ブラック・ミュージック千本ノック~SoulとR&Bと色々な音楽~

管理人が手に入れたR&Bのアルバム、1000枚の紹介文を書き続けるブログ その先に見えるものは天国か地獄か・・・

自主制作

Xscape - Here For IT [2018 Redzone]

1993年に、ジャーメイン・デュプリが率いるソニー傘下のソー・ソー・デフから、アルバム『Hummin' Comin' at 'Cha』でメジャー・デビュー。総合アルバム・チャートの3位に入る華々しいデビューを飾った、4人組の女性ヴォーカル・グループ、エクスケイプ。

その後も、95年に『Off The Hook』、98年に『Traces of My Lipstick』 を発表。全ての作品で100万枚を売り上げるなど、TLCアン・ヴォーグSWVと並び称される、90年代を代表する人気ガールズ・グループとして大きな成功を収めた。

しかし、3作目の発表後に、ラトチャ・スコットがソロ活動のためにグループを離れると、キャンディもシンガー・ソングライターに転身。TLCの”No Scrubs”やディスティニーズ・チャイルドの”Bills, Bills, Bills”などのヒット曲を制作して人気ソングライターとしてグラミー賞を獲得すると、それ以外のメンバーも、歌手や俳優として個人の活動に打ち込むようになり、グループとしての活動は停滞していった。

このアルバムは、『Traces of My Lipstick』以来、実に20年ぶりとなる彼女達の新作。キャンディこそ不参加なものの、ラトチャを含む3人が参加。ほぼ全ての楽曲をトリッキー・スチュアートが手掛け、美しいメロディとセクシーな3人のパフォーマンスが存分に堪能できる、魅力的なR&B作品に仕上がっている。

本作の1曲目は、トリッキー・スチュアートとピエール・メドーがプロデュースした”Memory Lane”。トニ・ブラクストンからオマリオンまで、新旧の名シンガーを成功に導いてきた彼らが手掛ける曲は、『Traces of My Lipstick』の収録曲と勘違いしそうな、ヒップホップのビートを使ったスロー・バラード。尖ったサウンドの上で、艶めかしい歌声をじっくりと聴かせる手法は、 90年代に一世を風靡した彼女達の音楽を丁寧に再現している。

続く”Dream Killa”は、本作からの先行シングル。ソングライティングを3人が担当した楽曲は、90年代に流行した、メロディをじっくりと聴かせるタイプのスロー・バラード。しかし、バックトラックはチキチキ・ビートではなく、ジョーやR.ケリーの作品を思い起こさせる色っぽいサウンド。年を重ね、大人の色気を身に着けた3人の持ち味が、遺憾なく発揮された作品だ。

また、もう一つのシングル曲である”Wifed Up”は、ピエール・メドーが制作を主導したミディアム。跳ねるようなドラムと軽妙なメロディの組み合わせは、ジェイソン・デルーロやオマリオンの作風に近い。ポップなメロディと躍動感あふれるビートが心地よい、聴きなれない作風ではあるが、きちんと自分達の作品に落とし込んでいるのは、彼女達の経験と技術の賜物だろう。

そして、本作のタイトル・トラックである”Here For It”はトリッキー・スチュアートやピエール・メドーに加え、彼女達自身も制作に参加したミディアム。ダンスホール・レゲエの要素を取り込んだ作風は、フィフス・ハーモニーの”Down”にも少し似ている。フィフス・ハーモニーと比べると、経験を積んで重みを増した3人の歌声と、軽快なレゲエのビートを組み合わせる技術が素晴らしい良曲だ。

今回のアルバムは、全盛期のイメージを踏襲しつつ、年を重ねて老練さを身に着けた3人の表現が魅力の作品だ。ジャーメイン・デュプリからは離れたものの、彼と同じく90年代から活躍するトリッキー・スチュアートを多くの曲に起用。現在もコンスタントに新作を発表している彼の新鮮な感性と豊富な経験を活かして、90年代の音楽の雰囲気を盛り込んだ、現代向けのR&Bを録音している。また、3人のヴォーカルも「高い表現力とキュートな歌声を兼ね備えた少女」から「高い表現力で豊かな人生経験を音楽に吹き込む大人の女」へとアップデートし、昔の彼女達の魅力を残しつつ、現在のエクスケイプの表現に落とし込んでいる。この、「残せる部分は残しつつ、残せない部分は現代に合わせて作り直す」という方針を徹底したことが、彼女達の強いところだろう。

前作から20年以上の時を経ても、彼女達の輝きは衰えることがないことを再確認させてくれる良作。ここにキャンディが加わったらどんな音楽が生まれるのか、次の作品に期待が膨らむ充実の内容だ。

Producer
Tricky Stewart, Medor J Pierre, Xscape etc
Track List
1. Memory Lane
2. Dream Killa
3. Wifed Up
4. Here For It
5. Craving
6. Last Of Me




WODDYFUNK - N.Y.B. monolog & T-Groove Remix [2018 Intermass Records]

口の中でシンセサイザーの音を鳴らすことで、ロボットのような声を作り出すトークボックス。ザップのロジャー・トラウトマンやガイのテディ・ライリーなどが採用し、多くのヒット曲を生み出す一方、体内で音を鳴らす負荷の大きさや、楽器の音に合わせて歌う演奏の難しさから、使い手を選ぶ楽器としても知られている。

ウッディファンクは、この楽器の名手として知られる日本のシンガー・ソングライター。2012年には、ザップのグレッグ・ジャクソンがプロデュースした楽曲を含むアルバムを発表。その後も、ブーツィー・コリンズやジブラ、渋さ知らズやXLミドルトンなど、国やジャンルの枠を超えて、様々なアーティストとコラボレーションしてきた実力者だ。

本作は、2017年のアルバム『Pop』と、2015年のアルバム『Honey & Oh Yeah』の収録曲をリミックスした、2曲入りのシングル。ボビー・グローバーやブーツィー・コリンズが参加したことでも話題になった楽曲を、ゴールデン・ブリッジの名義で発表した『T.B.C.』や『I Can Prove It』も記憶に新しい、T-Grooveとmonologの二人が再構築。三者三葉のアプローチで、世界を舞台に活躍してきた面々による、ソウル・ミュージックへの深い愛情が発揮された新鮮な作品になっている。

1曲目の”GET THE PARTY STARTED”は、2017年の『Pop』の収録曲。オリジナル・ヴァージョンではダイナミックなスウィングと、80年代のファンク・バンドを彷彿させるロー・ファイなサウンドが魅力だったが、今回のリミックスではハウス・ミュージックを連想させるスタイリッシュなビートと、軽快なギターのカッティング、キュートなコーラスを強調したディスコ・ブギーにアレンジしている。四つ打ちのビートと、軽やかなギターを組み合わせたスタイルはダフト・パンクの”Get Lucky”を思い起こさせる。

また、”LET THE MUSIC PLAY”は2015年の『Honey & Oh Yeah!』の収録曲のリミックス。ジェイムズ・ブラウンの緻密なファンク・サウンドと、トーク・ボックスを組み合わせた手法が斬新だった楽曲を、ギターやパーカッションを組み合わせて、フィリー・ソウルっぽく纏めたアレンジが新鮮な曲だ。トーク・ボックスの強烈なサウンドを、柔らかい音色の楽器で流麗なダンス・ミュージックに組み込むセンスが面白い。原曲のアクセントになっていた、ブーツィー・コリンズの合いの手も、きちんと組み込む構成も心憎い。

このシングルの聴きどころは、リミックスとは思えない自然な編曲と、オリジナルとは全くことなる表情を見せるリミックス技術だろう。ザップやジェイムズ・ブラウンの影響が色濃かった原曲を、トーク・ボックスの強烈なサウンドを活かして、モダンなディスコ音楽に組み替えるスキルは圧巻の一言。しかも、ヴォーカルの加工は最小限に留め、ライブでも演奏されそうな新曲に落とし込めている点も見逃せない。

海外のヒップホップやR&B、往年のソウル・クラシックと比べても見劣りしない、日本発の本格的なソウル作品。タキシードやダフト・パンクが好きな人には是非聴いて欲しい良作だ。


Producer
Serigho Muto

Track List
1. GET THE PARTY STARTED
2. LET THE MUSIC PLAY



Precious Lo’s - Too Cool For Love [2018 P-Vine]

2000年代前半ごろから、ディム・ファンクなどの台頭によって注目を集め、近年はスヌープ・ドッグとディム・ファンクのコラボレーション作品や、メイヤー・ホーソンがヴォーカルを担当するタキシードのヒットも話題になっている、80年代テイストのソウル・ミュージック。2017年には日本人クリエイター、T-Grooveの『Move Your Body』が発売され、収録曲が複数の国のヒット・チャートに名を刻むなど、世界中のミュージシャンを巻き込んで盛り上がっているこのジャンルで、新たに頭角を現したのが、カナダ出身の二人組、プレシャス・ローズだ。

トロントを拠点に活動する、ニック・タイマーと日系カナダ人のギル・マスダによるこのユニットは、2000年ごろから、ヒップホップ・ユニット、サークル・リサーチの名義で複数の作品をリリースしている、経験豊富なベテラン。2017年には、後にイギリスのコンピレーション・アルバム『Roller Boogie Volume 3』にも収録される、T-Grooveのシングル”Roller Skate”にフィーチャーされたことでも話題になった。

今回のアルバムは、サークル・リサーチ名義の2008年作『Who?』以来、約11年ぶり、現在の名義では初となるスタジオ・アルバム。プロデュースはサークル・リサーチ名義で、ヴォーカルは二人が担当。ゲストとして、音楽とヴィジュアルの両分野で独創的な作品を残している、トロント出身のシンガー・ソングライター、メイリー・トッドなどが参加。ヒップホップの世界で培った経験と、ソウル・ミュージックへの深い造詣を活かした、本格的なソウル作品を披露している。

アルバムの1曲目は、タイトル・トラックの”Too Cool For Love”。ゆったりとしたビートと、ポロポロと鳴り響くピアノの音色を強調したトラックと、ラップのような抑揚のあるメロディは、ディスコ音楽というより、ディアンジェロやサーラ・クリエイティブ・パートナーズのような、ヒップホップを取り入れたソウル・ミュージックに近い。長い間、ヒップホップに取り組んできた彼ららしい曲だ。

この路線を突き詰めたのが、アルバムに先駆けてミュージック・ビデオが制作された”Right Time For Us”。太いシンセサイザーの音色を使ったビートが格好良いミディアム・ナンバー。ヴォーカルが入っている個所は少なめで、トラックのアレンジによって曲に起伏をつけているスタイルは、エイドリアン・ヤングの作品を彷彿させる。

また、”Older Now”との組み合わせで、7インチ・レコード化された”Small Town Girl”は、軽妙な伴奏とゆったりとしたメロディが心地よいスロー・ナンバー。ファルセットを多用した滑らかな歌唱は、メイヤー・ホーソンのそれを思い起こさせる。レゲエのエッセンスを盛り込んだ緩いビートとメロディも見逃せない。

そして、本作の隠れた目玉が”Older Now”。シカゴが生んだソウル界の巨匠、ジーン・チャンドラーの80年のヒット作”Does She Have A Friend?”のフレーズをサンプリングしたこの曲は、アナログ・シンセサイザーの音色を使ったスタイリッシュでグラマラスな伴奏の上で、メロディを崩すように歌う姿が心に残るミディアム・ナンバー。伴奏だけを聴くと”Does She Have A Friend?”のテイストが強いが、ヴォーカルのアレンジで現代のヒップホップのように聴かせている。

今回のアルバムの面白いところは、80年代のソウル・ミュージックと現代のヒップホップやR&Bの手法を組み合わせ、80年代の音楽の雰囲気を残しながら、現代のリスナーの琴線に響く作品に仕立てているところだ。音色選びやアレンジでは、随所にモダンな80年代のソウル・ミュージックの要素を取り入れつつ、メロディやアレンジに現代のブラック・ミュージックの先鋭さを盛り込むことで、80年代の洗練された雰囲気を残しつつ、過去の音楽とは一線を画した、現代的な新しいソウル・ミュージックに纏め上げている。

ヒップホップに慣れ親しんだ世代のミュージシャンによる、鋭い視点と斬新な解釈が面白いソウル・アルバム。サンプリング・ソースという形で結びつくことの多かった、80年代ソウルと現代のヒップホップの新しい関係を感じさせる良作だ。

Producer
Circle Research

Track List
1. Too Cool For Love
2. More Than Frends (feat. Maylee Todd)
3. Without You (feat.Tyler Smith)
4. Still The Same (feat.Tyler Smith)[Buscrates 16-Bit Ensebmle Remix]
5. Falling For You
6. Problems
7. Right Time For Us
8. This Is Love (Circle Research Remix)
9. Night Ridin’(feat. Tyler Smith)
10. Fly Away (Tyler Smith Remix)
11. Thinking
12. Small Town Girl
13. Older Now
14. U Turn Me Up





トゥ・クール・フォー・ラヴ
ザ・プレシャス・ローズ
Pヴァイン・レコード
2018-02-14

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