melOnの音楽四方山話

オーサーが日々聴いている色々な音楽を紹介していくブログ。本人の気力が続くまで続ける。

BadBoy

Janelle Monáe - Dirty Computer [2018 Bad Boy, LLC, Atlantic]

アウトキャストの2006年作『Idlewild』に客演したことで表舞台に登場。同グループのビッグ・ボーイの口添えで、ショーン・コムズの知己を得たことをきっかけに、彼が経営するバッド・ボーイと契約。2007年に配信限定のアルバム『Metropolis』でメジャー・デビューを果たした、カンザス州カンザスシティ出身のシンガー・ソングライター、ジャネール・モネイことジャネール・モネイ・ロビンソン。

同作に収録された”Many Moons”がグラミー賞にノミネートするなど、個性的な音楽性が評価された彼女は、2010年に初のフル・アルバム『The ArchAndroid』発表。その後は、コンスタントに新曲を発表しながら、エイミー・ワインハウスやメイヤー・ホーソンとツアーを行う一方、役者としても「ムーンライト」や「ドリーム」などのオスカー作品で、存在感を発揮してきた。

本作は、自身名義の作品としては2013年の『The Electric Lady』以来、実に5年ぶりとなる3枚目のスタジオ・アルバム。プロデュースは、彼女が率いる音楽レーベル、ワンダーランド・アーツ・ソサエティに所属するネイト・ワンダーやチャック・ライトニング、ナナ・クワベナなどが担当。その一方で、ゲスト・ミュージシャンには、「ドリーム」のサウンドトラックでコラボレーションしたことも記憶に新しいファレル・ウィリアムスや、ビーチ・ボーイズのブライアン・ウィルソンなどが名を連ねるなど、自社のクリエイターと外部のアーティストを上手に使い分けた作品になっている。

アルバムの収録曲で一番最初に公開されたのは、クワベナとワンダーの共同プロデュース作品である”Django Jane”。音数を絞ったシンプルなトラックの上で、ラップと歌を織り交ぜたパフォーマンスを披露するミディアム・ナンバーだ。ラップと歌を組み合わせる手法と、一音一音を丁寧に聴かせるミディアム・テンポのビートは、パーティーネクストドアの作風にも少し似ている。

また、同日に発表された”Make Me Feel”は、テイラー・スウィフトやブリトニー・スピアーズの曲を書いたこともある、スウェーデンのプロダクション・チーム、マットマン&ロビンが制作したミディアム・ナンバー。軽やかなギターのカッティングを盛り込んだ伴奏は、ジェイムス・ブラウンが活躍していた時代のファンク・ミュージックを彷彿させるが、ビートなど含めたアレンジ全体に目を向けると、ブリトニーの新作に入っていても不思議ではない、ポピュラー・ミュージック作品に落とし込まれているから面白い。ヒップホップの枠組みに囚われない彼女の絶妙なバランス感覚と、それを引き出すプロダクション技術が光っている。

そして、本作のリリース直前に発売されたシングル曲”Pynk”は、ワンダーとロス・アンジェスを拠点に活動する気鋭のクリエイター、ワイン・ベネットをプロデューサーに起用したミディアム・ナンバー。フィンガー・スナップとシンセベースを組み合わせて、ドゥー・ワップの軽妙さとヒップホップの躍動感を一つの曲に同居させた演出が面白い。他の曲ではあまり見られない繊細なヴォーカルや、サビの箇所で挿入されるハードなギターの音色など、色々な演出を盛り込んで、楽曲に起伏をつけつつ、ひとつのストーリーを持った作品に落とし込むアレンジ聴きどころだ。

それ以外の曲では、”I Got The Juice”も見逃せない。映画「ドリーム」のサウンドトラックでもタッグを組んだ、ファレル・ウィリウアムスをフィーチャーしたこの曲は、ワンダーランド・アーツ・ソサエティ所属のクリエイターがトラックを制作。ファレルの作品ではあまり耳にしない音色を使いつつ、彼が作りそうなビートを組み立てるセンスが面白い。ファンクやロック、レゲトンやカリプソのエッセンスを盛り込みつつ、ヒップホップに落とし込むファレルの手法を自分の音楽の糧にした良曲だ。

今回のアルバムでも、彼女の音楽性は変わることなく、ロックやファンク、ポップスやエレクトロ・ミュージックの要素を飲み込んだ、独創的な音楽を披露している。そんな彼女の音楽の面白いところは、経営者としてのしたたかさとバランス感覚を、奇抜で先鋭的な音楽性と両立しているところだ。楽曲制作は彼女を中心に、自身が率いるワンダーランド所属のクリエイターで行いつつ、楽曲に彩を添えるフィーチャリング・アーティストには、ファレルやブライアンといった有名ミュージシャンを起用する。この、自身の音楽性と、商業的な成功の両方を大切にできる意志の強さと狡猾さが、彼女の魅力だと思う。

多くのミュージシャンが鎬を削り、生き馬の目を抜くような厳しい競争にさらされながらも、自分の強みを見失うことなく、したたかに世を渡る彼女の強さが発揮された良盤。華やかなスポット・ライトを浴びるポップ・スターであると同時に、自分や後進のために、新たな光を灯し続ける彼女の姿が印象的だ。

Producer
Janelle Monae, Nate “Rocket” Wonder, Chuck Lightning, Mattman & Robin etc

Track List
1. Dirty Computer feat. Brian Wilson
2. Crazy, Classic, Life
3. Take A Byte
4. Jane's Dream
5. Screwed feat. Zoë Kravitz
6. Django Jane
7. Pynk feat. Grimes
8. Make Me Feel
9. I Got The Juice feat. Pharrell Williams
10. I Like That
11. Don't Judge Me
12. Stevie's Dream
13. So Afraid
14. Americans





DIRTY COMPUTER
JANELLE MONAE
ATLAN
2018-04-27

French Montana - Jungle Rules [2017 Bad Boy Entertainment Epic]

モロッコのラバットに生まれ、13歳の時にアメリカへ移住。MCバトルで腕を磨いた後、友人とDVDやミックステープを発表して、叩き上げのラッパーとして名を上げた、ニューヨーク州ブロンクス地区出身のラッパー、フレンチ・モンタナこと、カリーム・カルブシ。

その実績を買われ、複数のレーベルから誘いを受けた彼は、2012年にショーン・コムズ率いるバッド・ボーイとリック・ロス率いるメイバッハの2社と契約。翌年には初のフル・アルバム『Excuse My French』を発表。全米ラップ・アルバム・チャートの1位を獲得し、同作からのシングル曲”Pop That”はプラチナ・ディスクも獲得する。その後も、フィーチャリング・アーティストとして、多くの作品に客演。ウィル・アイ・アムの”Feelin' Myself”や、クリス・ブラウンの”Loyal”など、色々なアーティストのヒット曲で存在感を発揮してきた。

このアルバムは、彼にとって4年ぶり2枚目のフル・アルバム。所属レーベルの都合で、配給がインタースコープからエピックに変わっているものの、今作でも、バッド・ボーイらしいキャッチーなサウンドと、彼の荒々しいラップが堪能できる良質なヒップホップを聴かせている。

本作のオープニングを飾る”Whiskey Eyes”はニューヨーク出身のラッパー、チンクスをフィーチャーした曲。ロンドン出身の女性シンガー、フェのヴォーカルを効果的に使ったトラックと、二人の刺々しいラップの組み合わせが光っている。

一方、スワエ・リーが参加した”Unforgettable”は、レゲトンやカリプソの要素を取り込んだアップ・ナンバー。聴き手を幻想的な世界に引きずり込むトラックやヴォーカルは、モロッコのダンス・ミュージック、ジャシューカに通じるものがある。アメリカではあまり知られていない音楽のエッセンスをさりげなく盛り込むプロデューサーのセンスが素晴らしい楽曲だ。

また、メジャー・レーベルと契約する前からの盟友、ハリー・フラウドが制作を主導した”A Lie”は『Starboy』も好評のウィークエンドと、ニューヨークのハーレム出身のラッパー、マックスBを起用した作品。ウィークエンドやドレイクの楽曲に近い、シンセサイザーを多用した近未来的な雰囲気のトラックと、ウィークエンドの繊細な歌声が印象的な作品。ドレイクに代表される歌うようなラップを聴かせるアーティストがヒット・チャートを席巻する時代に、彼らのサウンドを取り入れつつ、LLクールJやノートリアスB.I.G.のような、荒々しいラップを聴かせる手法が魅力的。往年のヒップホップと現在のサウンドが融合した、本作最大の聴きどころだと思う。

それ以外の曲では、2017年も「Despicable Me 3(邦題:怪盗グルーのミニオン大脱走)」のサウンドトラックや、カルヴィン・ハリスの”Feels”などに携わるなど、活躍を続けているファレル・ウィリアムスが参加した”Bring Dem Things ”が面白い。ハリー・フラウドが作ったトラックは、ファレルが作りそうな、音数を絞ったキャッチーなもの。その上で、フレンチ・モンタナがリズミカルに言葉を繋ぐ姿は堂に入ってる。ファレルのスタイルを借りつつ、自分の音楽に染め上げるスキルの高さは流石の一言だ。

今回の作品は、多くの人気ミュージシャンを招き、流行のサウンドを積極的に取り入れた、バッド・ボーイらしいアルバムだ。しかし、妄信的にトレンドを追いかけるのではなく、太く、荒々しいフレンチ・モンタナのラップが活きるシンプルなトラックを中心に揃えることで、硬派だけど聴きやすい、絶妙なバランスの音楽に落とし込まれている点が面白い。恐らく、ノートリアスB.I.G.やメイスなど、ハードなラップをウリにするミュージシャンをヒット・チャートに送り込んできたショーン・コムズのビジネス・センスと、フレンチ・モンタナの確かなラップ・スキルが揃ったから、作れたのだろう。

ヒップホップが人気ジャンルの一つになった時代だからこそ新鮮に聴こえる、ワイルドなラップを活かした佳作。90年代からヒップホップを聴いてきた、年季の入ったファンにこそ聴いてほしい、本格的なヒップホップ・アルバムだ。


Producer
Puff Daddy, French Montana, Rick Steel etc

Track List
1. Whiskey Eyes feat. Chinx Drugz
2. Unforgettable feat. Swae Lee
3. Trippin
4. A Lie feat. Max B, The Weeknd
5. Jump feat. Travis Scott
6. Hotel Bathroom
7. Bring Dem Things feat. Pharrell Williams
8. Bag feat. Ziico Niico
9. Migo Montana feat. Quavo
10. No Pressure feat. Future
11. Push Up
12. Stop It feat. T.I.
13. Black Out feat. Young Thug
14. She Workin feat. Marc E. Bassy
15. Formula feat. Alkaline
16. Famous
17. Too Much
18. White Dress





JUNGLE RULES
FRENCH MONTANA
EPIC
2017-07-21

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