ブラック・ミュージック千本ノック~SoulとR&Bと色々な音楽~

管理人が手に入れたR&Bのアルバム、1000枚の紹介文を書き続けるブログ その先に見えるものは天国か地獄か・・・

男性シンガー・ラッパー

Toddla T - Foreign Light [2017 Steeze]

14歳の頃からDJとして活動し、16歳になるとハイスクールを辞めて専業のミュージシャンに転身した、サウスヨークシャー州シェフィールド出身のDJでトラックメイカーのトドラTことトーマス・マッケンジー・ベル。

2007年にロンドンの1965レコーズと契約すると、同年に初のEP『Do U Know』を発表。ダンスホール・レゲエとエレクトロ・ミュージックを融合したサウンドで話題になった。その後も、ルーツ・マヌーヴァなどを起用した初のフル・アルバム『Skanky Skanky』を2009年にリリースするなど、精力的に活動していた彼は、2011年にはクラブ・ミュージックの名門、ニンジャ・チューンと契約。2枚目のフルアルバム『Watch Me Dance』を発売する一方、ジャマーやリトル・ドラゴンの作品をプロデュース、リミックスするなど、活躍の場を広げていた。

今回のアルバムは、2012年の『Watch Me Dance: Agitated By Ross Orton & Pipes 』から実に5年ぶりとなる新作(といっても、シングルは継続的に発売していたが)。自身のレーベル、スティーズからのリリースだが、ほぼすべての曲で”Set It Off”などのヒット曲を手掛けたことでも知られているブルックリン出身のシンガー・ソングライター、アンドレア・マーティンがマイクを執った、キャリア初の本格的なヴォーカル作品になっている。

本作の1曲目は、2017年5月に発売された先行シングル”Blackjack21”。ダフト・パンクの” Get Lucky”を連想させる、強靭なベースの演奏と、芯の強い歌声、そしてしなやかなメロディの一体感が心地よいアップ・ナンバーだ。シックやシャラマーといった80年代に活躍したディスコ・バンドの影響を感じさせるが、シンセサイザーを多用して、当時の音楽以上に洗練された雰囲気に纏め上げるなど、随所で差別化を図っている。

また、アンドレアに加えてバーミンガム出身のラッパー、ステフロン・ドンを起用した”Beast”は、重く、陰鬱な音色のシンセサイザーを効果的に使ったスリリングなアップ・ナンバー。ディジー・ラスカルのようなグライムをベースにしつつ、ビートの音圧を抑えて、ポップスっぽく聴かせている点が面白い。彼の器用な一面が垣間見える佳曲だ。

それ以外の曲にも、BBCのRadio1でラジオ・パーソナリティとして活躍するベンジBがミックスで参加した”Always”など、魅力的な作品は多い。この曲ではアンドレア・マーティンに加えて、レゲエDJのシルキ・ワンダをフィーチャー。80年代終盤に一世を風靡したリディム、スレンテンを思い起こさせる重低音を強調したビートの上で、朗々と声を張り上げるアンドレアと柔らかい声で言葉を繋ぐシルキのコンビネーションがのんびりとした雰囲気を醸し出している。往年のダンスホール・レゲエをベースにしつつ、現代のクラブ・ミュージックと一緒に聴いても違和感を感じさせないミックス技術にも注目してほしい。

そして、本作の最後を締める”Magnet ”はジェイソン・ベックが制作に参加したダンス・チューン。アンドレア・マーティンの力強い歌声で幕を開ける手法は、ロリータ・ハロウェイやグロリア・ゲイナーのようなディスコ音楽の歌姫を連想させる。しかし、シンプルな四つ打ちのビートと、太く温かい音色のシンセサイザーを使った伴奏は、ムーディーマンやルイ・ヴェガのようなハウス・ミュージックっぽくも聴こえる。往年のディスコ・ミュージックの高級感を残しつつ、気鋭のミュージシャンらしい新鮮な音楽に落とし込むトドラTのセンスが炸裂した面白い曲だ。

デビュー作でもダンスホール・レゲエやグライムを取り入れた楽曲を披露していたように、一つのジャンルにとらわれない柔軟な感性と広い視野が持ち味のトドラTだが、その作風は本作でも変わらない。しかし、本作は過去の作品とは異なり、アンドレア・マーティンという確かな実力を持ったシンガーをフロントに据えたからか、ディスコ音楽やレゲエ、ハウスといった多彩なスタイルを取り入れた「女性ヴォーカルの黒人音楽」という、クラブ・ミュージックには縁遠い人にも楽しめる作品になっている。

ブラック・ミュージックを音楽のいちジャンルとして親しんできた彼らしい、様々なスタイルの要諦を押さえて、自分の音楽の糧にした完成度の高いアルバム。懐かしさと新鮮さを一つの作品に閉じ込めた、先鋭的なクリエイターらしい音作りが堪能できる良作だ。

Producer
Benji B, Toddla T etc

Track List
1. Blackjack21 feat. Andrea Martin
2. Won't Admit It's Love feat. Andrea Martin, Casisdead
3. Beast feat. Andrea Martin, Stefflon Don
4. Ungrateful feat. Andrea Martin
5. Foreign Light feat. Andrea Martin, Coco
6. Foundation feat. Addis Pablo
7. Always feat. Andrea Martin, Silkki Wonda
8. Tribute feat. Wiley
9. Faithful Skit feat. Andrea Martin
10. Magnet feat. Andrea Martin



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FOREIGN LIGHT
TODDLA T
BELIE
2017-07-28

ELHAE - AURA II [2017 Atlantic]

2010年代初頭からアトランタを拠点に活動。配信限定ながら、複数の作品を発表し、耳の速い音楽ファンから注目を集めていたノースダコタ出身のシンガー・ソングライター、エルハエことジャマール・ジョーンズ。

2016年にアトランティックと契約。同年に配信限定のアルバム『All Have Fallen』でメジャー・デビューを果たすと、その後もガウヴィの”Rock n Roll”に客演するなど、ジャンルの枠を超えた活躍を見せる。

本作は、そんな彼にとって2枚目のフル・アルバム。タイ・ダラ・サインやエリック・ベリンガーなど、実力には定評のある叩き上げのミュージシャン達を招き、トラップ等の要素を盛り込んだトラックに乗せて、ラップとヴォーカルを組み合わせたパフォーマンスを聴かせる、2017年のトレンドを的確に押さえたR&Bを披露している。

アルバムからの先行シングル”Something”は、カナダ出身のシンガー・ソングライター、パーティーネクストドアが2016年にシングル限定でリリースした”Don’t Do It For You No More”をサンプリングしたアップ・ナンバー。オリジナル・ナンバーのトラックを取り入れつつ、高音を強調することで、パーティーネクストドアのウリである色鮮やかなサウンドを際立たせている。パーティーネクストドアに比べると、滑らかでテナー寄りの声質を活かして、丁寧な歌唱を聴かせるR&Bナンバーにリメイクした点は面白い。

また、ケンドリック・ラマーの『To Pimp a Butterfly』や『DAMN.』等で辣腕を振るってきたロス・アンジェルス出身のプロデューサー、テラス・マーティンが制作を担当した”Bang Your Line”は、ロス・アンジェルス出身のラッパー、タイ・ダラ・サインをフィーチャーしたスロー・ナンバー。トラップの要素を取り入れた、チキチキという音が印象的なビートと、オートチューンで加工したヴォーカルが印象的な曲だ。シンセサイザーとオートチューンを駆使した、爽やかなサウンドが心地良い。個性的な声質を活かした掛け合いもいい味を出している。

そして、シカゴ出身のロッキー・フレッシュをフィーチャーした”Circa 09'”は、フロリダ出身のアヨ・ザ・プロデューサーなどがプロデュースで参加。トレイ・ソングスアッシャーの作品を思い起こさせるロマンティックなメロディと、甘い歌声が印象的なスロー・ナンバー。ロッキー・フレッシュの武骨なラップが、彼の歌声の柔らかさを引き立てている点も見逃せない。

だが、本作の目玉はエリック・ベリンガーが客演した”Slip & Fall”だろう。ソングライターとしても活躍しているエリックとのコラボレーション作品は、触ったらとろけそうなほど、甘く繊細なメロディと歌声が魅力のスロー・ナンバー。声質こそ違うものの、声域が近いテナーの二人によるデュエットということもあり、滑らかにバトンを繋げている点も面白い。ディアンジェロを”Untitled”を彷彿させる、エリックの空気を切り裂くようなファルセットもたまらない。

彼の音楽は、ラップやトラップなど、現代の流行をしっかりと押さえているものの、あくまでもメロディと歌声をじっくりと聴かせることに主軸を置いたR&Bだ。しかも、新しいサウンドを取り入れながら、奇抜さや斬新さのみに頼らず、ニーヨやドリームが作りそうな、流麗でロマンティックなメロディにフォーカスを当てた作品に落とし込んでいる点が、他のアーティストとは大きく違うと思う。

90年代のR.ケリーやジョーのように、美しいメロディのR&Bをベースにしつつ、ブラック・ミュージックのトレンドを取り入れた音楽が堪能できる。音楽配信よりもCDやアナログ・レコードで音楽を楽しんできた世代の人にこそ聴いてほしい佳作だ。

Producer
Aaron Sumlin, Ayo The Producer, Fortune etc

Track List
1. Admit It (Intro)
2. Something
3. Bang Your Line feat. Ty Dolla $ign
4. Drama
5. Otherside
6. Blue (Interlude)
7. Circa 09' feat. Ro
ckie Fresh
8. It's Not a Race
9. Slip & Fall feat. Eric Bellinger
10. You






The Isley Brothers & Santana - Power Of Peace [2017 Sony Legacy]

57年にシングル”The Cow Jumped Over the Moon”で表舞台に登場して以来、60年もの間、音楽業界の一線で活躍しているソウル・グループ、アイズレー・ブラザーズ。一方、66年の結成以降、50年以上、コンスタントに作品を発表し、多くのステージに立ち続けたロック・バンド、サンタナ。この音楽業界屈指のキャリアを誇る、2組のベテランによる初のコラボレーション作品が『Power Of Peace』だ。

アイズレー・ブラザーズにとっては2006年の『Baby Makin' Music』以来、実に10年ぶり(ただし、2013年にはロナルドのソロ作品『This Song Is For You』がeOneから発売されている)、サンタナにとっては2016年の『Santana IV』以来のアルバムとなる本作。ロナルド(ヴォーカル)とアーニー(ギター)のアイズレー兄弟と、カルロス(ギター)とシンディ・ブラックマン(ギター)のサンタナ夫妻に加え、名うてのスタジオ・ミュージシャン達が参加。『Santana IV』や彼らのステージでも披露された、ソウル・ミュージックとロックの距離が近かった時代の、ダイナミックでワイルドな黒人音楽に取り組んでいる。

アルバムの1曲目は、チェンバー・ブラザーズの68年のヒット曲”Are You Ready People”(原題は”Are You Ready”)のカヴァー。ストリングスなどを使った分厚い演奏のオリジナルに対し、こちらではツイン・ギターやパーカッションなど、演奏者を絞った伴奏を取り入れている。荒々しいパーカッションの演奏が乱れ飛ぶ前奏から、鋭いギターの音色が耳に突き刺さるハードな伴奏へとつながる展開が格好良い。『It's Our Thing』や『Get Into Something』でも披露していた、ロナルドの激しいシャウトも聴きどころだ。

これに続くのは、ヴァージニア州ポーツマス出身のシンガー・ソングライター、スワンプ・ドッグが70年に発表した”Total Destruction To Your Mind”のカヴァー。原曲もギターやベースの音色を強調した、泥臭いロック・ナンバーだったが、彼らはそれをより攻撃的な作品にリメイク。鍵盤を叩くようなキーボードの伴奏や、荒っぽいヴォーカルはオリジナルを踏襲しているが、ダイナミックなギター・ソロを加えるなど、よりハードなアレンジを施している。バーケイズのような泥臭さと荒々しさが同居したロック・サウンドと、ロナルドの柔らかい歌声、スワンプ・ドッグのキャッチーなメロディを一つに融合させた面白い作品だ。

そして、スティーヴィー・ワンダーが73年に発表した楽曲”Higher Ground”のリメイクは、原曲よりもテンポを落とし、ドロドロとしたファンク・チューンにまとめ上げたミディアム・ナンバー。ハモンド・オルガンの伴奏を目立つように配置するなど、原曲の雰囲気を残しながら、ジミ・ヘンドリックスを思い起こさせる荒々しいギターの音色を加えるなど、オリジナルとは一味違うアレンジを施している。原曲を知らない人が聴いたら、ジミ・ヘンドリックスの曲のカヴァーと勘違いしてもおかしくない、ワイルドで幻想的なパフォーマンスが格好良い曲だ。

それ以外の曲で、ぜひ聞いてほしいのが、本作が初出となる”I Remember”だ。97年にシンディが制作したスロー・ナンバーは、シンディのキュートなヴォーカルと、ロナルド・アイズレーの滑らかなハイ・テナーの相性の良さが光る、ロマンティックなメロディの曲だ。曲の起承転結が明確な点や、しっとりとしたメロディは、アイズレー・ブラザーズやサンタナというよりも、アース・ウィンド&ファイアの”Reasons”や”After The Love Has Gone”にも近い印象。シンディの可愛らしいヴォーカルを優しく包み込む、ロナルドの貫禄あふれる歌声もいい味を出している。

今回のアルバムでは、スティーヴィー・ワンダーや、チェンバー・ブラザーズ、インプレッションズなど、60年代、70年代のソウル・ミュージックの名曲や、そのスタイルを踏襲した新曲を中心に、色々なスタイルの作品を収録している。しかし、どの曲も彼らの手による大胆なアレンジが施されており、何度も繰り返し聴かないと元ネタがわからないほど、大きく変わった曲も少なくない。だが、どれだけ奇想天外な解釈を加えても、当時の音楽によく似た雰囲気を感じることができるのは、刺々しいギターの音色や、力強いドラムの演奏、そして滑らかでグラマラスなロナルドのヴォーカルなど、彼らが経験し、演奏してきた、70年代のソウル・ミュージックのエッセンスを、丁寧に取り入れているからだろう。

色々なジャンルの音楽が花開き、融合と分裂を繰り返しながら互いに刺激を与えあっていた60年代後半から70年代の音楽の醍醐味を思う存分堪能できる傑作。人間が演奏する音楽の奥深さを感じてほしい。

Producer
Carlos Santana, Cindy Blackman Santana

Track List
1. Are You Ready People
2. Total Destruction To Your Mind
3. Higher Ground
4. God Bless The Child
5. I Remember
6. Body Talk
7. Gypsy Woman
8. I Just Want To Make Love To You
9. Love, Peace, Happiness
10. What The World Needs Now is Love Sweet love
11. Mercy Mercy Me (The Ecology)
12. Let The Rain Fall On Me
13. Let There Be Peace On Earth





パワー・オブ・ピース
サンタナ&アイズレー・ブラザーズ
SMJ
2017-08-09

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