシンプルなビートをバックに優雅な歌を聴かせている。トラックの中に微妙な揺らぎを盛り込み、メロディに三連符を多く組み込むことで、2拍子がベースのR&Bにワルツのような優雅な雰囲気を与えている。制作者の斬新なアイディアと、それを具体化する二人のヴォーカル・スキルが光っている。

この作品は、これまでにリリースしてきたアルバムの路線をベースにしたヴォーカルを聴かせることに力点を置いたものだ。彼のようなスタイルのシンガーは、インディー・レーベルに所属する歌手を中心に多くいるが、彼は新しい音にも目を向けながら、それをヴォーカルの個性を引き出す素材として活用している点が大きく違う。このように新しい音を積極的に取り入れられるのは、彼自身がプロデューサーやソングライターとして、色々なアーティストの録音に関わってきたからだろう。

「歌」にスポットを当てた音楽を15年以上続け、磨き上げた彼だからこそ作れる珠玉の作品。新しい音楽が次々と生まれる時代に、安心してゆっくり向き合える、大人のための音楽だ。

Producer

Durrell Babbs, J. Valentine, Slikk Musik, Javon Hill etc

Track List
1. Savage
2. Everything feat. Trey Songz and Ludacris
3. Do For Me
4. Only One
5. You Belong To Me
6. Good Thing feat. Candice Boyd
7. Sexy
8. When We
9. F It Up
10. Nothing On
11. Stay Where You Are feat. J. Valentine





Savage
Tank
Atlantic
2017-09-29



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