melOnの音楽四方山話

オーサーが日々聴いている色々な音楽を紹介していくブログ。本人の気力が続くまで続ける。

男性シンガー・ラッパー

NBDY - Tunnel Vision [2021 NBDY]

NBDYという記号のような名前のアーティスト。どうやら「エヌビーディーワイ」と読むらしい。

ニュージャージー州のエセックス近郊で育った彼は、まだ20代でありながら、自らを「一匹狼」と表現するように、トラック制作からコーラスまでを一人で完結できる万能選手なようだ。

彼が生み出す音楽は、シンセサイザーを駆使して組み立てた、シンプルな構成のトラックに、トレイ・ソングスやパーティーネクストドアのような、ゆったりとしたメロディに乗せて、ラッパーのように多くの言葉を畳み掛けるというもの。先達と比べること、声質が少し硬いが、そのおかげで、一つ一つの言葉がはっきりと伝わってくる。

また、ソングライティングから録音まで、全ての工程を一人で手がけているので、歌詞、メロディ、トラック、ヴォーカルが一つになって、楽曲のテーマを明確に描き出している。

多人数で一つの曲を作ることが当たり前になった現代、彼のように一人で楽曲を完成させられるクリエイターは、非常に個性的に見える。 最小限の機材と自身の歌で勝負する姿勢は、マイク一本、ギター一本で勝負してきた往年のミュージシャンを彷彿させる。今後が気になる逸材だ。

Producer
NBDY

Track List
1. F.O.E
2. Another Luv Song
3. Missing Sumthin'
4. Surrender
5. Toxic (Interlude)
6. Situationship
7. Believe Me
8. Tunnel Vision

 
 

 

MonoNeon - Supermane [2021 Mononeon]

ブーツィー・コリンズやサンダーキャットなど、個性的な人が多い音楽の世界でも、特にユニークな人が多いベーシスト。その中でも、今、特に強烈なキャラクターで注目を集めているのが、モノネオンことドウェイン・トーマスJr.だ。

黒人音楽の聖地、メンフィスに生まれ育った彼は、ジョン・ケージやアルバート・アイラーのような抽象性の高い現代音楽と、メイヴィス・ステイプルズのような泥臭い南部のソウル・ミュージックを融合させるという、ユニークな作風で話題のクリエイター。

今回の作品では、ディム・ファンクのような太いベース音が印象的なディスコ曲や、古いリズムマシンの軽い音色を効果的に使った軽妙なスロー・ナンバー、ゲストの女性ヴォーカルの力強い歌声が、60年代のステイプル・シンガーズを彷彿させる、ドロドロとしたソウルや、演奏者の指捌きが耳に伝わってくる繊細なポップスのバラードなど、色々なスタイルの楽曲を披露している。

しかも、本作で彼は、煌びやかなシンセサイザーの音と、泥臭い南部のソウル・ミュージックのヴォーカルを組み合わせるなど、周囲の予想を裏切る意外な組み合わせで、リスナーの度肝を抜いている。この、一歩間違えたら、イロモノで終わりかねない大胆なアレンジに挑戦しつつ、一つの作品に落とし込むコーディネート能力こそ、彼の強みであり、魅力なのだろう。

蛍光色を取り入れたファッションや、ベースヘッドにつけた靴下という、個性的なビジュアル以上に強烈な音楽と、ユニークなファッションですら周囲から納得されるように、色々なサウンドを一つの作品にとして纏め上げる構成力が光っている。

Producer
MonoNeon

Track List
1. Just Gettin' High, Just Gettin' By
2. Invisible
3. We Somebody Y'all
4. Grandma's House feat. Mr. Talkbox
5. The Crop feat. Wax
6. Done with the B-S feat. Ledisi
7. Fartin' All Ova the World
8. Supermane feat. Kirk Whalum




Supermane [Explicit]
Mononeon
2021-03-18

The Weeknd - After Hours [2020 XO, Republic]

2010年代を代表するヒップホップ・アーティストのドレイクや、人気動画投稿者から世界的なポップ・スターに上り詰めたジャスティン・ビーバーなど、現代のポップス・シーンを牽引するカナダ出身のアーティスト達。彼らは、英語圏でありアメリカに近い土地でありながら、アメリカより安全で豊かな生活を送れるという地理的なメリットを活かし、豊かで多彩な音楽文化を育んできた。

ウィークエンドこと、エイベル・マッコネン・テスファイもそんなカナダ発の世界的なアーティストの一人。エチオピア系移民の両親を持つ彼は、ジャスティンやドレイクのように、インターネット上に公表した自作曲が注目を集め、メジャー・レーベルとの契約を獲得。2012年にユニヴァーサル傘下のリパブリックに設立した自身のレーベル、XOからデビュー・アルバム『Kiss Land』をリリースすると、シンセサイザーを駆使した抽象的なサウンドと、繊細なヴォーカルが高く評価され、アメリカとカナダでゴールド・ディスクを獲得するなど、華々しいデビューを飾った。

そんな彼が大きく飛躍するきっかけになったのは、2016年に発表した三枚目のアルバム『Starboy』と同作のタイトル・トラック。“Get Lucky”などのヒット曲で世界を席巻したフランスの音楽ユニット、ダフト・パンクとコラボレーションした同曲は、プリンスのような色気とマイケル・ジャクソンのポップ・センス、レディオヘッドを連想させる幻想的なサウンドで多くの人の心を掴んだ。

本作は、2018年のEP『My Dear Melancholy』から約2年の間隔でリリースされた、彼にとって通算4枚目のスタジオ・アルバム。多くのゲストを招いた『Starboy』から一転、気心の知れたプロデューサーを中心に、初期の作品のような音数を絞ったビートや、ウィークエンドの繊細なヴォーカルにスポットを当てた本編に、多くのゲストを招いたボーナス・トラックを追加したという、異色のアルバムになっている。

アルバムに先駆けて発表された”Heartless”はアトランタを拠点に活動するプロデューサー、メトロ・ブーミンと制作した楽曲。トラップが得意なメトロ・ブーミンらしい、変則的なビートと、教会音楽のように荘厳なシンセサイザーの伴奏が印象的。リル・ウジ・バートが参加したリミックス版では、ドラムのかわりに大地をうねるようなベース・ラインを強調したアレンジになっている。

これに対し、スウェーデンの作家、マックス・マーティンと共作した”Scared to Live”は、オルガンのような音色の伴奏が印象的なバラード。繊細な歌声が魅力の彼には珍しい、朗々と歌う姿が心に残るソウルフルな楽曲だ。ボーナス・トラックとして収められたライブ・ヴァージョンでは、バンドの演奏をバックにダイナミックなパフォーマンスを披露する姿が楽しめる。

また、マックス・マーティンがペンを執った“Blinding Lights”は、A-haの”Take On Me”を彷彿させる、疾走感のあるビートと、アナログ・シンセサイザーっぽい音色の伴奏が格好良いアップ・ナンバー。リミックス版は、アナログ・シンセサイザーの音色こそ使っているものの、ゆったりとしたテンポの伴奏と、じっくりと歌いこむウィークエンドのヴォーカルが光る切ない雰囲気のバラードに仕上がっている。

そして、本作のリリース直後にリカットされた”In Your Eyes”は、『Starboy』に収録されているダフト・パンクとのコラボレーション曲”I Feel It Coming”の路線を踏襲した楽曲。YMOやクラフトワークのような80年代の電子音楽を思い起こさせるモダンな音色のシンセサイザーを多用した伴奏をバックに切々と歌う彼の姿が魅力のミディアム・ナンバーだ。『Starboy』で彼のことを知ったファンなら、きっと気に入ると思う良曲だ。

今回のアルバムは、デビュー当初の先鋭的なサウンドに回帰しながらも、『Starboy』以降のテクノ・ポップやヒップホップを取り入れた路線の曲も収録することで、大衆性と独創性を両立したものだ。マックスウェルにも通じる繊細なファルセット・ヴォイスと、フライング・ロータスやサンダー・キャットにも見劣りしない尖ったサウンドを土台にしつつ、ポップな曲から先鋭的な曲まで、幅広い作品を並べている。この、豊かな想像力とヒットのツボを確実に突く鋭い嗅覚のバランスが、彼の音楽を魅力的なものにしているのだと思う。

プリンスの先鋭的なサウンドと、マイケル・ジャクソンの大衆性を、高いレベルで両立したアルバム。『Starboy』のキャッチーさと、初期作品の鋭いセンスを両立した、彼の新境地ともいえる作品だ。

Producer
The Weeknd, Kevin Parker, Max Martin, Metro Boomin, Ricky Reed etc

Track List(通常版のもの)
1. Alone Again
2. Too Late
3. Hardest To Love
4. Scared To Live
5. Snowchild
6. Escape From LA
7. Heartless
8. Faith
9. Blinding Lights
10. In Your Eyes
11. Save Your Tears
12. Repeat After Me (Interlude)
13. After Hours
14. Until I Bleed Out




After Hours
The Weeknd
Republic
2020-03-20

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