ブラック・ミュージック千本ノック~SoulとR&Bと色々な音楽~

管理人が手に入れたR&Bのアルバム、1000枚の紹介文を書き続けるブログ その先に見えるものは天国か地獄か・・・

韓国

Minzy - Minzy Work 01 Uno [2017 Music Works, Sony Music Korea]

2009年に、15歳の若さでYGエンターテイメント発の4人組ガールズ・グループ、2NE1(トゥエニー・ワン)の最年少メンバーとしてデビュー。後にビッグバンのヒット曲を数多く手掛ける1TYME(ワン・タイム)のテディ・パクと、ビッグバンの中心人物G-ドラゴンのバックアップを受けた、本格的な女性R&Bグループとして、”I Am the Best”や”Ugly”などのヒット曲と、2枚のフル・アルバムを残した。また、2012年にはニューヨークやロス・アンジェルス、シンガポールを含むワールド・ツアーも行っている。

しかし2014年頃から活動が停滞。彼女自身も2016年にグループを脱退、YGエンターテイメントを離れる。

今回のアルバムは、新しい事務所、ミュージック・ワークスに移籍して初めての録音作品。同社では、アーティストとしての活動だけでなく、若手(といっても彼女自身も20代前半だが)の教育係や楽曲制作も担当し、多くの経験を積んで実力を蓄えてきた彼女。この作品では、スーパードッグやグルーヴィールームのような韓国のプロデューサーのほか、ステレオタイプスやメラニー・フォンタナといったアメリカのプロデューサーを起用し。グループ時代と変わらない尖ったR&Bを聴かせている。

アルバムの1曲目に収められている、本作からのリード・シングル”Ninano”は、アジア系アメリカ人によるラップ・グループ、アジアチックスの元メンバーである韓国系アメリカ人のラッパー、フロウシックをフィーチャーしたダンス・ナンバー。リアーナのデビュー曲”Pon de Replay”を思い起こさせるダンスホール・レゲエの要素を大胆に取り入れた躍動感溢れる曲。フロウシックの荒々しいラップも格好良い。アルバムの最後に収められている同曲の英語版でも、韓国語版と変わらないラップを聴かせる彼のスキルは、もっと注目されてもいいのではないか。

これに対し、2曲目の”Superwoman”は、シンセサイザーを多用したスタイリッシュなトラックと、流麗なメロディ、韓国や日本のポップスのような起承転結がはっきりとした展開が光るミディアム・ナンバー。2000年代初頭に、アシャンティの”Foolish”やアッシャーの”U Remind Me”などに夢中になった人は、きっと好きになると思う。

そして、本作の隠れた目玉が、ジャスティン・ビーバーの”Somebody To Love”や、ブルーノ・マーズの”24K”など、多くのヒット曲にその名を刻んできた(余談だが、赤西仁の”Sun Burns Down”も彼らの作品だ)人気プロダクション・チーム、ステレオ・タイプスと制作した”Ing”だ。”Ninano”同様、ダンスホール・レゲエのエッセンスを取り込み、電子音をふんだんに使ったトラックと、彼女の色っぽい歌声を引き出したメロディが、イギー・アゼリアやクリス・ブラウンを連想させる佳曲。彼女や赤西以外にも、BoAやEXO、元レーベル・メイトのセブンなど、多くのアジア人ミュージシャンに曲を提供してきた彼らだからできる、外国人シンガーの持ち味を引き出しつつ、アメリカのダンス・ミュージックと融合した曲だ。

また、元2PMのジェイ・パクがラップで参加した”Flashlight”はスーパードッグがプロデュースしたミディアム・ナンバー。”Superwoman”のテンポを落とし、甘くロマンティックに仕立て直したような曲だ。ジェイ・パクもフロウシック同様、アメリカ出身だけあって、彼女の繊細なヴォーカルを引き立てるラップの技術には確かなものがある。

これ以外に、本作で唯一のスロー・ナンバー”Beautiful Lie”は、ピアノっぽい音色をバックにじっくりと歌うスロー・バラード。アメリカのR&Bを意識したダンス・ナンバーが中心のアルバムでは珍しい、ドラマなどの主題歌でよく耳にするタイプの、韓国のポップスの王道を行くバラードだ。

今回のアルバムは、韓国の3大事務所の一つであるYGエンターテイメントを離れ、新天地から発表したソロ・デビュー作だが、本人のパフォーマンスはグループ時代よりも磨きがかかっている。また、楽曲制作にアメリカのクリエイターを積極的に起用するなど、同国の他の女性シンガーの曲に比べると、欧米のR&Bに近い印象を受ける。だが、その一方で、アメリカの音楽をキャッチ・アップしようとする余り、新鮮さに乏しい、どこかで聞いたような作品になっているようにも映った。

とはいえ、アメリカの流行をしっかりと分析し、自分の音楽の糧にした貪欲さと作品のクオリティは目を見張るものがある。5年後、10年後にどんなアーティストに成長しているか、今から楽しみになるデビュー作だ。

Producer
Superdog, Michel 'Lindgren' Schulz, Jon Asher, Stereotypes, GroovyRoom

Track Lust
1. Ninano feat. Flowsik
2. Superwoman
3. ING
4. Flashlight feat. Jay Park
5. Beautiful Lie
6. Ninano (English Rap Ver.) feat. Flowsik







BTS - You Never Walk Alone [2017 Big Hit Entertainment]

2017年4月に、ユニヴァーサル傘下のデフ・ジャム・ジャパンと契約を結び、多くの人を驚かせた韓国出身の6人組ダンス・ヴォーカル・グループ、BTS(漢字圏の地域では「防弾少年団」表記)。彼らが2016年にリリースした、3枚目のフル・アルバム『Wings』に、ボーナス・トラックを追加した4枚目のアルバム。

2011年に結成。動画投稿サイトや音楽ストリーミング・サイトに作品を投稿したり、先輩グループのバック・ダンサーを務めるなど、地道な下積みを経た後、アルバム『2 COOL 4 SKOOL』でレコード・デビュー。同年には、韓国の音楽シーンでは異例ともいえる、小規模事務所発のグループによる新人賞の獲得という記録を残した。

その後も、順風満帆とはいえない環境の中で、地道にライブや新曲発表を重ね、2015年にはEP『The Most Beautiful Moment In Life 』(漢字圏では『花様年華』)シリーズで本格的にブレイク。2016年には、本作にも収録されている”Blood Sweat & Tears”(邦題は”血汗涙”)を発表。公開から約半年で再生回数が1億回を超え、複数の国でヒット・チャートに名を刻む大ヒットとなった。また、同曲を収めたアルバム『WINGS』がビルボード総合チャートの25位になる大躍進を見せた。

彼らの代表曲となった”Blood Sweat & Tears”は、グループの楽曲を数多く手掛けているPドッグとメンバー自身のペンによる作品。アリーヤの”Rock The Boat”やR.ケリーの”Loveland”を彷彿させる、浮遊感のあるトラックと、ファルセットを多用したセクシーなパフォーマンスが光る楽曲。線の細い高音はファレル・ウィリアムズにも似ているが、どちらかといえばマーカス・ヒューストンやトレイ・ソングスなどの、色っぽいヴォーカルをウリにする歌手が好きな人向けの曲だ。

一方、もう一つのシングル曲”Not Today”は、荒々しいシンセサイザーのリフが印象的なダンス・ポップ。こちらは、王道のK-Popが好きな人向けの曲っぽい。余談だが、廃工場や荒野でメンバーが忍者とダンスをするMVは、外国人の抱く日本文化のイメージが垣間見れて面白い。

また、それ以外のアルバム曲では、トリッキー・ステュアートがプロデュースした”BTS Cypher Pt. 4”が光っている。アッシャーの”Bump”やマライア・キャリーの”Touch My Body”などを手がけてきた彼らしい、艶めかしい音色を使ったトラックと、ヴォーカルの色気を引き出すメロディが魅力のスロー・ナンバー。ラップ担当の3人が、ドレイクを思い起こさせるメロディのあるフロウを聴かせているので、ぜひ注目してほしい。

それ以外にも、Vのソロ曲”Stigma”などは、R&Bが好きな人には見逃せない曲だ。ピアノやホーンを使った太く温かい音色の伴奏に乗せて、ゆったりと歌う姿が印象的な、ロマンティックなミディアム・バラード。ファルセットを効果的に使った、繊細で色っぽいヴォーカルも魅力的。日本のミュージシャンにも似たようなスタイルの楽曲はあるが、ディアンジェロの”Brown Sugar”やマックスウェルの”Fortunate”を彷彿させる、ソウル・ミュージックの要素を取り込んだR&Bを、ダンス。ヴォーカル・グループのメンバーのソロ曲に選ぶセンスは大胆だと思う。

そして、本作で異彩を放っているのが、サウス・ロス・アンジェルス出身で3回もグラミー賞を獲得しているブルース・シンガー”Am I Wrong”のカヴァーだ。ケブ・モー本人もプロデューサーに名を連ねたトラックは、ブルースハープが乱れ飛び、ハンドクラップが心掻き立てる、激しいビートのアップ・ナンバー。ダンスホール・レゲエの影響を伺わせる、跳ねるようなビートと、彼の声をサンプリングしたフレーズが、ブルースの泥臭さを、10代から20代の若者をターゲットにした、ダンス・ミュージックと融合するのに一役買っている。この曲を通して、ケブ・モーの存在が各国の若者に知れ渡ったら、面白いことになりそうだ。

元々、韓国出身のミュージシャンは、アメリカのヒップホップやR&Bを取り入れた作品が多いが、彼らの音楽は、その傾向が極端なように映る。彼らより前に成功した2PMやビッグバンであれば、前者はアジアのポップスの影響を残していたし、ビッグバンはEDMの要素を前面に打ち出していた。そんな、「アジアのアッシャー」「アジアのクリス・ブラウン」に厳しい評価を下すことの多い海外市場で、あえてアメリカのR&Bを韓国語に置き換えたスタイルで挑み、一定の成果を上げた彼らの存在は、非常に興味深い。

ザイオンTの作品でも書いたことだが、言語や体型、習慣が異なるアジア出身の歌手が、欧米のR&Bを取り込むことは簡単ではない。その中で、アメリカのトレンドをそのまま取り入れるという大胆な手法で、R&Bを自分の音楽に昇華し、ヒットチャートで戦える曲に落とし込んでいった点はもっと評価されてもいいと思う。アジア地域のポップスの常識を書き換えた野心的なアルバムを残してきた彼ら。今後の展開が今から楽しみだ。

Producer
Pdogg, BTS

Track List
1. Intro: Boy Meets Evil
2. Blood Sweat & Tears
3. Begin (Jungkook solo)
4. Lie (Jimin solo)
5. Stigma (V solo)
6. First Love (Suga solo)
7. Reflection (Rap Monster solo)
8. MAMA (J-Hope solo)
9. Awake (Jin solo)
10. Lost
11. BTS Cypher Pt. 4
12. Am I Wrong (Keb' Mo' sample/cover)
13. 21st Century Girls
14. Two! Three! (Still Wishing There Will Be Better Days)
15. Interlude: Wings
15. Spring Day
16. Not Today
17. Outro: Wings
18. A Supplementary Story: You Never Walk Alone






Zion. T - OO [2017 BLACK LABEL, YG ENTERTAINMENT]

2011年にシングル『Click Me』でデビュー。その後、2013年にリリースしたアルバム『Red Light』が国内チャートで最高4位を獲得、2014年にはコリアン・ミュージック・アワードの最優秀R&B、ソウル・アルバム賞を獲得した韓国出身のシンガー・ソングライター、ザイオンTことキム・ヘソル。彼がデビュー以来契約していたアモエバ・ミュージック(アメリカにある同名のレコード・ストアとは無関係)からYG傘下のブラック・レーベルに移籍後、初めてのアルバムとなる8曲入り(うち1曲はインストゥルメンタル)のEPを、自身のプロデュースで発表した。

本作を配給しているYGエンターテイメントといえば、これまでにも”江南スタイル”を流行させたPSYや、アジア人初のウェンブリー・アリーナ公演を含む複数回の海外ツアーを行っているBIGBANG(余談だが、メンバーのG-Dragonもアジア人のソロ・アーティストでは同会場初となる公演を行っている)、2017年初頭に発表されたガラントとのコラボレーション・シングル『Cave Me In』が話題になったタブロの所属するエピック・ハイ(ただし、彼らは他社からの移籍組)など、海外、特にアメリカやヨーロッパの市場に強いレーベル。また、彼が所属する同社傘下のブラック・レーベルを率いるプロデューサー、テディ・パクも、EDMの要素を取り入れたBIGBANGの”Fantastic Baby”や、グウェン・ステファニを彷彿させるポップスと電子音楽を融合させたサウンドが印象的な2NE1の”Lollipop”を手掛けるなど、欧米のポップスへの造詣が深いことで知られている。だが、今回のアルバムでは、YGが得意とするEDMやトラップの要素は抑えられ、ザイオンの歌唱力にスポットを当てた作品で勝負している。

アルバムの1曲目”Cinema”は、ボサノヴァの要素を取り入れた、繊細なギターの音色と物悲しいメロディが光るミディアム・ナンバー。アメリカのR&Bと比べると抑え気味、だがボサノバやジャズに比べると太く重いベースが生み出すダイナミックなグルーヴが心地よい楽曲。同様の路線は”The Bad Guy”でも垣間見えるが、こちらは、テイ・トウワの”甘い生活”を連想させる、ムード歌謡(韓国ではなんと分類されているのだろうか)っぽい、妖艶なメロディを混ぜ込んだミディアムだ。

続く”The Song”は、ピアノっぽい音色のキーボードの演奏をバックに、じっくりと歌い込むミディアム・バラード。流れるようなメロディは彼の爽やかな歌声と相性が良いと思う。個人的な印象だが、三浦大知が歌いそうな、スタイリッシュで洗練された雰囲気の佳曲だ。余談だが、G-Dragonが参加した”Complex”ではなく、この曲をシングル・カットしたあたりに、彼の本作に賭ける意気込みと自身を伺わせる。

それ以外の曲では、ラッパーが参加した2曲”Sorry”と”Complex”も捨てがたい良曲だ。

『Red Light』に収録されている”She”でも競演しているソウル出身のラッパー、ベンジーノとコラボレーションした前者は、乾いた音色のギターと、古いレコードからサンプリングしたような温かいドラム音を使ったヒップホップのビートが印象的なミディアム・ナンバー。ヒップホップのトラックを使った曲は過去にも録音しているが、生楽器やそれっぽい音色を多用したトラックは彼の曲では珍しい。間奏がジャネット・ジャクソンの”That’s The Way Love Goes”に少し似ているのは、作者の遊び心だろうか?

そして、本作の隠れた目玉ともいえる”Complex”は、BIGBANGのG-Dragonをフィーチャーしたミディアム・ナンバー。両者のコラボレーションはG-Dragonのアルバム『Coup d'Etat』に収録されている”I Love It”以来だが、楽曲提供やコラボレーションの経験が豊富な二人だけあって、今回も両者の個性が上手く混ざり合った楽曲に落とし込まれている。キーボードの伴奏をバックにしんみりと歌うザイオンと、肩の力を抜いて語り掛けるように言葉を紡ぐDragonのラップは、これまでの2人の作品ではあまり見られなかったスタイルだが、しっかりと自分達の表現に取り込めているように映った。

今回のアルバムは、”Fantastic Baby”や”Lollipop”に代表される”Kポップらしい”楽曲や、ウィークエンドやドレイクといったアメリカの人気シンガーのスタイルをアジア人向けに翻訳した音楽を期待する人には、ちょっと期待外れの作品かもしれない。事実、この文章を書いてる時点では、ヒット・チャートなどを見る限り、本国や日本を含むアジア諸国よりも、アメリカなどの欧米地域での評価が高いようだ。だが、低音を絞り、楽器やヴォーカルの響きまで効果的に使った録音は、近年のR&Bやヒップホップに多大な影響を与えているオルタナティブ・ロックやフォーク・ソングの手法を意識しつつ、それを声が細く、繊細な表現が得意なアジア人歌手に合わせて咀嚼したもので、欧米の音楽を意識しながら発展してきたKポップの歴史をきちんと踏襲しているように見える。

日本人の自分の耳には、90年代の日本で流行し、海外でも一部の熱狂的なファンを生み出した、渋谷系のリメイクのように聴こえて面白いと思った一方、その価値や手法を海外のミュージシャンに発掘、活用されてしまったのがちょっと残念に思えてしまった。本作のようなスタイルが今後も続くとは思わないが、アジアから欧米のポップス市場に打って出る戦略の一つとして、非常に新鮮な作品だと思った。

Producer
Zion.T, Peejay

Track List
1. Cinema
2. The Song
3. Comedian
4. Sorry feat. Beenzino
5. The Bad Guys
6. Complex feat. G-Dragon
7. Wishess
8. Cinema (Instrumental)





Zion.T アルバム - OO
Zion.T
YG Entertainment
2017-02-17

 
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