ブラック・ミュージック千本ノック~SoulとR&Bと色々な音楽~

管理人が手に入れたR&Bのアルバム、1000枚の紹介文を書き続けるブログ その先に見えるものは天国か地獄か・・・

BMG

Fergie - Double Dutchess [2017 Duthcess, BMG]

 1995年のメジャー・デビュー以降、親しみやすいメロディとヒップホップのイメージに囚われないバラエティ豊かなサウンドで、多くのファンを獲得してきたブラック・アイド・ピーズ。そんな彼らの転機となった2003年のアルバム『Elephunk』からグループに参加し、楽曲にポップで華やかな雰囲気をもたらしてきた女性シンガーが、ファーギーことステイシー・アン・ファーガソンだ。

カリフォルニア州のハシエンダハイツ出身の彼女は、10代のころから役者としてテレビ番組などに出演。その後、友人とガールズ・グループ、ワイルド・オーキッドを結成し、2枚のアルバムを残している。

ブラック・アイド・ピーズに加入した後は、その可愛らしくて個性的な歌声で存在感を発揮。また、2006年には初のソロ・アルバム『Dutchess』を発表。ブラック・アイド・ピーズの奇抜でキャッチーなサウンドと彼女のキュートなヴォーカルが合わさった作風が評価され、アメリカ国内だけで500万枚以上を売り上げる大ヒット作となった。

このアルバムは、前作から実に12年ぶりとなる2枚目のソロ作品。2015年に活動を再開したブラック・アイド・ピーズのライブには帯同せず、脱退したという噂もあった彼女だが、本作ではバンドの中心人物であるウィル・アイ・アムがプロデューサーとして参加。それ以外にも、DJアモやサーキットといったヒットメイカー達が作家陣に名を連ねている

本作の1曲目は、ザ・ゲームやマシンガン・ケリーなどの作品を手掛けているJPディド・ディス・ワンが制作に参加した”Hungry”。クリス・ブラウンの作品を彷彿させる陰鬱なトラップのビートに乗って、迫力のある歌声を聴かせてくれるミディアム・ナンバー。ラップを担当しているリック・ロスの重い低音が、楽曲の重厚な雰囲気を強調している。

これに対し、ウィル・アイ・アムがプロデュースを担当し、ニッキー・ミナージュをゲストに招いた”You Already Know”は、ヒップホップやエレクトロ・ミュージックとファンクを混ぜ合わせたキャッチーなアップ・ナンバー、多くのヒップホップ・クラシックにサンプリングされているリン・コリンズの”Think”を引用した軽快なビートに乗って、キュートな掛け合いを聴かせてくれるポップな作品だ。軽妙なラップや変幻自在のビートは、ブラック・アイド・ピーズのスタイルにそっくりだ。

また、前作に収録されている彼女の代表曲”London Bridge”を手がけたポロウ・ダ・ドンがプロデュースした”M.I.L.F. $”は、EDMやトラップの要素をふんだんに取り入れた躍動感あふれるサウンドが格好良いダンス・ナンバー。ディプロの音楽を連想させるエレクトロ・ミュージックに傾倒したトラックだが、きっちりと乗りこなしてヒップホップ作品に落とし込めているのは、変則的なビートが多いブラック・アイド・ピーズでの経験の賜物だろうか。

そして、本作の収録曲では最も早い、2014年にリリースされた”L.A.LOVE (la la)”は、ロス・アンジェルス出身のプロデューサー、DJマスタードを起用した作品。シンセサイザーを駆使してエレクトロ・ミュージックやトラップの要素を盛り込んだビートの上で、セクシーだけど荒々しいラップを繰り出すヒップホップ作品になっている。リル・ウェインやフューチャーの音楽を思い起こさせる、硬い音を多用したビートを、キャッチーなヒップホップに聴かせるセンスは流石の一言。絶妙なタイミングで入り込むYGのラップが、楽曲の重々しい雰囲気を引き立てている。

今回のアルバムでは、前作の路線を踏襲しつつ、新しい音を積極的に取り入れた2017年版の『Dutchess』を披露している。ヒップホップ・グループでありながらポップスのトレンドを取り入れてきた。ブラック・アイド・ピーズが飛躍するきっかけを作った彼女だけあって、コアなヒップホップを消化して、誰もが楽しめるポップスに落とし込める技術は群を抜いている。

ライブに俳優活動と、マルチな活躍を見せていた彼女だが、ミュージシャンとしても一線級の存在であることを再確認させてくれる良作。今の彼女がグループに戻ったらどんな化学反応を起こすのか、次の展開が楽しみになる充実の内容だ。

Producer
will.i.am, DJ Ammo, Alesso, Fergie, Cirkut, DJ Mustard etc

Track List
1. Hungry feat. Rick Ross
2. Like It Ain’t Nuttin’
3. You Already Know feat. Nicki Minaj
4. Just Like You
5. A Little Work
6. Life Goes On
7. M.I.L.F. $
8. Save It Til Morning
9. Enchanté (Carine) feat. Axl Jack
10. Tension
11. L.A.LOVE (la la) feat. YG
12. Love Is Blind
13. Love Is Pain






Double Dutchess
Fergie
Bmg
2017-09-22

Leela James - Did It for Love [2017 Shesangz, BMG]

2000年代の初め頃に、プロのミュージシャンとしてのキャリアをスタート。ブラック・アイド・ピーズやメイシー・グレイのライブでオープニング・アクトを務めるなどして経験を積んだ後、2005年にサム・クックの同名曲のカヴァーを含むアルバム『A Change Is Gonna Come』でメジャー・デビュー。60年代のソウル・シンガーを彷彿させる力強いヴォーカルと、ヒップホップの手法を取り込んだバック・トラックを組み合わせた楽曲で、老若男女幅広い世代から注目を集めた、カリフォルニア州ロス・アンジェルス出身のシンガー・ソングライター、リーラ・ジェイムス。

その後も、スタックスやシャナチーといったR&B、ソウル・ミュージックの名門レーベルから、2016年までに通算5枚のアルバムと多くのシングルを発表。その中でも、ジェイムズ・ブラウンやローリング・ストーンズの名曲を歌った2009年の『Let's Do It Again』や、エッタ・ジェイムスの楽曲をカヴァーした2012年の『Loving You More...』などは、原曲を知らない若い世代に、往年の名曲の魅力を知らしめるきっかけになった。

このアルバムは、2014年の『Fall for You』以来、約3年ぶりとなる通算6枚目のフル・アルバム。配給元は前作と同じBMGで、プロデューサーには、BJ ザ・シカゴ・キッドの『In My Mind』など、多くのヒット作を手掛けている、レックス・ライドアウトを中心に多くの実力者が参加。今回も過去の作品同様、グラマラスな歌声と、重厚な伴奏が合わさったダイナミックなソウル・ミュージックを楽しませてくれる。

アルバムの1曲目”Hard For Me”は、シャーリー・マードックなどとも仕事をしているキーボード奏者、イーヴァン・ブリックが制作を担当したスロー・ナンバー。色々な音色のキーボードを組み合わせてた、オーケストラっぽい豪華な伴奏をバックに、艶っぽい歌声を響かせるスロー・ナンバー。エッタ・ジェイムスやアレサ・フランクリンにも見劣りしない迫力と、バーバラ・メイゾンやグラディス・ナイトにも通じるセクシーな歌唱が心地よい佳曲だ。

続く”Don’t Mean A Thang”は、”Hard For Me”にも携わっているカルヴィン・フレイザー(デトロイトのギタリストとは同名の別人と思われる)が手掛けるアップ・ナンバー。ドラムを軸に据えたスタイリッシュなビートに乗せて、妖艶な歌唱を聴かせている。落ち着いた雰囲気の伴奏と流麗なメロディ、ふくよかで色っぽい歌声の組み合わせはクリセット・ミッチェルの人気曲”Like a Dream”を連想させる。

そして、本作の目玉が、シングル化された”Don't Want You Back”だ。彼女とレックスが主導したロマンティックなバラードは、カニエ・ウエストのプロデュース作品を思い起こさせる、ソウル・ミュージックっぽい音色を加工してコラージュしたようなトラックに乗せ、派手ではないが味わい深いメロディをじっくりと歌い上げた作品。オーケストラの使い方が、ディオンヌ・ワーウィックやローラ・リーの作品にもちょっと似ている。

また、味わい深さでいえば、エリック・ベネイの最新作『Eric Benét』にも関わっている、ジャイラス・モジーがソングライターに名を連ねるミディアム・バラード”I Remember”も捨てがたい。ドラムとベースを強調した落ち着いた雰囲気のトラックに乗せ、色っぽいファルセットを聴かせる妖艶な雰囲気の楽曲。ストリングスやギターの演奏を随所に挟み込んで、楽曲にメリハリをつけつつ、ロマンティックな雰囲気を強調している点も注目してほしい。

最後に取り上げたいのは、本作では珍しいアップ・ナンバー”Good To Love You”だ。R.ケリーの”Step In The Name of Love”を彷彿させるスタイリッシュなビートを取り入れたこの曲は、90年代に一世を風靡した男性ヴォーカル・グループ、ブラックストリートのリード・シンガー、デイヴ・ホリスターと組んだ曲。豊かな歌声をウリにした音楽スタイルや、レーベルの先輩後輩(デイヴ・ホリスターの2016年作『The MANuscript 』はシャナチー配給)など、音楽的には近しい二人だけあって、相性は抜群。豊かな声量を誇る二人が、自慢の喉を軽々と操り、ダイナミックな歌を聴かせるパフォーマンスは贅沢としか形容できない。

全曲を通して聴いた印象は、デビュー当時からの武器であったヴォーカルが、経験を積んで表現の幅と安定感が増したということ。元々、奇抜なトラックやキャッチーなメロディで勝負するタイプのシンガーではなかったが、新作を発表するごとに、ファルセットを効果的に使った色っぽい楽曲がら、地声を響かせるパワフルな作品まで、一筋縄ではいかない高い難易度の曲を着実に乗りこなし、自分の色に染め上げてきた。本作は、その総決算と呼んでも過言ではない作品で、高い表現力が求められる楽曲を着実に歌い込みつつ、力強さと大人の女性の色気が同居した、彼女らしさに溢れる音楽に仕立て上げてくれた。

アレサ・フランクリンやチャカ・カーンの系譜に立つ、恵まれた歌声と高い技術を持ちつつ、彼女独特の大人の色気を感じさせるパフォーマンスで、先人と差別化したも両立した、本格的なヴォーカル作品。往年のソウル・ミュージックが好きな人はもちろん、ビヨンセやリアーナを通してブラック・ミュージックを知った人にも是非聴いてほしい。「歌」や「声」奥深さと面白みを思う存分堪能できると思う。

Producer
Leela James, Rex Rideout, Evan Brice, Butta-N-Bizkit, Calvin Frazier, Jairus Mozee

Track List
1. Hard For Me
2. Don’t Mean A Thang
3. Don’t Want You Back
4. Real Talk – Relationships (Interlude)
5. I Remember
6. Good To Love You feat. Dave Hollister
7. There 4 U
8. This Day Is For You
9. Take Me
10. All Over Again
11. Our Love
12. Did It For Love





Did It for Love
Leela James
Bmg Rights Managemen
2017-03-31

 

Eric Benét – Eric Benét [2016 Jordan House, BMG]

1996年にアルバム『True To Myself』でデビュー。その後は、”You're the Only One”やタミアをゲストに招いた”Spend My Life with You”などのヒット曲と、『A Day in the Life』や『Love & Life』などの優れたアルバムを残してきた、ミルウォーキー出身のシンガー・ソングライター、エリック・ベネイ。彼にとって、スタジオ・アルバムとしては2014年の『From E To U : Volume 1』以来2年ぶり9枚目、アメリカ国内で配給されたアルバムとしては2012年の『The One』以来4年ぶり7枚目となるオリジナル・アルバム『Eric Benét』が、自身のレーベル、ジョーダン・ハウスから発売された。

古いレコードからサンプリングしたフレーズや、シンセサイザーの音色を多用した、ヒップホップ寄りのR&Bが流行していた90年代中期。そんな時代に、彼は、生演奏による伴奏と、スマートで色っぽいハイ・テナー組み合わせたスタイルを携えて音楽シーンに登場。年季の入ったソウル・ファンから若い音楽ファンまで、幅広い層から支持を得てきた。

それから約20年、今や、生演奏を使ったR&Bは、ブルーノ・マーズからアデルまで、色々なミュージシャンのアルバムで聴かれるようになったし、ファレル・ウィリアムズのように、スマートなファルセットやハイ・テナーをトレード・マークにする歌手も増えてきた。だが、どれほど時代が変わっても、彼の音楽が多くの人から愛され続けているのは、流麗で親しみやすいメロディと、ハイトーンだが柔らかい歌という、確固たる個性が確立されていいるからだろう。

さて、本作の収録曲はというと、まず、アルバムのオープニングを飾る”Can't Tell U Enough”は、華やかなホーンで70年代のソウル・ミュージックっぽい豪華な雰囲気を演出したトラックに、滑らかなファルセットが乗っかった、2000年以降のプリンスっぽいファンク・ナンバー。ヒップホップの影響を感じさせる重めのビートを取り入れつつ、過去の作品でも数多く収録されている、少しゆったりとしたテンポのアップ・ナンバーを1曲目に持ってきたところが、作風がブレないことで定評のある彼らしくて格好良い。

続く、”Sunshine”は、艶めかしいギターの音色を軸にしたシンプルな伴奏の上で、繊細な歌声をじっくりと聴かせるスロー・ナンバー。ベイビーフェイスの『Playlist』に収録されていても不思議ではない、美しいメロディとみずみずしいテナーが堪能できる本作の目玉だ。一方、日本盤CDと配信バージョンのみに収められている同曲のリミックス・ヴァージョンは、”Spend My Life with You”で共演したタミアをフィーチャーしたデュエット。ギターの伴奏をキーボードに差し替えるなど、90年代の録音を彷彿させるモダンで洗練されたトラックをバックに、二人が交互に歌うロマンティックな曲だ。オリジナル・ヴァージョンでは、他の曲ではあまり見せないワイルドな歌声を響かせるエリックと、円熟した大人の色気を漂わせるタミアの歌が絡みあう 、本作一番の聴きどころだ。

それ以外の曲では、パンチの聴いたドラムとや力強いギターなど、一つ一つの楽器の音色がはっきりした演奏の上で、力強い歌唱をじっくりと聴かせるスロー・ナンバー”Insane”や、マーク・ロンソンの”Uptown Funk”などのヒットで盛り上がっている四つ打ちのビートと、ホーン・セクションやギター、キーボードなどの音色を重ね合わせたモダンな演奏をバックに、クール&ザ・ギャングっぽい軽快なメロディを聴かせる”Cold Trigger”。日本人の耳にはどうしても山下達郎の”Sparkle”っぽく聞こえてしまう、爽やかなエレキ・ギターのリフを取り入れたラフな雰囲気のトラックと、MCライトのワイルドなラップが、エリックの洗練されたヴォーカルを引き立てる”Holdin' On”や、ディジー・ガレスピーとも競演している、キューバ出身のジャズ・トランペット奏者、アルトゥーロ・サンドヴァルが切れ味鋭い演奏を披露するサルサ・ナンバー”Run To Me”(曲の所々で挟みこまれる、異様にセクシーな声の持ち主は誰なんだろう?)など、いずれも魅力的で捨てがたい、ハイレベルな曲が並んでいる。

実は、この文章を書く前に、過去の作品も一通り聴きなおしてみた。そして、彼が発表した楽曲を聴き続ける中で強く感じたことは、エリックが自分のスタイルを貫きながらも、時代の変化に合わせて、核以外の部分を微妙に調整しているということだった。流麗なメロディを、繊細でしなやかなハイ・テナーを使って丁寧に歌い上げるというスタイルは、デビュー当時から変わっていないが、アレンジや音の仕上がりは、時代によってかなり変わっている。本作でいえば、”Can't Tell U Enough”などのビートは、90年代の曲のそれと比べると音の輪郭がはっきりしているし、ディスコ音楽の流行を意識したと思われる”Cold Trigger”や、ヒスパニックの割合が多くなった現代のアメリカらしい、サルサを取り入れた楽曲”Run To Me”のように、特定のジャンルから強い影響を受けた楽曲が増えている。このように、彼は時代の変化を意識し、90年代の音楽のリメイクにならないよう、自身の音楽を更新しているように思えた。

自分の持ち味を大切にしつつ、時代の変化にもきちんと適応する、彼の良さが発揮された佳作。多くのベテラン・ミュージシャンが、自身の代表作が生み出すイメージに縛られて、時代に合わせた作風への転換に苦戦する中、それをいとも簡単に成し遂げたスキルは、もっと注目されてもいいと思う。

Producer
Eric Benét

Track List
1. Can't Tell U Enough
2. Sunshine
3. Insane
4. Cold Trigger
5. Home
6. Holdin' On feat. MC Lyte
7. Fun & Games
8. Run To Me feat. Arturo Sandoval
9. Floating Thru Time
10. Broke, Beat & Busted
11. That Day
12. Never Be The Same (Luna's Lullaby)
13. Sunshine Remix feat. Tamia





Eric Benet
Eric Benet
Primary Wave
2016-10-07

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