ブラック・ミュージック千本ノック~SoulとR&Bと色々な音楽~

管理人が手に入れたR&Bのアルバム、1000枚の紹介文を書き続けるブログ その先に見えるものは天国か地獄か・・・

配信限定

MAAD - Le Funk [2017 The VAMP]

ニューヨークを拠点に、シンガー・ソングライターやDJ、モデルなど、幅広い活動を展開するMAAD。数年前から、サウンドクラウドや配信サイトで自身のオリジナル曲を公開するなど、精力的に活動してきた彼女が、2017年3月に配信限定で初のEP『Le Funk』をリリースした。

彼女と一緒に多くの曲を制作してきた、クリエイターのヴァンプが全ての収録曲に参加。アリーヤやブランディにも通じる透き通った歌声と、R&Bやハウス・ミュージックのエッセンスを取り入れたトラックによる、モダンなR&Bナンバーを揃えている。

アルバムの1曲目を飾るのは2016年にシングル化された”Black Ice”。マスターピースやハイ・ファッションあたりのディスコ・グループを彷彿させる、ズンズンと響く太いベースの音色に乗せて、爽やかな歌声を響かせるミディアム・ナンバー。繊細なヴォーカルや起承転結が明確なメロディは、アリーヤなどの90年代に活躍したR&Bシンガーっぽくも聴こえる。

これに対し、シンセサイザーを駆使したディスコ・ミュージック、ディスコ・ブギーの手法を取り込んだのが”Satisfied”。ギターの演奏やストリングスっぽい音色のシンセサイザー等を取り入れた、洗練された音色が生み出す、躍動感たっぷりのビートが光るダンス・ナンバー。ヴォーカルの汗が飛んできそうな、エネルギッシュな歌唱も聴きどころ。

そして、2015年に発表された彼女のデビュー曲”Sweet & Low”は、プラッシュあたりの音楽を思い起こさせるダイナミックなシンセサイザーの伴奏と、スタイリッシュなビート、艶やかなヴォーカルが合わさった、ロマンティックなディスコ・チューン。ハウス・ミュージックを連想させるフィルターを使ったイントロやアクセントのように使われるギターのカッティングもいい味を出している。

一方、2016年にリリースされた”90s Love”は、ブランディやアリーヤあたりの90年代のR&B作品を連想させるシンプルなビートと、透き通った歌声を活かした美しいメロディが魅力のミディアム・バラード。使っている音色自体は、他の曲と同じだが、作曲やアレンジの技術で全く異なるタイプの曲に仕立て上げている。同じ機材でも、使い方ひとつで色々な楽曲を生み出せる楽曲制作の面白さを再確認させられる、本作の隠れた目玉ともいえる楽曲だ。シドの『Fyn』が好きだった人は、ぜひ耳を傾けてほしい。

それ以外の、本作が初収録となる新曲の中でも、特に注目を集めているのがアルバムの最後を締める”Touch Me”だ。2017年のグラミー賞にデビュー・アルバム『Eldrado』がノミネートしたことも話題になったシンガー・ソングライター、ロー・ジェイムスをフィーチャーしたこの曲は、本作の収録曲では珍しい、ハンド・クラップや太い音色のベース、ギターなどを組み合わせた、ロー・ジェイムスの作風に近い、今時のR&Bっぽい楽曲。決して派手な曲ではないが、セクシーな歌声で、恋人のように語り合う2人の姿など、聴きどころが盛り沢山の面白い曲だ。

アルバム全体を通して感じたことだが、このアルバムは、DJ、モデル、シンガー・ソングライターという異なる3つの分野で積み上げた経験が発揮された、「魅せる」ダンス・ミュージック作品だと思う。役者やモデルなどミュージシャン以外の仕事と2足(3足以上)の草鞋を履いているアーティストといえば、『8 Ounces』を発表したジャスティン・スカイ『Good Look For You EP』が好評のゲヴィン・トゥレックなど、有名無名関係なく多数いるが、彼女達同様、MAADの場合も、活動の幅を広げることで、「他人の目に映る自分のイメージを意識する感性」や「ダンス・ミュージックとして繰り返し聴かれる音楽を生み出すセンス」、「自分の持ち味を相手にきちんと伝える技術」など、ミュージシャンには欠かせない色々なスキルを習得したように見える。

アルバムの方向性は、タキシードの『Tuxed 2』ナイト・ファンクの『Nite-Funk EP』に近い、70年代後半から80年代初頭のソウル・ミュージックのスタイルを踏襲したものだと思う。だが、本作では、90年代の女性シンガーを彷彿させる彼女の繊細で透き通った歌声を念頭に作ることで、彼ら以上に当時のサウンドを大胆に取り込みつつ、オリジネーター達と差別化することに成功している。タキシードなどの作品が好きな人には是非お勧めしたい、2017年を代表するといっても過言ではない、本格的なディスコ・ミュージック・アルバム。アナログ盤で聴きたいけど、出てくれないかなー。

Producer
MAAD, VAMP

Track List
1. Black Ice
2. Satisfied
3. Sweet & Low
4. 90s Love
5. Lost Together
6. Stingy Lover
7. Touch Me feat. Ro James






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Kamasi Washington - Truth [2017 Young Turk]

スヌープ・ドッグやロビン・シックといった有名なヒップホップ、R&Bアクトの作品をはじめ、ケニー・バレルやジョージ・デュークなどの大物ジャズ・ミュージシャンの録音、はたまた、ケンドリック・ラマーやフライング・ロータス等の気鋭のミュージシャンの楽曲まで、様々な音源に携わってきた、カリフォルニア州ロス・アンジェルス出身のテナー・サックス奏者、カマシ・ワシントン。

色々なミュージシャンの楽曲に参加する一方で、自身の名義でも、2005年にザ・ネクスト・ステップとのコラボレーション作品『Live At 5th Street Dick's 』でレコード・デビュー。その後、2015年までに自主制作で発表した3作品を含む5枚のアルバムを発表してきた。

そんな彼が、多くの人から注目を集めるようになったのは、2014年から2015年にかけて参加した3枚のアルバムによる部分が大きい。フライング・ロータスの『You're Dead! 』、ケンドリック・ラマーの『To Pimp A Butterfly 』、サンダーキャットの『The Beyond / Where The Giants Roam』という、傑作と称される録音で印象的な演奏を聴かせた彼は、いち演奏家でありながら、多くの人から知られる存在になった。

そして、2015年には、フライング・ロータス達の作品を配給しているブレインフィーダーからCD3枚(LP盤も同じ)、約3時間という大作『Epic』を発表。ヒップホップやソウル・ミュージック、アフリカ音楽などの要素を楽曲の隅々にまで盛り込んだ作風で、昔からのジャズ愛好家からヒップホップのサンプリング・ソースを通してジャズの古典に触れた若者まで、幅広い世代から注目を集めた。

今回のEPは、自身の名義では『Epic』以来、約1年半ぶりの新作で、TheXX等の作品を配給している、ヤング・タークスからリリースされた、彼にとって初のEPでもある。

EPといっても、収録されているのは13分にも及ぶタイトル曲”The Truth”のみ。だが、この曲には、彼の豊かな経験と実績が生み出した、壮大な音の絵巻物が盛り込まれている。

参加ミュージシャンの一覧を見て驚いたのは、その人数。過去の作品でも2~30人規模での録音は残しているが、本作ではサックスが2名(もちろん、テナーサックスの担当はカマシ自身だ)に、ベースが2名、ドラムが2名(うち1名はパーカッションと兼任)に、チェロやバイオリン、キーボードやコーラスなど総勢17パート約30名のミュージシャンが、たった1曲のために終結ている。

しかも、この中には、エレキ・ベース担当のサンダーキャットことステファン・バーナーや、ダブル・ベース担当のマイルズ・モーズリー、ドラム担当のロナルド・バーナー・ジュニアなど、2017年に入って新作を発表した、人気と実力を兼ね備えたプレイヤー達も名を連ね、カマシの新作に華を添えている。

さて、肝心の内容だが、この曲では、キャメロン・グレイブスの滑らかなピアノ演奏から幕を開ける。その後は、ダブル・ベースやギターの艶めかしいフレーズが続くと、ヴィブラフォンやキーボード、ホーン・セクションなど、次々と色々な楽器が加わっていき、中盤からは、ストリングスやコーラスなども入り、まるでクラシック音楽の交響曲のような、雄大でロマンティックな演奏が展開される。

しかし、後半に入るとサックス、ドラム、ベースを軸にした、所謂ステレオタイプの「モダン・ジャズ」に近いスタイルの演奏を挟み、再び壮大なオーケストラへ。その後も、ベースやストリングスのソロ(ストリングスは複数なので厳密には「ソロ」ではないが)へと続き、エレキ・ギターVSストリングスの演奏バトルや、彼らの演奏に絡みつくコーラスなど、音と音が混ざり合ったバロック絵画のように鮮やかで躍動感たっぷりの演奏で幕を閉じる。

彼の新作を聴いた後に、真っ先に思い出したのはアリス・コルトレーンの『World Galaxy』やファラオ・サンダースの『Karma』のような、70年代前後にリリースされたジャズのレコードだ。ストリングスやコーラスといった、ジャズの世界ではあまり使われない楽器を加え、大人数で録音。レコード盤の片面をフルに使った、ジョン・コルトレーンの『Om』や、ファラオ・サンダースの『Black Unity』のように、収録曲を絞り、1曲でアルバム1枚分の起承転結を表現する。カマシの演奏からは、彼らの影響を強く感じた。

おそらく、本作の背景には、サンプリング文化や、レアグルーヴ・ムーヴメント、彼を取り巻く環境(『The Epic』を配給したブレインフィーダーの主催者、フライング・ロータスはジョンとアリスの甥だ)など、色々な要素があると思う。だが、一番大きいのは、物心がついたころからヒップホップやR&B、エレクトロ・ミュージックが身近にある現代のミュージシャンにとって、ソウル・ミュージックやアフリカ音楽を包括した彼らの音楽は、親しみやすく、刺激的だったのだと思う。

ヒップホップなどを聴いて育った新しい世代が、フリー・ジャズやソウル・ジャズを自分の時代に合わせてアップトゥデイトした演奏が繰り広げた、壮大かつ刺激的な作品。この録音が気に入った人は、ぜひ往年のジャズのレコード(できれば『Impulse!』のロゴが入ったもの)を手に取って欲しい。今から40年近く前に、ソウルやファンク、アフリカ音楽などが入り混じった複雑なのにキャッチー、緻密なのにダイナミックな音楽を作り上げた人々がいたことに驚かされると思う。

Producer
Kamasi Washington

Track List
1. The Truth



Ycee - First Wave Ep [2017 Tinny Entertainment, Sony Music]

ナイジェリアのラゴス州にあるフェスタック・タウン出身。2015年に発表した、パトランキングをフィーチャーした配信限定のシングル『Condo』がヒット。ナイジェリア・エンターテイメント・アワードにもノミネートしたことで一気に知名度を高めた、ラッパーでソングライターの、ワイシーことオルデミラド・マーティン・アレージョ。

そんな彼が現在も所属する、ナイジェリアのタイニー・エンターテイメントと契約したのは2012年。だが、その頃は大学生だった彼は、音楽活動と学業(海洋生物学を専攻していた)を両立するため、積極的な活動は控えていた。しかし、大学を卒業すると、音楽活動を本格的に開始。2015年には『Condo』や『Jagaban』などが立て続けにヒットさせると、アフロ・ビートとトラップ・ミュージックの要素を融合した独特の音楽性で、人気ミュージシャンの仲間入りを果たした。

今回のアルバムは、2016年に契約したソニー・ミュージック・エンターテイメント(厳密には南アフリカに拠点を置くソニー・ミュージック・エンターテイメント・アフリカ)から発売された、彼にとって初のEP。本作では、彼とのコラボレーション経験もある、ナイジェリアの総合音楽レーベル、マーヴィン・レコード所属のプロデューサーやミュージシャンが多数参加した、本格的なナイジェリアの国産ヒップホップ作品になっている。

肝心のアルバムの中身はというと、まず、このアルバムを手にした人に、最初に聴いてほしいのがカリブリを起用した”Kill Nobody”だ。色々な音色の打楽器が絡み合う複雑で陽気なビートと、アフリカの民族音楽を思い起こさせる、伸び伸びとしたヴォーカルが印象的なアップ・ナンバー。アフリカ音楽や中南米音楽とアメリカのブラック・ミュージックを融合させたミュージシャンには、エイコンやワイクリフ・ジョンなど、多くの成功者がいるので、このアルバムもアメリカのヒップホップに馴染んだ人々に受け入れられると思う。

これに対し、同郷のシンガー・ソングライター、リーカド・バンクスをフィーチャーした”Link Up”は、パーカッションを多用した陽気なビートにファーサイドの”Passin' Me By”から引用したと思われる、シンセサイザーの伴奏を取り込んだ、ナイジェリア風のヒップホップ。軽快なビートに乗せて言葉を放った結果、歌なのかラップなのか判別不能な独特の音楽になっている点は面白い。

だが、今回のアルバムの核になる曲といえば、マリーク・ベリーをフィーチャーした”Juice”だろう。アデイがプロデュースしたこの曲は、シンプルなバスドラムの上に、パーカッションやハンドクラップをちりばめたソカっぽいトラックを採用。その上で、地声で歌うワイシーとオートチューンを使った個性的な声のマリークが絡み合うパフォーマンスが聴きどころだ。

そして、本作でも異色の楽曲だと思われるのが、女性シンガーのセイ・シャイをフィーチャーしたミディアム・バラード”Need To Know ”だ。R.ケリーの”Trapped in the Closet ”を彷彿させる、ミュージカル向けのシンプルなビートに乗せて、寸劇のような掛け合いを聴かせる面白い曲だ。セイ・シャイの歌声がブランディやタミアのような90年代から活躍するR&Bシンガーのスタイルにちょっと似ている点は見逃せない。

彼自身がインタビューで述べている通り、彼の音楽はリル・ウェインやケンドリック・ラマー、ビッグ・ショーンといった、メロディのついたフロウがウリのラッパーのスタイルを取り入れつつ、イギリスで流行しているグライムやアメリカ南部のクリエイターが得意とするトラップのような、電子楽器を使った変則ビートとアフロ・ビートを融合した、軽妙だが一癖も二癖もあるトラックのコンビネーションが大きな特徴だ。その中でも、アフロ・ビートの要素が本作の胆で、ビートに独特のうねりと起伏を与えて、歌うようにラップする彼のスタイルを際立たせている。

ナイジェリア発の実力派ラッパーに留まらず、ヴォーカル曲とラップ作品を同時にこなす、ポスト・ドレイクの有力候補になりそうな逸材。Okayプレイヤーのホームページでも大々的に紹介されているので、近い将来、世界的なヒット曲を生み出すことも夢ではないと思う。

Producer
Adey etc

Tracklist
1. Wavy
2. Kill Nobody feat. Calibri
3. Link Up feat. Reekado Banks
4. Juice feat. Maleek Berry
5. Bubbly feat. Falz
6. Don’t Need Bae
7. Need To Know feat. Seyi Shay
8. N.O.U.N feat. KLY




※各種配信サービスへのリンクは、レコード会社の特設サイトを参照
https://sonymusicafrica.lnk.to/YceeFirstWaveEP
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