ブラック・ミュージック千本ノック~SoulとR&Bと色々な音楽~

管理人が手に入れたR&Bのアルバム、1000枚の紹介文を書き続けるブログ その先に見えるものは天国か地獄か・・・

Atlantic

Bruno Mars - Finesse(Remix) feat. Cardi B [2018 Atlantic]

本作に収録されている”24K Magic”や”That's What I Like”が立て続けにヒットし、2016年11月にリリースされた作品ながら、ケンドリック・ラマーの『DAMN.』に続く、2017年にアメリカで2番目に売れたアルバムとなったブルーノ・マーズの『24K Magic』。次々と新作が発表されるアメリカの音楽市場で、長く親しまれる作品となったこのアルバムから、新たにシングル化されたのが、この”Finesse”だ。

ブルーノが率いるプロダクション・チーム、シャンプー・プレス&カールとステレオタイプスがプロデュースしたこの曲は、ガイやベル・ビヴ・デヴォーなどを思い起こさせる、跳ねるようなビートと電子楽器の音色が格好良い、90年代初頭に流行したR&Bのスタイル、ニュー・ジャック・スウィングを連想させる、軽快なトラックとキャッチーなメロディが光るダンス・ナンバー。今回のリミックス版では、原曲のトラックやメロディは大きく弄らず、2017年のシングル”Bodak Yellow”がローリン・ヒル以来、約20年ぶりとなる女性ラッパーによる全米ナンバー・ワン・ヒットとなった、カルディBのパフォーマンスを加えたものになっている。

カルディBといえば、男性顔負けのハードなラップが持ち味。だが、この曲では彼女のアグレッシブな側面は残しつつ、ニュー・ジャック・スウィングを意識したビートに合わせ、リスナーを煽って見せるなど、いつもより軽やかで表情豊かな一面を見せている。また、そんな彼女のラップと呼応するように、ブルーノもしなやかで色っぽいヴォーカルを聴かせている。この曲で聴けるパンチの効いたラップとダイナミックなヴォーカルの組み合わせは、斬新なサウンドと、それに負けないパワフルなパフォーマンスで、多くの人の度肝を抜いた、デビュー当時のガイを思い起こさせるものだ。

この曲は、彼が『24K Magic』で見せた、80年代終盤から90年代初頭に流行したR&Bへの、強い傾倒を象徴する作品の一つだ。しかし、この曲が単なる当時の音楽の焼き直しに終わらないのは、共同制作者であるステレオタイプスの豊かな経験による部分が大きい。彼らはジェイソン・デルーロやオマリオンなどの作品を手掛ける一方、韓国のSHINeeやEXO、日本の赤西仁といった、アジアで絶大な人気を誇るミュージシャン達と多くの楽曲を作ってきた。テディ・ライリーがEXOに楽曲を提供し、ゴスペラーズや三代目J Soul Brothersなどがニュー・ジャック・スウィングの手法を取り入れた楽曲を発表するなど、現在も80年代や90年代に流行したスタイルのR&B作品がヒットしているアジアでの経験が、彼らの音楽を単なる当時のリメイクでは終わらない、現代の若いリスナーに向けた新鮮な作品にしていると思う。

各地の文化に合わせ、色々なスタイルの音楽が生まれ、他の地域に波及している2010年代を象徴するようなヒット曲。日本のリスナーには懐かしさすら感じさせるサウンドとメロディが心に残る良質なリミックスだ。

Producer
Shampoo Press & Curl, The Stereotypes

Track List
1. Finesse(Remix) feat. Cardi B




K. Michelle - Kimberly: The People I Used to Know [2017 Atlantic]

ヒップホップやエレクトロ・ミュージックに歩み寄ったサウンドと、歌とラップを混ぜ合わせた歌唱スタイルが流行の中心になっている、2010年代のR&Bシーン。その中で、流行りの音と適度に距離を置き、自身のスタイルを貫くことで存在感を発揮しているのが、K.ミッチェルこと、キンバリー・ミッチェル・ペイトだ。

テネシー州のメンフィスで生まれ育った彼女は、幼いころからギターやピアノに慣れ親しみ、ジャスティン・ティンバーレイクやブリトニー・スピアーズも指導したというトレーナーの下で、ヴォーカルの腕を磨いてきた実力派。

その後、フロリダの大学に進み、子育て期間を経て卒業した彼女は、ロースクールに進学しながら音楽活動を開始。2009年にジャイヴと契約すると、ミッシー・エリオットを招いた”Fakin’ It”でメジャー・デビューを果たす。また、2011年にはミッシーのほか、R.ケリーやアッシャーが参加した初のフル・アルバム『Pain Medicine』を録音するが、諸事情によりお蔵入り。ジャイヴから離れることになる。

そんな彼女は、VH1のリアリティー・ショーに出演したことから注目を集め、アトランティックと契約。2013年に初のフル・アルバム『Rebellious Soul』を発表すると、総合アルバム・チャートの2位、年間アルバム・チャートの167位という新人としては異例のヒット。その後も、2014年の『Anybody Wanna Buy a Heart?』や2016年の『More Issues Than Vogue』が商業的な成功を収め、賞レースの常連に名を連ねるなど、スターダムを駆け上がっていった。

このアルバムは、そんな彼女にとって約1年ぶり、通算4枚目となる新作。ほぼすべての曲で彼女がペンを執る一方、リル・ロニーやチャック・ハーモニーといった、主役の声を引き立てる美しいヴォーカル作品に定評のあるクリエイターが多数参加。現代では希少なものになった、本格的なR&B作品に仕上がっている。

アルバムに先駆けて公開された”Make This Song Cry”は、ジェイZの”Song Cry”をサンプリングしたミディアム・バラード。今も多くの人に親しまれている、彼の代表曲のフレーズに乗って、切々と言葉を紡ぐ彼女の姿が印象的な曲だ。有名名曲をサンプリングした作品には、原曲のイメージに縛られたものや、原曲の持ち味を壊してしまうものも少なくないが、この曲では元ネタの持ち味を残しつつ、本格的なソウル・バラードに換骨奪胎している。

また、クリス・ブラウンをフィーチャーした”Either Way ”は、シャンテ・ムーアやリル・モーを手掛けているダニエル・ブライアントが制作に参加したミディアム・ナンバー。おどろおどろしいストリングスの音色と、キンバリーのパワフルなヴォーカルが光る佳曲だ。メロディの部分で聴ける彼女のラップにも注目してほしい。

そして、同曲に続く”Birthday”は、シカゴ出身のプロデューサー、ヒットメイクを起用したバラード。シンセサイザーの音色を組み合わせ、ヒップホップのエッセンスを盛り込んだバック・トラックは、R.ケリーやメアリーJ.ブライジを彷彿させる。そんなトラックの上で、緩急織り交ぜたダイナミックな歌唱を聴かせる姿は、往年のチャカ・カーンやミリー・ジャクソンを思い起こさせる。電子楽器を多用した現代的なサウンドを取り入れつつ、歌唱力で勝負した異色の作品だ。

それ以外の曲では、マイケル・ジャクソンやマライア・キャリーなどに楽曲を提供しているロドニー・ジャーキンスと作った”Woman of My Word”の存在が光っている。ゴスペルのコール&レスポンスを思い起こさせる、ダイナミックなグルーヴに乗せて、パワフルな歌声を披露した雄大なバラード。現代的なヒップホップやR&Bの仕事が多いロドニーだが、この曲のようなヴォーカルで勝負するタイプの作品でも実力を発揮している。

本作の聴きどころは、随所で現代のR&Bの要素を取り入れつつ、あくまでも歌で勝負したところだろう。メアリーJ.ブライジやビヨンセなど、実力と人気を兼ね備えたシンガーは少なくないが、歌を強調したある意味保守的な作風で、高いクオリティの作品を残せる歌手はとても貴重だ。この、豊かな歌声と、それをコントロールする技術、歌の才能を活かす楽曲作りの才能は、アレサ・フランクリンのような、歴代の名歌手の流れを踏襲したものだが、尖った音が求められる現代では異色ではかえって新鮮に聴こえる。

現代では希少な、「歌」を存分に味わえる名シンガー。新しい音に抵抗感のある人にこそ聴いてほしい、大胆な表現と安定したパフォーマンスが光る名盤だ。

Producer
DJ Camper, Lil' Ronnie, Hitmaka, Louis Biancaniello, Darkchild etc

Track List
1. Welcome to the people I used to know
2. Alert
3. God, Love, Sex, and Drugs
4. Make This Song Cry
5. Crazy Like You
6. Kim K
7. Takes Two feat. Jeremih
8. Rounds
9. Either Way feat. Chris Brown
10. Birthday
11. Fuck Your Man (Interlude)
12. No Not You
13. Giving Up On Love
14. Help Me Grow (Interlude)
15. Heaven
16. Run Don't Walk
17. Industry Suicide (Interlude)
18. Talk To God
19. Brain On Love
20. Woman of My Word
21. Outro





Kimberly: People I Used to Know
K. Michelle
Atlantic
2017-12-15

Ty Dolla Sign - Beach House 3 [2017 Hunnid, Taylor Gang, Atlantic]

2010年にYGの”Toot It and Boot It”にフィーチャーされたことで注目を集め、2012年にアトランティックと契約すると、同年にデビュー作となるミックス・テープ『Beach House』を発表。その後も多くのミックス・テープやシングルをリリースして、リスナーの耳目を惹きつけてきたカリフォルニア州サウス・ロス・アンジェルス出身のミュージシャン、タイ・ダラ・サインことタイロン・ウィリアム・グリフィンJr.。

父親はファンク・バンドのレイクサイドのメンバーだったという彼は、若いころはギャングのグループに入るなど、やんちゃな経歴を重ねてきたという。しかし、音楽に興味を持つようになると、次々に技術を習得。最後には自身の手でトラック制作からラップまで、一通りこなせるようになった。

そんな彼は、2015年に初のフル・アルバム『Free TC 』を発表。翌年にはフィフス・ハーモニーの”Work from Home”に参加し、多くの音楽賞を獲得。人気ミュージシャンの仲間入りを果たした。

本作は、彼にとって2年ぶり2枚目のフル・アルバム。前作に引き続き、アトランティックが配給を担当。プロデューサーにはマイク・ウィル・メイド・イットファレル・ウィリアムスといった売れっ子が参加。ゲスト・ミュージシャンとしてリル・ウェインやウィズ・カリファ、スクリレックスやダミアン・マーレイといった多彩な面々が顔を揃えた、豪華な作品になっている。

アルバムに先駆けてリリースされた”Love U Better”は、DJマスタードがプロデュースを担当、リル・ウェインとザ・ドリームをフィーチャーした作品。シンセサイザーを駆使した軽妙なビートと、二人の軽やかなラップの組み合わせが光る良曲だ。サビの部分を担当する、ザ・ドリームの甘酸っぱい歌声が、楽曲の爽やかな雰囲気を盛り上げている。

これに対し、ブレイクのきっかけとなった恩人YGを招いた”Ex”は、バッド・ボーイ発の男性ヴォーカル・グループ、112が96年に発表した大ヒット曲”Only You”のベース・ラインをサンプリングした(ヴォーン・メイソン・クルーの”Bounce, Rock, Skate, Roll”を再引用した)トラックが格好良いアップ・ナンバー。ビッグ・ショーンやオマリオンに楽曲を提供してきた、L&Fのボンゴ・バイ・ザ・ウェイが作ったトラックはダンス・ミュージックの古典を大胆に引用したものだが、シンセサイザーやリズム・マシーンを使った音楽が主流になった2017年には新鮮に映るから不思議だ。

また、マイク・ウィル・メイド・イットがプロデュースした”Dawsin’s Breek”は、シカゴ出身のシンガー・ソングライター、ジェレミーを起用したミディアム・ナンバー。重いドラムと、チキチキというハットの音を強調したトラップのビートの上で、個性豊かなラップを披露した面白い作品だ。重厚なビートに合わせて、音数を絞ったライムと、所々にメロディのついたフレーズを盛り込んだ器用なラップを披露する二人の姿が印象的だ。歌とラップを使う分けるスタイルがウリの、二人の持ち味が発揮されている。

そして、本作の収録曲でも異彩を放っているのがスクリレックスが制作に携わり、彼とダミアン・マーレイが客演した”So Am I”、EDM畑出身のクリエイターながら、ダミアン・マーレイ以外にも、ザ・ドアーズのメンバーやビッグバンのG-ドラゴンスヌープ・ドッグなど、様々なジャンルのミュージシャンとコラボレーションしてきたスクリレックスが作ったビートは、ゆったりとしたテンポのバス・ドラムの上に、パーカッションの音色を盛り込んだ、レゲエとヒップホップを混ぜ合わせたようなもの。温かい歌声でヴォーカルとラガマフィンを使い分けるダミアンを軸に据えた作品だ。普段はヒップホップをベースにしたパフォーマンスを披露することが多い、タイ・ダラ・サインとスクリレックスがレゲエの手法に挑戦した点も面白い。

今回のアルバムは、流行のサウンドを乗りこなしてきた彼らしい、新鮮さと親しみやすさが両立された佳作だ。個性豊かなプロデューサー達が作る多彩なトラックをきちんと乗りこなしつつ、硬派なイメージと大衆性を両立できるのは、地道な活動で鍛え上げた彼の高いスキルのおかげだろう。

次々と新しいスタイルが生まれ、消えゆくヒップホップ・シーンの中で、ゲームのルールに適応しつつ、独自性を発揮したタイ・ダラ・サインの高い技術が発揮された良質なアルバム。「2017年のヒップホップ」を1枚のCDに凝縮したような、充実した内容の作品だと思う。

Producer
Ty Dolla Sign, DJ Mustard, Mike Will Made It, Pharrell Williams, Skrillex, Poo Bear etc

Track List
1. Famous
2. Famous Lies
3. Love U Better feat. Lil Wayne & The-Dream
4. Ex feat. YG
5. Famous Excuses
6. Droptop In The Rain feat. Tory Lanez
7. Don’t Judge Me feat. Future & Swae Lee
8. Dawsin’s Breek feat.. Jeremih
9. Don’t Sleep On Me feat. Future & 24hrs
10. Stare feat. Pharrell Williams & Wiz Khalifa
11. Famous Friends
12. So Am I feat. Damian Marley & Skrillex
13. Lil Favorite feat. Madeintyo
14. In Your Phone with Lauren Jauregui
15. All The Time
16. Famous Amy
17. Side Effects
18. Famous Last Words
19. Message In A Bottle
20. Nate Howard Intro





Beach House 3
Ty Dolla $Ign
Atlantic
2017-11-07

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