ブラック・ミュージック千本ノック~SoulとR&Bと色々な音楽~

管理人が手に入れたR&Bのアルバム、1000枚の紹介文を書き続けるブログ その先に見えるものは天国か地獄か・・・

自主制作

Chante Moore - The Rise of the Phoenix [2017 CM7 Records, TuneCore, INgrooves]

92年にアルバム『Precious』でメジャー・デビューすると、20代半ば(当時)とは思えない大人びた歌と妖艶な声が高い評価を受け、50万枚を超える大ヒットとなった、カリフォルニア州サン・フランシスコ出身のシンガー・ソングライター、シャンテ・ムーアことシャンテ・トレンス・ムーア。

キリスト教の伝道師の家に生まれた彼女は、幼いころから教会で歌う一方、ジョージ・デュークやリー・リトナーのような洗練されたサウンドをウリにするジャズ・ミュージシャンの音楽に慣れ親しんできた。

成人した彼女は、ミス・コンテストに出場したりモデル活動を行ったりするなど、早くから美貌とシンガーとしてのポテンシャルの高さを発揮。MCAのルイス・サイラスとワーナーのベニー・メディーナからスカウトを受けると、MCAと契約を結ぶ。

以後、彼女は多くの作品を発表。デニース・ウィリアムスの代表曲とコモドアーズのヒット曲をメドレーで歌った”Free/Sail On”やジャーメイン・デュプリ作のダンス・ナンバー”Straight Up”など、今も親しまれ続けるR&Bクラシックを残してきた。また、2002年にシンガー・ソングライターのケニー・ラティモアと結婚(後に離婚)すると、夫婦の名義でも2枚のアルバムをリリース、私生活の熱愛っぷりをそのまま作品にしたような、甘くロマンティックな音楽を聴かせてくれた。

今回のアルバムは、2013年の『Moore Is More』以来となる、ソロ名義では通算7枚目となるオリジナル・アルバム。離婚後初の録音作品だった前作は、通好みのソウル作品を数多くリリースしてきたシャナチーからの発売だったが、本作は彼女が設立したCM7からの発表。プロデュースは前年に元夫、ケニー・ラティモアの作品を手掛けているネイト・ジョリーや、タミアやR.ケリーなどを手掛けているリル・ロニーなどが担当。前作で心機一転、新しい道を踏み出した彼女の、新しい一歩となる佳曲を揃えている。

アルバムの実質的な1曲目である”Chasin”は、ロニー・ジャクソンがプロデュースした、ミディアム・バラード。ズンズンと迫ってくるビートの上で、荒々しいヴォーカルを披露した楽曲だ。パワフルな歌声で聴き手を圧倒するスタイルは、彼女の作品ではあまり見られなかったものだが、この曲ではしっかりと自分のものにしている。

これに対し、これまでの彼女のスタイルを踏襲したのが、”Chasin”とほぼ同じメンバーで制作した”On His Mind ”だ。ジャーメイン・デュプリを彷彿させるチキチキというハイハットの音色や、カニエ・ウエストやジャスト・ブレイズを連想させる、往年のソウル・ミュージックのような柔らかい音色の伴奏を使ったビートの融合が面白い作品。ヒップホップの手法をふんだんに取り入れながら、緩急を使い分けたヴォーカルで、本格的なR&Bに落とし込んでいるところが彼女の凄いところだ。

また、本作人先駆けて発表された”Real One”はリル・ロニーのプロデュース曲。シンセサイザーとエフェクターを駆使したモダンなトラックの上で、丁寧に歌う姿が光るバラード。AメロからBメロ、サビへと続く構成や、サビに向けて徐々に盛り上がっていく展開は、90年代に流行したR&Bバラードの手法そのものだが、それが新鮮なものに聴こえるのは、経験を積んで色っぽさが増した彼女の歌声と豊かな表現力のおかげだと思う。

そして、もうひとつのシングル曲である”Something to Remember ”は艶めかしい音色のギターとシンセ・ドラムの音を軸にしたシンプルなトラックの上で軽妙な歌唱を聴かせた曲。癖のあるビートの上、複雑なメロディを乗りこなし、聴き手の心に訴えるパフォーマンスを聴かせる技術は、流石としか言いようがない。

今回のアルバムは、シャナチーを離れ自身のレーベルからリリースした作品だが、本作の収録曲にはシャナチーが好みそうな、歌の技術と声の迫力で勝負したものが多いところが面白い。彼女の作品は、メロディに重きを置いた奇をてらわない楽曲と、それを丁寧に歌い込むヴォーカルで勝負した作品が多いが、本作ではその路線が突き詰められている。この、保守的ともいえる作風が魅力に感じられるのは、繊細で色っぽい歌声と、難解なメロディもきちんと乗りこなす、高い技術があるからだろう。

魅力的な声と高いスキルで、聴き手の心を魅了する彼女の強みが最大限発揮された素晴らしいアルバム。携帯型音楽プレイヤーで聴かれることを意識したBGMのような音楽が多い中、自室でじっくりと味わいたいと思わせる説得力のある作品だ。

Producer
Lil Ronnie, Ronnie Jackson, La Trax, Nehemiah Jackson etc

Track List
1. Welcome to the Journey (Interlude)
2. Chasin
3. On His Mind
4. I’d be a Fool
5. Pray
6. Real One
7. SuperLover
8. The Journey (Interlude)
9. Saving Grace
10. Breath
11. I Know
12. Offa-U
13. Something to Remember
14. We Up
15. Pressure
16. Back to Life
17. Thank you for the Journey (Interlude)




Rise of the Phoenix
Chante Moore
Cm7 Records
2017-10-20

Sheila E. - Iconic: Message 4 America [2017 Stilettoflats Music]

プリンスのバンド・メンバーとして10年近く活動し、その後は安室奈美恵やビヨンセ、リンゴ・スターなど、様々な国のトップ・ミュージシャンと一緒に仕事をしてきた、カリフォルニア州オークランド出身のシンガー・ソングライターで演奏家の、シーラEことシーラ・セシリア・エスコヴェード。

ファンタジーやコンコードに録音を残しているパーカッショニストのピート・エスコヴェードを父に、サンタナやアズテカでも演奏していたコーク・エスコヴェードを叔父に持つ彼女は、10代の頃からレコーディングやステージを経験してきた。また、近年は自身のバンド、Eファミリーを結成し、ツアーやレコーディングを行うなど、バンドのリーダーとして、自身の音楽を世に送り出してきた。

本作は、2013年の『Icon』以来となる通算8枚目のオリジナル・アルバム。「メッセージ・フォー・アメリカ」というサブタイトルの通り、社会にメッセージを投げかけた作品で、ジェイムス・ブラウンやスライ&ザ・ファミリー・ストーン、かつて一緒に演奏していたプリンスなどの楽曲を、豊富な経験を活かした大胆な解釈でカヴァーしている。

アルバムのオープニングを飾るのは、ジェイムス・ブラウンの”Gonna Have A Funky Good Time”と、アメリカ国歌の”星条旗よ永遠なれ”を混ぜ合わせた”Funky National Anthem: Message 2 America”。父ピートや兄弟のユアン、ピーター・マイケルが参加したこの曲では、多くの打楽器を使ったダイナミックなグルーヴが堪能できる。曲の途中で、マーティン・ルーサー・キングの演説と、バラク・オバマの演説を挟み込むことで、時代が変わってもアメリカが抱え続ける課題と、それぞれの時代で問題へと立ち向かってきた人々の存在を浮き彫りした演出が面白い。

これに続くのはビートルズのヒット曲をメドレーで演奏した”Come Together / Revolution”。元ビートルズのリンゴ・スターがドラムで参加したこの曲では、彼女はヴォーカルも担当。マイケル・ジャクソンやシル・ジョンソンなど、多くの黒人ミュージシャンがカヴァーしてきたビートルズの有名曲を、彼女は原曲よりテンポを落とした、ドロドロとしたアレンジで演奏している。曲の途中で”All You Need Is Love”を盛り込んでいるのが心憎い。

また、スライ&ザ・ファミリーストーンの有名曲をカヴァーした”Everyday People”は、グループの初期から在籍していたフレディ・ストーンがギターとヴォーカルで参加。敢えて肩の力を抜いて、ラフに演奏したバンドが、爽やかなサウンドと軽妙なメロディが魅力であるスライ・ストーンの音楽をうまく再現している。

そして、彼女がブレイクするきっかけを生んだプリンスの曲からは”America” と”Free”の2曲をピックアップ。シンセサイザーを駆使した近未来的な雰囲気の伴奏をベースに、切れ味の鋭い歌と演奏が格好良い作品。ヴォーカルが粘っこい歌声のシーラEに変わったこと以外、オリジナルと大きく違わないのは、彼女の原点であるプリンスのバンドの音を大切にしたからだろうか。

このアルバムでは60年代から80年代まで、様々な時代の黒人ミュージシャンの作品を取り上げつつ、社会に向けたメッセージを盛り込んでいるのだが、彼女の凄いところは年代も作風も異なるミュージシャンの楽曲を、一つの作品に収めているところだと思う。おそらく、彼女自身が様々な音楽を経験できる環境で育ち、人一倍演奏技術への拘りが強いプリンスの下で腕に磨きをかけてきたことが大きいと思う。

黒人音楽の豊かな土壌をベースに、自身のスタイルと強いメッセージを打ち出した面白いアルバム。メッセージとは他人に押し付けるものではなく、投げかけるものだということを、彼女の音楽は教えてくれているように思う。

Producer
Gilbert Davison, Sheila E.

Track List
1. Funky National Anthem: Message 2 America
2. Come Together / Revolution
3. Everyday People
4. Inner City Blues / Trouble Man
5. It Starts With Us
6. Jesus Children Of America
7. James Brown Medley (Talkin' Loud And Sayin' Nothing, Mama Don't Take No Mess, Soul Power, Get Involved, Super Bad)
8. Blackbird
9. One Nation Under A Groove / Mothership Connection
10. Pusherman
11. Respect Yourself
12. I Am Funky
13. Yes We Can
14. America / Free
15. What The World Needs Now Is Love





ICONIC MESSAGE 4 AMERICA [LP] [Analog]
SHEILA E.
STILETTO FLATS MUSIC
2017-10-06

Torii Wolf - Flow Riiot [2017 TTT]

80年代から2000年代前半にかけて、ヒップホップ・デュオ、ギャングスターの一員として活躍する一方、プロデューサーとしてノートリアスB.I.G.ジェイZからジャネット・ジャクソンやクリスティーナ・アギレラまで、多くの人気ミュージシャンを手掛けてきた、ヒューストン生まれニューヨーク育ちのDJでプロデューサー、DJプレミアことクリストファー・エドワード・マーティン。

近年もラッパーをフィーチャーした自身名義のアルバムをリリースしたり、バンド・メンバーを連れたツアーを行ったりするなど、精力的に活動している彼。そんな彼の全面的なバック・アップを受けてデビューしたのが、このトリイ・ウルフだ。

2016年に配信限定のシングル”1st”で表舞台に躍り出た彼女は、DJプレミアがプロデュースしたシンガーという話題性と、ビヨークを彷彿させる神秘的なヴォーカルで、音楽好きの度肝を抜いた。

その後も、DJプレミアらしい、サンプリングを多用したヒップホップのトラックに、しなやかで繊細なヴォーカルを組み合わせた独特のスタイルの楽曲で注目を集めてきた彼女、待望のフル・アルバムではその路線を踏襲しつつ拡大した、音楽ファンの期待を裏切らない音楽を聴かせてくれる。

彼女のデビュー曲”1st”は、DJプレミアがプロデュースしたディレイテッド・ピープルズの”Good As Gone”をサンプリングしたミディアム・ナンバー。ポロポロと鳴り響くピアノの音色が切ない、物悲しい雰囲気の作品だ。ラッパーの声をアクセントに使うことで、哀愁を帯びたメロディの曲を軽妙なヒップホップ・ソウルのように聴かせるテクニックが光っている。

これに続く”Big Big Trouble”は、同じくDJプレミアがプロデュースしたパプースの”The Plug”をサンプリングした作品。元ネタ(厳密にいえばシャーリー・ベッシーの”Light My Fire”の孫引きに当たるのだが)のフレーズを使った荘厳なストリングスの伴奏と、DJプレミアらしい精密なビートの上で、軽妙な歌唱を披露するスタイルが格好良いミディアム・ナンバー。本作で使われているビートの中では、DJプレミアがこれまでに制作したトラックに最も近い作風だが、歌い手の解釈で先鋭的なポップスに聴こえるから面白い。

また、マックルモア&ライアン・ルイスの名義で2枚のアルバムを残し、ケンドリック・ラマーを押しのけてグラミー賞を獲得したことも記憶に新しいシアトル出身のラッパー、マックルモアとDJプレミアが手掛けた”Free”は、レコードの音を組み合わせた緻密で温かいトラックに定評のあるDJプレミアと、ポップで軽快な作品を作らせたらアメリカ屈指の技術を持つマックルモアの良いところが合わさった、キャッチーでグラマラスなビートが格好良いアップ・ナンバー。DJプレミアらしい、古いレコードの音を巧みに引用した太くて温かい音を使って、シュガーヒルズ・ギャングやグランドマスター・フレッシュのような80年代のヒップホップ・ミュージシャンを彷彿させる軽やかなビートが印象的だ。このビートの上で、あえて音数を絞った流れるようなメロディを披露するトリイ・ウルフと、自身名義の作品同様、キャッチーで親しみやすいラップを披露するマックルモアの対照的なパフォーマンスが互いの長所を引き出している。全く違うスタイルの三者の個性が存分に発揮された作品にもかかわらず、それらが一体化して一つの音楽に落とし込まれている点は流石としか言いようがない。

そして、ドレイクDJキャリッドの作品に携わっているマイク・ゾンビが制作した”Pain Killer”は、ピアノっぽい音色を使った伴奏が光るスロー・ナンバー。ドラムの音を控えめにして、ふわふわとしたシンセサイザーの音色を使った幻想的なトラックの上で、丁寧にメロディを歌った作品。ポップスのバラードでありながら、エレクトロ・ミュージックやヒップホップの手法を混ぜ合わせることで、斬新な音楽に聴かせる手腕が光っている。

DJプレミアと言えば、ナズやラキムといった通好みのラッパーとのコラボレーション作品が知られる一方、ディアンジェロなどのヴォーカル曲も制作するなど、音楽に詳しくない人がイメージするヒップホップやR&Bを体現したような楽曲が多かった、そんな彼が手掛けたこのアルバムは、ディアンジェロやジャネット・ジャクソンとは全く異なる、ビヨークやトム・ヨークのような繊細な表現と先鋭的な感性が合わさった歌手とのコラボレーションという意外な組み合わせだ。しかし、様々なタイプのヒップホップを生み出してきたDJプレミアの感性と、それを独自の解釈で自身の音楽に組み替えるトリイ・ウルフの創造力が合わさったおかげで、90年代のヒップホップが持つ温かい空気と、サンダーキャットやフライング・ロータスのような斬新さが融合した、唯一無二の作品になっている。

60年代、70年代の音楽をサンプリングし、現代の音楽に再構築してきたDJプレミアの持ち味を残しつつ、現代の前衛的なクラブ・ミュージックに取り組んだ意欲作。斬新なビートと個性的なラッパーに心踊った90年代の彼を思い起こさせる、鋭い感性と高い技術が発揮されている充実の内容だ。

Producer
DJ Premier, King Of Chill, M araabMUZIK, Macklemore, Mike Zombie, Torii Wolf

Track List
1. Everlasting Peace
2. Meant To Do
3. 1st
4. Big Big Trouble
5. Body
6. I'd Wait Forever And A Day For You
7. Take It Up On Monday
8. Go From Here
9. Shadows Crawl
10. Nobody Around
11. You're Not There
12. Where We Belong
13. Free feat. DJ Premier, Macklemore
14. Pain Killer
15. Moscow






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